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episode:51




朝ご飯を済ませた、僕達はまだ薄暗いうちに出発する。

ちなみに朝食は僕の亜空間倉庫に入っていたリンゴを食べた。


野営地を出てひたすら草原に囲まれた道を歩いていく。

馬車と何度かすれ違ったが…羨ましい。


亜空間倉庫に入れておけばいいので、今度買っておこう。

グリコを当てにしてたので馬車なんていらない!って思ってたが、実際歩いてみると疲れなくてもひたすら草原は辛い。


初めは会話もあったが、話す事も無くなったのでずっと無言だ。

馬車があれば寝てしまえば…この気まづさとは無縁だ。


5時間ほど歩くと、山に囲まれた道についた。

トンネルではないが大昔賢者様が山を一部崩し道を作ったらしい。

道幅およそ5mほどとそこそこ広い。

両側の岩肌は崩れそうな所もあるのでちょっと危ない感じがする。


上から弓矢で一斉に打ち一網打尽に出来る立地だ。

この上にどう登るかは別の話なのだが。


徐々に上がっていく道を登る事3時間、2時間を過ぎた頃からは下りの道だ。こんな簡単な整備では馬車が通るのは大変そうだ…

お尻がえらい事になる。


途中で休憩を挟みつつ歩いているとようやく出口が見えてきた。

と言っても…また景色が草原になるだけだ。


ここから3時間ほどでシアナの町につけるらしい。

今日はゆっくり宿で休みたいものだ…


山の麓の道を歩いていく…

時々、変な呻き声のようなものが聞こえる。


「それは、ワイバーンですね。年に何度か襲ってくるんですよ」


「撃退は出来るんだ?」


「ええ、2体くらいまでなら町にあるバリスタでなんとか。一度だけ凄い被害が出た年があったのですがバリスタが導入されてからは問題なく過ごせていますね」


どこの山でもやっぱ山頂の方行くと龍や竜は定番なんだな…

ここに住んでいる龍は何龍なのだろう、ワイバーンしかいないかもだが…本物の龍会ってみたい。もちろん戦うのは嫌だ!


誰か来たようだ…


「おい、お前ら金目のものを置いていきな、少しでも変な真似したらすぐにこうだ」


ナイフで首を切る真似をしている。

盗賊…のようだ。


「ルイフ様お下がりください。ここは私が」


「お。ラッキー貴族様か?俺達は10人いるが2人で勝てると思っているのか?」


10人いるのか。って気配察知でわかってたんだけどね。

それにしてもバラすとかその時点でこの盗賊の間抜けさがわかる。


いかにも盗賊らしい格好をしているが、ナイフもボロボロ、剣を持ってる人の鎧もボロボロだ…奪ったものなんだろうけど。


「あなた達ごときに負けるわけがありません」


「雷光解放」


カルメの雷の魔剣が魔力を通した事で雷を帯びて激しく光っている。

その雷が剣の周りを帯電している。


光が収まると盗賊達が腰を抜かしている。


「お、覚えてろよ…」


なんとも間抜けなセリフを残して逃げていった。

しかし、このままただ単純に逃す僕じゃない。


風魔法を操り、鎧や服そして下着までも綺麗に切り刻んでやった。

盗賊に容赦は無用だ。


容赦は無用だが…斬り掛かってこない相手を倒すのも違う気がするのでこれが最大限の譲歩と言うやつだろう。


「ふふ…なんですかその技。盗賊達もこれで多少懲りるといいのですが」


「これは風魔法の応用で敵の衣服だけを切る技だよ」


「そんな凄いことを遊び感覚で言わないでください。そんな技誰もできないですからね。皇帝直属の魔導師ですらそんな芸当できないです」


「そうなのか、僕って案外強いのかもね」


「はい、規格外です」


「それはひどいなー…こんな可愛い子供に」


「はいはい、とても可愛いウブなルイフ様」


カルメに弄られつつも僕達は無事に町に到着した。

門に着くとまだそれほど人は並んでいなかった。


「空いてるし良かったね」


「いえ、この町は元々ディクルスへ行くための通過点に過ぎないので普段からこんなものですよ。混むのはたまに商人の荷馬車が重なる時くらいですね。なんだかんだコグリッチ公爵の治めるデイクルスの街への通過点になるので大きな商会も通ったりするんですよ」


