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episode:44





僕はグリコに乗り、ネヴェラ山脈を大回りしながらウィンを目指している。山の頂上には龍の巣があるらしく、グリコでは近づくことすら出来ないらしい。


異変のある山をわざわざ通る必要もないのでいいのだが…

山登りをした事は地元の小さな山くらいなのでどれくらい大きいのかわからないが、グリコが飛んでいる位置ですら結構な上空なのに山の頂上は雲で覆われほとんど見えない。


異変の影響かはわからないがとても重い空気が山を包んでいるのがわかる。僕にはそれ以上はわからないが…なんだろうか。

とても不気味というか嫌な予感が止まらない。


グリコに異変があってもあれなので、山に近づき過ぎないよう出来る範囲最短ルートでウィンを目指す。


前世の写真で見たエアーズロック…の上にエベレストのような壮大な山が乗っかっているそんなイメージだ。

見える範囲は岩で出来た壮大な山なのだが、その上は雪?がかかったような白い雪山だ。雲にかかって上の方は見えないが…僕の感じたイメージだ。


5時間ほど飛んだだろうか…

山の終わりが見えてきた、山道を歩いていたら数日かかるだろう山を大回りしてこれだけの早さで抜けられるのだ飛ぶって凄い。


日本でも飛行機があったが、圧倒的なスピード感があった。

遠い外国へと数時間で行けてしまうのだ空を自由に飛べたら便利だろうな…ソフィア曰く300年前の世界でも飛べる人はほとんどいなかったらしい。賢者と呼ばれるような者ですら5分飛ぶのがやっとだったとか。いつか少しでもいいから飛んでみたいものだ。


それまではグリコにお世話になるとしよう。

ん?飛べるようになってもグリコは仲間だ!必要だよ。


このまま行けば明後日にはウィンの街に到着だ。

予定より大分早くたどり着く事が出来そうだ。


山を抜け森を抜けた所で今日は野営だ。

一人での旅は少し寂しい、みんなと早く会いたいものだ。


グリコに近くで取った一角兎のお肉を焼いて渡す。

生肉でも魔物だから良いのだがなんとなくだ。


「これは…焼くとこんな旨くなるんですな」


「人間は魔物の肉を生では食べないからね。ついでだけど…気に入ったならこれからは焼いたのを一緒に食べようか。旅が終わったら僕の家族も紹介するよ」


「楽しみにしておきます主よ」


僕はテントを出し眠りにつく、ワイバーンは寝なくてもいいみたいで、起きるまで見張りをしてくれるらしい。なんとも有難い事だ。


安心して眠りにつくことが出来る。

僕はMy枕を亜空間倉庫から取り出し眠りについた。


目を覚ます、傍には誰もいない。

テントを出てグリコに声をかける。


「おはようグリコ」


「主様、おはようございます、何事もなかったですぞ」


「グリコに勝てる魔物がこんな森の浅い所にいるわけないしね」


「ははは、それこそ主様に勝てる魔物なぞ龍くらいではないですかな」


「龍ってそんなに強いの?僕も結構強い方だと思うんだけど…勝てない?」


「そうですな、龍にはランクがあるのを知ってますかな?」


グリコによると、

幼龍→成龍→古龍→神龍とランクがあるらしい。

竜はまた別物で、ワイバーンよりは属性竜のが上になるらしい。


今の僕だと成龍には勝てるが古龍には勝てないと思うとの事だ。


具体的にどうして勝てないという根拠はないが…見た瞬間に感じる存在感。それが古龍のが上らしい。勿論古龍の中にも各属性の龍が存在する。ネヴェラ山の山頂にいる古龍は氷龍との事だ。


