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ライトユーザー、異世界では強くあれ。  作者: ラカインスト
第3章 ガウーリアス商会
31/51

第31話

ブクマや評価、感想等々大歓迎です。

評価等してくれた方々、本当にありがとうございます。

ただまぁ…お手柔らかに。心弱いので…


とうとう月一になってしまった。書きたいことの言語化って難しい…

 私を生み出したその人は全てを背中で語る人だった。直接言葉を交わすことも少なく、笑顔の1つ見せてくれはしない。それでいて、戦いの場になると…私を常に守り、私より多くの傷を負う。そして、何度も何度も…私の目の前で倒れていた。


 その度に私は思わざるを得なかった。

 どうか私にも…貴方を守らせてください、と。


 だからなのか、元の世界に帰らなければならないと焦りと不安を抱える一方で、どこか充実している自分がいることを否定できない。


「ベアリア?」


 ラスマの街を出て2日、馬車に揺られる中、少し考え事をして瞼を閉じていると聞こえてくるのは私を心配する声。そして私が瞼を開けて笑うとその人は安心したように優しく微笑んだ。

 それがどれほど嬉しいか、きっと気付いてはいまい。


「クマノヴィッツ様」

「ん?」

 …ああ、もっと貴方のことが知りたいと思うのは傲慢でしょうか。

「いえ、あの…似合ってますか?」


 私は咄嗟に左手を上げて、手首に巻かれたブレスレットを見せる。すると、クマノヴィッツ様は恥ずかしげに頭を掻いて、自分があげたブレスレットを見る。

「ん…っと、似合ってる、と思う。はい」

 なぜかこちらまでムズ痒い気持ちになる。本当に最近のクマノヴィッツ様は人間味が増しすぎているような気がしてならない。そんなクマノヴィッツ様から頂いたものだ。元の世界でも何度となくアクセサリーの着脱を命じられてきたが、今回のこれは何か特別な感じがする。


「その…あれだ。装備時の違和感ってある?」

「違和感はありません。むしろ何でもできる気がします」

「え?そんな効果があるのか…俺がつけた時は何もなかったけど……女性専用装備?職業専用か?」


 向かいに座るクマノヴィッツ様はブツブツと呟いて、難しい顔をして頭を捻った。そんな表情ですら、私にとっては新鮮で、愛おしい。


 この世界に来てからというもの、この気持ちだけが大きくなっていた。それは今まで何かに抑圧されていたかのようで、クマノヴィッツ様に呼ばれたあの日から募り続けている。これが恋心だと気づいるが、もはや問題ではない。今度こそは…私がクマノヴィッツ様のお役に立ってみせる。今はそれが最優先事項だ。そして、その笑顔で、優しいその顔で…私の方に振り向いてもらいたい。そう思うばかりだ。


「ふむ………タロニッツに聞くことがまた増えたな」


 だからというわけではないが…警戒すべきことがある。

「クマノヴィッツさん、どうかしたんですか?」


 そう、こいつだ。


「ん?ああサクさん…いえ、リットランでの計画を少しばかり」

「へぇ。観光ですか?それとも依頼を?」

「えーっと…」

 ズケズケ聞くな。クマノヴィッツ様は距離感が近い相手を苦手としていることを知らないのか。


 私はクマノヴィッツ様の左腕に寄りかかっているサクなるAランク冒険者を睨みつける。

 この男、あまりに信用できない。私の持ちうる全てが警鐘を鳴らしている。

 なぜクマノヴィッツ様に近づいたのか、なぜクマノヴィッツ様を甘い視線で見るのか…男だとはわかっているが、サクなる美男子は私にとって明確な敵足りうる存在だ。


「観光、ですかね。大聖堂にいるという預言者に会いに行こうかと思いまして」

「随分と敬虔な神徒教の信者なんですね」

「いやぁ、そんな大層なもんではないですよ。どちらかというと見聞を広めるためですから…な?ベアリア」


 不意に目が合う。

「え…あっ、はい」

 だめだ。やはり、あの頃のクマノヴィッツ様と違う。こんなにこの人が助けを求めるような視線を送ってくることがあったろうか。


 素直に嬉しくて…笑うことしかできない。


 私が頷くと、クマノヴィッツ様はさりげなくサクの身体から距離を取ろうと、少し横にズレる。しかしそれでもサクはクマノヴィッツ様との距離を詰め…

「せっかくですから、ご一緒しても?」


 さすがに我慢ならないな。

「それはご遠慮いただけますか?」

 私が割って入るように口を開くと、そこでようやくサクと目が合う。馬車に乗ってからというもの、サクとまともに会話を交わしたことがなかったが、やはり…敵なのか?

「え?」

「デートですから」

 私はあえて勝ち誇ったように、余裕を持った笑顔を向けた。すると、サクは一瞬だけ真顔になるも、すぐにクマノヴィッツ様に微笑みかける。

「2人ってそういう…」

 ここに来てクマノヴィッツ様の反応は早かった。

「いやぁ、お恥ずかしい」

 クマノヴィッツ様はそう言って、嬉しそうに私を見てくる。しかし…


「えー、じゃあ僕ともデートしませんか?リットラン詳しいんですよ」


 敵だ。間違いない。

「あ、いえ…うん、ベアリアとゆっくり過ごしたいので」

 それでも…勝った。これが主従の力というものだ。

ーー龍の剣用語集ーー

【アクセサリー】

装備品の中には指輪やブレスレット、ネックレスなどをアクセサリーとして装備することができる。中には魔物討伐において必須とされるアクセサリーもあり、装備品の中でもその優先度は高い。

ちなみに指輪だけは同時に10個まで装備できてしまうため、上位プレイヤーになればなるほど、ゴテゴテのいかつい指輪を10個もつけ、どこか頭の弱い富豪を思わせる装いとなる。またリリース当初はネックレスも首にいくつもかけられる仕様になっており、数十個装備する猛者もいたが、あまりに見栄えが悪かったため、現在では1個のみに修正された。

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