episode:73
休憩が終わり僕達は選手席へと戻った。試合まで後30分と言った所か。
「ただいま」
「あら、二人共おかえりなさい」
「何の用事だったの?」
「レイと僕を褒めてくれただけだよ。そう言えばファムの父親も一緒にいたよ」
「父がいたのか…その…何か言ってた?」
恥ずかしそうにしている。やっぱりお父さんの事は好きなんだろう。
「剣が全てって言ったのは誤解だと言ってたよ。接し方がわからなくて剣に頼ってただけ見たい、とてもファムの事を心配してた」
「なっ…私がずっと信じてきたものは何だったのだ父の教えを信じやってきたのに」
「これから変わっていけばいいのよ私達がいるもの、ファムはもう剣だけに頼ってる訳じゃないでしょ?」
「ミナ…ありがとう」
聖国…一体どんな奴らが出てくるんだろうか。
謎の多い国だけに心配もある。
みんな体調は万全のようだ試合の影響は出ていない、さすが古代の魔道具と言った所か。
間も無く試合開始の時刻だ。
観客も休憩から戻り、今か今かと試合が始まるのを待っている。
「間も無く試合開始となります。選手の方は選手席へとお戻りください」
始まるようだ。
僕達はステージの上へと向かう。
そして、お互いに挨拶を交わす。
聖国側は白い鎧、兜に身を包んでいる。
聖騎士もどきと言った感じだろうか。特殊な鎧かも知れないから気をつけよう。
選手席へと戻る。
順番を入れ替えるかみんなで話し合ったが、そのまま行く事になった。相手の事がわからないのに入れ替えても無意味という結論だ。
まずはファムからの戦いだ。
「ドンテアVSファム・カルロス試合始め」
「フハハハハっ、王国はどいつもこいつも小さいな」
なんだこいつは…明らかに他とは体格が違う。
大人と子供と言った感じだ。顔も老けているように見えるが…
本当に学生なのか…?
武器は金棒だ。
ドンテアは動く気配がない。
先にやらせてやる…と言わんばかりだ。
「なめるな」
ファムが攻める…剣を振るうが金棒に簡単に防がれビクともしない。
スピードタイプのファムじゃ相性が悪すぎる。
「なんだその剣は、ビクともしないぞ。遊んでいるのか?」
「わ、私の剣が遊びだと…」
「その通りだ…見てみろ。いくら振り回しても俺には効かない。子供のお遊びにしか見えんぞ」
ムキになってファムの剣が乱れて乱雑になっていく。
とても読みやすい動きになってしまっている。
「そろそろ飽きてきたな、終わらせるぞ」
ドンテアが金棒を振り抜く。
剣で弾こうとしたファムごと吹き飛んでいく。
「ぐはっ」
一撃で…ファムがやられてしまった。
「勝者ドンテア」
聖国バンザーイ
おおおおおおおおおおおおお
「何よ、あいつ…本当に子供なのかしら」
「おじさんにしか見えない…」
「でもちゃんと学園に通っている成人未満の子供だけって決められているから…子供なんだろうね」
「ファム大丈夫かしら…落ち込んでいる、わよね」
「そうだね、でも次はミナの番だよ。ファムに勝ちを届けてあげよう」
「ええ、行ってくるわ」
聖国…強くない?あれっ…
大きいし、ドンテアが一番強いのかな?
