episode:70
「ペンデル・ミリムド・アルテミス教皇から開催の挨拶です」
「今日無事に聖国にて三国共同の競技大会を開く事が出来て嬉しく思います。今回で丁度5度目の開催、この節目ともなる年を迎えられたのも平和である証と言えるでしょう。この大会は互いの国若き次の時代を担うもの同士の技を披露し高め合う事を目的としている。毎年優秀な生徒達が集まり、勝った国、負けた国関係なく、貴重な体験となる事でしょう。あまり長い話をするよりも、大会を楽しんで頂きたい、なので私の話はここまでとさせて頂きましょう。代表選手の皆様の戦い、楽しませて貰います」
大きな拍手で教皇の挨拶が終わった。
丁度5回目だったんだな…この大会が終わるって事はどこかの国が戦争をするって事だし長く続いていくと良いけど。
その後、帝国からはゴーシュ・フェデル・リオ皇帝が
王国からはドボーク・ルーンステラ国王が挨拶を済まし大会が始まった。
3人の国の代表が集まるとか…何かあったら大惨事だ。
各国の最強と言われる護衛数名が結界の魔道具を張った場所で守っているので問題はないらしい。
王国最強も来ていると…言う事か。どんな人だろう。
Sランクの人達を見れるチャンスなのだが…難しいだろうなー。
最初は王国VS帝国
代表選手同士ステージの上で挨拶を済ます。
「な、お前はあの時の失礼な人間ではないか。まさか代表だったとはな」
デミルゴン・オルテレオス…観光中にあったおバカさんだ。
「誰でしょう?人違いではないですか?」
「なんだと…また私を侮辱する気か」
「記憶にないのですが誰でしょう?」
「な…」
今にも怒り出しそうなデミルゴン。少しでも精神を乱してくれた方がやりやすいのだ。
「辞めろ、デミルゴン皇帝も見ているのだぞ」
「くっ、試合では覚悟しておけ」
当たるならね。まあ僕は大将だから恐らくあのデミルゴンに注意をした男と当たるのだろう。見ただけでも実力者とわかる。
あの中だと実力は圧倒的だ。Bランク…くらいの実力があるんじゃないか。恐らく上級生、14、15歳くらいだろうか?
美形で長く白い髪そしてクール。なんだ、あの少女漫画の主人公キャラは。あの歳でBランクの実力…才能で言えばファムと同格、もしくはそれ以上だろうか?戦ってみないとわからないが面白い相手だ。
油断していた訳じゃないがちょっとは楽しめそうだ。
と言っても僕の相手ではないのだが。
王国はランキング順で戦う順番を決めてある。
最初に戦うのはファムだ。
相手はミス・ハリケーン
頭がまさにハリケーン状態の女だ。
多分…ファムなら余裕だろうけど杖を持ってる事から相手は魔法を使うタイプのようだ。
「始めましてミス・ハリケーンよ遊んであげるわ」
「ふっ勝つのは私だ」
「それでは第一試合、ミス・ハリケーンVSファム・カルロス。始め」
開始の合図と共に戦いが始まる。
先行はファムだ。
開始早々に間を詰めミス・ハリケーンに斬りかかる。
ミス・ハリケーンは動かない…いや動けないのか?
ファムの剣が届く、開始早々終わり。
っと思われたが、ミス・ハリケーンが消えた。
幻影と言うやつだろうか?斬った所からかき消えた。
ファムが辺りを見渡し探している。
一体どこに行ったのだろうか?
