episode:49
朝が来た、横にはララの可愛い寝顔だ。
暫く見ていたいと思ったが僕は急ぎでやる事があるのだ。
そう、ソフィアに頼んで時空魔法をマスターしなければいけない。
転移魔法もなしに帝国へ突っ込んだら僕はゲームオーバー間違いなしだ。
ゲーム開始中盤でラスボスに挑むイメージだ。
勿論ひたすらlvを上げまくって強くなってから挑むタイプもいるだろう、そういう人は中盤でラスボスに勝てるくらいの実力があるだろう。
しかし、僕には時間が足りていないのだ…
精神と時の部屋的なものがない限り、僕の実力はSランクと戦えるか怪しい程度だ。
「ソフィア、体調はどう?」
「もう完全に吸収出来たわ。水の大精霊だけだけど、大部分を吸収したおかげか大分力に余裕が出たわね。転移魔法よね?わかってるわよ。あなたの魔力操作を最大まで上げてあげる、これで他のスキルも上手く使えるようになると思うわ、ただ転移については正確なイメージ力が必要になるから練習は必要よ。魔力操作が楽になったおかげでイメージするのがとても楽だと思うわよ」
「ありがとう、助かるよ。それでもう一つ聞きたい事あるんだけどさ」
「何よ?」
「時間の流れを遅くした空間とか作ってそこで訓練とか出来ない?ちょっとでも強くなりたいんだけど…明日までに」
「そんな都合のいい話…今の力でするのは無理よ」
「そっかー…まあそうだよね」
「時の大精霊でも吸収できればなんとかなるけど…基本自分の空間にいるはずだから探しようが今はないのよね」
あれ精霊って火、水、風、土だけじゃないのか。
よくある展開と考えて聞いてなかった。
「大精霊って何体いるの?」
「火、水、風、土、雷、光、闇、時の8体ね」
「結構いるんだな…全部吸収するの?」
「何その嫌そうな顔…全部じゃないわよ。半分…ううん、後4体吸収さえ出来れば問題ないくらいに復活出来るわね。復活さえすれば私の空間で休養すればすぐに元どおりよ」
ふむ…@4体か。先は長そうだ。
僕は早速転移の練習をする。
イメージ…イメージ…イメージっと。
お…前と違ってイメージに靄がかからない。しっかりと集中出来る。
とりあえずテレポートでは出来ない範囲へと移動しなければ転移にならない。どこがいいだろうか…
この際実家への里帰りも面白い。
色々と作りたいものもあるし。パモスさんに相談もしたいのだ。
僕はパモスさんの家の中をイメージする。
具体的にイメージが出来たので、転移を発動する。
一度出来るとその後からはかなり簡略化したイメージで発動出来るらしいので初めが肝心だ。
視界がボヤける。そして…ここは。
パモスさんの家だ。
成功だ。これで帝国へといく事が出来そうだ。
さてパモスさんはっと…
「パモスさん…もっと、もっと強く。もっとですか?」
「ああ、もっと強くだ。もっと振るんだ。早く、力強くだ」
やっばい…パモスさんも独り身の男だ。女の人の一人くらいいてもおかしくないだろう。
直接家に入るのは今後やめておこう。
「ああん。パモスさん…出来ました」
「おおおお、良くやったな。今回の物なら使い物になりそうだ。頑張ったな」
「はい、私の初めてのショートソード」
んんっ…ショートソード?!
