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結ぶ3

 夜に洞窟を発ってから日が直上に来る前、ようやく要塞に戻ってこれた。みんな心配して待っていたようだ。

 いくらかクレナと交代で仮眠も取りながら進んで来たが、いつ襲われるかわからない緊張のせいであまり疲れが取れていない。すぐにでも横になり眠りたいが、今日のうちにもう少しやらなきゃいけないことがある。


「おうシュゼ無事だったか。ってことはあの女嘘は言ってなかったんだな」

「ユーマにも会ってきた。話の内容を今から伝える。悪いけどクレナ、リフェルと先に戻ってみんなを集めといてくれるか」

「りょーかい。あたしも眠いんだから早く来てよ」


 なんのことだと不思議がるカズを適当に誤魔化し、椅子に腰掛けてからユーマとした会話を伝える。こいつも世界樹に連れて行ってもいいんだが、こっちにはこっちで仕事があるからな。

 人造勇者、俺の出生、グラードの術、ユーマの離反計画。

 立て続けにどんどん話したが、カズは時折相槌や軽く質問をするくらいで全て理解しながら聞いているようだ。本当に頭の回転は良いんだな。この筋肉質な体からは全くそう見えないんだけど。



「だいたいわかった。が、もっと敵布陣の情報とか内部の話はねぇのかよ!」

「あいつ洗脳が効かないからな。重要な情報は危険を承知で探らない限り一般兵並みにしか降りてこないらしい」

「ちっ。まぁしゃあねぇか」

「そこで俺から一つ対勇者の案があるんだが、まぁ自信はあんまりないけど」


 俺の考えた案は紋章を付けることだった。

 帝国は剣と盾、それと竜のようなものが描かれている紋章を旗や装備に使っている。

 人造勇者は日常会話もままならない程に狂っている。俺が戦場で対峙した者達、一見普通に見える奴も言動や思想がやけにおかしいとは感じていた。

 そんな狂った奴らを何人も抱えていて、内部で殺し合いになったりはしないのだろうか。危なくてたまらないだろう。

 そこで、もしかしたら帝国の紋章を目印に“仲間は攻撃しないよう”暗示がされているかもしれないと睨んだ。


「それ一つで勇者が一切無防備になるとは思えねーが……少しは効果があっかもしんねぇな」

「ああ。一瞬ひるませるくらいでも意味はある。せめて前衛分だけでも服に縫い付けられないか」

「やるだけやってみるわ。しかしまぁよ、敵の紋章付けて戦うなんて普通の兵には絶対できねぇな!」


 カズはいつものように大きく笑った。

 確かにそうだな。これは国を持たず、鎧を着ないため遠目でも敵味方がわかりやすい俺たちだから出来る作戦だ。


「よし。こっちはカズに任せた。俺はちょっと野暮用を済ませてくる」




 魔法都市ウィズ。そう呼ぶ者もいる通り、地魔法で作られた巨大な敷地の街。その最奥で台形に地形が盛り上がり、中央には巨大な木、世界樹がそびえている。

 そこにたどり着くため台形になった地形の崖を登る。もう何年も、何百回もこうしている。慣れたものだ。


 世界樹の根本――いや正確には世界樹の根は街よりも地下にあるからここは、世界樹の麓。そこには既に全員が集まっていた。

 クレナ、リフェル、レコウ、チマ、そして傭兵長。

 包帯の取れたレコウの顔には、鼻のあたりに横一文字の傷跡が痛々しく残っていた。


「レコウ、体は?」

「もう大分良いんだけどよー。今回は命令で待機だ。悪いな、大舞台なのに手伝えなくて」


 気にするなと言おうとしたところで傭兵長が口を挟む。


「ここの守りも必要な人員だ。お前が前線に出たところでそこから一名戻すだけ。なら怪我人のお前はここが適任。違うか?」

「おっしゃる通りでございます……」


 傭兵長……以前伝言で気になることを言っていたな。

 そちらを見ると、目で「今は言うな」という空気を感じ、頷いた。どうやら正解だったらしい。昼間とはいえリサは聞いているからな。


「お前が居ない間わたしが夜に来て何度か呼びかけてみたのだが、一度もリサは姿を見せなかった」

「無視してるんでしょうね。ほんと、人嫌いっつーかなんつーか」


 リサは俺以外の人間と会うのを極端に嫌がる。昼間に街の会話を盗み聞きして俺にチクってくるくらいなので本当の人嫌いとは違うのだろうが、以前傭兵長がリサと会った時もおそらく俺があの場に居なければ姿を消していたのだろう。


「リサ! 俺だ! 早く出てこい」


 反応が無い。傭兵長以外の皆は訳がわからないといった様子。

 ふぅ、気が進まないが仕方ない。少し脅すか。

 俺は腰から剣を抜き、自分の首筋に当てた。


「お前は俺が大事なんだろう。出て来ないならこの木に俺の血を吸わせてやろうか!」


 ……反応無し。仕方ない。少しくらい切っても危なくなる前にリフェルに止血してもらえるか。

 腕に力を込め、剣を――。


「わっ、ちょっ、嘘嘘! 居ますよーリサちゃんですよー!」


 声が先に聞こえ、それから前の空間から色が滲み出てくるようにリサが現れた。

 小さい、俺と同じ銀色の髪をした女の子。ぎりぎり痛い思いをしなくて済んだよ。

 首筋から離し、剣を腰にしまう。


「いるなら早く出てこいよ」

「いやーだってね、なんか大勢いるし……昼間眠いし……ね」

「おいおい一体何が起こってんだ」

「……その可愛い子、シュゼの妹か何か?」


 何から話そうか……。


「言っただろ。こいつがリサ、神樹信仰に出てくる神託の少女で、俺の魔法の師匠だ」

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