という事は氷龍の方が僕より強いという事か。スキルを上手く使っても難しいだろうか?挑戦する気はないのだが。

人間は龍に手出しをしない…古龍と戦った記録はない。

それは勝てないという事をこの世界の人達は知っているからだろうか?そもそも頂上に行くまでに成龍もいるし登る人がいないのかな。


「まあ戦う事なんてないし、気にしちゃダメだね」


「そうですな、関わらないに越した事はないですぞ」


僕達はウィンに向けて出発する、明日には到着だ。

頑張れば今日つけそうだが、門が開いている時間に到着は難しいので明日飛んでいるのが見えない程度の距離で降りて向かう予定だ。


今は森の木の上ギリギリを飛んでいる。

上の方を飛んでいると遠くから目撃されても困るからだ。


そして低空飛行をしていたからか…自らフラグを回収したのかわからないが、森の中に倒れている人がいる。

これは関わらない方がいいに決まっている、こんな森の中にエルフの女の子が倒れている訳がないのだ…


しかも、服はボロボロだ。全身傷だらけに見える。

少し止まって眺めていたが厄介ごとに関わってレグドンの妹が助からなければ申し訳ないので、無視していこうとする。


「主様、見てますね」


「うん、見られてるね確実に。僕今目が合ってる」


「どうされるおつもりですか?」


「厄介ごとに巻き込まれる気がするからできれば無視したい。けどあんな可愛い子置いていったら…後悔する気がする」


「…助けるんですね」


「そんな顔で見ないでよ…人助けだし」


見過ごせる訳もないので僕はグリコと共に下に降りる。

僕達が下に降りると少女は怯えて…後ずさる。


「やあ」


「きゃあぁぁぁっ食べないでください…私食べても美味しくないです、はい、絶対お腹壊します」


少女の地面がなぜか濡れている。なんでとは言わない。


「食べないから大丈夫僕人間だからね…」


「あっ、人間の男の子?」


「えっ今気づいたの?僕と目が合ってたよね」


「大きな竜がいたから…見てたらそこに黒い点が見えてなんだろうって思ったの」


「黒い点が僕って事か…まあいいけど」


「主様、私が大きいばかりにすみません」


「いいよ…竜がいたら普通竜を見るよね、僕小さいし」


「あの…その竜はなぜ襲ってこないのですか?」


「僕のペットだからだよ」


「竜がペット…あなた様は神の使徒様でしょうか」


「違うよ、ただの冒険者だよ」


「外の冒険者様は龍をペットにするのですか…凄いです」


なんか誤解しているが訂正するのも面倒だ…


「それで、なんでこんな所で倒れていたの?」


「お腹が空いてしまって…もう4日も何も食べずに走ってきたので」


「なんだ…空腹で倒れてただけか」


僕はリンゴを取り出して少女に渡す。

少女といってもおそらく10歳前後僕と歳は変わらない。


緑の髪に緑の瞳、そして長い耳。そして少し大きめな胸。

エルフは絶壁だと小説で学んだが…違うらしい。この歳で膨らみがはっきりわかるほどとは将来大物に…薄いボロボロの布服1枚だけだったのでつい変な事を考えてしまった。しかし何も食べていなかったからだろうやせ細ってしまっている。


「ありがとう…」


「とりあえず、安全な街まで一緒に行く?ウィンの街に行く予定だけど」


「ウィンには行きたくないです…ありがとうございました。私はもう大丈夫です」


「そんなベタベタで大丈夫と言われても説得力が…」


「へっ きゃっ…見ないでください」


「主様も意地悪ですな」


「冗談冗談…怒らないで。なんでウィンはダメなの?ここから先はネヴェラ山、君一人で入ったら確実に死ぬよ?君の足ではここから次の街まで1週間以上かかると思う」


「それでも…私は戻れないのです」


何か訳ありなようだ。

聞いてもいいのだろうか。水の精霊の元へ行かないといけないのだがどうしたものか。


「訳ありか…言わなくてもいいけど、僕も急ぎなんだよね。仲間の家族の命がかかってるからね」


「私は、エルフ族の族長が次女、ネピリア・ファスティオンです。森の精霊様がお怒りで私はその生贄にされて…怖くなって逃げてきました。覚悟は出来ていたつもりでした、しかしいざ死ぬと思うと怖くなって…今頃森の仲間たちは大丈夫だろうか。けど、今更私は戻れない」


「話して欲しいなんて言ってないけど…僕はルイフだ」


それにしても精霊か。この近くと言うと恐らく水の精霊だろう。

ソフィアからそんな報告はなかったが。


「ソフィア、水の精霊がおかしいってほんと?」


「あら、ルイフもう知ってたのね。私がついた頃には既に狂乱状態だったわ。何者かに何かされたのね…変な魔力が水の精霊を包んでいるわ。それにしても大精霊を狂乱させるほどの力のあるものがいるとは思わなかったわね」


