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episode:68




朝の陽射しが眩しい。

天気も良く観光日和だ。


「ルイフ、そんな呑気にしてないで訓練の準備しないと遅れるよ」


「早く行くでござるよ」


「すぐ準備するから待ってて」


昨日は精神的にも疲れていたのだろう…いい目覚めだったが少し寝坊してしまった。あんな光景見てしまったらそうなるよな…

2度とあんな酷い部屋見たくはない。


僕は急いで着替えて準備を済まし、ロッツとケンジと一緒に訓練場へと向かう。

競技場のうちの一つが割り当てられていて本番さながらの練習が出来るようになっている。


練習はいつも通り滞りなく進んだ。

3人での稽古が中心だ。


少し違った所と言えばロッツとファムが模擬戦をした事だろうか。

タイラ先生の提案で自分の足りない所を学ぶために代表選手一人との模擬戦が行われた。


僕はやっていない…タイラ先生にお前はいいと、仲間外れにされたからだ。


そんな中、魔法を使えるものより剣を使う者が多い事からファムが選ばれ。50名の中の上位20名が挑むも瞬くまにやられていく。


その中の一人がロッツだ。ケンジもいい感じで打ち合っていたがやられてしまった。


ロッツとファムの模擬戦は20分程続いた。

最初はファムも軽めにやっていたようだが徐々に余裕がなくなってきて本気を出し始めた。練習の成果が出ているようだ、ここまで食らいつけるとは。


しかし、本気を出したファムは強かった。

ロッツがファムの隙を突き斬りかかった所でロッツの視界からファムが消えた。


死角に移動したのだ。ロッツは誘い込まれた事に気付きもせず剣を振りきる。そこで勝負は終わった。


結果から見ると健闘した方だが、ファムが最初から本気ならロッツはすぐに終わっていただろう。


頑張ったけど…結構な差があるなー。

天才な上に努力家…これは厄介。


「残念だったね。ロッツ」


「いい所までいったでござるよ」


「いや、未熟さを思い知ったよ。少し強くなった事でもしかしたら行けるんじゃないかと思って油断した所を…。ファムが手加減してたなんて気付きもしなかったよ」


「ファムは努力家だからね、何倍も効率よく鍛えないと追いつくのは難しいね」


「わかってるよ。僕はきっとファムを超えて見せる」


どうやら落ち込むよりも明確に目標を定めやる気になっているようだ。いい模擬戦になったって事か。


さぁ、午後からは本番の観光だ!

本番は本戦だって?いやいや…可愛い嫁達との観光以上に大切な事ってなんでしょう。


訓練場の外で待ち合わせなので急いで向かう。

ロッツとケンジも観光するらしいので途中まで一緒だ。


男二人で一体何処へ観光行くのか…飽きないものだな。


外には既に4人、いや5人が待っていた。


「お待たせ、待たせたかな?」


「今来たとこ」


「うんうん、今来た所だよー訓練お疲れー」


「今日はファムも一緒に行く事になったわ」


「あ、そうなんだ。ファムよろしく」


「気安く呼ばないで、呼び捨てにして良いなんて私は言ってないでしょ」


「じゃあファムちゃん?」


「なっ…ファムでいいからあんまり話し掛けないでくれる」


なんか嫌われるような事を僕はしたっけ?

あまり心当たりがない。


「もーファムも喧嘩しないの、約束したでしょ」


「ミ、ミナがそう言うなら…仕方ない。少しなら話してあげても…」


ミナが連れてきたようだ。同じ部屋になって仲良くなったのかな?


「という事だから5人で行くわよ」


「ちょっと待った。ルイフ僕達も一緒にって誘ってくれてたよね」


「えっそうだっけ」


「ル、ルイフ忘れてしまったのかい?君から誘ってくれたのに、なあケンジ」


「え、あ、そうでござるな」


ロッツが僕の事をジーっと見つめて、はいと言えと言わんばかりの目力を見せてくる。もっと模擬戦でもその目力を出せばいいのに…


理由はわかっている。ファムと一緒に観光したいのだろう。

仕方ない、僕は一肌脱いでやるか。


「あーそうだったね。みんなもいい?僕の友人二人も連れて行きたいんだ」


「構わないわよ」


「ルイフ君の友達なら大歓迎だよ」


「うん」


「ミナ達もいい?」


「いいわよ」


「その者達は中々の剣の腕を持っている構わない」


剣の腕関係ないでしょ…

ファムってやっぱ脳筋だよなー、ロッツ苦労しそうだ。


「じゃあ行こうか、どこに行く?」


「ルイフ案はないですの?」


ここで僕に振るってことは…やっぱり男の人がリードしたデートにって事だろうか。

事前に僕はちゃんと調べていた。バッチリだ。


「じゃあ最初に聖水広場に行こうか?お昼の時間だし綺麗な所で美味しいもの食べるのもいいかなって」


「いいわね」


「賛成」


「楽しそうーさすがルイフ君だよー」


「私もいいと思うわ」


「私も…いい」


ロッツ達は聞かなくてもいいって言うので大丈夫だ。

聖水広場は花や緑で囲まれた綺麗な公園みたいな所だ。


中央の大きな噴水には聖水が流れているらしい。なんとも贅沢な…と思うがちゃんと循環させているらしい。ポンプのような仕組みがあるのだろうか…?井戸にポンプついてないしないと思うんだけど。

