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episode:37

区切る場所がなかったので、少し無理やり区切っちゃいました。




この心地よい温かさは…

僕は今日もセイラの抱き枕になっていた。


今日も無心になって耐えています。別に興奮してるわけではないけど息が荒くなりそうで、耐えるしかないのだ。


「入ります」


テントが開く。アミアさんだ。


「ふふふっ今日もですね。気持ち良さそうに寝ていますね。セイラ様は枕が変わると寝られないはずなのですが、ルイフ様は自分の枕くらい落ち着くのでしょうか」


「褒められてるんですかね」


「褒めてますよ。セイラ様そうですよね」


ビクっっとセイラが動いた。

起きていたようだ。


「えっ きゃっ 別に抱き枕にしてた訳じゃ…えっと…」


顔を真っ赤にして独り言を話している。


「セイラ様可愛いですね」


「もうー、アミアのイジワル…」


上目遣い…

僕もよく使っていたが、まさか逆に使われて狼狽える側になってしまうとは。


「ほら、ルイフ様もセイラ様の可愛さにメロメロですよ」


アミアさんこんなタイプだったのか…


「えっ うん、可愛いよセイラ」


「かわぃぃ…って…そんないきなり」


またセイラはテントを出て行ってしまった。


「何か用ですか?」


「ふふふっわかりましたか?」


「こうなるってわかっててやった感じがしましたからね」


「用ってほどじゃないんですが、セイラ様は少なからずルイフ様を好いていると思います、王国に行ったらどうなるかわからないので、ルイフ様にも興味を持って貰って守ってもらおうと思ったんです」


「勘違いしてるかもなので言いますが、僕はただの冒険者です。家は貴族の家系ですが、田舎の男爵家で何の権限もないです。期待させて悪いのですが、上手くいくよう動きますが、結構賭けなんですよね」



「私達にとってセイラ様は命をかけて守る方です。少しでも可能性を広げてどんな事をしてでも守りたい存在なのです。ルイフ様はいずれ人の上に立つ立場になるでしょう。そんな気がします。信用出来るだけの器を持っていると私達は判断してついて来たのです。」


「買いかぶりすぎですよ。セイラはもう大切な友達です。僕も守るために頑張りますよ」


「友達…ですか。お任せしますね」


アミアさんは何を言っているのだろう。

10歳の子供である僕に…

確かに女神の加護があったり前世の記憶があったりと特別かもしれない。しかし、人の上に立つ立場って言われてもピンと来ない。領地は兄様が継ぐ予定だ。僕は冒険者をしながらスローライフが送れればいいと思っているのだ。