まあ、魔力探知できる僕には見えていたりする。
ファムの後ろから魔法攻撃が迫る。
バシャーン、緑色の毒々しいポイズンボールがファムの背中に命中する。
「ぐはっ」
「ふふふ…魔法相手の戦闘は慣れていないのかしら?王国代表と言っても弱いのね」
「なんだと…私はこの程度では負けない」
するとファムが本気を出したのか、先程とは比べものにならないスピードでミス・ハリケーンに迫る。
そして斬る。
決まったかと思われたが…それはまたしても幻影だった。
ミス・ハリケーンが4人、6人、8人と増えていく。
「その程度なの?どれが本物の私かわかるかしら」
「わかる必要はない」
ファムが猛スピードで全ての幻影を斬り始めた。
斬っても斬っても元に戻る幻影。
だが、次第に数が減っていっている。ファムのスピードにミス・ハリケーンがついていけなくなっているのだ。
「な。なんでよ、なんなのあなた」
「分からなければ全て斬り捨てるだけ」
ついに、ミス・ハリケーンの幻影はなくなり一人となった。
「トドメだ」
振りかぶりトドメを刺そうとするファム。
しかし…
「うっ…」
あと少しと言うところで膝をついたファム。
どうしたのだろうか…
「ようやく効いてきたようね。私の毒を食らってここまで動けたのはあなただけよ、褒めてあげる、でもあなたはここで終わり。もうすぐ動けなくなって会場外に出されるわよ」
「ぐっ…こんな所で負けてはいられない…」
苦しそうだ…毒があと少しまわれば恐らく致命傷にならないよう会場外に飛ばされファムの負けが決定するだろう。
最初に食らった毒…服の上からでもあれ程の効果があるのか…
僕の紫ボールはもっとやばいんだけどね…超致死性、破裂した途端触れたら即アウトだ。怖くて試しに岩や木に使ってみたら岩が溶けたのだ…。使う機会は恐らくないだろう。
ファムは立ち上がろうと必死だ。だが…動こうとすればする程毒が回って体の自由を奪っていく。
「残念ね。剣が振るえなければ剣士として何もできないものね」
「黙れ…私は…勝つ」
ファムが剣を支えにして立ち上がった。
そして渾身の力を込め油断した、ミス・ハリケーンの胸に剣を投げた。
「ぐはっ」
ミス・ハリケーンが会場から消えた。
致命傷判定されたのだろう。
だが…ファムも同時に会場から姿を消した。
「両者…負傷のため引き分け」
おおおおおおおおぉおおおおお
いい戦いだった。歓声が鳴り響く。
ファムの完敗かと思われたが最後の意地で頑張ったようだ。
王国って結構強いと思ってたけど、僕の考えが甘かったようだ…
みんな大丈夫だろうか。
よく考えたら上級生は成人手前だ…大人VS子供に近いではないか。
強い人がいてもおかしくはない。
会場から飛ばされた選手は各国の医務室に送られている。
今頃は軽く手当を受けているだろう。致命傷になるような怪我は覆わないが軽い怪我は受けてしまう。それに毒など状態異常を起こすものには致命傷は回避するがその後も毒状態が治る訳ではないのだ。
「続いて第二試合デミルゴン・オルテレオスVSミナーラ・アイラス」
口では大きな事を言っていたが実力の程はどうなんだろう。
「ミナ気をつけて、さっきの人もそうだけど変な魔法やスキルを所持してる可能性もあるから」
「わかってるわ、任せて。ファムの仇は私がとるわ」
ステージへ上がり、試合が開始された。
「ふっ 彼奴ではないのか。女など俺の敵ではない痛い目に遭いたくなければ降参す…」
ミナのファイヤーボールが炸裂した。
やっぱり彼奴馬鹿だ…
「何をする!?人が話している時に攻撃とは卑怯な」
「うるさいわね、試合中に無駄話ししてるそっちが悪いのよ」
ファイヤボールをまともに食らったはずだが…ピンピンしている。
馬鹿だがそれなりの実力はあるようだ。
剣で防いだようだが…なんだあの剣は。
ミナの魔法は決して弱くない、むしろ魔力量も多く威力も強い方だ。
「まあ、それもそうだな、しかし生温い火だ。寒いくらいだよ」
「なんですって…」
挑発に乗ったミナがファイヤボールを打つ。
次の瞬間、デミルゴンが剣を振るったかと思うとファイヤボールが掻き消された。
今のはしっかりと見ていた。剣がファイヤボールを吸収したのだ。
「な、何よその剣」
「ふはははは、この剣は我が家に伝わる秘宝の魔力を喰らう魔剣マナイーターさ。恐れいったか。お前の魔法程度じゃかすり傷一つつける事は出来ない。降参するなら今のうちだ」
「し、しないわよ」
ミナってレイピアを腰に付けてるけど、そういえば使えるのかな?