ミナの戦いが始まる。
「ダーネスVSミナーラ・アイラス始め」
開始直後ミナはファイヤボールを放った。
速攻で攻めるのがミナの戦い方だ。
ファイヤボールがダーネスへと向かう。
すると地面から黒い…触手のようなものが出てファイヤボールを弾いていく。何だ…あの魔法は。初めて見る。
「気色悪い魔法使うわね」
「ひひひっ…影魔法こそ芸術、火など燃えるだけではないか」
影魔法か…使う人初めて見たけど、厄介そうだ。
レイピアを取り出すミナ。
攻めるがやはり触手に邪魔をされ近づけない。
レイピアで攻めつつ隙を見てミナはファイヤーランスを放つ。
しかし…槍が黒い渦に飲まれたかと思った途端に消えた。
影に飲み込まれたと言うべきか。
「ひひひっ…その程度では聖国には勝てない。一つ教えておいてやろう。僕はこの中で4番目に強い。さっきのドンテアが5番目だ、意味がわかるかい?君達では後の3人を倒すことは無理だという事だよ」
「知らないわよ、燃えなさい」
ミナは魔力をどんどん込めていく。ファイヤボールの色が次第にオレンジ色、そして白色に近づいていく。
温度が上がっているのだ。
ミナの魔力量ではあれ程の魔力を込めてしまったら…
もう魔法は打てないだろう。どうするつもりだ。
「何をする気かわからないが、その魔法がお前の最後だぞ。ひひひ」
制御出来る限界を迎えたのだろう。
ファイヤボールの膨張が止まった。
そうか…そういう事だったのか。
ダーネスの足元から影が消えていた。
ミナは人工的に太陽もどきを作ろうとしていたのだ。
そしてミナがファイヤボールを放った。
「ひひひ、無駄だと言っているのに。影魔法発動、な、なぜ発動しない。あ、、あ、待って待って。ちょっと…うぎゃあああ」
一瞬で医務室送りとなった。
「勝者ミナーラ・アイラス」
ミナの作戦勝ちだ。
おおおおおおおおおおおおおおおおおおお
大歓声だ。あのファイヤボールはとても綺麗で見る人を魅了するものがあった。流石だ。
「お疲れミナ。まさか太陽を作ろうとするなんて思わなかったよ」
「前に影遊びしてた時に太陽の光で消されちゃったのを思い出したのよ、私はファムの所に行ってくるわね。あとの事よろしくね」
「任せて、私は勝つ」
「大丈夫よ、心配はいらないわ」
レイとララの指輪には魔力を補充してある。
だが…今までの二人より強い人間が3人…
二人はどう戦うのか。
レイがステージへと向かっていく。
「ククロアVSレイナード・ルーンステラ始め」
「王女様がこんな所に来て怪我したら危ないわよ?」
「怪我をするのはそっち、私が勝つから問題ない」
「へっ偉そうに。私は金持ちが大嫌いなんだよ」
ククロアは短剣2刀で戦うようだ。
素早い動きでレイを翻弄する。杖で何とか捌いているが元々前衛タイプではないレイでは反撃のチャンスを見出せない。
「フラッシュ」
眩い光が二人を包む。
「そうくると思ってたよ。同じ手を使うなんてあんた甘いね」
目くらましをする予定が読まれていた。
レイに隙が出来る、そこへククロアが飛び込み、斬りつける」
「きゃっ」
「だから王女様は安全な所で傍観だけしてたらいいんだよ」
「負けない…」
レイの土魔法ロックバレットがククロアへと向かう。
大量の石つぶてをククロアは短剣二つでひたすら弾いている。
次第に傷が増えていく。
「しつこいね…そんなせこい技しか王族は使えないのかい」
挑発しているようだ。しかしレイは冷静だ。
相手に隙が出来るのを待っている。
ズキッ…ちょっとずつ大きくなる粒にククロアのダメージが蓄積されていく。
すると突然、ククロアが前進し始めた。
「そんな攻撃じゃ私は倒せないよ」
体を盾にしレイまで一直線に突き進んでくる。
何て戦い方だ。女の子がするような戦い方ではない…
致命傷にならないとは言え…戦い中の痛みなどは本物同様にあるのだ。
もうすぐレイに短剣が届く…
レイは土の壁を作り、視界を塞ぐ。
そして…
「シャイニングジャベリン」
いつの間にか囲まれた土の壁の中へ降り注ぐ光の槍。
「うあああっ」
「勝者レイナード・ルーンステラ」
レイの勝利だ。
やっぱり指輪の魔力や治癒能力はずるいのかもしれない。
聖国がとても強く見えたが、嫁二人に渡している伝説級の指輪…に伝説級の武器。
戦い慣れしていない二人でも、強敵を余裕を持って倒せている。
