第五回・不審船団を撃破しうるか? その四
「全空兵に伝達! 移乗戦闘準備!」
副官NPCの一人が伝声管に向かって叫ぶ。
「移乗戦闘準備!」
「第一空兵隊、移乗戦闘準備よし!」
「第二空兵隊、移乗戦闘準備よし!」
「第三空兵隊、移乗戦闘準備よし!」
副官は伝声管からの返答を聞き、サミダレに報告する。
「全空兵、移乗戦闘準備完了しました。いつでも突入できます」
サミダレが頷く。
「よろしくてよ。さあ、反撃の撃鉄を打ち下ろしましょうか!」
黒蓮時雨は現在出せる全速力をもってモットナリの乗艦へと突進する……!
『やばい逃げるわ(^^;)/~~~』
「今更遅いですわよ、モットナリさん?」
今の黒蓮時雨は、相手には満身創痍に見えているだろう。
だが、空兵をモットナリは大きく失っている。
航空艇の損害が大きくなりすぎたのだ。
この勝負、黒蓮時雨の炎上または爆発による撃沈か、それとも三本ノ矢の戦闘員全滅か、二つに一つである。
留意すべきはまだモットナリのエンジンなどが健在であること。
もし反転、全速力による逃亡を図られれば、旨味のない戦闘結果に終わるだろう。
故に、サミダレは命を下した。
「全速前進! そして砲弾を通常徹甲弾に変更! 砲撃可能であれば、敵艦の推進部分を重点的に狙いなさいな!」
「了解!」
副官が答え、黒蓮時雨の乗員全員が慌ただしく動く。
三本ノ矢はゆっくりと旋回しつつある。
「まだですね?」
「まだですわ」
副官の声にサミダレが答える。
敵艦が旋回を終えるのはかなり先であろう。
モットナリの乗艦は、機動性に難があったのだ。
しかし、
「まだまだですね」
「そうですわね」
副官とサミダレは言った。
推進部を狙い、敵艦を完全にただの浮遊物へと変える。
それが彼らの狙いである。
故に、
「来ました!」
「よろしいですわ、全砲門、砲撃準備は?」
「完了しています! 目標は無論」
「そう、無論、敵艦推進部を撃って撃って叩き潰しなさいな!」
サミダレの命令を副官は伝声管に向け伝える。
了解、との声がして五十秒後、砲音が響く。
轟音が響き閃光が辺りを包んだ。
「やりました! このまま突っ込みます!」
「ええ、行きましょうか!」
たった一度である。
たった一度の砲撃で、見事に敵艦推進部の脆弱な部分に砲弾が命中。
それが、敵の船足を潰した。
『ぎゃああああああああたすけてええええええええ!!(゜Д゜;)』
モットナリからのパンチカードを見てほくそ笑みつつ、サミダレは自身の移乗戦闘準備に取り掛かった。




