episode:46
ネヴェラ山を越えた所でグリコには先に上空からウィンの街を越えた先にある森へと行ってもらった。ここからは歩きだ。
ワイバーン騒ぎがあったばかりなので偵察や見張りの人がいるかもしれない。出来れば近くまで行きたかったがバレるとまずいので仕方がないのだ。
僕とネピリアは橋まで歩く、時間にして大体2時間ほどだろうか。
橋を渡ってヴェールの街へと入る頃には門に入れるギリギリの時間になりそうだ。
「疲れてない?」
「大丈夫…逃げてきた時に比べたら」
最初に出会った頃、4日間くらいひたすら走って来たんだったな。
それよりは大分マシというかまだ2時間しか歩いてないし。
あれ2時間って女の子にはきついのかな?
基準がわからなくなって来た…
前世では間違いなく辛いと答える。
エルフ族って体力あるのかな?何も知らないのだ。
橋に到着した。
「この橋を渡って、4時間くらいかな…歩いたら町に着くから頑張ろう」
「えっ…」
絶望的な顔を浮かべている。
ここまででも2時間歩いている。橋に2時間、ヴェールの街まで徒歩だとこのペースで4時間ほどだ。後6時間も歩くと聞いたら嫌になるのはわかる。僕も走って早く着きたいのだ。
「休憩も入れてくから大丈夫。でも少し急がないと門が閉まっちゃうかもしれないから…」
「わ、分かりました。頑張ります」
10分程の短い水休憩を入れて僕達は橋を渡り始める。
ネピリアは終始無言だ。
ひたすら前を向いて歩いている。
「大丈夫?」
「話しかけられると気力がなくなります」
「あ、はい、ごめん」
気力を振り絞って歩いていたようだ。
邪魔をしたようで怒られてしまい思わず謝ってしまった…
この世界の女の子怖い…いや日本でも同じか。
1時間ほど早足で歩き続けようやく中心部へと到着した。
思った通り、いや想像以上に壊れている。
グリコと会った時には崩れていなかった所もほとんどが崩れている。
これでは崩壊した橋跡と言ってもよいくらいだ。
湖の水が完全に見えてしまっている…これでは休む事も通る事も出来ないだろう。
「どうしましょう…こんな事になってるなんて」
「ちょっと掴まっててね」
僕はネピリアを持ち上げた。
お姫様抱っこだ。ネピリアを抱えて向こう側へと飛び移るつもりだ。
「えっ きゃっ、何するの、、ま、ま、待ってー」
僕は跳んだ。勿論確実に跳べるのはわかっていたからやったのだが、ネピリアは怖かったようだ…
話したら嫌がる可能性があったので半ば無理やりだったが悪い事をしただろうか?これ以外に方法が思いつかないんだけどね…
「着いたよ、これで後は街まで歩くだけだね」
「本当いきなりはやめてください。心臓が持たないです」
「ごめん、言ったら嫌がるかなって」
「そ、そんな事ないですよ。お姫様抱っこ嬉しかったし…ボソ」
お姫様抱っこ嬉しかったようだ…
向こうは聞こえてないと思っているだろうが、僕の耳はかなりよいので拾ってしまうのだ。
「じゃあ歩こうか。それともお姫様抱っこする?」
「抱っこ…い、嫌です。そんな恥ずかしい、意地悪言わないでください」
ちょっと間があったがそこは突っ込んだらダメだろう。
また弄ってしまった。なぜだろうか、ネピリアを見ると弄りたくなってしまうのだ。
橋の入り口に差し掛かるとそこにはあのお人好しのおじさんがいた。
他にも冒険者らしき人達が何人かいるようだ。
「おじさん」
「お、もう帰ったのか?ネヴェラ山に向かったならウィンにでも行くんじゃなかったのか?」
あっそうだった。グリコに乗ってたから日付の感覚が狂っていた。
「ネヴェラ山の様子が変だったから戻って来たんだよ」
「そんでなぜ、そんな嬢ちゃん連れてるんだよ…子供二人でそんな危ない所へ…」
「まあまあそれは置いておいて、あっちなんの集まりなの?」
「あれは、ギルドから偵察依頼を受けた冒険者だな。橋が急に壊れた事とワイバーンの行方を調査するために集まっているみたいだ」
「そっかー。僕達は街に宿取らないとだから、行くね。閉まる前に行かないと」
「おう、気をつけろよ、それと有難う…」
僕はおじさんに手を振り街へと向かう。
「ハァハァハァ…疲れた」
「お疲れネピリア」
「なんでルイフ様は…疲れてないのです」
「鍛え方かな?」
能力値が高いからなんだけどややこしいから言わないでおこう。
「さすが使徒様です」