そういえば…コグリッチは公爵だったな。いくら悪い人でも公爵だお抱えの大商会くらいいるだろう。

むしろ偉い立場の人で悪い事をしている人ほどお金は動いたりしてそうだ。


門の中には冒険者証を見せる事で簡単に入ることができた。

まあ、こんな子供がまさか公爵の家に用事があるとは思わないよね。


デイクルスの街へ着いても恐らく怪しまれる事はないはずだ。

しかし、カルメはどうなのだろうか?後で聞いてみよう。


町はいたって普通ののどかでいい感じの町だ。

田舎でもなく都会でもないちょうどいい感じの落ち着いた町。


宿屋はカルメの案内ですぐに決まった。

知り合いのいる宿らしく融通がきくらしい。久々の故郷への帰宅で大丈夫なのかな?宿屋っていつでも空いているわけじゃないよね。

空いてなければ他へ行けばいい話だけど。


「もうすぐ着きますよ。普段からあんまり人気なくて空いているのですぐに入れると思います」


おいおい…人気ないお宿って大丈夫なの?!

何かきっと人気ない原因があるよね。


「そんな顔しないでください。料理も美味しくていい宿ですから。ただちょっと店主が変わっているのですが…」



宿の前に着いた。

看板には宿ディープと書かれていた。


扉を開け中へ入る。


「こんにちはー」


「あ、あら久しぶりね。カルメちゃん」


「おばさまお久しぶりです。元気でした?」


えっ おばさま?おじさまの間違いじゃ…


「元気よ、お肌も調子いいみたいでツヤツヤなのよ。ネネももうすぐ帰ってくるわよ、そちらの子は…カルメちゃんの恋人かしら?それにしてはまだ小さい…けど」


「ち、ちがいます。私の今仕えている方でルイフ様です。こ、恋人なんて。私じゃ…」


「何言ってんのよ。カルメちゃんは美人よ、ね?ルイフちゃん」


「えっ あ、はい。カルメは美人ですね。魅力的な女性だと思いますよ」


一瞬ウインクが即死の魔眼に見えた。

あの世へ行きそうなのを耐えつつなんとか答える事が出来た。

少し間が空いたが大丈夫だろう。

カルメは顔を赤くして、ブツブツと言っている。


このおば…いやおじさん。顔が大きくて青髭。そして頭も坊主にしているのか若干青いのだ。とにかく強烈だ…


「あらあら、カルメちゃん照れちゃって。ルイフちゃんもその歳でませてるわね」


「ただいまーお父さん」


「あらネネおかえりなさい、カルメちゃんが来ているわよ」


「カ、カルメちゃん!?本当だ久しぶりー」


二人は喜んで抱き合っている。

とても仲が良さそうだ。


それにしても今お父さんって普通に言ってたけど…

なぜカルメはおばさんと呼ぶんだろう。

気にする事でもないんだけどインパクトの強い顔が脳裏に張り付いている…夜に会ったら悲鳴をあげてしまいそうだ。


「それで今日はお泊りかしら?」


「はい、泊りでお願いします」


「私が案内するー」


「じゃあ、頼むわね。角の広い部屋が空いているからそこにお願い」


「わかったー」


案内された部屋は木の香りがするいい部屋だった。

人は見かけで判断してはいけないとはこう言った事を言うんだな…

店のイメージと店主を重ねてしまった。



僕は案内された部屋に入る。

すると後ろからカルメも入ってくる。


「カルメも自分の部屋でくつろいできていいよ」


「いえ、私もこちらに泊りますから」


「えっ、ベッド一つしかないよ?」


「構いません。護衛ですから一緒にいないと意味がないですよ」


確かにそうか…護衛が一緒にいないと。うん?納得でいいのかな?


「カルメちゃん彼氏出来たのー?いいないいな。この部屋だけ壁が分厚いから大丈夫だよ」


「な、何言ってるの。ネネ」


「照れてるー。夕食の時間になったらまた呼びにくるね。私はお手伝いあるからじゃあね」


分厚いから大丈夫って…

何を言っているんだ。

カルメがちぐはぐになっている。


「カルメ大丈夫?」


「だ、大丈夫です。こんな事で動揺なんてする歳じゃないですから。ちょっとびっくりしただけで…」


って言っても僕10歳だし…どっちみち何もないんだけどね。

まだ全然ちっちゃいし…って前世も普通だったけど小さいままだったらどうしよう…。


「とりあえず落ち着いて…明日の事を話そうか」


「そ、そうですね。明日はデイクルスの街へ入ります。朝出れば昼には門に着けると思います。少し大きな街になるので並ぶかもしれませんが、特に何も言われる事はないでしょう」