あっなるほど…僕の勘違いか。
ガラガラガラガラ
相変わらず建て付けの悪い扉が開く。
「お?ルイフじゃねえか。いつ帰ったんだ?夏休みまでまだまだあると思うが…」
「ちょっと用事で戻ったからすぐに帰るよ。だから内緒でお願い」
「ああ、そう言う事ならわかった。今度は何を作るんだ?」
「お米って知ってる?」
「ああ、大和の方で食べる…やつか。あまり好かんが」
「そのお米を美味しく食べるのに必要な鍋を作って欲しいんだよ」
「何…あんなのが美味しくなるのか?しかし、ルイフが言うのだから…そうなんだろうな。わかったすぐに作ろう。どんなのか聞かせてくれるか?」
「あのパモスさん…この方は?」
「ああ、レレムは初めてだったな。この方はここの領主の息子のルイフだ」
「こ、これは失礼しました。私はレレムと申します」
「よろしく、レレムさん。パモスさんの恋人?」
「バカヤロウ、昔工房にいた時見習いをしてた時に面倒を多少見てただけだ。少し前に俺を追いかけてこの町に来たんだが…見所がありそうだから弟子にしたんだ」
レレムさんは顔を赤くしている。
僕はこう言うことに敏感だ…パモスさんの事が好きなのだろう。
なんとかしてあげたいものだ。
「そうなんだ。お似合いだから…てっきり」
僕は意識しやすくなるワードを残し。
鍋の説明をした。
圧力鍋の仕組みはわからないので、出来る限り熱がこもってお米全体に火が均一に通っておこげが付くようなイメージで…説明した。
きっとわからない部分はパモスさんがなんとかしてくれるはずだ。
「わかった…試作を含め。1週間以上はかかるがいいか?」
「うん、わかったよ。次に来れる時までに仕上げておいてくれたら助かるよ。町のみんなにもお米の美味しさを知って欲しいからね」
「楽しみにしている、こっちは任せておけ」
僕はパモスさんに鍋製作を託し家へと戻った。
これで今後色々な所に転移が出来そうだ。
しかし転移の燃費の悪さは…半端ない。
1回の長距離移動で魔力を1割ほど消費した。一人でこれだと人数いた場合もしかすると魔力不足で転移出来ないのではないだろうか。
僕と、カルメ、そしてレグドンの妹のティーナ。
少なくとも3人の移動が必要だ…魔力を温存しておかなければいざという時使えないと言う事になりかねない。気をつけよう…
「あらお帰りなさい、上手くいったようね」
「うん、大丈夫そうだよ。ソフィアは鑑定できそう?」
「任せて、大丈夫よ。この街全体くらいなら離れていても鑑定可能ね」
「それは凄い…さすがは女神って事か」
「そうよ、女神だから当たり前でしょ」
これで帝国へ行く準備は整った。
と言っても今回はまずレグドンの妹の居場所と状況の調査だ。
戦うつもりはないので気負う必要はない。
僕はいくつかの便利アイテム作りをしてその日は早めに寝る事にした。明日早い時間から出掛ける予定だからだ。
転移をするのは森の中の予定なので大丈夫だとは思うが…
なるべく人の少ない時間に行きたいからだ。
今回転移する予定の森はフーランの森だ。
ゲンコウ湿地のが近いが湿地は霧が濃く何が起こるかわからないので安全なフーランの森に転移だ。せっかく転移があるが、帝国方面へはほとんど行っていないので、数時間の短縮だがちょっとでも短縮できるのは大きいだろう。どちらにしてもグリコに乗ってくから転移は実験だ。複数人しっかりと運べるか確認は大事だ。
今日は明日も早いと言う事で寝るのは一人でだ。
いつもの夜の練習は勿論欠かさない。
魔力操作が格段に上手くなったので僕はいつもよりより自在に動かせる魔法にワクワクした。
「ちょっといい?」
「どうしたのソフィア」
「帝国へ行く前に水の精霊と正式な契約を交わした方がいいと思うの」
「精霊と契約?」
「そうよ、あの子は今は中級精霊程度に力を失っているけど…元々は大精霊になれた精霊よ。力が戻ればとても頼りになるし、あの子と契約すれば加護がつくはずだから、色々と役に立つはずよ。魔力量あげたがってたでしょう」
「そんな効果があるんだ…」
「さっき思い出したのよ」
僕は水の精霊に契約をお願いしようと思い、辺りを見渡す。
するとひょこっと僕の肩から顔を出した。
「わっこんな所に居たんだ」
「知らなかったの?ずっとあなたの傍にその子いたわよ」
「そうなんだ…気付かなかったよ。精霊さん、僕と契約して貰えるかな?」
「いいわよ。契約すればより私の力も戻るしどちらにしてもあなたの傍にいる予定だったから問題ないわね」