どうやら事実のようだ。これも何かの縁なのだろうか。


「ネピリア、ウィンに一緒に行こうか。僕の目的も水の大精霊に会う事だから」


「えっ…私は。でも仲間を裏切った今更戻っても」


「大丈夫。僕がなんとかするから、森のみんなにはきちんと謝ろう。生贄にされたら誰だって怖いからみんなも解決さえすれば許してくれるよ」


水の精霊の事に詳しいエルフ族に会えるなら上手くすれば力になってくれるかもしれない。解決もできれば一石二鳥だ。

だが、エルフ族に会うって言ったらネピリアは連れてってくれるだろうか。


「あのさ、ネピリア。エルフ族の族長と会いたいんだけど。案内してくれたり」


「嫌です。今更パパになんて言えば…顔を会わせるなんて」


パパって異世界でも言うのか。

族長の娘だから、お父様とかそんな感じだと思っていた。


「水の大精霊の怒りを鎮めるにはどうしても必要なんだよ。森の仲間を救いたくない?」


「救いたいです。でも…」


「ネピリアは森の外へ助けを求めにいった。それだけだよ」


「…私は許して貰えるのかな」


「大丈夫…娘を生贄にしたい親なんていないから。解決さえすれば喜んで迎えてくれるはずだよ」


本当にそうだろうか…

エルフ族の事はわからない。けどきっと家族なら…

前世では両親共に死別していて一人だった。

こちらの世界の両親は良くしてくれるし僕を絶対に守ってくれる自信がある。


しかし、僕の家はそうでも他の家は違う事だってある。

変な期待をさせて良かったのだろうか…利用するようで少し罪悪感がある。


「主様、お気になさる事はありません。水の大精霊など人の手にはおえルものではないと思います。最善があるなら尽くすのが当たり前なのです。出来れば関わらないで貰いたいのですがそうもいかないのですよね」


「そんなものかな…まあ、僕の目的とも合うし。それに関わるなと言われても僕は関わるしかないんだよね。どちらにしても」


「わかりました…。案内は出来るのですが、私といる事で迷惑かけてしまったらごめんなさい。後黙ってて欲しいの…ゴニョゴニョゴニョ」


「ありがとう。何を黙ってるの?」


「だからその…さっきの」


「さっきの?」


「だから…濡れちゃったの」


「ああ、おしっこ漏らしたやつね」


「はっきり言わないでよ…。。うぅぅ」


「言わないから大丈夫だよ。その歳で漏らしたとか恥ずかしすぎるもんね」


「バカ…」


ネピリアが泣きそうだ、ちょっとからかいすぎてしまった。

前世では人をからかったりする余裕はなかったからな…


学業とバイトで精一杯だった。

この世界に来て余裕があるからこそ、出来るんだろうな。

しかし、される側はあれかも知れないので程々にしよう。


「大丈夫だから、そろそろ行こうか。森へ案内よろしくね。じゃあグリコよろしく」


「えっ…龍に乗るの?」


「乗らないと…辿り着くまで時間かかりすぎるからね。怖がらなくても安全だから大丈夫だよ」


また漏らしちゃいそう?とか突っ込みかけて僕は口をチャックした。

あまり意地悪すると嫌われそうだ。


「う…うん」


なんとか説得してグリコに乗る。

出発出来たのは良かったのだが。


「きゃぁぁぁっ 落ちるぅぅぅぅ」


「落ちないって…そんな大声出さないで誰かに聞こえたらどうするの」


「だってーーーー速いよ…速すぎるよ、落ちたら死んじゃうよ」


サイレントの魔法を使い…音を消し静かにした。

口の形で大体何言ってるかわかるから問題はない。

とても快適になったものだ。


あっという間にウィンの街付近に到着した。

エルフの森はウィンの森を越えた湖の反対側から行けるらしい。

こんな遠くからよく歩いてきたものだ。


街によりゆっくりしたかったが、急いだ方が良さそうなのでエルフの森へそのまま向かう事にした。


「こんなすぐに戻ってこれるなんて…私何日もあんなに走ったのに」


僕も空を飛ぶのはずるいと思う。

グリコ様様である。


水の大精霊のいるセイレス湖を越えて少し行った所で降りる。

ここから徒歩で行くのだ。


エルフのみが見える結界があるらしい。

精霊視と言って普通の人に見えないものが見えるエルフ固有の能力らしい。


とても普通の森の中、そして普通の木と木の間。

ここに結界が張られているらしい…違和感も何もないが。


グリコを置いて僕達は結界の中に入る。

一瞬何かに触れた感じがした、魔力によく似ている感じだ、結界も魔力で作っているのだろうか?それなら僕にも出来るかもしれない。


結界に入って暫くすると大きな大樹が現れた。

開けたその場所には町があり、どうやって消していたのかわからない程の大きな大樹…


木の上に木で出来た家…まさにエルフの町だ。

しかし、町の中は閑散としていた。


「全然エルフいないね。思ってたのと違う」


「今は緊急時…みんな家の中に閉じこもっているのよ、けど門番までいないなんて」


そりゃそうか…信仰している大精霊が狂ってしまったら大問題だ。

そのまま町を歩いて一番奥にある、少し大きめな木の上の家へと向かう。


ここがネピリアの家…エルフ族族長の家か。


コンコン


コンコン


「はい…どちら様?」


「私…姉様」


バタンッ


「ネピリア…無事だったのね」


「ごめんなさい…姉様。私のせいで、迷惑をかけて」


「ううん…長女じゃなかったら私が代わってあげられたのに怖い思いさせてごめんなさいね。でもお父様に見つかる前に安全な所へ逃げた方がいいわよ。お父様と言えど村の民の命とあってはあなたを庇えないもの」


