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第24話

ブクマや評価、感想等々大歓迎です。

評価等してくれた方々、本当にありがとうございます。

ただまぁ…お手柔らかに。心弱いので…


会話量がどんどん増えてきている…気のせいかな。

「理由がないと席を外せないので」

「はぁ。あの…サボり、ですか?」

「いえいえ、ギルド会員になられる方への施設の案内も業務のうちですよ。それに…ほら?」

「え?鼻?……ああ、確かに臭いますよね」

「仕事上慣れてはいるのですが、やはり臭うものは臭いますから」

「もしかしなくても…私を出しに使いましたね?」

「ふふっ、見えてきましたよ。あちらが訓練所です」


 ソランさんの美しい後ろ姿についていき、ギルド会館を1度出て、建物をグルリと回り込むと…そこには学校の校庭並に広いグラウンドが広がっていた。そして…100人以上の武装した人々が自分の獲物を振るっており、単純に素振りをする人もいれば、試合をしている人もいて…外のはずなのに、会館内と同じくらいの熱気で溢れていた。


「訓練所は基本的に自由に使うことができます。まぁ、ただ広い土地を開放しているだけなので、やれることと言っても少ないですけど。あ、でも魔法の使用は危険ですのでやめてくださいね」

「わかりました…」


 ソランさんは彼らの邪魔にならないように訓練所の外側を左回りに歩き始める。すると、何人かがソランさんに気づいて、いい汗を流しながら手を振った。

「人気なんですね」

 俺は彼らに笑顔を見せて応えるソランさんの後ろをついていくが、妙にチクチクした視線が俺のところには飛んでくる。

「私も冒険者ギルドの職員ですし、冒険者の方々と仲良くしていると便利なんですよ」

「ほぉ…例えば?」

「私がお願いすると、気を良くした冒険者が残った依頼を受けてくれるんです。依頼者も喜んで、冒険者ギルドとしても依頼が円滑に捌けますし」


 …受付嬢も色々考えているんだな。


「男性冒険者が多い以上、受付業務をするのが女性だと都合がいいんですよ」

「なるほど…って、私も冒険者になるのですが…」

 訓練所1周の4分の1まで歩いたところで、ソランさんは訓練所の中心を指さした。そこには地面に大の字で寝るギルとそれを見下ろすベアリアがいた。俺はソランさんに無言で頷くと、ソランさんは足を止めた。そして俺の言葉に応えてくれる。


「クマノヴィッツさんは…いい人そうですから、あんまり私達の愛想を真に受けない方がいいですよ、っていうお節介です」


 …………うん、ソランさんのためならポンコドラゴンだろうが、オークの群れ1万だろうが…戦える気がする。やっぱりチョロいのだろうか。


「じゃあソランさんにも警戒しないといけませんね」

「えぇー?」

 上目遣いで俺を見上げてくるソランさんに俺はどうにか抵抗しようと、笑いながら左に目を逸らす。


 しかしそこでも目が合った。

「あっ」


 もちろんソランさんではないし、さっきからチクチクした視線を送ってくる冒険者でもない。それは顔もよく見えないほど遠くに離れていたが……疑う余地もないほど合っている。

「クマノヴィッツさん?」

 合ってるだけなら大した問題じゃないが、何故だか背筋が凍りついた。ソランさんに見られて少しばかり火照った全身が…急に冷めていく。

「…これは中々どうして…いやはやまったく…」

 俺は思わず笑ってしまう。するとそれは…彼女は…あまりに流麗な動きでこちらに向かって歩いてくる。そして彼女の近くにいた男達の視線を釘付けにし、ソランさんに手を振っていた男達も口を情けなく半開きにする。


「さすがはベアリアだな…」


 彼女…ベアリアは両手にそれぞれ握っていた木製の短剣を後ろに放り投げると、短剣は2つとも放物線を描いて寝転がっていたギルの腹に落ちる。そして男達は自然とベアリアに道を譲り、その背中を呆然と見送る。