僕たちは王都に向かう。3時間もすれば王都だ。

ここで問題が発生した…門をどうやって通ろう。理由を話せば通れると思うが、余り大ごとにしたくはないのだ。


そういえば…あれがあったはずだ。

僕は亜空間倉庫の中を確認した。


学園に入るため王都に来た際に父様に頂いた貴族門用の通行証だ。

これがあれば、恐らく入る事は難しくない。


3時間ほどで王都が見えてきた。


「もうすぐ門ですが、僕の従者という事で貴族門から入ります。上手く合わせてください、多分荷物も特にないので変に言われる事はないと思います」


「わかりました。よろしくお願いしますね」


「任せてくれ、これでも元騎士団長だ、それらしく振舞って見せるさ」


レグドンは本当に頼もしい。罪を犯していなければ、執事兼護衛に欲しいものだ。田舎貴族の僕には雇う意味もないのだが。


僕達は一般の人の門とは少し離れた貴族用の門に向かう。

王都はいつも人が多い、冒険者や商人などで列をなしていた。


貴族門に人はいないようだ。

僕達は誰かが来る前に王都入りをするために少し急いだ。


門に到着する。


「お疲れ様です、通行証をお願いします」


僕は通行証を渡す。


「アリオス家の方ですね。通行証は大丈夫そうですね。その他の方の確認いいですか?」


「はい、こちらの5人がメイドでこの者が護衛の騎士となります」


「身分確認できる物をお願いします」


「数日前に先に馬車で入っている記録があると思うのですが、その馬車の荷物の中に皆入れていたようなので後で持ってくる感じでもいいですか?」


「そうですか、荷物もなさそうですね。ちょっと待ってくださいね」


ちょっと焦ったがなんとかなりそうだ…

このまま上手くいってくれるといいのだが。


ガラガラガラガラ…

馬車の音が少し離れた所から聞こえてくる。

どうやら他の貴族が門へ向かってきているようだ。


「馬車が見えるね、他の貴族の人が来たみたいだ、まさか知り合いとかいないよね?」


「基本的に会うのは戦場くらいだからなー…大丈夫だとは思うが。身分のかなり高い者であれば姫様の顔くらい見た事あるかもしれんな」


「どうしましょう」


「ちょっと動かないでね」


僕はセイラの髪を三つ編みにして後ろで束ねて止めた。

人の印象は髪型でも大きく変わる。服装も特に派手なものではないので、よっぽど大丈夫だろう。


「なるほど、さすがルイフ様ですね。これなら印象も違うので気付かれない可能性が高いですね」


そして…遅い。もうすぐ近くまで馬車がきている、出来ればその前に通りたかったが。


「お待たせしました。問題ないので、後で一様確認だけさせてくださいね」


「ありがとうございます。では」


「はい、お気をつけて」


僕達は王都の門をくぐろうとした…その時。


「ちょっと待った」


「はい、僕でしょうか?」


「そうだ、名を名乗れ」


「お初におめにかかります。ルイフ・アリオスで御座います」


「アリオスと言うとマルコの所か。儂はダイン・ビクドン侯爵だ」


「ビクドン侯爵とは知らず、先に挨拶が出来ず申し訳ありません」


「よい、知らぬ者に挨拶も出来ないだろうに。それよりそこの女何処かで見た事がある気がしたのだ。その気品のあるお顔…名はなんと言う?それにそこの護衛…も何所かで。」


これはまずい…まさかセイラとレグドンを知っている者がいるとは思いもしなかった。対策をしていて良かった。




「僕のメイドのラーセです。田舎の町娘ゆえ、そのように褒めて頂けるのは主として有難い事です。こちらは僕の護衛でドンです。父様の騎士団に普段はいるので父様の付き添いの際に見られたのではないでしょうか」


「ふむ、儂の勘違いのようだの。それにしてもその歳でそこまで話せるか…立派なものだな。マルコとは知らん仲ではないのでな、何か合ったら頼るといい」


「はい、ありがとうございます」


僕は挨拶を済まし今度こそ王都の中へと入った。


「ハァー、ビックリしたよ」


「まさか、私を知ってる方と出くわすなんて…」


「前にパーティーで見た事が御座います。その時みたのでしょう」


「ビクドン侯爵…か。あの方は武人としても優秀と聞く、帝国にも何度か来ているので会っていても不思議ではないな。そしてマルコ、まさか爽剣の息子だったとはな」


「父様を知っているの?」


「騎士団で知らん者のが珍しい。他国の優秀な者は大体頭に入っている、まして魔族を単独で倒した男の情報を集めていない訳がないだろう」


父様は王国だけでなく他の国でも有名なようだ。


とりあえず向かうのは宿屋だ…少し前まで泊まっていたところでいいだろう。僕達は宿屋で向かう。


「セイラ様キョロキョロしすぎです、目立ちます」


「あっ、ごめんなさい。帝国とは全然違うので、興味がわいてしまって」


「安全が確保出来たら遊びに来ましょうか」


「ほんとですか!約束ですよ」


「はい、約束です」


宿に着いたので、部屋を2つとりあえず取る事にした。

3つ取ろうとしたが空いていなかったのだ。


皆んなには待機していて貰う。外を出歩かれたらそれこそ、大変な事になる。


「僕はちょっと色々と動きますので、宿で寛いでいてください、食事も部屋に運んでもらうので、先に食べてて貰って問題ないので」


「何から何までありがとう。ルイフ君」


「僕の意志でしているから気にしなくていいよ」


「すまない、頼む」


僕は学園に向かう。

学園に着く、レイとララを探さないといけないので、とりあえず教室に向かう。教室には誰もいなかった。実技の時間だったかな?