「その事でパパに用があって…」


「お父様に会うの…?それとその人は?」


「この人はルイフさん冒険者で命の恩人。水の大精霊に会いにいくって聞いたからパパの所に案内するため戻ったの。この人ならなんとか出来るかもしれない」


「あなたと同じくらいの子供にしか見えないけど…あなたが言うなら。お父様は今裏の大樹の祠にいるわよ、気をつけてね」


族長の家の裏口から行ける大樹の麓にある祠。

大樹に宿るエルフ族の神を祀っているらしい。

エルフ族の神エトワシス。300年前の戦争の時にエルフ族と大樹を守り力尽き今は祠で眠っているとの事だ。


神社の前にある鳥居のような木を組んだ門を通り祠へと僕達は歩いていく。祠の前には年老いたエルフが一人、祠に祈りを捧げていた。


「ペルアか…?」


「いいえ、パパ…私です」


「ネピリアか、なぜここにいる、今更帰ってきたとは思わんが。それとその男の子は誰じゃ」


「あの…えっと」


「僕はルイフです。冒険者をしております。偶然娘さんと森で出会いこちらに案内して頂きました」


「人間の小僧がここに何をしにきたのだ…今は緊急時ゆえすぐに出て行くなら咎めはしないがここはエルフ以外が立ち入るのは禁止されている」


「僕は水の大精霊に会うために旅をしてきました」


「大精霊様に人間が何のようだ…」


「理由は言えないですが、悪いようにはしないので大精霊様の事を教えて頂けませんか?この事態になる前に何か原因があると思うのですが」


「ふむ…嘘は言ってないようだの。とは言え、儂達にも心当たりがないのじゃ。突然湖の気配が変わったと思ったら…大精霊様がエルフ族の結界を壊そうとしだしたのじゃ。今はこの町の民の中で魔法に最も長けたもの達が魔力を注いで耐えておる。薬も減ってきているそう長くは持たん。そこでエルフ族の禁忌、長を連ねる一族の女の血を使う事で結界を大きく強化出来るのじゃよ、それにネピリアは選ばれた。どこかで生きていてくれればいいと思っていたがこうも早く再会するとはの」


「パパ…ごめんなさい。私のせいでみんなが」


「よい、儂もお前を送り出す時、なぜ変わってやれないと。胸が切り裂けそうな思いだった。悪かったなネピリア…こんな父親で。娘一人も守れないとは情けない」


やっぱり娘を好きで生贄に出したりしていなかった。

これでネピリアも少しは…


「パパ…」


「じゃがネピリアがいるのがわかれば…儂だけの意思では、民全員とネピリア。族長としては民を優先せねばならん、どうか娘を連れてどこかへ…」


「それは出来ません。僕は水の大精霊に会わなければ行けません」


「そうか…止めはせんが。今行ったらお主死ぬぞ、案内はできんぞ」


「私が案内します」


「ネピリア…お前、死ぬ気か」


「ルイフさんなら何とかしてくれる気がするの、だからパパ行ってくるね」


僕とネピリアは大精霊のいる、湖へと向かう。

湖は結界を出てすぐの先程通った湖だ。その湖には一箇所だけ結界の張られた場所があるらしい…


そこを通る事で大精霊の元へと辿り着ける。

この結界壊れるとエルフ族を守る森の結界も壊れてしまうらしい。

今は懸命にその結界を守っている所だ。


僕達は結界を出て大精霊の元へと向かう。

他のエルフ族とネピリアを会わせるのを族長は躊躇っていたがネピリア自信が行くと決めたので僕はそれを尊重した。


勿論危険があれば守るつもりだ。

結界を抜けた先には10人のエルフ族がいた。


エルフ族随一の使い手達だ。

薬で無理に結界を維持しているので苦しそうだ。

魔力が尽きかけているのだろう。


「な、なぜネピリア様がここに…」


「ここはもうもたない。逃げてください」


「一人苦しめちゃってごめんね。もう少し私達に力があれば禁忌に頼る必要なんてなかったのに…」


「無事にどこかで生きていてくれればと思ったが…戻ってきてしまうとは皮肉なものだな」



みんなネピリアに生きて欲しかったようだ。

追っ手がなかったようだし、初めから逃がすつもりだったのか?



