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第29話

ブクマや評価、感想等々大歓迎です。

評価等してくれた方々、本当にありがとうございます。

ただまぁ…お手柔らかに。心弱いので…


用語集は一旦お休み(?)。

「ーーということがありまして」

「なるほど。つまり、そのサクとやらは不遜にもクマノヴィッツ様を狙っていると?」

「ん?…ちょっと違うんでねぇかいベアリアさんや」


 俺は夕食を若獅子亭の食堂で済ませると、ベアリアが確保してくれた2人部屋でサクの誘いについてベアリアに話した。

 ちなみに美女と2人部屋という展開についてだが…やはり過度な性的興奮を覚えない。どうやら俺は微妙に理想像とは異なる形のものを好むようである。完璧を求める一方で、完璧を愛せないとは…罪な生き物としか言いようがない。


「なぁベアリア、俺にあまり期待するなよ?不遜にもというが、サク君は俺達より強いんだから」

「それはそうかもしれませんが…心配です」

「ん?俺は別に同性愛に目覚めちゃいないよ?まぁ好きになった人が男なら目覚めてしまうのだろうが、基本的には女性に魅力を感じているとも」

「あの受付嬢のような?」

「ああ、俺も所詮はどこにでもいるような健全なる男だとも」

「それはそれで…心配です」


 2人部屋にはシングルベッドが2つ、狭い部屋を挟む両方の壁際に置かれており、俺は部屋の奥側のベッドの上であぐらをかき、その後ろにある窓から見える真っ暗な通りを見下ろす。すると、反対側のベッドにちょこんと座るベアリアの溜息が聞こえ、そちらを見返すと…不意に目があった。


「………俺が性行を望んだら、どうする?」

 何言ってんだ俺。まぁ…魔物に襲われる心配がなくなって、周囲に人もいない安全な寝床を手に入れた安心感から出た言葉なのだろう。過度な性的興奮を覚えないだけで、俺だって性欲がないわけではないのだ。

「え?」

 ベアリアの白い肌がたちまち赤く染まった。しかしそれでもベアリアは俺から目を逸らさず…小さく頷いた。


「クマノヴィッツ様がお望みならば…」


 ……結局、ベアリアは俺をどう見ているのか?

 この従者は単に付き従う者なのか、俺を慕う者なのか、信頼している者なのか、家族や友人のような者なのか…やはりタロニッツに聞かねばわからないことだろう。何を言われようとも、本音がどれかは俺が判断できることではない。


「あ…うん、溜まってないと言えば嘘になるか。まぁ…こういうことをたまに考えてしまう程度には男だと理解してくれ」

 童貞を神格化するほど紳士的な人間ではない、と思っているが…実のところ、性欲を満たすための行為に対して、どこか醜い印象を持っているのは事実だ。


「わかり…ました。ただあの…したい時は…前もって言っていただけると、準備もありますので」

「そういうものなのか。覚えておくよ」


 何となく会話がし辛くなったので、逃げるようにベッドに寝転がって、天井を見る。しかしベアリアは逃してはくれなかった。


「ちなみに私がしたいと言った場合は…」

「据え膳食わぬは男の恥、だっけか?まぁ…うん、そうだな…」

 案外、童貞を拗らせているやもしれないな。

「あれだ。ベアリアがそれを望むなら」


 唐突に湧いた妙な期待を押し留めるため、寝返りをうってベアリアに背を向ける。やはりウブだと理解した。


「クマノヴィッツ様…」


 色気のある声を出すな。いや、俺が勝手にそう聞こえているだけか。

「明日は…いいい、忙しくなる。もう寝るぞ」

 あー、情けないことで。泣けてくるぞまったく…

 これでは露店で買ったブレスレットやアレックスから貰ったあれをベアリアに渡せないではないか。絶対、変な空気になるし。


 これからは1人部屋を2つ借りることにしようと心にして、俺はそのまま瞼を閉じた。尤も、眠れなかったということは言うまでもないことである。

色恋について…特別何か経験があるわけではないため…とりあえず、恋愛小説を読もうと思います。思った以上に自分の想像力が乏しかった。悲しきかな…ああ、悲しきかな。

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