僕は戦闘訓練をする訓練場へ向かった。


訓練場へ着くとちょうど、戦闘訓練の最中だった。

タイラ先生と目が合った。


「おい、ルイフ遅刻か?お昼前とは寝坊しすぎだろ」


「いえ、遅刻ですが色々とありまして…ちょっとレイとララ借りていいですか?」


「お前なら構わないが…もうすぐ昼だがそれじゃあダメなのか?」


「はい、ちょっと急ぎです」


戦闘訓練中のレイとララを呼んで貰った。

ミナ達も僕に気づいたようだ。


「ルイフ入学早々遅刻って何してるのよ!」


ミナだ。ごもっともです。


「ごめん、ちょっと色々合って、また話すから」


レイとララがきた。


「ルイフどうしたの?」


「私達に用って何かしら」


「ちょっとここではあれだから、教室まで来て貰っていい?」


「いいわ、レイ行きましょ」


教室に着いた。椅子に座り、どう話そうかと僕は悩んでいた。


「それで話って何よ?まさか私達に愛の告白かしら」


「そうなの?ルイフ」


僕は悩んでいた…頭の中で整理していた。

集中しすぎて二人の会話は聞こえていない。


「えっ、まさかほんとなの?」


「ルイフ私だけではなくララもなの?」


「レイ私を邪魔者みたいにいうのはやめて」


よし整理できた…


「よし、話すね、って二人共何揉めてるの」


「えっ、ルイフが」


「僕?ちょっと話整理してたから聞いてなかった」


「…ルイフの馬鹿。早く話して」


なぜ馬鹿と言われるかがわからないが僕は話す。


冒険者の依頼中に、盗賊団に囚われていた、皇女様を助けた。そして王都に連れてきた。どうしよう?


「皇女って…何してるのよルイフ。それに簡単に話すぎよ」


「ルイフ、皇女様と一緒にいたの?」


「僕も成り行きで助けたけど…頼れるのが二人しかいなくて」


「そうね、私達に相談したのは正解だと思うわ」


「ルイフの頼みなら、聞くよ?私頼れるから」


レイがドヤ顔している。自分で頼れるって…

クールビューティーな美少女だと思っていたが、僕達の前のレイは喜怒哀楽がしっかりとしている。


ララはさすが頭がいい。色々既に考えてくれていそうだ。


「じゃあ、お父様に会いに行きましょうか」


「えっ国王様に会うの?」


「何を言っているのよルイフ。私達に頼ったのだからそういう事でしょ?」


「そうなんだけど…国王様とまさか話す事になるなんて。僕なんかがいいのかな?」


「イイに決まってる、ルイフの事お父様も知ってるから大丈夫」


国王様が僕のことを知っている?どういう事だ?気になったがそれ以上聞いてる暇もないため。僕達はお城へ向かう事にした。


タイラ先生には早退を伝え、レイとララの寮まで歩く。

そして馬車を用意して貰いお城へ向かう。

先に執事の人がアポ取りに向かっているのでスムーズに入れるだろう。


問題は国王様になんて話せばいいのかだ。

どこまで話していいかがわからない。

田舎貴族が、お願いなどしていいものなのだろうか…

不敬な事にならないように気をつけなければ。


お城へはすぐに到着した、門の所はほぼ素通りだ。

馬車から降り謁見の間へ行くのかと思ったら、別の部屋へ通された。


「ダイニング?」


「そうよ、人払いをして話たいと伝えたから多分プライベートで使える部屋を選んだのよ」


「なるほど…」


少ししてドボーク・ルーンステラ国王とバウムートン・フェニアス宰相がやってきた。


「お初にお目にかかります。マルコ・アリオスが息子ルイフと申します。お忙しいとこ…」


「堅苦しい挨拶は良い。レイナードからいつも話は聞いておる、レイナードと話す時のように話せ。その方が上手く伝わってくるだろう」


「緊張しなくていいよ。僕も堅苦しいのは好きじゃないからね、娘がいつもお世話になっているね」


「はい、では話します」


さっきレイやララに話たよりも詳しめに話した。

この二人は信用できそうだと思ったからだ。


・冒険者の依頼でゲンコウ湿地の盗賊退治をしに行った事

・そこで40人ほどの盗賊と囚われた皇女とその親衛隊がいた事。

・盗賊の頭が実は元帝国第3騎士団団長だったという事。

・バイモン・コグリッチ公爵が絡んでいる事。

・宿で待機して貰っている事。


「以上です」


「ふむ…これは厄介な事にならんといいが。ルイフよ、良くやったな。表立って褒美をやれないのは申し訳ないが、何か欲しいものはないか?」


「特にないので大丈夫です。それに成り行きで助けただけなので」


「ルイフ君わかっていないようだから言うけど、一国の皇女を40人の盗賊そして元騎士団長がいるところから救い出すなんて誰にでもできる事じゃないんだよ?ましてやその歳でそれだけの事が出来るとは、誇っていいと思うよ」


