第25話
ブクマや評価、感想等々大歓迎です。
評価等してくれた方々、本当にありがとうございます。
ただまぁ…お手柔らかに。心弱いので…
いつかはラノベの賞みたいなのに出してみたい…という願望が最近芽生えた。まぁ…身の程を知ってからになりますかね…何に出せばいいかもわかりませんし。
「以上が説明となります。よろしければ、こちらにサインをしてください」
あの臭いの中に戻った俺達は冒険者についての説明を10分ほど受けた。そして、俺とベアリアはコロホロボスキの推薦状によって、書類にサインをするだけでCランク冒険者から始められることとなった。
冒険者について要点をまとめると、
・ランクは最下位をHとし、最上位をSとして、社会貢献度によって決められる。
・仕事は依頼を受ける場合と自発的に動く場合に分けられる。これを『依頼』と『冒険』と呼ぶ。
・仕事に関する手続は冒険者ギルドの受付ならどこでもすることができる。
…まぁ多分おそらく、おおよその理解はできていると思う。
「ベアリア、理解できた?」
「もちろんです」
ん、じゃあわからないことはベアリアに聞こう。
俺は隣で不機嫌な顔をするベアリアに視線を向ける。
「ベアリア的にはサインしていけそう?」
相談は大事。というか、ヤバいことを聞き漏らしていたら困るので、サインする前に最終確認だ。
そう思って聞いてみると、ベアリアは俺を見て、すぐに笑顔で頷いた。
「問題はないですね。クマノヴィッツ様の判断に任せます」
不機嫌なのは会館の臭さか、目の前にいるソランさんか…今はスルーした方がいいな。
俺はソランさんが差し出してきた羽ペンを受け取り、ペン先に黒インクを少しつける。
「書くぞ。せっかくのお誘いだ」
あ、でも羽ペンって初めて使うから、めちゃくちゃ下手な字を書いてる。設定をコロホロボスキと同じ38歳にしたのに、その歳で汚い字を書くのは如何なものか…
「では私も」
チラリと隣を見ると、ベアリアは綺麗な字をサラサラサラーっと書いていた。
「汚い字で申し訳ない」
一応謝ってからソランさんにサインを提出する。
「いえいえ、問題ないですよ。字も読めない冒険者もたくさんいますから」
ソランさんのフォローが温かい…けど、
「私も書きました。確認のほどを」
ベアリアのまとう空気が冷たくなる。
「はい、確かに」
ソランさんは苦笑しながらベアリアからも書類を受け取ると、それぞれを確認した。そして小さく頷き、カウンターの下から2枚のカードを取り出した。
「Cランク冒険者のギルドカードです。身分証明にもなるので、必ず失くさないように」
俺とベアリアはそれぞれ、特別個人情報が書かれているわけでもない、どこにでもありそうなカードを受け取る。
『冒険者ギルド所属Cランク冒険者』とは書かれているが…これが身分証明に使えるのか?
その疑問が顔に出たのか、ソランさんは俺のギルドカードを指さして説明してくれる。
「そのカード、特殊な魔法技術で先ほどのサインしていただいた書類とリンクしています。なので、カードの中には膨大な情報が入っており、唯一無二のカードとなっています」
クレジットカードなんかについているICチップみたいなのがあるわけだ。すげーな魔法。
「また、ランクが更新される度に、カードも更新しなければなりません。失くされた場合は、すぐに最寄りの冒険者ギルドの受付まで」
自慢じゃないが、健康保険証や学生証、鍵、財布等々は失くしたことがない。そこんところの自己管理能力は高い方だ。何より、あの国では個人情報流出が悲劇を呼ぶなんてことも多々あったし…
「これで手続も終わりました。お疲れ様です」
こうして冒険者ギルドでの諸々の用事が終わる。すると、早速ベアリアはその場を離れようとした。
「ちょい待った」
しかし俺は踵を返したベアリアの腕を掴んで引き止める。
「ソランさん、2個ほど…ギルドとは関係のないことをお尋ねしても?」
俺もそろそろギルド会館の臭さに耐えられなくなってきた。それでも親切で説明上手なソランさんに聞きたいことが2つある。
「何でしょうか?」
「まず、今日もらった特別報酬金で泊まれる宿。それから、リットラン行きの乗合馬車に乗れる場所。土地勘がない田舎者ゆえ…よろしければ、教えていただきたい」
次の目的地について情報を得るのはRPGの基本だ。もはやゲームの世界ではないが。
ソランさんはしばらく考えた後、すぐにまた紙に何かを書き始める。
「若獅子亭という宿屋をギルドではおすすめしています。1泊1000タロン、朝夕ご飯付きですよ。場所も裏の訓練所を抜けたところにありますし」
「そりゃいいですね」
「乗合馬車はラスマの街の西口にありますよ。一応地図に描いておきますね」
と、簡易な地図を描いていたソランさんの手がピタリと止まる。
「乗合馬車の護衛依頼等もありますから、旅の最中にお金に困った時は、そちらがおすすめです。長時間仕事に拘束されるので、あんまり受ける人もいないんですよね」
ソランさんは自分の仕事も忘れない。しっかり売り込んでくる。
「タダ乗りが出来て、目的地まで行けば報酬が貰える。確かに美味しい話ですね。考えておきましょう」
考える前に、料金だったり時間だったり諸々をこの目で確認したい。金で解決できるなら、必要以上に働きたくないしね。
ソランさんは地図を描き終えると、それを俺に渡した。道を曲がる場所に何があるかを書いてくれていて、その目印を頼りに行けば西口に行けるようだ。
俺は安心して思わず笑顔を見せると、地図に聞き覚えのある店の名前を見つける。アレックスの店『ペトラス商店』だ。角地に店を構えるとは…なかなかに立派な店なのかもしれない。
「ソランさん、色々ありがとうございました。また来ますね」
「はい、またいつでもどうぞ」
もう鼻が限界だ。それをソランさんに悟られないように笑顔を見せて、ベアリアの腕を放す。そして俺はソランさんに頭を下げれば、回れ右をして、ベアリアの先を歩き出す。ベアリアも負けじと歩調を速めて追ってくる。
俺はベアリアを背中越しにチラリと見る。
「ベアリア、若獅子亭で部屋を取って待機しててくれ」
俺は後ろ手にベアリアに硬貨が入った袋を渡した。するとベアリアは不思議そうに首を傾げる。
「クマノヴィッツ様は?」
そこで俺は鼻を鳴らした。
「ちょっと観こ…じゃなくて、1人で調べたいことがあってなー」
ーー龍の剣用語集ーー
【戦士】
ゲームを始めた時に選べる初級職の1つ。攻撃力より防御力が少しだけ高く、レベルさえ上げれば、武器を適当に振っているだけで魔物を倒せることからどの層のユーザーにも人気がある。転職することによって攻撃型と防御型に分かれていく。
ちなみに防御型の上級職の1つ【SMバーの常連(M)】が習得する『もっと痛ぶってぇぇぇぇええ!』は性能的に盾役を目指す者には必須とされているが…少々不人気で、ゲーム内において盾役不足が深刻化している。
一方で攻撃型の上級職の1つ【SMバーの常連(S)】の女性キャラのみが習得できる『私の下僕になりなさい』は特別な映像が流れる上に、ボスすらも使役できると人気である。