「みんな…ごめんなさい。私が逃げたばっかりに」


とりあえず僕は魔力を譲渡するイメージで僕の魔力の3割ほどをみんなに分け与える。回復力が異常なので3割くらいどうって事ないのだ。半分くらい渡しても良かったのだがここはエルフの村だ。

人間の僕に友好的な人ばかりではないだろう。結界を維持する負担が減れば問題ないだろう。



「これは…人間か。お前がやったのか?助かったがこれはマナトランスファー失われた太古の魔法。しかも同時に…何者だ」


「僕は冒険者のルイフです。ネピリアの友達かな?」


「ネピリア様を呼び捨てにするとは…こんな状況でなければ」


「待ってみんな。ルイフさんは私の命の恩人。死にかけていた私を救ってここまで連れてきてくれたの」


「なぜ…ここに連れてきたのだ。他の街にでも連れて行ってくれていれば、ネピリア様だけでも生き残れたのに…」


「いろいろ言いたい事があるのはわかったけど、今は時間がないからちょっと待ってね。水の大精霊様はこの先だね」


「まて、お主どこへ行くつもりだ。そっちはダメだ、人間が踏み入れていい場所じゃない」


「ネピリアは待ってて」


「はい、わかりました」


「おい、待て、聞いているのか」


「結界の維持よろしくお願いしますね」


僕は大精霊の元へと向かう。

ソフィアも恐らくそこにいるだろう。


奥へ進むと、小さな湖があり、そこには凶々しい魔力を放った水の龍…がいた。湖の水がそのまま水上がり龍の形を成しているのだ。


「これが大精霊」


「遅いわよルイフ。これはまずいわね…動きを鈍らせるだけで精一杯ね。変な魔力が流れているわ、誰かが操ろうとして失敗したんじゃないかな」


「どうしたらいいの…僕勝てる気がしないんだけど」


凄い重圧だ…とても大きく見える。

ビビっている訳ではないが今まで戦った相手とは桁が違う。

恐らく下手に動いたら僕はそこで終わる。


「そうね…お手上げと言いたい所だけど。方法はあるわ」


「あなたの魔力を同調させて大精霊を取り込みなさい」


「えっそんな事したら僕死んじゃうじゃん。第一同調って近づいたら僕終わりじゃない?」


「そうね、死ぬわね」


「やれるか!!」


「でも、私がいるから大丈夫よ。私が即座に取り込んだ大精霊の大半を吸収するわ。後はあなたなら何とかなるでしょ」


「何とかって…やるしかないんだよねどうせ」


「ええ、それしかないわよ」


僕は覚悟を決めて、動き始める。

凄く空気が重い。


魔力を自分自身に大きく纏い広げる。

大精霊に近づいていくと水の龍が動き始めた。


ウォーターボールだろうか、大きな水の塊が飛んでくる。

ギリギリで避けつつ近づこうとするが、中々近づく事が出来ない。


大きさもだが、水の塊のスピードが速すぎるのだ。

ギリギリで避けるのが精一杯だ。

少しでも動くのが遅れれば当たってしまう。


僕は避けつつ、赤い玉を水の龍へ向かって放つ。

大盤振る舞いの16個だ。こんなに投げたのは初めてだ。


ドッカーンドカーンドカーン


凄い爆発と共に水蒸気があたり一帯を包む。

僕は風魔法で自分を包み身を守っている。


ソフィアは僕の赤い玉を見た瞬間、離れたようで無事だ。

水蒸気爆発…考えていなかった。


最大限の攻撃をと思ったのだが、水の龍なら青い玉を投げて凍らせてしまえば良かったかもしれない。


水蒸気がはれるとそこには、元のままの大精霊がいた。

全く効いていないのだろうか…


ビュンッ…


ブシュッ


水の刃が飛んで来て少しかすめてしまったようだ。


さっきの水の塊とは違い、水の刃は見えにくい上にさらに速い。

これを避け続けるのは難しい。

強くなったつもりだったが…これはまずい。


青い玉を刃にぶつけてなんとかギリギリ避ける。

凍りつく事で僅かに刃の動きが鈍るのだ…

逆に当たれば凍りついた事でさらに凶悪さを増した刃によって切り裂かれる事だろう。


「ソフィア、どうするのこれ。近ずけないって」


「そうよね…結界魔法使って突撃するのはどう?」


「イヤイヤ、使った事ないし、失敗したら頭と体が分かれちゃうよね」


「私の今の力だと結界張っても2秒も持たないのよ」


僕の魔力を足してもこの威力だと4秒くらいだろうか?

