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episode:47





朝の日の光が僕の顔を照らす。


「んーーーーーー」


背を伸ばし目を覚ます。

隣にはネピリア…と思ったのだがネピリアがいない。

確かに一緒に寝たはずだが。


ガチャッ


「あ、おはようございます。起きてらしたんですね。水を貰ってきたので良かったらどうぞ」


「おはよう、ありがとう」


どうやら水を貰って来てくれてたようだ。

魔法で出せるのだが、この気遣いはとても嬉しいものだ。

お礼に僕は内緒でクリーンの魔法をかけておいた。


「あれ、今何かしました?何かに包まれてスッキリしたような感覚が…」


「えっ気のせいじゃない?太陽の日差しの暖かさに包まれてスッキリしたんじゃない?」


エルフは魔法に長けた一族なのを忘れていた。

気付かれるほどの魔力を込めていなかったので大丈夫だと思っていたが何か感じとっていたようだ。



「そうでしょうか。でもとてもいいお天気ですね、気持ちがいいです」


「そうだね、今日も王都目指して頑張ろっか」


「はい」


いい朝だ、僕達は旅の支度を済ませ朝食を食べていた。


「すみません、冒険者ギルドです。こちらの宿にルイフさんと言う方が泊まってると思うのですが、部屋の番号教えて頂けますか?」


あれ、僕の名前と聞き覚えのある声…

確かレミーさんとか言ったな。前もあんな感じで僕の部屋を聞いて訪れたのか。冒険者ギルドが何の用だろうか。

厄介ごとの匂いしかしない。ここは知らないふりだ。


「あれってルイフ君の事ですよね」


小声でネピリアが聞いてきた。


「うん…前にちょっとね。とってもめんどくさい人達だから無視して王都に行こう」


「えっと…ルイフ様は確かに泊まって居られますが、先程朝食を取りに来てたと思うのでそちらにいるかと思いますが」


レミーさんがこっちに向かってきた。

僕は下を向いて知らないふりをしている。


「ルイフさん…下を向いててもわかりますからね」


「はあ…僕になんのようですか?今日この町を出るので厄介ごとでしたら他に当たってください」


「そんな事言わないでください。マスターがお呼びです。呼んでこれなければ私が怒られるんですからね」


「レミーさんには悪いけど急いでるから僕達は行くよ、何かあるなら王都のギルドに連絡入れてと伝えてください」


「いいんですか?ルイフ君。困ってそうですが…」


「いいのいいの。厄介な事しか言ってこないし、脅しをかけてくるようなマスターだからね。関わりたくないんだ」


「ルイフさん…マスターも必死だったんだと思います。普段はそんな事する人ではないはずなんですが。怒らせたりしてないですか?」


心当たりはあるが…

子供相手に大人気なさすぎるだろう。

僕も前世で大人だから言えた事ではないが。


「はあ…少し寄って話聞いたらすぐに出ますからね」


「ありがとうございます。それで構いません。では先に戻っていますね」


僕は結局冒険者ギルドに行く羽目になった。

朝食を食べ終え、ネピリアと共に冒険者ギルドへと向かう。


中に入るとレミーさんが待っていたので案内されマスタールームへと入る。


コンコン


「ルイフさんをお連れしました」


「入ってくれ」


僕は部屋の中に入る。

勿論ネピリアも一緒だ。


「おおう、すまなかったな呼び出して」


「そう思うならやめて欲しかったですけど」


「そう言うなって…」


「それでなんの用ですか?」


「いや、用というかワイバーンの事なんだが、倒したのはお前だろう?ちょうどお前が出た後にワイバーンがいなくなってる。これは偶然か?」


まさか橋の修理代をせびられるのだろうか?

これは是が非でも否定しなければ。

おじさんは多分…言ってないはずだ。



「偶然だと思います。僕は気配を隠して素通りしたので」


「ほう…Aランクに近い魔物を素通りか。別に隠さなくていいんだけどな、どうせ言わないんだろう。ワイバーンの死体すら見つからねえ、わからない事だらけだ、少しくらい教えてくれてもいいだろうに」


「言うも何も知らないですから」


「そっちの嬢ちゃんはエルフだな…なぜ山に向かったお前がエルフの娘を連れているんだ」


「尋問でもしたいんですか?」


「いや、悪かった。好奇心だ。ワイバーンを倒して貰ったお礼を言おうと思っただけなのだが悪ふざけが過ぎたな。橋はワイバーンが暴れた事で壊れたことになっている。領主様が費用は出すから冒険者ギルドとしては討伐に冒険者を出さなくて良くなったから助かった訳だ」


「それは良かったです」


「お前が一言倒したと言ってくれれば報酬が渡せるんだがな…」


「僕は知らない事で報酬は貰えません」


「人を巻き込むような戦い方。そんなヒントを置いていって頑固過ぎるだろう。まあこれ以上追求はしないが…ありがとう」


「じゃあ僕達は行きますね」


「ああ」


悪い人ではないのかな?冒険者ギルドマスターとしての正義感からの脅しだったのだろうが…


それでも僕としてはあまり協力関係にはなりたくない。

王都に戻る事だし、暫くこの町と関わる事もないだろう。

僕達はギルドを出て門へと向かう。


本来は冒険者らしく護衛依頼を受けて移動をする所だが、グリコに乗っていると今更馬車の旅か…と当初ほどの感動はなくなってしまった。僕の憧れていた冒険者の光景が崩れていく…