「カルメって皇女の護衛なのに大丈夫なの?」


「私は表へ出る護衛ではないので顔はバレていないはずですが…。捕まってしまった時も公爵の手の者が来る前にルイフ様に助けられましたし」


「そっか、ならいいんだけど。カルメに危ない目に会って欲しくないからね」


「ありがとうございます」


夕食まで僕達は雑談をしながら過ごした。

勿論その間も魔力が余っているので練習は欠かしていない。

体に魔力を纏い続ける修行、これが今のマイブームだ。


周りに迷惑もかけないし、常時使えるので有難いスキルだ。

スキルの身体能力強化と同じだがあれには制限時間がある。


自分で身体能力強化をすれば制限なしで魔力がある間は同じ効果が受けられるのだ。


コンコン…


「夕食の準備が出来たよー。降りてきてね」


ガチャっ


「ありがとう、ネネ。今から行くわね」


「お取り込み中じゃなかった?ごめんね…」


「そんな訳ないでしょ、からかいすぎよ」


「ごめんごめん」


僕にも聞こえてますよー…

カルメが弄られキャラだったのは意外だ。

僕を弄ってばっかいるのに。いつか弄ってやる。


宿の夕食は食堂スペースでの食事だ。

料理は店主であるおじさんが作ってくれる。


「いやーうめえな。ミンクちゃんの料理は最高だぜ」


「あらあら、お上手ね。チューしてあげようかしら」


「はははっそれは勘弁してくれ」


ん?ミンクちゃん……?


「ね、カルメ。今ミンクちゃんって聞こえたけど誰の事…?」


「え、おばさんの事だけどそういえば言ってなかったですね」


「いやいや、おじさんだし、ミンクちゃんっておかしいでしょ」


「そうですか?昔からこうなので…」


「何の話かしら。料理を持ってきたわよ。今日はきのこたっぷり鮭の葉包みと。スネークバードの香草焼きよ。お酒は飲めないわよね?」


びっくりした…

突然出てくるとは…まさか転移魔法。

冗談は置いておいて、凄く美味しそうだ。


鮭のホイル包みみたいなものだろう。

葉っぱに包まれているが中にはきのこや玉ねぎなどが入っている。


「美味しそうだ」


「これ昔から好きなんですよね。おばさんの手料理は最高なんですよ」


パクっ


う、うまい。容姿で判断してごめんなさい。

思わず土下座をしてしまいそうになるくらい美味しい。


鮭も脂がのっている新鮮な物を使っているのだろう。臭みもなく程よい甘みが口の中に広がる。鮭から溢れ出た旨味がきのこや玉ねぎにしみ渡ってとても美味しい。


スネークバードの香草焼きは、鶏肉に塩、黒胡椒、そして香草とシンプルだが、柔らかい鶏肉に少しエッジの効いた香草がすごく合う。


黒胡椒のピリッとした味がまた良い。

異世界での食事は日本での僕の食事よりも良いものになりつつある。

実家の料理は一体何だったのだろうか…実家に戻ったらもう少し美味しいものが食べれるように何か考えねば。


「おじさん、これ美味しいです」


「あらおじさんとは失礼ね」


「ルイフ様ダメですよ。女性におじさんなんて言ったら」


「え、いや…でも。すみません、美味しいですおばさん」


顔をこれでもかと近づけられ…僕は即座に言い直す。

コグリッチなんかより店主の方が怖いです。


夕食を食べ終えた僕達は部屋に戻る。

お風呂はないので、クリーンの魔法を使う。


「なんかスッキリしました。なんですかその魔法」


「これはクリーンだよ。体を綺麗にする魔法かな?」


「便利ですね。一家に一人ルイフ様が欲しいです」


家電かよ…と思ったが僕も確かに便利だと納得してしまった。

それにしても脱ぎ癖のある人と寝るのはハードルが高い。


その後も雑談は続き、気になっていた事を再度聞いてみる」


「それにしても店主にまさかおじさんって言って怒られると思わなかったよ。昔からのカルメと違って僕には違和感ありまくり」


「最初はおじさんだったんですよ?私達が6歳の頃ですかね。ネネのお母さんが病気でなくなったんですよ。ネネはお母さんが大好きで…お父さんよりお母さんが欲しいっておじさんに言ったら、次の日からおじさんは…あの姿になってたんですよね。ネネも最初は恥ずかしいからやめてって言ってたけど、真剣にお母さんになろうとするおじさん

を見て諦めたというか嬉しかったんだと思います」


そんな理由があったのか。

お父さんからお母さんになる…そんな度胸僕にはないや。

そんな人を馬鹿にした自分の小ささに呆れてしまう。

これからはちゃんとおばさんと呼ぼう。


「そろそろ寝ましょうか」


僕達は眠りにつく。


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