魔法だけじゃ…ちょっと厳しそうな相手だ。
剣を見た感じ20%程の魔力を吸収している状態だ…80%以上の魔力を吸わせて飽和させれば…とは思うが、ミナの魔力量じゃ無理だ。
「では、そろそろいくぞ」
剣を振りかぶり迫ってくる。
ミナは後ろに後ずさりながら、ギリギリで躱していく。
「ふ、すばしっこい奴め、いつまで避け切れるかな」
流石に代表選手だ、しっかりとした剣技でミナを追い詰めていく。
あんな性格でも魔剣を持てばCランクくらいの実力はありそうだ。
魔剣を持たなければDランク上位と言ったところだろうか…
「あんたなんかの下手な剣技当たらないわよ」
「なんだと…手加減してやっていたがここまでだ、覚悟しろ」
怒ったデミルゴンは大きく振りかぶり勢いよく剣を振るった。
ミナは腰のレイピアを抜き、攻撃をギリギリで躱しデミルゴンの手首を突いた。
カラン…カラカラン
デミルゴンは武器を落とした。
「ぐ…レイピア…魔法以外も使えたのか」
「誰が使えないなんて言ったのかしら?燃えつきなさい」
ミナは容赦無くファイヤボールをデミルゴンに浴びせる。
魔剣を落としたデミルゴンはあっけなく、医務室へ姿を消した。
「勝者、ミナーラ・アイラス」
おおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉ
ミナちゃんーーーーーーー とか、歓声以外にも声援が聞こえる。
恐らく彼奴らだろう…ミナファンクラブの人達だ。
「ミナお疲れ」
「ミナ危なかったわね」
「楽勝よ、ちょっと魔剣にはびっくりしたけど」
「ミナ、レイピアいつ練習したの」
「レイ達に内緒でお父様に頼んで教えて貰ってたのよ」
「やるわね、私もいいとこ見せなくちゃ」
「次私…絶対勝つ」
次の相手は…あの子か。どんな技を使うんだろうか。
「レイ頑張って。油断しないでね。後魔力込めたらダメだからね」
レイには雷属性の魔杖を渡してある、魔力を込めたら…学生相手じゃ一瞬で終わってしまうそれくらいの威力を持つ魔杖だ。それに伝説級の魔剣をおいそれと見せる訳にもいかない。国宝級の魔杖なんて…今存在していないのだ。
「わかってる、そんな事しなくても勝てる」
ステージへと向かっていく。
互いに向き合い、開始の合図を待つ。
「それではレイナード・ルーンステラVSリン・ニュートラル始め」
あの武器は…トンファー?だろうか。木で出来ているようだが形が僕の記憶にあるトンファーに似ている。
初めて使っている人を見たが…どんな戦いをするのだろうか。
僕の嫁達は基本セイラ以外後衛だ、前衛も出来るようにしないと僕がいない時…後衛ばっかじゃダメだよなー。
最初に攻めたのはレイだ。
光の矢をリンに向かって放った。
それを確認したリンは簡単に躱し、間合いを詰めてきた。
間合いを詰められたレイは杖で応戦する。
リンは両手のトンファーを自在に操り、アクロバティックな動きでレイの杖を弾きつつ徐々に懐付近に入ってくる。
レイも負けじと杖で応戦している。
バトルスタッフ的な杖をプレゼントした方が良かっただろうか…
レイが持っているのはTHE魔法使いといった感じのシンプルな杖だ。
徐々に押されているがレイの顔に焦りは見えない。
何か考えがあるのだろうか。
ステージギリギリまで追い詰められたレイ…
「もう僕の攻撃は躱せないよ」
トリャーっ
カンフーっぽい叫びでレイの杖を片方で弾きもう片方がレイの横腹に迫る。
その時…ピカっと眩しい光が二人を包んだ。
レイは相手が油断するのを待っていたのだ。
「目…目があああ」
何も見えていないリンを余所にレイはゆっくりと歩き出し、ステージの真ん中へと移動する。そこから光の矢を5本リンに向かって放った。
「グフっ、わ、僕はまだ負けていない」
膝をつき今にも結界から外へと弾かれそうなダメージを受けている。
と言うか、ボクっ娘異世界にも居たんだな。って言うのは置いておいて…。
リンは光の矢を受けた時、片方のトンファーを失っていた。
残ったトンファーを手にし、レイを睨みつける。
そして…目を瞑り始める。
諦めたのか?
すると、なんだろうか…リンの気配が変わった?