とは言ってみたが実際転移が出来るようになればさらに短縮なのでちょっと言ってみたかっただけだ。


ここから通常だと王都まで3日は急いでもかかる所だがグリコに乗れば数時間もあれば王都付近まで行けるだろう。


僕達は門を出て王都方面にある少し離れた人気のあまりない森へと向かっている。グリコが目撃されないようにするためだ。


森の中に入り、念話でグリコを呼ぶ。


「お待たせしました」


「はやっ」


10秒ほどで目の前に現れたので驚いてしまった。


「主様の魔力を感じましたので近くに移動しておりました」


「そうなんだ。転移でも使ったかと思ったよ」


「まさか、そんな高位の魔法が使える者など魔王くらいです」


「魔王って転移魔法使えるの?」


「300年前の魔王は使えましたが、今代の魔王はわからないですね…」


「グリコって物知りだよね。そんな昔の事まで知ってるとか。あれ今魔王っているの?」


「こう見えて300年以上生きていますから。私の子供時代の話なので良く覚えています。竜種は基本的に戦争には参加しません。傍観者と言うのでしょうか。なので情報だけは多く入って来ます。例外として闇龍などがいたようですが…子供時代なので有名な事以外は私が目で見た情報しかわかりません。それに私は竜種ですがワイバーンなので…高位の龍が知る情報は一切知らないのです」


「え、グリコってそんな生きてるの。話し方とか確かに年齢感じるけど。それで魔王って今いるの?」


これは大事な事だ。魔王ってまだいないって言ってなかったけ」


「魔王はいます。しかし今の魔王は覚醒前の魔王です。魔族を統する王って所でしょうか。300年前の魔王は邪神により加護を授かり覚醒し桁違いの強さを誇っていました。今は邪神は封印されているので魔王が覚醒することはありません」



「なるほど…グリコって色々知ってるな。これからも知っている事は教えて欲しい」


「かしこまりました」


「じゃあ行こうか」


「う…うん、これで最後、頑張れる私」


ネピリアが自分自身に言葉を投げかけている。

まだ慣れないのだろうか…


空の旅は凄く楽しいのに。


グリコに乗り空の旅が始まった。

およそ3時間ほどフライト予定だ。


それにしても邪神ってロクな事しないな…

魔王も覚醒しなければ普通の王様って事みたいだし、邪神さえ復活しなければほんと平和に生きられそうだ。


帝国とか軍事国家との戦争などはあるかもしれないが少なくとも人間同士の戦いなだけマシだろう。


「そろそろ慣れてきた?凄い綺麗な景色だよ」


「うん…最初よりは余裕はあります。でも落ちないとわかっててもこれだけ早いと、落ちたらどうしようってどうしても考えちゃいます」


「僕がいるから大丈夫、危ない時は助けるから」


「はい…お願いします」


顔を赤くしているネピリア。

それ程鈍感ではないので何となく理由はわかる。

しかし、僕がこんな台詞を言うとは…

世界が変われば人も変わるものだ。


そろそろ王都が見えてくる頃だ。

まだぼんやりと遠目に見えているだけだが時期に到着だ。


グリコの事をどうしようかと僕は考えている。

家で飼う事は決定だ…いや、反対されたらどうにかしないとなのだがここは何とか押し切りたい所だ。


しかし、学園が近いのでどうしても人の目があるので、国王様も宰相も素直に認めてくれるか微妙な所だ。

とりあえず先にレイとララに相談しようと思う。


今回は王都までグリコで突っ込む予定だ。

奇襲でもかけるのかって?

それは違う!僕は常日頃から魔法の練習をしている。

その練習が身を結び短時間であれば姿を消す事が出来るようになったのだ。およそ時間にして3分ほどだ。小さい物ならもう少し長く隠せるがグリコはデカイ。隠すのにかなりの魔力を使うので3分が限界だ。


ヴェールの街の宿屋での最終実験をし、しっかり見えない事をネピリアに確認してもらった。なので、今回僕の屋敷の庭までグリコを連れて行きそこでレイとララに話をつけ、国王様と宰相に御目通りをしお願いをする。


こんな流れだ…まずは庭に着いた時に騒がれないようにしなければ。

僕が帰るのはまだ3週間以上先となっている。


僕が帰って来たらみんなびっくりするだろうな。


グリコを光学迷彩をイメージした魔法で隠し僕とネピリアは門の列へと並ぶ。とりあえずグリコには僕の屋敷を教えたのでそこの庭で待機しておいてもらう。ちょっとした騒ぎになる可能性はあるが…レグドンやアミアさんが何とかしてくれるだろう。


グリコには手紙を持たせてあるのだ。


門の列はお昼時近くのためとても混んでいた。

貴族門から入るべきか悩んだが臨時の貴族証を馬車もなしに何度も使ってはよからぬ疑いをかけられかねないのでやめておいた方がいいと思ったのだ。


1時間ほど列に並びようやく王都の門をくぐることができた。


「やっと王都だ…少しいなかっただけなのに懐かしく感じる」


「ここが王都…凄い大きい。それに見た事のないものがいっぱいあります」


「また連れて来てあげるから、今日は屋敷に向かおう。グリコの事もあるし、ネピリアを僕の家族に紹介しないと」


キョロキョロするネピリアの手を引き僕は屋敷へと最短ルートで向かう。騒ぎになってないといいけど…


少し急ぎめに歩いたが20分ほど掛かってしまった。

王都は広いので最短ルートを歩いても結構かかるのだ。


ようやく屋敷へと着いた。

しかし騒ぎどころか、とても静かだ。

誰もいなかったのだろうか…


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