勿論、戦い方や作戦などは二人の力だが、指輪のお陰で宮廷魔術師以上の魔力量となっている二人は大技を使わなければ試合時間くらいなら魔法を打ち放題だ。
「おかえり、レイ」
僕はレイを撫でる。
嬉しそうな笑顔を浮かべるレイ。
「上手くいったようね」
「ララのお陰」
「ララなんかしたの?」
「ただ、ロックバレットと土壁で視界が完全に塞がる角度だったりタイミングを教えただけよ」
あの作戦ララが考えていたのか。
確かに、レイのいつもの戦い方とはちょっと違う感じだった。
「次は私ね。勝って戻るわ」
ララは自信たっぷりにステージへと向かう。
「ファントムVSララ・フェニアス始め」
なんだろう…とても不気味な奴だ。
白い鎧に兜までは普通?なのだが…
骸骨の仮面を付けている。
武器は…杖のようだが黒く禍々しい玉が付いている。
ララが先制だ。様子見だろう、つららを大量に飛ばす。
ドドドドドドドっ
地面に突き刺さるが、ふわりと後ろにジャンプし避けるファントム。
ファントムの杖が光る。何かをする気だ。
しかし、何も起きた様子がない。
そのままララはファントムに向かってアイスランスを放ち攻め立てる。一向に相手は攻めてくる気配がない。ひたすら避けている。
「避けているだけじゃ勝負はつかないわよ?」
「…」
無言だが、ニヤっと口元が動いたのが見えた。
「気に入らないわね」
ララはイラついている。
その後もただひたすら避ける、ファントム。
ララは痺れを切らし、大技を放つ。
「氷龍」
その瞬間ファントムが口元でニヤっと笑った。
何がおかしいんだ…
すると…
「ぎゃああーーーーー」
突然、ララが苦しみ始める。
魔力が体内で暴走している…一体どういう事だ。
「あれは呪魔法ね。魔力暴走を起こさせるものだと思うわ。大きな力を使う程自分へかかる負担が大きい。それを反発され耐えられなくなったのね、結界が張られていてもあれはあまり良くないわね。体内の魔力回路は繊細よ。暴走で傷付いた魔力回路はすぐには再生しないわ」
「聖国なのに呪魔法使う奴がいるの?おかしいでしょそれ」
「どこの国にどの才能を持った者が現れるか、そんなことわからないもの。でも…あの男…魔族の血が混ざっているわね」
「魔族…それって…」
「ええ、魔族と人間の混血ね。というより5人共そう見たいね」
どういう事だろう…ララが心配で考えが纏まらない。
「早く終わらせて彼女を治してあげなさい。あなたなら出来るでしょ」
「うん。そうするよ」
聖国と魔族…真逆の存在…なぜ…
僕は不安を抱えながらもステージへ進む。
「ネアVSルイフ・アリオス始め」
何だ…ろう。この不気味な少年は。僕より3つ程上には見えるが、ごく普通の少年といった顔立ちをしている。
武器は剣と盾。聖騎士のつもりだろうか。
すると突然、ネアが消えた。
そう思った時には間合いが詰められていた。
剣が僕に迫る。慌てて刀を抜き、剣を弾こうとするが盾で阻まれる。
剣と盾の使い方が絶妙だ…強い。手加減している場合ではない。
だが、ボールを使う訳にもいかない。
あまり多くの属性も使えない。この世界では異端な事だからだ。
刀に軽く魔力を込め、応戦する。
ネアに隙が出来る。そこに僕は刀を滑らせ下から斜めに斬り込む。
が…ネアは避けずに突っ込んでくる。
刀がネアの鎧に触れた。スパッと切れると思ったが…
キンッ…
あの鎧、魔力が込められているのか…
魔力を込めた剣を受け止められるだけの鎧…魔鎧といった感じか?
初めて見るが…全員が付けてる所を見ると。聖国が開発した鎧という事だろう。
魔法耐性が高く、物理耐性も元々高いミスリルが使われている鎧。
顔以外の全身隠れているが…どうしたものか。
時空魔法で斬ってしまうか?いや、それはダメだ。見る人によっては時空魔法の存在がわかってしまうかもしれない。
とりあえず、僕は剣を全力で振るう。
スパっ
ネオの剣が綺麗に切れる。
鎧程の丈夫さは剣にはなかったようだ。
少し動揺したネアだが、剣を捨てすぐに応戦してくる。
格闘も出来るのか…
僕はネオの腹に蹴りを食らわせ吹き飛ばす。
しかし、ダメージをあまり食らった様子がないネア。
するとネアの手から黒い剣が出てきた。
どこから…出したんだ。
禍々しい黒い剣。
もはや聖国というより魔国のが合うのではないのか?
とか考えつつ、作戦を考えていく。
首に手刀でもしてみるか?案外あそこだけ薄くて効くかも?
