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ライトユーザー、異世界では強くあれ。  作者: ラカインスト
第3章 ガウーリアス商会
32/51

第32話

ブクマや評価、感想等々大歓迎です。

評価等してくれた方々、本当にありがとうございます。

ただまぁ…お手柔らかに。心弱いので…


気づいたら84ptも…ありがたい話ですよ。本当に。これからも頑張っていきます。

「ベアリアさん、右側!」

「私に命令しないでください!あと、奥から3匹!」

「はーい」


 ラスマの街を出て3日、ついに初めての接敵を草原で果たすが、サクとベアリアは互いに完璧な前衛と後衛をすることで、襲いかかってきたビッグコッコという魔物を撃退していく。ちなみに俺はというと…

「なぁ、あんたは行かなくていいのか?」

「若いのがやりたいと言っているのなら、僕のような年寄りが前に出るのは野暮でしょう?」

「な…なるほど」

 それっぽく強者感を出しながら、ガウーリアス商会が対人用に雇っている私兵の皆さんと遠巻きから見学である。いや、もちろん彼らの討ち漏らしには俺が対応することとなるのだが…


「あ、討ち漏らーー」

「クマノヴィッツ様のお手を煩わせるつもりですか!仕留めましたよ」

「おぉ、ナイスぅー」

 ……立ち回りがどっちも神すぎる。何があった?

「クマノヴィッツさんの恋人ってだけはあるんだ」

「当然です。あなたもお子様にしてはやりますね」

 あいつら、殺し合いしながら喋ってやがる…ビッグコッコはオークより強いのに、そんな余裕あるんだな。


「クマノヴィッツ殿」

 俺がぼんやりと2人の活躍を眺めていると、頭上から名前を呼ばれたので振り返る。そこには他の運搬用の幌馬車とは造りが違う小綺麗な人用の馬車があり、その窓からどこの少女漫画の王子様だよとツッコミたくなる好青年が顔を覗かせていた。

「はい?…ああ、ボルダーさん、私に何か?」

 好青年の名はボルダー・ベル・ガウーリアス、今回馬車10台分の積荷をリットランまで運ぶ総責任者にして…ガウーリアス商会会長レフ・ベル・ガウーリアスの息子だという。要はサクの依頼主だな。で、俺からすれば依頼主の依頼主だ。

「ワイズマンの腕は疑う余地もありませんでしたが、あなた方の腕を疑って申し訳ありません」

「ああいえ…うちのベアリアに過分な評価、感謝いたします」

 元々、冒険者には礼儀知らずが多いらしいのだが…極力失礼がないようにしなければならない。俺が生き抜いた18年の経験上、長いものには巻かれろだ。

「まさかラスマにベアリアさんのような凄腕がいるとは知りませんでしたよ」

「いやぁ、私とベアリアは旅をしている身。ギルドとはご縁でCランクに認定して頂いただけですから」

「そうなのですか?てっきりBランク相当かと…」

「いやいや、あのサクさんの動きを見れば、自分達もまだまだと恥じ入るばかり 」

 俺はそう言って改めてサクの動きに注目する。


「ベアリアさん、疲れたなら引いてもいいんだよ?」

「誰が疲れたと?」


 ビッグコッコは名前の通りデカい鶏なのだが、その高さは人間と大差なく、めちゃくちゃ肉食的な魔物だった。鋭い嘴に突かれれば、鉄の盾などでは穴が空くだろう。生身で受ければ即死だ。本当、HPでどうにかなってた世界が恋しくなる…

 そんな中、サクはビッグコッコ9体に囲まれた状態で恐ろしい嘴攻撃の数々を鮮やかなステップで躱す。そして、細身の剣でそれぞれに的確なカウンター攻撃をしていく。しかし剣で斬る度に斬られたところが燃え上がるのを見るに…魔法戦士か、魔剣士か…少なくとも格上だなぁ。


