episode:42
皆が僕を探している頃僕は夕食を食べ終わり、ベッドでのんびりと過ごしていた。明日の朝情報を得るまでやることもないため魔法の特訓をしつつ眠くなるのを待っている状態だ。
少しずつ魔力が減っていき、眠気が出てくる。
眠れない時に魔力を使い魔法の訓練をするのはとても効率の良い睡眠法だ。睡眠薬など飲まなくても魔法の技術が上がると共に疲れて眠気が来るのだ。
勿論気絶するまでやる必要もない。
ベッドで横になりながら魔力を急激に減らして行くと眠くなってくるのだ。普段魔力がギリギリになっても戦っている時はアドレナリンが出まくってるので、眠気は来ないので心配はいらない。
僕は段々眠くなってきて、瞼を擦りつつ外の騒がしい様子に気付いた。外が慌しいのだ、大きな叫び声や人の走る音がする。
鎧が擦れる音がするので、冒険者の人達が走り回っているのがよく分かる。
魔物の襲来でもあったのだろうか?
だが、緊急の鐘がなっているわけでもない…
僕は眠いのだ…明日の朝確認しよう。
僕は眠りについた…
はずだった。
コンコン
コンコン
「お客様、受付に冒険者ギルドの受付のレミーさんと言う方が来られています」
僕は眠い体を起こし、ドアの前へ行く。
「眠いのでまた朝行くとお伝えください」
「かしこま…」
ドンドンドン
ドンドンドン
「困ります、ドアを叩かれては。お客様を無理やり呼びつけるのはギルドと言えど辞めていただきたい」
「待ってルイフさん、ギルドマスターがお呼びです。今すぐギルドにお願いします」
人が気持ち良く寝ようとしているのに扉を叩いて、大声を出すとは…
僕は眠いのだ。
「何の用事でしょうか?さっきはギルドマスターに繋げないと言われたと思いますが」
「すみません…私の判断ミスです。王都のギルドマスターからの推薦されるような方とは知らず。このままでは私の責任問題になってしまいますので、どうか来て頂けないでしょうか」
王都のギルドマスターと聞こえた。
僕がここを通るのを見越して僕に対処させようって事だろう。
このままではレミーさんの責任になってしまうらしいし可哀想だろう。10歳の子供が強そうに見えないのは当然だ、レミーさんは悪くない判断だと思う。
「わかりました。10分後に向かうので、ギルドに戻っててください」
僕は顔を水魔法で作った冷たーいウォーターボールの中に突っ込み無理やり目を覚ました。冒険者の格好に着替えをし、ギルドへと向かう。あの人の考える事は分かっているので恐らくワイバーンを倒す依頼なのは確定だが、一人で対処させてくれるかが問題だ。
ギルドへ入ると沢山の冒険者が集まっていた。
僕に視線が一斉に向く。
何か僕はしたのだろうか…
「お待ちしておりました。ルイフさん、こちらへお願いします」
「はい、なんか僕に視線が向いてる気がするのですが何かしました?とても気まづいです」
「すみません、私がルイフさんを探す時に冒険者の方々に捜索をお願いしてしまったのですが、ギルドマスターからもルイフさん見かけたら教えてくれと指示もあった事で、ルイフさんを何者かみんな探ろうと視線を向けているのだと思います」
何とも、厄介なことをしてくれたものだ。
変な注目はあまり好きではないのだ。
「とりあえず早く行きましょうか」
ギルドマスター室へ少し急ぎ足でレミーさんと共に向かう。
コンコン
「ルイフさんをお連れしました」
「入ってくれ」
室内に入ると髭ダルマみたいな人が…椅子に座っていた。
他に人は…いなさそうだ。
この髭ダルマがマスターなのだろう。
「こちらがルイフさんです、私は失礼します」
「おう、助かった。俺はヴェールのギルドマスターのダイカンだ。宜しく」
「ルイフです。とても眠いです」
「すまなかったな…だがそんな事言わないでくれ、こっちもワイバーンのせいで商業ギルドからも急かされて大変なんだ」
「それで要件はなんですか?」
「王都のギルドマスターのシフォンは知っていると思うが、シフォンからお前を頼れと言われてな…。Bランクパーティが2つも全滅した所へBランクを一人行かせる訳には行かんからな。今回は残っているBランク2人に俺も参加する。だから手伝って貰えんか?勿論報酬は多めに出させて貰う」
知らないBランク二人に、髭ダルマ…
一緒に行くのはリスクしかない。もしまたレッドスネークの時のように亜種だったら庇いながらするにはある程度力を行使する必要がある。それは避けたい。
「一人なら行きますが、他の人と一緒なら僕は参加しません」
「なんだと!足手纏いとでも言いたいのか?俺は元Aランクだ。それに今残ってるBランクの二人もそのうちAになれる逸材だ。お前の実力は知らんがまだ子供だ一人で行かせられるはずがないだろう。自信があるのは構わないが、協調性というものも冒険者には必要だぞ」
「足手纏いと言いたい訳ではありませんが。僕の戦い方一人だから出来る戦い方が多いので、多人数での戦闘はリスクでしかありません。それにもしワイバーン亜種だった場合は申し訳ないですが庇ってる余裕はありません。協調性よりも僕は自分の命が大事ですから」
今にも怒り出しそうだが、堪えているようだ。
眠い中来たんだから自由にさせてほしいものだ、眠くて機嫌が僕は悪いのだ。
「なんだと、まあ今はやめておこう。亜種…Bランクパーティーが二つ負けたとしたらやはりそれも考えられるか。偵察に行った者は普通のワイバーンとの報告だったが…」
一様考える頭はあるようだ。
脳筋そうに見えるが…
僕も少しイライラしていて目上の方に雑になっているかも知れない。
幼き頃の丁寧なルイフはどこへ行ったのだか。
うん、まだ幼いが…
「僕一人なら最悪逃げる事も出来るので一人であれば受けたいと思いますがどうでしょう?自己責任で問題はありません」
凄く考え込んでいるようだ。
子供を行かせるのが問題だと思っているのか、実力を疑っているのか。
「ちょっと考えさせてくれ。朝もう一度来てもらっていいか?」
「わかりました、では失礼します」
朝になるなら今じゃなくてよかった…
せっかくいい睡眠ができると思ったのに。
僕は宿屋に戻り、もやもやしながらベッドに横になる。
目が冴えてしまって眠れない。
余り細かい事を気にしたくないのだが、前世の頃から睡眠は僕の至福だった。睡眠を邪魔されるとどうしても機嫌が悪くなってしまうのだ。まだガキだなと思われたかも知れないが…
実際10歳のガキなのだ。いいだろう。
人間誰しも嫌なことはあるのだ。
眠れないので、新しいカラーボールの活用法などを考えてみようと思う。最近は風魔法でいくつか浮かしてボールを相手にぶつける、これが定番になっているが…
職業遊び人?と思われそうなユニークスキルだ。
もう少しカッコいい活用の仕方はないのだろうか。
確かに強い…しかし強くても見た目はカラーボールだ。
子供のうちは可愛らしい気もするのでいいけど大人になるに連れて恥ずかしい気がするのだ。考えすぎだろうか?
ボールを火の鳥や龍に変えられないか、試してみるが魔力が入りボールに魔力が篭るだけで形に変化が現れる事はなかった。
せめて弓矢や手裏剣的な簡単そうな形でもいいのだが…
そんなこんなで特訓をしている間に疲れて眠りにつくルイフだった。




