episode:60
朝だ…先生の大きな声で目が覚める。
これはタイラ先生だな…朝から馬鹿でかい声出して。
もっといい声で目覚めたいものだ。
いつもなら可愛い嫁が横に…
はぁ…横には剣馬鹿と侍が一人だった。
「なんでござるか…その残念そうな顔は」
「いや、なんでもないよ。それよりまだロッツは寝てるのか。あの声聞いてよく起きないよね」
「本当でござるな、タイラ殿の声は大きすぎるでござる…」
「あ、ファムが見てる」
「えっどこどこ」
「ロッツ殿起きてたでござるか…」
「はっ、こんなわかりやすい嘘に引っかかってしまったのか…武人として僕は情けない…これが恋というものなのか」
武人というより詩人っぽくなっている…
剣しか興味のないロッツがここまで変わるとは。
「でもなんで寝たふりしてたの?」
「その…なんというか」
「ファムとの夢でも見ててもう一回見ようとしたとか?なんてね」
「えっあ、…」
「ルイフ殿…当たりでござるな…」
「あはは…」
なんと残念な男になってしまったのだ…ロッツよ。
剣の稽古に身が入らなくなりそうだ…
「ロッツ…ファムは自分より強い男が好きらしいよ?そんなだらけ切ってたら嫌われるよ」
「な、なんだって…それは本当かい?」
大体剣が強い女の人って自分より強い人がタイプってパターンだよね?聞いてないけど合ってるよね?
「うん、剣が強い女の相場は決まっているのさ、ロッツ」
「僕は今から剣の鬼になる…ファムちゃんごめんよ…暫くの間僕は剣に打ち込む事にする…」
ファムはその事を知る由もないのだが…
まあやる気が出ているしいいかな。
「そう言えばルイフ殿はファム殿と同じ馬車でしたな」
ケンジ…なぜここでその話を…
鋭い眼差しで睨むロッツ。
「ファムとは会話すらないよ。女4人に男一人で僕は窓際で一人黄昏てるよ」
「ルイフ、僕は君を親友だと思っている。信じているからね」
「ファム殿より強いと言ったらルイフ殿しかいないでござるからな」
ケンジは何が言いたいのだ…
ロッツをこれ以上刺激しないでくれ。
「僕はロッツとファムの恋を応援してるよ。親友としてね」
「ルイフー…僕頑張るよ。だから剣の修行を頼む」
「はいはい、この遠征中だけね」
「ついでに拙者も修行を頼むでござるよ。ルイフ殿のつけてる武器は刀でござろう?」
「そうだよ、ケンジのも刀だよね」
「そうでござる。同じ武器を嗜む者同士、伝授願いたい」
「僕の刀術は…剣術の応用だから独学だけど…いいなら一緒にやろうか」
「有り難いでござる。それにしてもその刀…かなりの名刀と見えますが、後で見せて貰ってもいいでござるか?」
「あ、僕も見たい」
「いいよ。んーじゃ、自由時間の時にでも見せるね」
僕は、馬車が違うので二人と分かれて婚約者達のいる馬車へと戻った。そしてなぜだろう…山の頂上から殺気のようなものを一瞬感じた気がする。再度見ても何も感じない…気のせいか。
「ルイフ君、今の感じたかい?」
「フェンさん…やっぱり気のせいではないですよね?頂上の方から殺気が…」
「ああ、今は感じないが…何者かがこちらを見ていた」
「フェン、流石だな。お前なら気付いたと思って来てみれば、そこのちっちゃいのと知り合いか?」
「知り合いというか同業と言うか…こう見えてルイフ君はAランク冒険者だからね、それも単独のAランクだ。僕より多分実力は上だよ」
「ほぅ…お前さんが噂のルイフだったか、俺はナギだ宜しくな」
「ナギさんは僕よりも強いよ。師匠同じくらいと言ったらわかるかな?」
「色々勉強させて頂きます。ナギさん宜しくお願いします」
「ガンツの弟子なのか?」
「いや、違うよ。ルイフ君は爽剣の息子だからね、師匠は爽剣に今仕えてるから、護衛で王都に付いて来てたんだよ」
「なるほどな…英雄の息子か。とは言え、この歳でAランクとは化け物だな」
「化け物扱いは酷いですよ。ナギさん」
「ははは、冗談だ。褒め言葉として受け取っておけ」
「出発の時間だね、単独Aランクが5人いるとは言え油断は出来ないからね、気に留めておこうか。僕達も馬車に戻るよ。護衛として務めを果たさないとだからね」
「だな」
僕も馬車へと乗り込む。
「あら、遅かったわね、何か話してたみたいだけどどうしたの?」
「んー…何というか」
「ルイフ、隠し事よくない」
「私も聞きたい」
「あら、ルイフ私達に隠し事とはいい度胸ね」
「何というか、山の頂上から殺気を感じたんだよ。それでフェンさんとナギさんも感じた見たいで…話をしてたんだ。あまりみんなを怖がらせたくないから言いたくなかったんだよ」
「狙われてるって事かしら?」
「んー、わかんないんだよね。すぐ頂上の方見たけど何も感じなくなってて…一様警戒もしてるけど、まだ先は長いし警戒しすぎも疲れるからみんなは僕が守るし安心してて」
「ルイフいる。安心」
「レイ、ルイフが居るとはいえ、子供よ?先生達にも言った方がいいわよ」
「大丈夫だよ。ミナちゃん、ルイフ君は強いから」
「ふっ、子供の分際で少し強いからと言って守るだの過信しすぎもいいとこだな」
急にファムが話し始めた。
喧嘩を売られている?
「何よ、あんた。代表に入れたとはいえ、ルイフより下じゃないの。偉そうな事いうなら勝ってから言いなさいよ」
「戦う機会があれば私が勝つ、私は既に冒険者としてもCランクだ。経験が違う」
「あの女バカ。ルイフはAランク冒険者」
「なっ、馬鹿な。Aランクな訳が…私がここまでどれだけ苦労して…」
「ルイフは登録して1ヶ月立たずにBランクだったわよね、Aランクも3ヶ月くらいだったかしら?」
嫁達よあまり煽るのはやめるんだ。嬉しいけど…可哀想だ。
今にも泣きそうな顔でファムはそっぽを向いて喋らなくなってしまった。
「な、ルイフ、Aランクなの?!」
「あ、そっか。ミナには言ってなかったかも?」
「聞いてないわよ。…Aランクの実力ならお父様に…私も…ボソボソボソ」
ミナ…声が漏れてるよ。
だけど、頭のいいララがそんな事思い付かない訳がない。
多分Aランクじゃ無理なんだろうねー…領地の問題だし当たり前だよね。
それにしても山道は…お尻が痛い。
みんななぜ平気なんだ。お尻だけ異世界仕様になっていないのだろうか…神様僕のお尻を救ってください。
「呼んだかしら?」
「いや、ソフィア。僕のお尻を救ってと神様にお願いしただけだけど」
「だから、私が出てきたんでしょ?」
「ああ、そうか。ソフィア最高神だった…」
「忘れないでよね。それにお尻ごときで私を呼ぶってどういう事よ」
僕のお尻が救われる事はなかった。
気持ち程度にヒールをお尻にかけ山道を下っていく。




