紅い世界
『壹:紅い世界』
部屋が紅い。自室で目を覚ました時に心によぎったのはそれだった。
寝坊をしてしまったかと焦って時計を手に取る。時計の表示は六時を指しているが、デジタルタイプの時計なので見間違えるはずもない。間違いなく朝六時である。
部屋の電気はついていないので部屋の電気の問題というわけでも無いようだ。カーテンを開いて目を見開く。驚くほど空が紅い。
そうだ!もともと世界は紅かったじゃないか……………現実逃避…失敗。
確かに自宅から見える海も空も紅かった。
しかし、だいぶ先の方はまだ青いところが点々とある。あれが本来見たことある世界の色だ!……った気がする。
そして何よりも不可解なのは自室でさっき起きた時以前の記憶がないということ。こういう時ラノベの主人公なら手帳か何かに自分のことを日記にしているだろうと思い、部屋中探してみるが見当たらない。
手掛かりは起きた時、手に握らされていた何のデータも入っていない電子端末のみだ。
とりあえず部屋を出てみようとドアノブに手をかけた時、頭の中に世界中で敵の侵略行為があったことの映像が思い出された。しかし敵の姿はどんなだかわからない。敵の姿を想像するとその敵に黒い靄のようなものがかかり思い出すのを邪魔するのだ。それはまるで昔テレビでやっていた探偵アニメの犯人のようだ。
──今、外に出てはいけない‼──
そんな気がした。部屋のインターホンのカメラで確認すると案の定ドアの前に黒い靄のようなものがが数人見えた。音声も確認してみる。〝早くドアを開けなさい〟〝いつまで引きこもっているつもりなんだ!〟〝生きているなら早く避難しなさい〟”我々が安全な場所に連れて行ってあげよう〟などと意味の分からないことを叫んでいた。あれって敵じゃないの?なんでここにやつらがいるんだ?
あれ?なんか変じゃない?
改めて今ある限りの記憶を整理してみる。まずここは間違いなく自室である。世界は紅い。侵略行為があり街の住人は一切合切殺されるかわずかな幸運者は逃げ切って隠れておりこの街の機能は麻痺、人間はいなくなったに違いなかった。
記憶を整理している間にまた少し思い出した。自分の趣味は河で奇麗な石を収集することで、侵略行為が始まる数日前に唐紅、紅唐、紅梅色、紅赤、淡紅色、洋紅色、中紅という七つ七色の赤系統の楕円形の宝石のように奇麗な石を拾ってそれが何かしらの力を持っていることが分かったのだった。
そして石が好きなほかにもう一つ思い出した。
自分の仕事は“宝石鑑定士”で年齢は“18歳”だということ。
自分のポケットには一つだけ石が入っていた。
他のは何処に行ったのかわからないが、この唐紅色の宝石は熱を放出できたはずだ。これを使って玄関に軽くぼや騒ぎを起こしてその間にベランダから逃げよう。逃げるなら上だな。
まず下までロープを垂らしておいて玄関に移動してからあれを使おう。
石の使い方はさっき思い出した。この石に刻んである古代魔術文字を読めばいいだけ。
こんな字見たことないぞ。とりあえず適当でもなんでも言ってみるか。
石を玄関の方へ向けて呪文を唱える
足元に魔方陣が浮かび上がりあたりに光のようなものが出現する
「wareno命ニ従e。キプロス王ノ命である。我二tikaraヲ全て託し世界ヲ統べyo。敵ヲ燃やし去れ。火焔ノ精霊salamandra‼」
詠唱が終わったとたんに周囲にあった光の粒が瞬く間にメラメラと燃え上がり玄関のドアの下の隙間に集中し外に居た人間に着火した。火のついた人間は瞬く間に燃え上がり灰すらも残さずに消えた。いや、消し去ったというべきだろう。玄関前には誰もいなくなり、火も扉の隙間から外に出て人間にしか当たらなかったので先ほどまで人がいた場所に出て吹き抜けから階下の様子を見渡す。見た目は黒い靄のようなものがまだ残ってっているこのマンションの人間たちを連れ出していた。さっきのもそれの第一波だと思われる。
早くあいつらから身を隠さないと。連れ出されたらきっと収容所に連れてかれて殺されるに違いない。それにしてもさっきから連れてかれるのは子供ばかりじゃないか。
こんなことを冷静に考察してる場合じゃない隠れなくちゃ。
自分の部屋に戻り天井のパネルを一か所だけ外して天井裏に逃げる。
しばらくするとさっきよりも多い人数の足音が聞こえてくるこの部屋にも入ってきたが誰もいないことを視認?すると次の部屋に移動した。
それからどれだけの時間がたっただろう。体感では6時間ほどか。その間ずっと物音を立てないようにしていたら寝てしまっていたのだ。さすがにおなかも空いたので天井パネルを開け自室に下り冷蔵庫を漁った。しかし何が何の食べ物だかわからない。匂いはするのに色はすべて赤系統だ。
───世界は未だ紅かった───
☆用語☆彡
salamandra:火の精
今回は小説を書いている友達に最初の数行書き出し文をもらい書き始めました。
自分の中ではこの物語は早く終わる予定です。
今回書いてみて自分でもセリフがねぇ!などと思っていたのですが、書いてみるとこれはこれでありなのかも?と思い、面白そうなのでそのまま続けることにしました。
クロニクル・アースをメインに書いているのでそちらもぜひ読んでいただければ幸いです。
また、三作品投稿しておりますがアドバイス、設定についての意見、感想など、もらえると零﨑は大変喜びます。コメントお待ちしてます
今回も、初心者の作品を最後まで読んでいただきありがとうございました。