その姿でお姉さんみたいな喋り方はやはり違和感が…
「えっとどうすればいいのかな?」
「名前を付けるのよ。精霊が承諾し、名前を付けて終わりよ」
んー…名前か。
水の精霊と言えばウンディーネとかセイレーンとかだっけ。
確か湖の名前がセイレス湖だったから…そこから取った方がいいかな。
セイレス…
セイ…レナス
お、なんか響きがいい気がする。
特に意味はないが響きが良さそうな文字を入れてみてたらしっくりときた。
「セイレナスでどうかな?」
「いいわね。上品な感じがして私にぴったりだわ」
「じゃあよろしくね」
僕は水の精霊セイレナスと契約をした。
ソフィアによると中級精霊でもAランクくらいの力があるらしい。
300年前は勇者が光の大精霊、賢者が地の大精霊、剣聖が火の大精霊と契約をしていたらしい。
今は契約出来るものはいないと思うとの事。
セイレナスも光、地、火の大精霊は300年前を最後に人の前に出なくなったから契約はしてないと思うとの事だ。
これ契約されてた場合ってどうするんだろう…
力を貰ったらその契約者の人弱体化だよね。僕なら絶対お断りだ。
そんな事を考えながら眠りにつく。
コンコン…
コンコン
「ルイフ様、起きてらっしゃいますか?」
「うん、もうすぐ準備終わるよ」
「では、外でお待ちしております」
相変わらず親衛隊のみんなは準備早いなー。
早く起きたからゆっくり待ってようと思ったのに。
今は朝の4時30頃だ。前世でこんな時間に早起きした事ないな。
休みの時だと今頃コンビニで働いていた頃か…夜中は時給がいいんだよな。
僕は準備を済まして外へと出る。みんなを起こさないように静かに扉を開ける。
「お待たせ」
僕が来るとカルメ…だけでなく、アミアとレグドンがいた。
この二人は本当によく出来た人達だ…。
「おはよう。アミアとレグドンも起きてたんだね」
「ああ、俺の事で迷惑をかけてる訳だからな、見送りくらいしか出来ないが…」
「ルイフ様はセイラ様の夫となる方、主人をお見送りするのは当たり前ですよ?」
「マーニは爆睡よ。遅くまで弁当を作ってたみたいだから悪く思わないでね」
「迷惑じゃないよレグドン。それにアミアもマーニも嬉しいよ。後でマーニにお礼を言っておいて」
「はい、わかりました」
「それでカルメの持ってるそれが弁当?」
「はい」
「それ全部?!」
「そうです。ちょっと多いとは思ったのですがマーニがせっかく作ってくれたので置いてくるのも…私には」
「僕が持っとくから大丈夫だよ。マーニのご飯は美味しいから助かるね」
僕は亜空間倉庫に全て入れた。
「い、今のは…弁当がどこかに消えたようですが…」
「んー、亜空間倉庫っていってね。物を収納出来るスキルみたいなものかな?」
「な、なるほど。そんなスキルまで持っていたのですね。ルイフ様は一体いくつスキルを…。3個以上持っているように思えるのですが、まさか本当に勇者様なんじゃ…」
「ないない。勇者なんて柄じゃないよ。僕の持ってるスキルの応用かな?」
「なるほどそうでしたか… 商人で稀に持っていると言われているアイテムボックスの用なものですね」
「そうそう、それに似てるかな」
「アイテムボックスってどれくらい入るの?」
「私が知っている帝国の大商人で大きめの荷馬車の中身が全て入るそうです。凄いですよね、そのスキルのおかげでその商人は帝国お抱えの商人になりましたからね」
「ああ、ナックルさんの事だな」
「ベスボー商会の長ですね。姫様の物も持ってきて頂いていたのでお世話になりましたね」
「そんな人がいるんだ」
「ええ、スキルだけではなく、頭も切れるので欲しいものを欲しいタイミングで用意されるんですよね。他の貴族もよく利用していたみたいですね。帝国で1.2を争う大商会です」
僕も亜空間倉庫使えば大商会になれるのかな?
商売知識はないからそうもいかないのかな?…
前世の知識を活かした商売をすれば成功出来そうだがあまりやりすぎもトラブルを招くし、あくまで僕は冒険者だ。
伯爵の地位を貰い、領主になるのだが…それでも僕は冒険者だ。
「そろそろ行くね」
「はい、いってらっしゃいませ」
「頼みます」
「カルメ、僕の手を握って」
「へっ だ、だめよ。姫様にバレたら…手を繋いで旅って。そんな恋人じゃあるまいし」
「違うよ」
僕はめんどくさいのでカルメの手を掴む。
「ひゃっ」
フーランの森の出口付近に転移をする。
成功だ。見覚えがある景色だ。