「クマノヴィッツ様」


 俺の目の前まで真っ直ぐに歩いてきたベアリアの顔は笑っていた。この熱気の中、異様なまでに静かに笑っていた。


「怪我はないか?」


 俺はベアリアに向き直って恐る恐る尋ねると、ベアリアは小さく頭を下げた。

「問題なく、力の差を見せつけられたかと」

 ベアリアは弓を得意としているが、近接戦に備えてギル同様に短剣を使うことができる。実戦導入されたことはなかったけど。

「よくやった。それで?Dランクは強かったのか?」

「いえ、少々期待外れでした。それなのに、クマノヴィッツ様に挑もうなど…」

「まぁまぁ、そう言わずに」

 俺はベアリアの肩を軽く叩き、ついでに頭も撫でる。なぜか、本能的にベアリアの機嫌を直さなければいけないと感じたからだ。いや、笑顔だから機嫌が悪いわけじゃないのだろうか?


「ところでクマノヴィッツ様」


 俺の腕の下からベアリアが見上げってくるのだが、頬が少し赤い。ただ、何かを訴えるように隣でニコニコしているソランさんを指さした。

「誰です。この人は?」

「人を指ささない。そう習わなかったか?」

「誰ですか。この人は」

「ベアリア、お前なぁ…」


 おや、もしかして嫉妬でございますか?ベアリアが?

 それってつまり、従者が自我を持つと、恋愛感情も持つようになるのか?まぁ、クマノヴィッツもブスではないからな。本来の俺の数千倍はかっこいいわけで…

 いやまさか…タロニッツの調整のせいか?タロニッツに聞くことがまた1つ増えたな。


「落ち着け。彼女は受付嬢のソランさんだ。わざわざ訓練所まで案内してくれたんだ」

 息抜きの口実にされた感は否めないけど。

 そんなことを思いつつソランさんに助け舟を求めると、ソランさんは笑顔を崩すことなく、自分よりわずかに背が高いベアリアに対して、ベアリアよりわずかに大きい胸を張る。

「はい、ベアリアさんにも色々手続をしていただきたく」


 しかし何を思ったのかソランさんは俺に近づくと、ベアリアを見ながら背伸びをして、俺の耳を貸すように要求してくる。俺もほぼ反射的にソランさんに身体を傾けてしまった。そこでソランさんは耳打ちをしてくる。


「ごにょごにょごにょ」

 ソランさん、完全にベアリアをからかっていらっしゃる。


 ソランさんはベアリアの眉がピクリと動くのを確認してから、俺から距離を取った。

「さ、ギルド会館まで戻りましょう」

 やられたとしかいいようがない。ソランさんはご機嫌にギルド会館の方に歩き出すので、俺も慌ててついて行こうとする。しかしベアリアが俺のコートの袖を掴んできた。

「どうしたんですか?」

「いや、ベアリアが強そうで安心したってさ」

「それはどういう…」

「ほら、俺って結構抜けてるところあるじゃん?旅人の剣も折れて捨てたし。ベアリアに支えられているなら、安心して俺達をCランク冒険者として認定できるっていうことだろうな」


 それにしても、ソランさんの顔が近づいた時、めちゃくちゃいい匂いがした。石鹸の匂いかな………好きだなぁ…


「ふむ…あるいはフェロモンか」

「はい?」

「あーいや、うん、受付嬢の愛想は真に受けない方がいいんだと」

「当然です」

ーー龍の剣用語集ーー

【狩人】

ゲームを始めた時に選べる初級職の1つ。基本的には弓か魔法銃を手に、遠距離攻撃をして立ち回る。素早さがある一方で紙装甲と言われるほど防御が脆く、ソロプレイヤーには不人気。転職することで中級職【暗殺者】等になることができる。なお、上級職には【伝説の猟師】というものがあり、ボスを含めたありとあらゆる魔物を一撃で倒すという武技『我こそ伝説、血となり肉となれ』を習得する。ソロプレイヤーには不人気だが、ガチ勢にはそれを目指す者が多かったり、少なかったり。


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