な、訳ないよなー。
今までの相手とはネアは明らかに魔力量が多い。
これでは、簡単な魔法や攻撃では倒せない。
なんて物を開発しているんだ…。戦争でも起こす気か。
仕方がないので、僕は刀に流す魔力量を増やす。
刀自体が雷そのものかのようにになっていく。
ネアの目が見開かれる。流石に、動揺しない訳にはいかないようだ。
一瞬で終わらせる。
「雷神」
ちょっと神をつけたらカッコいいかなと思っただけだ。
ネアを斬った瞬間に眩い光の柱がほとばしる。
流石に、耐えられなかったようで医務室送りだ。
「勝者ルイフ・アリオス」
観客は唖然としている…
威力は抑えたがちょっと派手だったかもしれない。
おお、おおおおおおおおおおおおおおおおおお
王国、王国、王国、王国
凄い歓声だ。優勝したんだから当たり前か。
なんか僕が出るのはずるい気もするが悪い気はしないな。
それにしても何とかなったがあんな鎧が量産されたら…
普通の兵士では太刀打ち出来ないよなー
一方的な戦争になってしまう。
「ヒヤヒヤしたけど、余裕だったわね」
「うん、何とかね。レイはララのとこ?」
「ええ、魔力回路が傷ついてるみたいで直ぐには動けないみたいね。怪我は結界のお陰でしていないから時間が経てば治るらしいわよ」
古代の魔道具であっても万能ではないんだな…
よりにもよってララに…許し難い。
「じゃあ僕達も向かおうか」
ララの事で忘れていたが魔族と人間の混血…国王様に伝えるべきか。
いや、しかし。何でそんな事を知っているのか、となりそうだ。
とりあえず、大会は僕達王国の優勝だ、明日は帝国と聖国で2位3位を決める。ララが心配だ、早く行こう。
医務室には横になっているララを見舞うレイ。そして落ち込んでいるファムがいた。
ミナがファムの元へといき励ましている。
僕はレイとララの方へと行く。
「レイ、勝ったよ王国の優勝だ。ララはどう?」
「魔力経路がボロボロ…ルイフが勝つのは当然。ララも喜ぶ。それよりもララを治して」
僕はララの手を握り、魔力経路を僕の聖属性を込めた魔力で満たしていく。傷ついた経路を徐々に修復していく。
5分程で修復は終わった、これで何の問題もないだろう。
ボールを食べさせるのが一番早いのだが、まだ話していないので魔法でするのが一番なのだ。
「これで治ったはずだよ」
「さすがルイフ」
「というか、何で僕が治せると思ったのさ」
「何となく、ルイフだから」
レイと話していると…
「んん…ルイフ?レイ?」
「おはよう、ララ。気分はどう?」
「ええ、問題ないわ。私負けたのよね、ごめんなさい」
「気にしなくていい。ルイフが決めてきた」
「ふふ、さすが私達の旦那様ね」
急に旦那様とか言われると凄くドキッとする。
「ファントムって何者なのかしら…何で負けたのかもわからなかったわ。未熟ね」
「ファントムというより、聖国のメンバー全員が魔族と人間の混血だったよ。それにファントムが使ったのは呪魔法。使用者の魔力制御を暴走させる呪魔法をララにかけたみたいだね。ララが大技を使った事で魔力回路が耐えれない程の負荷がかかったみたいだよ」
「何よそれ…聖国が魔族と結託してるとでもいうの?呪魔法なんて…恐ろしい魔法があったのね。いつも思うけど、一体どこでその知識を得てるのよ」
「それはわからない…ただ、混血は事実。それにみんなが来ていたあの鎧や兜も特殊な製造がされてるみたいだよ。魔力量に依存して防御力が上がるそんな感じだと思う。知識は魔法に詳しい人がいてその人に色々聞いてたんだ」
「お父様に言う?」
「迷ってる。証拠がないからね」
「ルイフの言葉なら信じると思うわよ?」
本当は情報源を探られると…答えようがないからと言うのが
一番の理由だ。女神がいて…とか話したら頭が狂った人間かと思われてしまう。
「考えとくよ…それに優勝したから後で呼ばれると思うしね」
ガチャ…
王国の兵士が入ってきた。
「失礼します。代表選手の皆様方、動ける方で問題ないので国王様がお呼びです。ゆっくりでいいとの事です」
ほら、きた。
「わかりました、少ししたら向かわせて頂きます」
聖国の事について何か知らないかだけ聞いてみるか。
厄介な事にならないで欲しいな…早く街作りに励みたいのに…