多分貴重な魔道具…なんだろうな。


ここは聖国でのピクニックスポットだ。

カップルは勿論、ファミリーにも愛される場所だ。


外れないデートスポットなのだ。


競技場からそんなに遠くはないので徒歩で向かう。

公園の入り口は2体の女神像が建てられていた。


ソフィア曰くこんな女神知らない…らしい。

一体誰なんだこの像は…


中に入ると広い道沿いの周りは草や花、大きな木で囲まれとても心地の良い場所だった。道なりに進むと大きな噴水が見えてきた。


これが噴水か…とても大きい。

それに噴水の真ん中にまたしても謎の女神像が。


「大きいわね」


「これ全部聖水なんだよね。たくさーんだね」


この聖水取ってて売れば大儲けだが、そう言う考えの人が宗教に縛られたりはしないんだろうな。


「これほとんど普通の水よ」


「え、そうなの?」


「ええ、聖属性の魔力をほんの僅かに感じるけど…9割ただの水ね」


まさかの9割水だった…ソフィアが言うんだから間違いないのだろうが。


「どれどれ、聖水って美味しいのかな?」


「こ、こらお前。聖水に触れてはいかん」


周囲の目線が全てこちらに注がれている。

ゴミを見るかのような目線だ…


「ロッツダメだよ…この国にとって神聖なものなんだから」


「他国の人間か…この街で聖水を勝手に飲んだり盗んだりする行為は死罪だ。覚えておけ」


「は、はい。すみません」


死罪ってこのほとんど水…なのを飲んだだけでか。

何とも重い罪だ。


「全く…ヒヤヒヤするわね」


「ルイフ君も厄介な事沢山呼んでくるけど、友達までそうなんだね」


その純粋で悪意のない笑顔で言われると…辛いからやめてくれサーナ。


「拙者は違うでござるよ」


「ぼ、僕だって違うよ。ルイフと同じにしないでくれよ」


「え、なんで僕がトラブルメーカーみたいになってるの」


「庇ってあげたいけど…難しいわね」


「ルイフ…これは仕方ない」


みんな酷い…今回のはロッツ…が悪いのに。


気を取り直して、芝生に麻で出来たシートを広げる。

大きめサイズだ。


僕はカバンから次々とマーニに作って貰った美味しい料理、それに屋台で買ったウインナーなどを出していく。


「どんだけ入ってるのよ、そのカバン」


「そうでござる…明らかにおかしいでござる」


「ルイフ君だからみんな気にしちゃダメだよ」


「そうよ」


「そうだね、もう僕も諦めたよ」


「みんな、何言ってるの?カバンに沢山詰め込んでただけじゃないの?」


「ファム、落ち着いて考えてみて、あの量があの鞄に入る?」


「押し込んだら…」


「もういいわ、食べましょう」


ファムってやっぱ頭が弱い。

押し込んだら弁当ぐちゃぐちゃだし、ウインナーまでそのまま入れてると思ってるのか。

まあ、気付かれない方が都合がいいんだけどね。


ここで僕は、友人のため一肌脱いだ。

席順を上手く誘導して、ロッツとファムを隣同士にしたのだ。

ロッツよ、頑張ってくれたまえ。


「美味しいわね」


「本当ね、美味しいわ。でもステーキが温かいのは気付いちゃダメなのかしら。アツアツよ」


「ミナちゃんもルイフ君と結婚したら慣れるよ?」


「わ、私は…しないもの」


「あれっ…今、私もって言わなかったかい?サーナちゃん」


「あっ」


「拙者も聞こえたでござる…ルイフ殿はサーナ殿と結婚してたでござるか?」


「えっと…」


「はぁ…全くサーナは。ルイフも二人にくらい話してもいいんじゃない?別に困る事もないでしょ」


「そうだね。ロッツ、ケンジ言ってなかったけど、レイ、ララ、サーナと僕は婚約してるんだよ。発表はまだだから秘密にして欲しいんだけどね」


「な、なんだって…サーナちゃんだけではなく、レイナード姫にララちゃんまで。なぜルイフにばかり美女が寄って行くんだ…ボソボソ」


「納得でござるな…ほとんど一緒にいたでござるからな。拙者は婚約してるとまでは思ってなかったでござるが、誰かと恋仲にあるのではないかとは思ってたでござる」


「なんで隠してたんだよー」


「そうやってなるからだよ。まだこの事は秘密なんだよ。僕の家は男爵家だし、僕自身はただの冒険者だからね。一国の王女と結婚するには地位がまだ低すぎるんだよ。成人するまでに頑張って国中が認めてくれるようにするつもりだよ」