何かが違う気がする。
全身に力が溢れて見える、しかし、魔力ではない。
僕には全身を黄色い光が薄っすらと帯びて見えている。
「ルイフ…あの子薄っすらと光ってない?」
「ララにも見えてるの?」
「私も見えてるわよ?」
ララもミナも見えているらしい…
という事はみんな見えてるのか。
「ミナ戻ったんだね。おかえり。あの光なんだろうね。僕には全身に力が溢れているように見えるよ」
「あれは闘気ね。生命力を糧にして己の力を最大限引き出す技ね。昔は結構使う人も居たんだけど…300年前の時点では魔力を纏った方が安全且つ効率も良かったから使う人も少なくなってたわね」
「闘気…。生命力を糧にって大丈夫なの?」
「大丈夫よ。日頃から溜めておいたエネルギーを解放するようなものね。溜めるまでに物凄く時間がかかるから…効率は良くないのよ。その分溜めれば溜めただけ魔力と違って最大量がないから効果は強くなるわね。ルイフみたいに魔力の多い人からしたら必要のないスキルよ。魔力量の少ない、武人達が編み出した技なの」
小説とかではよく闘気と魔力を合わせて纏ったりして最強!
とかあったが、この世界では違うようだ。
「でもあの歳で使えるのは凄いけど、溜めれる量も少ないし効果も短いわね。1分も持たないんじゃないかしら。まさに最後の悪あがきね」
リンは、猛スピードでレイへと詰め寄り、トンファーを振るう。
いきなりの事で動揺したレイは防戦一方だ。
さっきのようなフラッシュの魔法は使えない。詠唱をこっそりとする暇なんて今は与えて貰えない。
リンの猛攻撃に弾き飛ばされるレイ。
大丈夫だろうか…心配だが大会中に駆け寄る事は出来ない。
レイはなんとか起き上がったようだが、リンが追い打ちに迫る。
逃げろ、っと思った時…
リンを包んでいた光が消えた。
レイに覆い被さるようにリンは倒れ…医務室へと飛ばされていった。
「しょ、勝者はレイナード・ルーンステラ」
おおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ
いい試合だった…王国の小さい範囲でしか活動をしていなかった僕には知らないスキルや魔法がまだまだ沢山ある。見ていてワクワクする。
スキルが全てと言われる世界になっても残っているスキル以外の技が存在するようだ。どういう事なんだろうか?
何か作為的なのを感じる。
レイがステージから戻って来た。
「お疲れ、レイ頑張ったね」
「もっと褒めて、私頑張った」
僕は頭をナデナデしつつ、レイをひたすら褒めた。
満足したレイは疲れた、っと医務室へと向かって行った。
ここで15分間の休憩タイムとなった。
「次はララの番だね。楽勝だと正直思ってた…王国にも優秀な人材がいるなら他の国にもいるもんだね。みんななら楽勝だと思ってたよ」
「当たり前よ、それに帝国は軍事国家よ?王国よりも戦力で言ったら上なのよ」
そこへファムが戻って来た。
「おかえりファム」
表情がとても暗い。
毒のダメージが抜けてないのだろうか?
「ミナ…みんなすまない、あれだけ偉そうに言いながら私は…」
「気にする事じゃないわよ。ファムは良くやったわ」
「そうよ、ファム。王国代表としての誇りを見せてたわよ」
「僕もそう思う。ファムカッコよかったよ」
「みんな…ありがとう、聖国との試合では必ず勝ってみせる」
精神的に結構来てそうだ…こんな時何を言ったらいいのだろうか。
きっと僕が何かを言えば悪化しそうな気がする…気の利いた言葉を言える人が羨ましい。
「ファム、みんなで勝つわよ。一人で背負うなんてさせないわ」
ミナ…男らしい。ファムの顔から暗さが少し取れた気がした。
「ああ、そうだな。私達は必ず勝つ」
ファムも最初のようなツンツンしただけの様子ではなく、少しずつ変わりつつあるようだ。
休憩が終わり、レイも何事もなく無事戻って来た。
魔道具…凄いな。どんな仕組みかとても気になる。
「ララ、頑張って」
「ええ、勿論よ。行ってくるわね」
「ララなら大丈夫」
「そうね、行ってらっしゃい」
「ララ…頑張って欲しい」
ステージへと向かうララ。
対戦相手のスノー・ベーカスがステージに現れた。
つり上がった目に偉そうな…マントを着けている。
典型的な人を見下す貴族キャラ、そうに違いない。
「スノー・ベーカスVSララ・フェニアス始め」
試合が始まった。
先行はスノーだ。ララ目掛けてレイピアを突く。
ララはスノーの突く場所を予測し、そこに小さな氷の壁を作っていた。
「ふむ、君やるね。まあ、こんなすぐに終わられても困るのさ。僕のカッコイイ所を観客に見せないといけないからね」
見下すキャラじゃなかった。あれだ。
勘違いナルシスト…パターンか。
「あら、そんな余裕にしてていいのかしら」
ララは距離を取り拳大の氷を大量に降らす。
一気に決めるつもりか…?