「んと…様ずけもいらないし使徒じゃないからそれも禁止ね。誰が聞いてるかわからないし余計な事に巻き込まれたくないでしょ」
「は、はい。ルイフ…君」
「うん、それでいいよ」
門へ着く、最後の駆け込み組が並んでいるので少し時間がかかりそうだ。
「そういえば身分証とか持ってる?」
「はい、エルフ族の者はみんなこの国から発行されているので大丈夫です」
よかった、身分証の事を忘れていた。
なかったらどうしようかと思った。
暫くすると僕達の番になり特に問題なく無事に門を通ることが出来た。とりあえず宿を探さないとだ、遅い時間なのでいい所がとれるか心配だ。
僕は前に泊まった宿へと行ってみる、ここはとてもいい雰囲気だった。しかし、この時間では空いている部屋は一つしかないとの事で別の宿を探そうとしたのだが…
「一緒でいいです」
「え、でも…さすがにそれはまずくない?」
「では、301号室の鍵です。夕食はすぐになさいますか?」
「あ、はい」
押しきられてしまった…
まあ子供同士でどうもないのだが、思春期の子供には色々あるのだ。
部屋に荷物を置き僕達は夕食へと向かう。
荷物はほとんど何も入っていない僕の袋とネピリアの物だけだ。
貴重品は全て亜空間倉庫に入れてあるので安全だ。
夕食へと向かう。
前に食べた料理とほとんど同じようだ。
お肉にシチューにサラダにパン。果実水だ。
中級宿は大体オーク肉のステーキを出すのが定番なのだろうか?
美味しいのだが色々食べたいものだ。
シチューに入っているお肉は鶏肉?のような味だがなんのお肉だろう。モモ肉みたいで美味しい。
ネピリアはサラダばっかり食べている。
やっぱりお肉は食べれないのだろうか…あらかじめお肉と変えてもらっておけばよかった。
「やっぱお肉は食べれないの?」
「んー…食べれないというか食べた事がないの」
「お肉食べた事ないの?美味しいのに…むしろお肉があれば生きていける」
「そんなに…美味しいものなの、、、私達の町では野菜こそが最高の美味とパパも言ってたけど」
僕は遠慮なくステーキを頬張る。
「うまーい…この肉汁溢れるオークステーキ。柔らかくて口にいれたら溶けてしまう。やっぱ食事の時間は幸せだな」
「むぅ…私も食べる…」
「本当に食べるの?僕が食べようか?早く食べないなら食べるよ冷めるし」
「食べますぅー」
慌ててネピリアが食べ始めた。
ちょっと急かしすぎたかな?エルフがお肉を食べても病気になったりしないよね?そこまで考えてなかった…
「うっ…」
「えっ大丈夫?ネピリア。お肉ってエルフ食べちゃ…」
「うっ…美味しい、こんな美味しいものをずっと食べてなかったなんて」
「あ、それは良かったね…」
はあ、びっくりした。紛らわしい発言しすぎだ。
「はい、ありがとうございます」
とても美味しかったようでお代わりをして3枚もステーキを食べていた。その細い体のどこに入るのだ…胸か、胸なのか。
部屋に戻るとベッドが一つ…とても気まづい。
向こうはそうでもないようで気にしてないようだ。
「なんかこんな風に外へと出て暮らす事になるなんて不思議です」
「僕もこんな風にエルフの女の子と一緒のベッドに寝るなんて思ってもなかったよ」
「一緒のベッドって恥ずかしいからわざわざ言わないでください、イジワルなんですから」
思った事を言っただけなのだが…誤解があるようだ。
「僕はね、Sランクの冒険者になるのが夢なんだ」
急に話を変えすぎただろうか?
「ルイフ様ならなれます。むしろSランクじゃないのが不思議です。大精霊様を鎮められる方など御伽の話です」
「偶々だよ…少しミスっていたら死んでたからね」
「それでもです。きっとすぐにSランクに登っていくのが目に見えます」
「ありがとう。そう言われると自信が持てるよ。でも神の使徒って言うのは誤解だからね」
「みんな分かっていますよ。それでも私達にとっては使徒様と同格の扱いなのです。それだけの事をしてくださったのです」
勘違いしてた訳じゃないのか…
必死に弁解したのに。
雑談をネピリアとしているとうちに緊張が解けてきた。
疲れていたのだろう…話している間にネピリアの反応がなくなった。
眠ってしまったのだ。
僕は少しベッドから起き上がり。
みんなに作った指輪を作成する。婚約者と決まった訳ではないので指輪でいいか悩んだのだが…
なぜか必要になるような気がしたのだ。
その後はいつも通り魔法の練習をして眠りについた。