「ほら、クマノヴィッツさんも僕に見惚れてることだし」

「え!?…う、嘘を!クマノヴィッツ様はノンケです!」

 …ふむ、やはりサクは侮れないな。


「ではクマノヴィッツ殿の実力は?」

「私の実力ですか?」

 ボルダーも痛いところを突いてくる。しかも痛いところを突いてきたのはこのイケメンだけではないときた…


「「あっ!」」


 サクを囲んでいたビッグコッコの1体が突然俺たちのいる方向に走り出した。何の前触れもなく、完全なイレギュラーとなったため、サクもベアリアも対処できなかった。

「まさかトリ頭にも痛いところがバレていたとは…」

「クマノヴィッツ様!」

 ベアリアはすぐに骨弓でビッグコッコの頭に狙いをつけたが、俺は両腰に提げていたオークのハンドアックスを手に、ベアリアを制す。

「射るなベアリア、誤射されても敵わん。私兵の皆さんは防御態勢へ。まぁ…討ち漏らすことはないと思いますが」


 ビッグコッコの戦闘力はぼっちウルフ10匹分くらい。ゲームのクマノヴィッツなら問題なく倒せるが…

「初戦からビッグコッコとは…ツイてないな」

 実は攻略法は知ってる。というか考案済みだ。ただ、ぼっちウルフとかツノ兎とか…ウォーミングアップをしてから戦いたかった。


 俺がオークのハンドアックスを引きずりながらゆっくりと前に出ると、ビッグコッコは真っ直ぐ俺に突撃してくる。このトリ頭は駆け引きをするつもりがないようだ。オークの方が賢いな。

 まずはその勢いを殺す。

「フラッシュ」

 右手に持ったオークのハンドアックスの先端をビッグコッコに向けると、その先端が眩い光を発する。ゲームでは攻撃命中率の低下という、どこか運ゲーに持ち込むための魔法だったが、ここでは十分な牽制方法だ。

「武器投げ」

 そして左手のオークのハンドアックスを横向きに投げる。狙いは脚だ。

「当たるだろ?」

 武器投げでオークのハンドアックスを投げれば、必ず刃の部分が刺さるようになっている。それこそが武技としての効果だ。持ち手部分が当たっても意味がない。尤も、ビッグコッコが跳んだりすれば容易に避けられるため、保険の目眩しとしてフラッシュを使用した。


「ギョェェエエエ!」


 ビッグコッコはやはり武器投げをかわすことができず、右脚にオークのハンドアックスが刺さった。そして、ビッグコッコはバランスを崩して前のめりになり、堪えながらも…俺の目の前で倒れる。

「クマノヴィッツの身体なら外さねぇよ…」

 ビッグコッコはすぐに立ち上がろうと、大きな羽を広げたが、俺は右手に持っていたオークのハンドアックスを両手で持ち頭の上に構える。それから目下にあるビッグコッコの頭に狙いをつけた。

「剛撃」

 両手に伝わったのは固いものを叩き壊した感触…

「お見事」

 後ろからはボルダーの賞賛する声が聞こえてきたが、同時に俺は大量の血を全身に浴びた。

「マジか…」


 異世界に来て、冒険者とか、勇者とかやってる連中はよくこんな環境に適応できるものだとつくづく思う。


 俺は棒切れだけになったオークのハンドアックスを捨て、視線を下に落とす。そこには頭を縦に真っ二つにされたビッグコッコが時折ビクリと動きながら、大量の血を流していて、2つに割れた脳にはオークのハンドアックスの刃が埋まっていた。流れ出る血はすぐに土砂降りの雨の日にできる水溜りを形成し、俺の足も飲み込んでいく。

 ぼっちウルフやツノ兎を殺した時はまだ…耐えられた。旅人の剣を突き刺せば終わったのだから。オークの時は遠距離で倒したり、オートモードが勝手に倒してくれたり…そう意識することもなかった。とはいえ、俺と同じくらいの背丈を持つビッグコッコの頭をかち割り、返り血を浴びるなど…


「チートで無双してる連中は全員サイコパスだな…」

 あるいは神などに精神すらもいじられているのか。


 俺は喉を逆流してきたものを改めて飲み込み、動かなくなったビッグコッコの右側に回り、右脚に刺さっていたオークのハンドアックスを回収してボルダー達の元に戻る。すると、私兵の皆さんはポカリと口を開けて迎えてくれる。ボルダーただ1人が涼しい顔をしていた。

「ビッグコッコをあそこまで速やかに狩れるとは驚きましたよ」

 笑え、違和感なく。

「いやぁ…単独なら遅れを取りませんがね。やはりサクさんのように機敏には動けませんから、あのように複数同時に相手はできませんよ」

 ダメだ、笑えてない。

 俺はコートの袖で顔についた血を拭きながら、すぐに彼らに背を向けて、今なお戦闘中のベアリア達の方を見た。


「いやぁ…よく戦えますよ。本当に」

〜〜龍の剣用語集〜〜

【ビッグコッコ】

めちゃくちゃデカい鶏のような魔物。人間やオークを毛虫でも食べるようにして食べる。基本的には集団で動き、初心者が遭遇すればまず敗北すること間違いなしと言われている。しかし、ビッグコッコの卵は高級食材であり、納品依頼が絶えることはなく、ある意味初心者の越えるべき壁の1つ。

ちなみに攻撃方法は嘴で突くことと脚を使って飛びかかってくることしかしないため、側面から攻撃すれば…ほぼ反撃を喰らわずに済む。

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