スノーは蛇のように体をクネクネしながらレイピアで氷の軌道を逸らし避けながら近づいてくる。
なんだ…あの気持ち悪い動きは…。
蛇と言えば聞こえは良いが、クネクネ中に体自体も小刻みにクネクネしていて…避けているのか、気持ち悪さで攻撃しているのかわからない。あれを見せられるララは精神的にも辛いだろう。
「何よ、その気持ち悪い動きは…近付かないでちょうだい」
「僕の動きが気持ち悪いだって?そんな褒めなくても良いのさ。僕の虜になってしまうといい」
いつから咥えていたのか…いつの間にかスノーの口には赤い薔薇の花が咥えられている。
代表席から見ている、僕まで鳥肌がたった。
「あっちへ行きなさい」
ララは氷の槍を3本一気に飛ばす。
「そんな攻撃は僕にとってはショーを見せる時間にしかならないのさ」
スノーは華麗に体をくねらせて1本目の氷の槍を避ける。
続いて2本目も避ける。
最後の3本目を撫でるようにレイピアを走らせ軌道を逸らした。
ただの気持ち悪い男ではないようだ。
レイピアの腕もかなりのものだ。
「さぁ、ここからは僕の華麗なるショーをお見せしましょう。僕に惚れないように気をつけて下さいね」
ウインクだ…まともに見てしまった。
そしてスノーがララの元へ向かおうとする…が。
しかし、スノーは動けない。
「な、なんだこれは」
「ようやく気付いたようね。槍は囮よ。3本ともあなたに躱されたのではなく、躱して貰う予定だったのよ。初めからあなたの後ろに氷を落とす事が目的だったのよ」
ララは遠くから直接凍らせるのは無理なので、自分の魔力を込めた氷をスノーの足元に仕掛けたようだ。
それを使い、足から徐々に凍らせていったようだ。
気付くのが遅れたスノーは既に膝まで凍りついて動けないようだ。
「くっ…僕のショーを見せられないなんて。こうなったら…」
スノーはレイピアに風の魔法を纏わせ凍った足の氷を削りとった。
魔法も使えたのか…あの男。
「風魔法…あなた魔法使いだったのね」
「僕は魔法剣士さ。唯一無二の存在さ」
「…なんでもいいけどそろそろ終わらせるわよ」
ララが本気を出すようだ。嫁達にはずるいが…あの指輪がついている。僕の魔力が蓄積されてるから、自分の魔力以上に魔法を使ってもそう簡単には尽きないのだ。
「氷龍行くのよ」
ララは氷の龍を召喚し、スノーへと放った。
僕の分けてある魔力があるとは言え大技を出し過ぎだ、ララの制御はまだ未熟だ…大丈夫なのか。
「僕のショーにはぴったりな華麗な龍だ。さあ、僕と舞おうではないか」
ドカーン、ピキピキピキピキ
氷龍がぶつかったところが氷漬けになっている。
次第に逃げ場がなくなっていく、スノー。
流石にストックしてあってもこれだけの大技だ。僕の余剰分の魔力が入れてあるが、それも尽きかけているようだ。
苦しそうな表情のララが物語っている。
「ははは、楽しいね」
「まずいわね、もうそろそろ制御が…」
氷の龍が…暴れ始めた。
ララの制御が効かなくなったようだ…
近くにいたスノーへ向かっている。
「そんなに僕が気に入ったのかい」
バクっ ピキピキピキっ
喰われた…そして凍りつき、医務室行きだ。
一体何がしたかったんだ…
それよりララは大丈夫だろうか、膝をついて、苦しそうだ。
気合いで立ち上がるララ。その姿はとても美しかった。
氷で包まれたステージにいる氷の女王。そんな風に僕には見えた。
「勝者はララ・フェニアス」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
今までよりも大きな歓声が上がった。
氷の女王だー
いや、氷の女神様だー
などといった声が聞こえる。
前世でも雪の女王が出てくる映画が人気だったのを思い出す。
これで4戦3勝1引き分けか。
やっぱりみんな凄い。これで僕が勝てば引き分けはあるが、ストレート勝ち見たいな感じだろう。王国の強さをアピールする事が出来る。
さて次は僕の番だ、向かおうかな。
