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第26話

ブクマや評価、感想等々大歓迎です。

評価等してくれた方々、本当にありがとうございます。

ただまぁ…お手柔らかに。心弱いので…

「リットランまで?それだったら…グロップス、アルカンダ、シプリフトでそれぞれ乗り継ぐ必要があるな。だいたい15000タロンぐらいかかるぜ?」

「直通は…」

「乗合馬車はないが、不定期で商人の馬車なら行くぜ。乗せてもらうにゃ…ちと高ぇな」

「ありがとうございました。連れと相談してまた来ますね」

「おうよ」


 ……どうやら仕事をしなければいけないらしい。最低でも3万タロンは必要になる。これはまた…時間がかかりそうだな。


 俺は大型の馬車や行商人が行き交う西口で情報を集め終えると、とりあえず来た道を引き返す。

「おいアンタ!いい品揃ってるよ!」

 いや、寄り道もいいかもしれない。

 俺は通りで声をかけてきた露店に足を止める。

「何を売ってるんですか?」

 上着のポケットの中には2000タロンしかない。そのことを意識しつつ、露店に並べられたアクセサリーの値札を見ると、半分くらいの品には手が届く。

「へへへっ、見ての通りアクセサリーさ。奥さんのプレゼントにどうだい?」


 しかしそれらは見たこともないアクセサリーだった。【龍の剣】では全ての装備品がステータスに影響を及ぼしていたが、この世界ではどうなんだろうか?


「あの…」

「お?」

 …なんて聞くのが正解だ?

「これください」

「500タロンだ…まいどあり!」

 …しまった。なんとなく買ってしまった。

「またどうぞ!」


 買ったのは表面が滑らかな色とりどりの丸い石を使ったブレスレットだ。ベアリアへのお土産としようかな。でも安物は怒るだろうか…

「聞く前に買うんだから、俺もうっかりしてんなぁ…」

 ブレスレット片手に再び歩き出すと、

「旦那旦那!俺んとこも見てっておくれよ!」

「兄ちゃんこっちもどうだい!」

 露店に足を止めたところを見られたようで、他の露店商達が俺に声をかけてくる。

「あー、また今度で」

 とりあえずニコニコして前を通り抜けていく。そして他にも通行人がいるので、その流れに乗って、彼らの前から姿を隠した。


 空を見上げるとまだ青空が広がっている。若獅子亭には晩飯がついているらしいから、夕暮れ時に若獅子亭でベアリアと合流できれば問題なさそうだ。だから、今は心置きなく観光を楽しむとしよう。

「ふふん」

 正直、ファンタジーの世界に来て興奮しないわけがない。今までは村が、人がヤバいと言われ、森の中に留まり続けていたが、こうも綺麗な街に来たのなら、もっと観光を楽しみたいと思うのが当たり前だろう。

 ただ、ベアリアが後ろに控えていては…素直にはしゃげないと思ったので、申し訳ないと思いつつ、待機と命令した。


 ああ、スマホの1つでもあったら、すぐに写真に収めるというのに!


 ーーーーーー

 ザ・よそ者と言われんばかりに周囲を見回しながらきた道を戻っていると、途中の十字路の傍に見覚えのある馬を発見した。

「おー、レクト。さっきぶり」

 俺達をラスマの街まで運んでくれた馬レクトが停まっていたのはペトラス商店の建物の前だった。

 俺がレクトに手を振りながら近づくと、そのレクトの手綱を引いていた老人と目が合った。

「うん?ペトラス商店に何かご用ですかな?」

 上品な感じの老人は目を細める。レクトの手綱を引いているということはアレックスの関係者なのだろう。


「私、アレックスさんにラスマの街まで送ってもらったクマノヴィッツというものです。レクトにもお世話になりまして」



 ぺこりと頭を下げると、老人は感心したように何度も頷く。

「伺っております。長身の男性と美しい女性が護衛してくださったと」

「いえいえ、道中魔物1匹も出ませんでしたから」

「出ないことを願うより、出ることを考えて欲しいと会長には再三言っているのですが…」

「ははは、確かにそうですね」

 そんなことを話していると、建物の中からアレックスが出てくる。

「どしたランドルフ?…って兄さんか」

「どうもアレックスさん、さっきぶりです」

「どうも兄さん、中に入ってくれや」

 アレックスはそういうが早いか、建物の中に引っ込んでしまう。なので俺も老人ランドルフに頭を下げてからアレックスの後を追う。


「ようこそペトラス商店へ」


 中はコンビニくらいの広さがあり、様々な商品が並んでいた。ただ、なぜか客がいない。

「っていうか、嫁さんはどうしたんだ?」

「ベアリアは嫁じゃないですから。宿屋にいますよ」

「ほぉ、ギルドの用事も終わったんで?」

「ええ、推薦でCランク冒険者として登録を」

「そりゃすげぇ」

 アレックスは俺に一通りの商品を見せるように店内を練り歩く。その中で俺はいくつか欲しい物を見つける。そして一巡し終えるとアレックスは店の真ん中で立ち止まり、何か思いついたように笑った。


「んじゃ、何か1つプレゼントだ。値段は問わねぇでやるからよ」


 予想外の言葉に俺が驚くと、アレックスは得意げに鼻を鳴らす。

「ペトラス商店の客の8割がラスマ外の客だ。こんなでも、おらぁ金持ちなんだぜ?」

 持つべきものは金持ちで気前のいい友というわけだ。

 俺はせっかくの厚意を無駄にするわけにはいかないと、もう1度店内を回って、今自分が最も欲しいものを手に取った。

「それか?さすがは冒険者だな」

 価格は10万タロン。さすがにアレックスも…

「ま、いいってことよ。持っていきな」

 ……マジでか。敵わないな…


「ただし」


 そう言ってアレックスは呆然とする俺の背中を強めに叩く。

「ちょっと付き合えな」

 白い歯を見せたアレックスはそのまま俺の背中を押して店の外に歩いていく。

「ランドルフ、ちょいと行ってくんぜ」

「お気をつけて」

「あの、どこに?」

 危ないところに連れていかれては困るので、店を出てすぐに抵抗を始めるも、アレックスは俺の耳元で囁いた。


「酒だよ酒」

ーー龍の剣用語集ーー

【オルタードラゴニア】

ゲームの舞台となる世界。アプデという名の新大陸発見により、少しずつ世界が広がっている。人間が最も多く、エルフやドワーフ、獣人といった種と共生関係にある。国もいくつか存在しているが、基本的に国境などを意識する仕様にはなっておらず、世界観の設定としては極めてガバガバである。

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