連続でこちらが張るよりも向こうが水の刃を飛ばす方が早いだろう。

詰んだかな…何か手が。


あっ…黒いボールを大量に水に投げ入れたらどうなるのだろうか。

水の質量が上がれば相手の行動も鈍るのか…

そもそも物体じゃないものに効果があるのだろうか?

赤いボールは爆発したが…黒いボールは試した事がほとんどないためわからない。相手そのものに作用するのは当たった場所周辺の重力を重くするのか。


当たった場所のみだと水を入れ替えれば問題ない気がする…

それくらいの芸当大精霊なら普通にするだろう。


大精霊のいる場所を重力で覆いたい。


考えてる間に徐々に攻撃を避けれなくなってきた…

水の刃だけじゃなく、水の塊が同時に飛んで来たりするのだ。

水の塊の後ろから刃が飛んで来たのにはびっくりした。


水の塊を避けた事で油断して刃が僕の横髪を切った。

頭頂部じゃなくて良かった…


屋敷に戻ったらザビエルでは恥ずかし過ぎる。

まあザビエルが通じるかわからないが。


なんだろうか…徐々に攻撃の威力が強くなっている気がする。


「なんかどんどん時間経つほど強くなってない?」


「恐らく自我がなくなりつつあるのよ」


それはまずい…


「ちょっと考えがあるから、次の水の刃を一瞬で良いから止めて貰っていい?」


「わかったわ」


僕は魔力の半分を使い黒いボールに魔力を込めた。

勿論16個全てだ。魔力を込める時にちょっと工夫をしてみた上手くいくかわからないが…それはおまけ程度に考えている。


風魔法で上空に待機させる。


水の刃が来た。

一瞬止まった刃を避け僕は一気に上空に上げておいた黒いボールを大精霊めがけて飛ばす。その間僕は気を引くために大精霊に近づく。


刀を抜き次に来た水の塊を…重い

斬れずに跳ね除けられた。


僕は体勢を大きく崩してしまった。

中に浮きなんとか刀を離さないようするだけで精一杯だ。


「ルイフ…危ない」


終わった…次の刃を大精霊が放とうとしているのが見える。

黒いボールは当たったはずだが何も起きない。


何秒たっただろうか…

恐らく3、4秒なのだろうが攻撃が来ない。

いや、来ているのだが遅い…遅いのだ。


黒いボールが全て水の大精霊の元で集約し大きな黒い塊となり大精霊を覆っている。


ウウウウウウウウウウヮ


水の大精霊が唸り声をあげている。


「何をしたの?水の大精霊が動けないほどの重力魔法って…そんな隠し玉持ってたなら早く使いなさいよ。解ける前にさっさとやるのよ」


「ぶっつけ本番だったから…実際発動しなくて終わったと思ったし」


僕は魔力を解放し、水の大精霊と同調させていく。

魔力を同調させていくと、黒い鎖に繋がれたイルカ?小さい青色の可愛いイルカが繋がれて苦しそうにしている。


もしかして…これが大精霊?小さくて可愛いイルカにしか見えない。

近くへといき僕は直接魔力を当て同調していく。


「うっ…なんて魔力だ」


体の中を強烈な魔力が満たしていく。

溢れでる魔力に体が対応出来ていない。


このまま取り込んだら体が破裂してしまいそうだ…


「待たせたわね」


ソフィアが僕と大精霊の魔力に同調し、中継地点になってくれたようだ。僕のギリギリ耐えられる程度の魔力を同調させ残りはソフィアが吸収していく。


大精霊の魔力を取り込んだからだろうか。

僕にも魔力の流れが見えるようになった。


綺麗な魔力と黒い凶々しい魔力が僕達を循環している。

黒い魔力が入るとソフィアは苦しそうだ。


ソフィアのおかげで大分負担が楽になったので、

浄化をイメージしながら、魔力を循環させてみる。


僕がイメージしているのは、仏だ。

全ての悪いものを浄化する、黄金の光。


魔力の性質が変化していく。


ソフィアの顔色が徐々に良くなっていく。

黒く凶々しかった魔力も綺麗な純白の魔力に変わってきている。


「んん…あなたはソフィア様。そして人間の子供かしら?」


可愛らしいイルカの姿なのにお姉さんみたいな喋り方が違和感でしかない。


「僕はルイフ、冒険者です」


「何があったのよ。私が前に来た時は大丈夫だったわよね」


水の大精霊が語り始めた。


ソフィアが帰ってから、数日。

湖に何か黒い石のような物が投げ込まれたらしい。

気配から恐らく魔族。


なぜこのような場所にいるのかはわからなかったけど、

すぐにその石を取り除こうと浄化を開始したらしい。


しかし、徐々に取り込まれ始め終いには自我を保つので精一杯な状況になってしまったらしい。


そして魔力の吸収が終わると小さいイルカがさらに小さい手のひらサイズの可愛いイルカになっていた。こんなペットがいれば誰もが殺到しそうな可愛らしさだ。


「私の力は中級精霊程度にまで落ちてしまいました。これから暫くは大丈夫でしょうが、いずれこの世界への影響が出てくるでしょう。現在大精霊になれそうな格を持った子はいません」