「ルイフ、勝てると思うけど…油断しないでね、お父様に聞いた事があるの。帝国の皇族に剣の天才が現れたと、将来の剣聖候補と言われているらしいわよ…多分あの人よ」
「ルイフなら余裕」
「剣聖候補…ね。剣の腕で僕も負けるつもりはないけど気をつけるね」
「私も勝ったんだからルイフも勝ちなさいよ」
ステージへと向かっていく。
相対してみるとよくわかる、自信に満ち溢れている。
王族という立場と剣の天才と言われ育った環境があの絶対に負ける事がないと言う自信を生み出しているのだろう。
「まさか、お前と対決になるとはな。TOP5だと思っていたが、その小さな体で俺とどう戦う?女共のが強そうに見えるが、ここには学びがあると言われ出たが…残念だ」
「そうですね。残念です。僕も学ぶ者が無さそうです。強者と戦えると思い来たので残念です」
「ふっ口だけは達者なようだな。一瞬で終わらないようにしてくれよ。観客達を満足させ発散させ、平和を担う。それもこの大会の趣旨だからな」
帝国ってなんか、上から目線な人多いなー…
自信を持たせるような教育が取られているのかな?軍事国家だし。
戦う時の精神状態って大きく関係するもんね。
「じゃあ、もし僕に負けたら一つだけお願いをなんでも聞くってどう?」
「いいだろう、だが。俺にメリットがあるか?何も無ければ交渉にすらならんぞ」
脳筋では…ないのか。きちんとした考えも持っているようだ。
だが、この交渉が後々生きてくる。僕にとって大事な取引だ。
「わかってるよ。でも、僕は男爵家の3男、王族がそんな僕相手に対等な取引なんて望まないよね。それに、剣聖候補だっけ?そんな人が負ける相手なんて殆どいないと思う。もしそんな事があればさらなる高みを目指すのに僕はとても必要な人間となると思うんだ。あくまで勝てればなんだけどね」
「面白い、確かに俺に勝てる者など、もはや大人でも少なくなってきている。ライバル…いや、俺の目標になるといっている訳か。その自信どこまで通じるか試してやろう」
「じゃあ成立って事で。コントラクト」
僕は密かに契約魔法を掛けた。
内容はこの勝負に勝った方が一つだけなんでも言う事を聞くだ。
「何かしたようだな、僕のこの魔道具が反応している」
首のペンダントは何か魔力を探知する魔道具だったようだ。
「契約魔法をかけたんだよ、この勝負の勝者の願いを一つだけなんでも聞くってね」
「ほほう、珍しいスキル持ち…だな。まあ、負ける事などないがこれで正々堂々と戦えるわけだな」
「そうだよ、僕の立場は弱い。だからこそ、確実に守るって約束が必要だったんだ」
いい契約が出来た。後々役に立つだろう。
長話をしすぎた、審判がこちらを見ている。
僕達は話を終え離れる。いよいよ試合開始だ。
僕はこの戦いを一瞬で終わらせるつもりでいる。
「リーベル・フェデル・リオVSルイフ・アリオス。始め」
「グフっ」
医務室へとバイバイだ。
「え、えっと…」
「審判どうしたの?」
「い、いえ、勝者ルイフ・アリオス」
……
…お、おお、おおおおおおおおおお
沈黙が暫く続いた後、盛大な歓声で試合が終わった。
何をしたかって?ただ、少し本気で相手の背後に回り込んで手刀を放ち元の位置に戻っただけだ。一瞬で終わらせたのには訳がある。
勿論王国としての僕の立場を上げるのに必要だと思ったのもあるが、今後帝国との関係でよくない事が起きた際に皇族…しかも将来の剣聖候補と言われるような存在との繋がりは大きく必要になってくる。
その中で契約魔法はしたが、一度だけの願いだ。
継続していい関係を結ぶには、一度プライドを折る必要がある。
一瞬で勝つつもりの相手に一瞬で負ける。この事が大事だったのだ。
「おかえり、ルイフ。余裕だった?わね。何したかわかんないけど」
「ルイフなら当然」
「何したのよ、ルイフ。気付いたら相手が倒れるなんて」
「背後に回って手刀でこうやって、えいってやって戻っただけだよ」
「無茶苦茶ね」
「それがルイフ」
こうして王国VS帝国の戦いは終わった。
次は聖国との戦いだ。
2時間の休憩時間となった。