「それは大変でござるな…でもルイフ殿なら出来そうな気がしてしまうでござる」


「確かに、ルイフなら出来そうだ。友人として応援するよ」


「ちょっと待った。姫様も、ララもサーナもこんな男でいいのか?」


ファム…急に何を言い出すんだ。失礼な。


「ファム、それは私達に対する侮辱かしら?」


「ファムちゃん、ルイフ君を悪く言うのは許せないよ?」


「ルイフ以上の男はいない」


み、みんな…嬉しくて涙が出そうだ。


「す、すまない。そんなつもりではなくて…」


「いいわよ。確かに見た感じそんな凄い人に見えないものね」


「ルイフ君と長くいるから私達はいい所いっぱい知ってるから、ね。ミナちゃん」


「な、なんで私に振るのよ」


「ミナもこいつに惚れているのか?」


「そんな訳ないでしょ、ファム変な事言わないでよね」


「そ、そうか。すまない私はまだ剣で本気で試合った事がない。だからただ、自信過剰な奴だと思っていたんだ」


自信過剰って…僕そんなキャラじゃないはずだけど。


「あのね、ファム。剣が全てじゃないのよ?私達はルイフと剣を交えたりしないわよ?」


「な、じゃあどうやって…私の父は、剣で語るそれが全てだ。人を知るのに剣以外必要ないとそう教わったのだ」


なんという歪んだ教育…いや、剣術を学ぶ環境としてはそちらの方が打ち込めるしいいのかな?ストイック過ぎて僕には理解出来ないが…


「ファム、その考えは間違ってはいないけど正しくもないのよ。人と人は関わり合って知っていくの。それが剣でなくともこうやってみんなで楽しくピクニックや会話をしてでもいいのよ。今日色々話して私達の事も少しは知れたでしょう?少しずつ知ればいいのよ」


「そんな…考え方が。私にも剣以外で仲良くなったり出来るだろうか?」


「ファム何言ってるのよ。私達友達でしょ?そう思ってたのは私だけ?」


「いや、ミナは私の友達だ…」


「私達もそうよ」


なんか青春の物語の一面のようだ。

しかし、娘をこんな風に育てる王国最強の騎士ってどんな人なんだろう。イメージだとイケメン最強騎士だったけど。


発言とか聞いてるとゴツい系なのかなと思えてくる。

いつか会うだろうし楽しみにしておこう。


ロッツにしても剣以外で語れるようになったのは一歩前進じゃないだろうか。


本戦前のいい息抜きになった。

明日は必ず勝つ。どんな相手が出てくるか楽しみだ。

デミルゴンとか言ったけ、それ以外の選手は知らないのだ。


僕達は日が暮れる前に宿泊施設へと戻った。

部屋に戻るとロッツが何やらニヤニヤしてて気持ち悪い。


「ロッツニヤニヤしてて気持ち悪いよ」


「気持ち悪いでござるな」


「酷いよ二人共、ファムとデート出来たんだから少しくらいニヤニヤさせてよね。それに剣以外でも仲良くなれるって事は僕にチャンスが出来たって事だよね」


剣は諦めたのか…ロッツ。


「僕達も居たんだけどね。剣で倒して惚れさせるんじゃないの?」


「やめたでござるか?」


「そうじゃないけど…今のままだと時間かかるから両方から攻めて行こうかなって。剣もするし、仲良くなる努力も今まで以上にしていこうと思うんだ」


「今日ファムと喋れたの?」


「そ、それが緊張して…何も」


「何してんだか」


「ロッツ殿は終始顔が赤かったでござるからな、緊張が丸わかりでござるよ」


「な、僕ってそんなだったの?ファムにバレてるかな?」


「大丈夫でしょ。ファムって脳筋だし」


「ファムは脳筋なんかじゃない。あんな可憐な女性が脳筋な訳がないだろう。あの舞を踊るかのような剣技が脳筋にできるものか」


あ、口が滑ってしまった。

好きな人を脳筋呼ばわりされたら怒るわな。


「ごめん、冗談だよ」


「だと思ったよ。あのファムが脳筋だなんて、誰も思わないからね」


「ルイフ殿、大変でござるな」


「ああ、ケンジ…恋は相手のいいところしか見えなくなったりするからね」


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