「そうね…一部を切り離すだけなら良かったのだけど。ああなってしまってはほとんどを吸収するしかなかったわ」


「はい、森のエルフ達の結界も私が結界を作り維持していたので、恐らく近いうちに結界を維持する事が出来なくなるでしょう。常に魔力を入れ続ける訳にはいかないですし」


これって結構な問題だよね。

エルフ達の町を隠している結界が消えたら…

隠れて生活しているエルフ達にとっては脅威だ。


それにあの大樹あんな大きなものが森に現れたら、ウィンの街からでも見えるだろう。恐らく軍や冒険者、色々な人が興味本位で殺到する事間違いないだろう。


「ソフィアどうする?」


「どれくらいもつのよこの結界」


「特に襲撃などがなくエルフ族の町を隠すだけなら…1年は問題ないでしょう」


「それだけあれば十分ね。私が最後に少し結界を強化していくわ、これで2年くらいにはなるわね」


2年持てば暫くは気にしなくても問題はなさそうだ。

一様この事は伝えないといけないだろう。


奥から僕達はエルフ族が結界を維持してくれている場所へと戻る。

そこにはネピリアと族長であるネピリアの父がいた。

なぜかみんな地面に頭をつきひれ伏している。


「ネピリア終わったよ、色々と報告があるんだけどね」


「ルイフ様…ありがとうございます」


『ルイフ様ありがとうございます』


「ちょっと待ってよ。様って急にどうしたの」


ネピリア、そして族長、先程結界を維持していたエルフ達が土下座をしている状態だ。殿様にでもなった気分だ。


「ネピリアから聞きました。ルイフ様は神の使徒様かもしれないと。そして今回水の大精霊様を鎮めた事で確信しました。神の使徒ルイフ様にエルフ族を守って頂きましてありがとうございます」


「待って待って!それ勘違いだよ。僕はただの冒険者で神の使徒でもなんでもないよ」


「私の契約者なんだから神の使徒でも間違いではないわよね」


「いやいや、ソフィアと契約したのはスローライフのためだからね。神の使徒とかなったら聖国に目を付けられたり魔族と戦う事になったり大変なイメージしか浮かばないからね。そんなの嫌だよ僕は!」


「神の使徒とバレてはいけないのですよね。わかっています。我々だけで留めておきますのでご安心ください」


勘違いしているが…

広まらないならいいかな?説明してわかってもらえそうにない。


「なんか勘違いしてるけど、とりあえず大事な話するけどいい?」


「ははあ、何なりと仰ってください。ネピリアでしたらどうか連れて行ってください」


「いや、違うからね」


「違いましたか、すみません」


僕は結界の事と大精霊が力を失った事を話した。

話し始めると大切な話とわかったのか皆真剣に聞き始めた。


「ふむ、そうですか…しかし2年の間守って頂けるであれば我々も色々と準備も出来ます。長い間守って頂いただけでも感謝していますし、森の中では早々我々は負けません。戦えない者には注意する必要がありますが、大丈夫でしょう」


大丈夫とは言っているが…守られていた町が急に守られなくなるというのはかなり状況の変化があると思うが。

僕の方でも2年の間に色々と考えておく必要がありそうだ。


「それで使徒様…ネピリアを連れて行って貰えるんでしょうか?」


「えっなんでそうなるの?」


「ルイフ様は私では嫌でしょうか」


「この際だから話すけど僕婚約者が4人いるんだよね」


「構いません、五番目の妻としてください」


「エルフ族の族長の娘が五番目の妻で問題ってないの?」


「使徒様と結婚出来るのであれば何番目であっても問題ありません」


えっとどうしようかな…

みんなに相談もしないとダメだろうし。

5人も妻をとるって、僕まだBランク冒険者としての肩書きしか持ってないや。前世では考えられないな…こんな美女達が僕の嫁になるなんて。


皆の視線が痛い。連れていかなければ恨まれそうなくらいの視線だ。



「婚約者達にも相談しないといけないので、はっきりとは言えないですが、とりあえず一度ネピリアも連れて僕の家に帰ろうと思います」



仕方なく僕は一度連れ帰る事にした。

ネピリアは可愛いし…少しの間一緒に居ただけだけど嫌いではないのだ。好きかと聞かれるとまだわからないが婚約者の皆が良いといえば一緒にいるくらいは良いだろう。


それで本当に好きだとお互いが思えば結婚もいいかもしれない。


その日は盛大に宴をした。

ソフィアは吸収した影響で暫く動けないらしいので、先に家に戻って休憩している。普通の人には見えないので問題はないのだが、ベッドで寝るのが一番休まるらしい。


そして小さく手のひらサイズになった水の大精霊は僕についてくるらしく、ペットとする事にした。勿論ペットとは言っていないが、僕の傍が一番回復するのが早いらしい。ソフィアも言っていたがなぜなのだろうか。魔力量だけなら僕より高い人がいそうだが。


