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僕は異世界でカラーボールを投げる  作者: Rea
幼少期編
9/127

episode9





翌日、朝ご飯を食べ終わったルイフはすぐに外に出かける準備をする。


「母様お外で遊んできます」


「あら、どこに行くの?」


「町の人の仕事ぶりを見たいのです」


「ルイフは偉いわね、気をつけて行くのよ」



ルイフはまだ屋敷の周りと教会くらいしか行った事がほとんどなかった。

記憶によると魔物の出る森が西の方にあるとの事だ。そこは採取などに使われるので比較的安全という事も聞いていた。


しばらく歩いていると森が見えてきた。

子供の身体能力だからか、ここまでくるだけでかなり疲れた。


森が見えたはいいものの門番に見つかるわけにはいかない。


田舎の町なので、衛兵の見張りも甘いのでチャンスはあるだろう。

少し建物の陰に隠れて見ていたら用を足しにいくようで居なくなった。その隙に門を出て森の中へ向かう。



今日は魔物を狩りに来た訳ではない。

魔物は強い、子供が叶う相手ではない。

それくらいは弁えている。

大人であっても戦闘スキル持ち以外は相手にしない。それ程に魔物は恐ろしいのだ。


せっかく異世界に転生したのに、いきなりゲームオーバーはごめんだ。


では、何をしにきたって?


今日はスキルを試しに来たのだ。

町の中では誰かに見られる可能性もあるし被害が出た場合にとても困る。


領主の息子が町を破壊してしまっては、父様に迷惑をかけてしまう。


森の浅い所には基本魔物はいない。

それ故、採取などは危なくない浅い所で行われる。


採取は安全に行えるように、決まった日にちにやる。領主である父様や兄様、狩人の人達が護衛をするのだ。採取をするのは町の女性の人達だ。母様も妊娠前は参加していた。


普通貴族はやらないかもしれないが、

この町は、田舎なので冒険者ギルドがない。

なので町の人達で協力するのだ。


今日は採取のない日なので、誰かが来る事はないだろう。ゆっくりとスキルを試す事が出来る。


門から見えない木々に囲まれた開けた場所を探す。少し探索していると、ちょうど良い所を見つけた。この辺りならバレる事もないだろう。


早速スキルの実験を開始する。


「カラーボール赤」


木に向かって投げてみる、どうなるか楽しみだ。


スカッ


木の横を逸れた、そしてそのまま地面にぶつかる。


ドカンッ


地面が爆ぜた。


これは予想以上だ。

木に当たらなくて良かった、もしかしたら木が倒れてしまっていたかもしれない。

次の採取の時に魔物が出た!などと騒がれてはたまらない。


クレーターが出来るほどの威力はないが30cmほどの穴が空いている。

恐らく木を爆発させて折る事も可能だろう。


人に当たったら大変である。


次は、一度使った事のある青色のボールを使ってみる。これなり効果もわかっているから安全だろう。


スカッ


当たらない、地面が氷結する。


もう一度。


スカッ


スカッ


ピキピキピキッ


ようやく当たった。壁の時と同じで凍っているのがわかる。壁の時には分からなかったが、木の後ろまで氷結が広がっている。


範囲は狭く、縦横20cmほどだが、強力だ。


緑色のボールは回復効果なので、今は試せないので黄色のボールを試してみる。


スカッ


スカッ


スカッ


スカッ


「当たらない!ボール軽すぎるだろ」


思わず流依の口調になってしまう。


スカッ


スカッ


バチバチバチバチッ


ようやく木に当たった紫色の光が線のように広がって見える。地面では全く分からなかったが綺麗だ。木は少し焼け焦げている感じだが、折れたりするほどの威力はないようだ。


それよりも投げる練習が必要なようだ。

安全も兼ねて投げる距離は4mほど開けているのだが、5歳児の筋力とボールの軽さで上手く飛ばす事が出来ない。


強力だが当たらなければ意味はない。

目の前に近づいて狩るわけにはいかないのだ。まだまだ、魔物を狩るのは難しそうだ。


その後もひたすら投げて練習し


「そろそろ帰らないと母様に何を言われるかわからないな」


遅くなった事で追及されて、この事がバレたら大変だ。まだ暫くはバレるわけにはいかない。前世の事も今は話す気もない。


帰りも門番がいる事を忘れていた。

中々居なくならない。

このままでは、夕飯に間に合わず無用なトラブルになり兼ねない。

ここは一か八か門をくぐって見よう。


「ご苦労様」


軽く手を上げながら何事もなかったかのように振舞いながら門を抜ける。


「ってルイフ様!?何をなさっていたのですか?ご苦労様じゃないですよ!一人で門の外に出ていたのですか?」


バレてしまった。


「ちょっとね、図鑑を見てて気になった植物を実際に見たいと思ったんだよ」


「いえいえ、それなら私共に言ってください。お一人で門を出られたとわかったら私共が領主様に叱られてしまいます」



「ごめんなさい。もうしないから、父様には内緒ね?」


ルイフ必殺の上目遣いだ。

これこそチートではないかと思うくらいよく効く。小さいうちだけかも知れないが。


「はあ、わかりましたよ。だからそんな顔で見つめないでください。今回だけですよ?」


チョロい!


「うん、ありがとう、お仕事頑張ってね」


ルイフは急いで家に戻る。

リスクを掛けて乗り切ったのに、間に合わなかったら意味がないのだ。


屋敷に着いたのは本当にギリギリだった。

あの時決断していなければきっと間に合わず、何かしらの追及があったに違いない。


「ただいま、母様、ライド兄様」


「おかえりなさい、ルイフ。今日は楽しめたのかしら?」


「はい、母様、領民の方はとても活き活きとしていました。これも父様のおかげなんですよね?」


「そうよ、マルコのように領民に慕われていないとこんなに皆幸せではいられないわ。ルイフも頑張るのよ」



「ルイフがまさか、領地に興味を持つとはなー。将来は俺に変わってルイフがしてくれれば俺は剣を振るだけでいいんだけどな」


変な方向に話が行きそうだ。

領地経営の勉強までする事になってしまっては支障が出る。


「いえ、ライド兄様、僕は冒険者になりたいのです。父様の事をもっと知りたくて仕事ぶりを見たかっただけなのです」


なんとか誤魔化し、部屋へ戻った。



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