第18話
毎日更新ストックがなくなりました。
今後はゆるりとお楽しみくださいませ。
朝、カリカリオ村に到着する。そしてオーク将軍を遠距離からの攻撃で倒し、連れ去られた村人の追跡を開始。昼、拠点に戻っているであろうオークの群れを捕捉した後、オートモードでの全滅を確認。
連れ去られた中には子供もいたため、ぼっちウルフなどを警戒しながらゆっくりとカリカリオ村に戻ると、夕暮れ時を迎えていた。
「お姉ちゃん!」
「ヤックム!」
絵に描いたような感動的な再会を果たす姉弟がいると思えば、
「村が…」
「夫はどこ?」
「お母さん!お父さん!どこにいるの!」
呆然とし、叫び、絶望し、真っ黒な大地となったカリカリオ村に思うことは人それぞれだった。
「ベアリア」
「は、はい」
「…行くぞ」
「はい」
ベアリアも勝手に行動したことに対して深く反省しており、何やらぎこちない動きをして付いてくる。プログラム通り、コマンド通りに動いてきた元NPCが自分の感情に任せて動いたのだ。個人的には終わったことだし、俺が完璧とは言い難いから、勝手に動くあたりに頼れる余地があって安心もしている。
ただ、当の本人はやはり従者の申し子としての意識がまだあるようで…さらに、自分がオークに攻撃を仕掛けておきながら、そのほとんどを俺が倒してしまったことなども含め、不甲斐なさを感じているらしい。
「村長」
俺はそんなベアリアを引き連れて、色々な空気が入り乱れる焦土を抜け、真っ直ぐに村長宅にいる村長の元に向かう。
「旅人殿、なんとお礼を言えばいいか…」
「それには及びません。運が味方してくれただけのこと。全ては女神タロニエのお導きかと」
必要以上のお礼は勘弁。真面目な話、本当に神のお導きがあったから助かったというだけのことだから。
「本当にありがとうございます」
「HAHAHA…はぁ…」
笑うのも不謹慎になるのか。
「いや失礼しました」
俺には現在、2つの選択肢がある。
【村の復興の手伝いをする】
【早くリットラン大聖堂に行く】
常識的に、というか善人的に考えると、復興の手伝いをした方がいい。自然災害大国の国民としては…ボランティアというものをしたいとも思う。
しかし、この惨状を目の当たりにして、手伝おうと思うより先に「ここって危なくね?」とか「えー、超怠いわ」とか、どこか他人事のように思う自分がいる。きっと家族や知り合い、SNSで無駄に社会派を気取る人々なんかには「不謹慎だ」と批判されるだろうが…
俺は決して善人じゃない。
「村長、今後はどうするおつもりで?」
「救援が来た後、各自親戚筋を当たって村を捨てることになりましょう。私も村長として、それなりに知り合いがいますから、身寄りがない村人達もどうにかこうにか…」
村長の悲しみが写った目が村人達に向けられる。
まぁ、どうにかなりそうではあるか。救援隊も来るらしいし、俺が出る幕はもうないな。
「そうですか。なら…」
いやしかし…俺自身、何も活躍できてないからな。
「救援隊が来るまで、俺達が村を守りましょう」
うん、報酬金分の仕事はしなければなるまい。
「良いのですか?」
村長もこうなると大方予想をしていたはずだ。
「ええ、さすがにオークの群れが再来したら…どうしようもありませんがね」
「ありがとうございます。ありがとうございます」
「ということなので、しばらく村の外を回ってきます。何かありましたら、大声で叫ぶなりしていただければ」
俺は村長に一礼した後、早々にその場を立ち去る。
宴とか開くよりも…通夜が行われそうな雰囲気であるため、余所者は離れておくべきだろう。そうしないと彼女達が素直に悲しめない。
俺達がもっと早くカリカリオ村に到着していれば、もっと被害が少なかった。そんなことを思われても困るというもの。ああいうのは身内だけで気持ちを消化して行くに限る。
当然、こっちもこっちで先の話をしなければならないし。見回りついでにベアリアにも聞きたいことがある。
俺は村の外に出て、外周を歩き出すと、早速ベアリアにあることを確認する。
「なぁベアリア」
「はい」
「お前が俺を呼んだのか?」
タロニッツがいう【彼女】なる人物を探さねばならない。灯台下暗しなんてことも否定はできないので、俺を知っている人物には片っ端から確認してやる。
「えっと…私は従者呼びの笛で呼ばれたのですが…」
「じゃあ俺達が異世界に来たことについて、何も知らないんだな?」
「はい」
「嘘はついてないな?」
「もちろんです…!」
勝手に動いた前例がある。もうベアリアが馬鹿正直にクマノヴィッツの命令に従うわけではない。嘘を見破る方法が欲しいな。まぁ…そんな観察眼が素人にあったら、詐欺事件も減るだろうけど。
「じゃあタロニッツは知ってる?」
「いえ…シンシアが教えてくれたのは女神タロニエですよね?」
「前いた世界で調べ物をしていたら、次元を司る神にタロニッツというのがいてな。もしかするとと思ったんだが、情報が少なすぎるな」
「なるほど。さすがはクマノヴィッツ様です」
ほら、俺の嘘だって気づかれやしないし。
「女神タロニエと次元神タロニッツ、名前だけと考えるのは早計だからな。とりあえずリットラン大聖堂に行けば…預言者?に会えるらしい」
彼女というからには女なのだろう。しかし思いつくのはベアリア、母、両親の祖母、友達や後輩が数えられる程度。その中の誰かがこのタロスなる世界にいる。タロニッツは会えないと言っていないのだから。
「では」
「ああ、次の目的地はリットランだ」
ヒントがない人探しなど無理にもほどがある。本当に俺は帰られるのだろうか…
「大学、入学式に間に合うかなぁ…」
「え?」
「何でもなーい」
村の護衛、リットランまでの移動、さらにそこから人探し。想像以上に時間がかかる。本当になんで…こんな事に巻き込まれたんだか。
無双やらチートやらが人気あるようで、これはそんなに読まれないかなと思って後書きも前書きも書かずに投稿したのに、想像以上に読んでいただき、評価やブクマもいただき…とにかく感謝いたします。
今後ともよろしくお願いします。
個人的な反省点としましては…ロンリ狼やツノ兎は何となく自分の想像で作り出したのに、オークだけ、既存の設定を引っ張ってきてしまったなと…
こうしたらいいとか、ここなんか違くね?とか…それとなく教えてくれると嬉しいです。