それを聞くと魂の格が…とよくわからない説明だったので

気にしない事にした。


宴には見渡す限りのエルフが。

大人と子供合わせて1000人ほどのエルフが住んでいるらしい。

世界で1000人と思うと少ないものだ。そう思っていると、他の森にも別のエルフの集落などが存在していてここにいるのは大樹を守ってきたエルフ達だけらしい。


全員美形だ。男も女も美形…

僕?可愛らしい顔してると思うけど、エルフみたいな美形ではない。

何も悔しくはない…僕は人間だ。


人間にもイケメンはいるって?僕も大人になったらイケメンになる予定だから大丈夫だ…悔しくなんかないんだ中の上、いや上の下にはなれる顔だと思っている。前世では中の下くらいだったかもしれないが。


宴の食事は木の実や、芋虫、野菜類が中心だった。

僕はお肉が好きなので…ちょっと物足りなかったが、初めての芋虫は意外と美味しかった。凄く抵抗があったのだがネピリアにアーンされて断ろうとすると、泣きそうな顔をしたので食べるしかなかったのだ。


お肉は食べた事がないらしい。この世界のエルフは菜食オンリーなようだ。虫の肉は肉ではないのだろうか?とか考えたが変なツッコミは余計な災いを招く事になるので黙っておいた。


宴も終わり、落ち着いた頃僕は族長のジレイ・ファスティオンに声をかけられた。


「使徒様、どうか娘をよろしくお願いします。無理やり連れて行って貰う形になってしまったのは申し訳ないのですが、儂は一度娘を生贄に出した身こんな状態でどうやって娘と過ごしたらいいのかわからなかったのです」


「でもそれは…民のため仕方なく」


「それでも、儂はこの先ずっとこの後悔を背負って生きていく事になるでしょう、それに良かったと思っています。この小さな町で一生を終えるのは可哀想ですからな。儂も若い頃冒険者をしていた事があります。外の世界の楽しさは知っているつもりです。エルフ狩りなどが頻繁に起こったためこの地に隠れ住むようになりましたが本来は人間や他人種と仲良く過ごせるのがいいと儂は思っておるのです」


エルフ狩りか…この世界は奴隷制度があるんだったな。

身内が攫われて酷い思いをするのは辛いだろう。

隠れて住みたくなる気持ちもわかる。


「娘さんはしっかりとお預かりするので安心してください。しかし僕はただのBランク冒険者です。家は貴族ですが田舎の男爵です。エルフの族長の娘さんに相応しいかはわかりませんがいいんでしょうか」


「何を言いなさる。あなた様ならいずれ相応の地位を得るでしょうに。そんな安泰なところへ娘をやれるのだ。親としては安心だ」


なぜみんな僕の事をそんなに過信するのだろうか。

強さもSランクに及ぶかわからないし、僕よりいい人なんてこの世界には沢山いる。前世の自分が重なりどうしても自信が持てない。


「努力しますね、また落ち着いたら顔を出します」


僕はネピリアの父親との話を終え、用意してもらった部屋でゆっくりと休む事にする。お酒の飲める大人はまだまだ宴を続けるようだ。

それ程エルフ族にとって精霊様の暴走は一大事だったのだろう。

皆心から楽しんでいるように見える。初めて来た時とは大違いだ、目的が重なっただけとはいえ、エルフ族を救えた。


僕の力で救う事が出来る人達がいるんだな…

家族を守れれば良いと思っていたが、今回の事で僕は大切な人達は沢山居てもいいかもしれないと思った。

何れエルフ族の人達の結界も消える。その時の対処法はまだ決まっていない。僕がみんながのんびり快適にスローライフが出来る街を作れたら僕の目的だけではなく、救える人も増えるのかな。


まあ、そんなの夢のまた夢なのだが…

ただの冒険者が領地を持つなど、ありえない。

Sランク冒険者になってやっとその権利を貰うに相応しい人物となる。


他種族が楽しく笑って過ごしている。

そんな夢を僕は見ていた。


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