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第28話

ブクマや評価、感想等々大歓迎です。

評価等してくれた方々、本当にありがとうございます。

ただまぁ…お手柔らかに。心弱いので…


桜咲く季節がやって来て、皆様はどうお過ごしでしょうか。出不精な若者より。

「えーっと、あなたは?」

 とりあえず当たり障りのない笑顔を見せてみると、美青年は普通に俺の左隣に座ってくる。そして、俺の顔やら腕やらを舐めるように見れば、ようやく口を開いた。


「僕はサク。Aランク冒険者をしています」


 アレックスはサクを見て「ワイズマン」と驚き、向かい側で気配を消している。これはどういうわけなのか、少なくとも…どこか変人なのだろう。

「これはどうも。Aランク冒険者様に会えるとは光栄ですな」

 何となく右手を差し出して、やんわりと握手を交わした。そこで俺は妙なことに気がつく。


 こいつ、女なんじゃないの?


 全体的に華奢だし、よく観察すると…喉仏が見えない。声も中性的。いや、もちろん女体にあまり触れたことないし、喉仏が見えない男だっているわけで、絶対の自信があるわけではない。そもそも俺はワイズマンなる人物について、アレックスから「男色家」と聞いた。

 …じゃあ男じゃね?うん、男だわ。


「それで、俺に何か?」

 Aランク冒険者様がどうして俺に近づいてきたのか、というよりリットランの名を口にしているからには…興味深い話があるはずだ。

 俺は水が入ったコップに口づけ、その縁からサクを見下ろす。すると、サクは得意げな笑顔を見せた。


「見たところ、あなたも腕が立つ冒険者では?」

 ほほぅ、よく見抜いたな小僧。

「まぁ…冒険者になったのはついさっきですが、これでもCランクと認められましてね」

 年下でも格上な相手に胸を張るのは馬鹿馬鹿しいので、ヘラヘラと笑ってみる。

「Cランク。それなら申し分ないですね」

 サクは両手を合わせて俺を見上げてくる。しかし俺は考えるよりも先に手が…出かけた。


 これ、嫌な予感しかしない。Cランクで申し分ないということは、Dランクのギル君以下の冒険者には荷が重い案件かもしれないということだ。身のためと思うなら…ここで断った方がいい。絶対にいい。


「き、聞くだけ聞きましょうか」


 …呪われてるよ。俺、意外とRPGの主人公気質なのではないだろうか。このままいけば、ほぼ間違いなく何かに巻き込まれるぞ。

 俺は自分でも顔が引きつっていることに気がつき、コップを置いて、きょとんとしたサクに苦笑する。


「実はリットランに向かうガウ―リアス商会の護衛を頼まれたんですが、馬車が10台もありまして…僕1人では手が足りないなと」

 あれ?

「つまり、一緒に護衛依頼を受けてくれないかということですか?」

「話が早くて助かります。どうでしょうか?」

 俺では到底勝てないポンコドラゴンを単独で討伐できるAランク冒険者と一緒にリットランに行けるのか?アレックスはリットランまでは近づけば近づくほど安全と言っていたし…美味しいな。

 興味を示していることがバレたのか、サクは俺の腕をチョンと摘まんで…あざとい目で見上げてくる。やはり女じゃあるまいか。

「ダメ、ですか?」


 だからなぜ薔薇が咲く。咲かせるな。


「当然ながら、私以外にも声をかけているんですよね?まさか2人で10台を守れというつもりで?」

「いえ、商会付きの傭兵が20人います。彼らは対人戦のプロですが、魔物相手だと怪しいですから」

 しかし、ますます美味しい話だな。戦える人間が多いというのはいいことだ。護衛なのだからと、必要以上に責任を負わされることもないはずだ。


「それならば是非とも…と言いたいところですが、連れがいるので、1度持ち帰らさせてもらっても?」

「連れ、というのは…」

「私より頼りになる弓使いの狩人です」

「それは助かります」


 改めて握手を交わした。


「じゃあ、明日の昼下がり、若獅子亭を訪ねますね」

「え?ああ、はい」

「それでは、いい返事を期待してます」


 サクは席を立つと、俺に一礼してその場から立ち去った。その身のこなしが妙に優美で…女性らしく見えたのは気のせいだろう。


「ソランさんのフェロモンに当てられて、欲求不満にでもなってんのかね…俺も若いなぁ」


 俺はコップの水を全て飲み干してから、向かいで赤の他人のふりをして酒を1人飲み続けていたアレックスに視線を向ける。

「ガウーリアス商会って聞いたことありますか?」

「ん…あ、ああ」

 アレックスはサクが見えなくなるのを確認して、苦笑混じりに口を開く。

「ここいらの商人の中じゃ知らない者はいないだろうな。おそらく、Aランク冒険者を雇えるんだぜってリットランの連中にも自慢する狙いだろうさ」


 やっぱり美味しい話ではありそうだ。サクに依頼した理由が自慢するためであるのなら、道中は本当に安全なのかもしれない。ベアリアに相談するとしよう。


「なぁところでよ…」

 アレックスが聞き辛そうな顔をして、残った酒を一気に飲み干す。


「若獅子亭だっけか?…なんでワイズマンは兄さんの宿泊先を知ってんだ?」

「え?」


 そういえば…なんで?


「兄さん…まさか…」

「いやいやいや…まさか…え?」


 ……………………………………………………え?

ーー龍の剣用語集ーー

【医者】

ゲームを始めた時に選べる初級職の1つ。パーティでは回復役を担う。回復には回復魔法を使う一方で、回復系のアイテムの効果を上げる能力もある。壁役不足が深刻化している中で、その役割は極めて大きい。

ただし、上級職の1つ【国境なき医師】はなぜか味方だけではなく、敵すらも回復させる仕様になっており、たまに回復役も煙たがれることがある。

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