「ルイフって強いのね」


「ルイフSランクなれる?」


「運が良かっただけですよ。僕はまだまだ未熟だし、レイSランクはいつか必ずなって見せるから待っててね」


「あまり謙遜しすぎるのも嫌味になる、時には素直に言葉を聞くのも大事だ。それに親の前であんまり…そのなんだ、いちゃつくのはやめてもらえるか?」


「いちゃ…ついてなんていませんよ」


今のどこがいちゃついているのだろうか…

父親にとって娘は特別という。それに王女だ、僕とは縁がないと思うのだが、心配なのだろう。


「僕はもっといちゃついて欲しいくらいだけどね」


「お父様、お母様に言つけますよ?」


「待ってくれララ、冗談だよ。リーラにそんな事言われたら…僕は」


宰相は妻の尻に引かれているようだ。どれだけ偉くなっても女はやっぱり強いのだ。これは異世界も一緒なのだと僕は悟った。


「本題に戻ろう。とりあえず5人は城で保護しよう。その団長についてだが…バウムよ、いい案あるか?」


「そうですねー。いっその事ルイフ君の護衛にでもしちゃうのもありかと。男爵家の三男であるルイフ君の護衛が増えても誰も文句をわざわざいったりしないでしょう。保護するとなると、罪的に厳しいから、隠しておかないと処刑とはいかなくても、捕虜として幽閉する事になるね。その点ルイフ君とこなら国としても助かるし、ルイフ君も強い護衛が出来ていいでしょ?」


レグドンが護衛としてついて来てくれたら頼もしいが、家もない学生にどうしろと。


「家もないし、学生で養う力も…とか考えたでしょ?」


何も言っていないが考えが読まれていた。

さすが宰相と言うべきか。


「はい、僕は家を継ぐ権利もないのでただの冒険者兼学生でしかありません。レグドンは優秀だと僕も思っていますが…」


「ふむ、じゃあ問題ないな。今回の褒美に家をやろう、爵位は与えることは出来んが、とりあえず家ならいいだろう、余っているのをやろう」


「家ですか!?そんなの貰っても良いのでしょうか」


「素直に子供は受け取ればいいのだよ」


「はい、有り難く受け取らせて頂きます」


「ルイフ良かったわね」


「うん、びっくりしたけど…ね」


「とりあえず、後で、そうだな…夕方に皆を連れてもう一度来てくれるか?門での事は対処させておこう」


「はい、わかりました」


「レイ、ララありがとう。助かったよ」


「助けたのはルイフじゃない、私達は父親を呼んだだけよ」


「うん、ありがとう」


「ルイフがSランクになってくれたらいい」


レイはさっきから何を言っているのだろう。

そんなすぐにSランクにはなれないが、期待しててくれるのかな?


「うん、頑張ってなるね」


学園にも伝えてくれるとのことで今日は学園に戻らなくてもいい事になった。僕は宿へ戻る。レイとララはお茶をするらしい。

毎日お茶してて飽きないのだろうか。


宿に戻って来た僕はお城での事を伝える。


国王様と宰相にお話をした所、お城で保護する事になった事。

そして、レグドンの処遇については、捕虜として幽閉または、僕の従者となるどちらかと言う事。

そして夕方もう一度お城へ行く事。


簡単だが、要点を話した。


「国王様と宰相殿とお話をされるとは思っても見ませんでした。やはり私の勇者様です」


「ルイフ様本当にありがとうございます。望んでた以上の結果になったと思います。まさか国王様と話せるほどの方とは…」


「凄い玉の輿なんじゃ…」


マーニ…親衛隊が何言ってるんだか。


それにしても何か誤解をしている。偶然レイとララと友達だっただけだ。国王様と宰相と会ったのは初めてなのだ。

あえて言うこともないが、僕の力を過信している。


「ふむ、俺は既にルイフ様に命を助けられた身だ。あの時本当なら死んでいた。それに今もこうして姫様を助けて頂いている。幽閉されず恩を返せるチャンスを貰えるなら有難い。この命を持って守らせて頂く。だが…姫様が無事なのを見届けるまでは姫様の護衛でいさせて欲しい。この通りだ」


レグドンが頭を深く下げている。

元々セイラを守るのは決定事項だし、国王様の返事も貰っているため問題ないのだ。


「偶然良い結果になっただけで僕の力ではありませんよ。レグドン、セイラ達を守るのが最初の命令だよ。よろしくね」


「ありがとうございます、必ず何があっても守ります」


「レグドンの妹の事も、出来ればなんとかしたいんだけど…すぐには動けないから待たせる事になると思うけどごめんね」


「とんでもないです…可能性があるだけでも今の自分には救いです」


「そっか、出来るだけ頑張るね」


何とかしてあげたいが…国が動けば大問題なため、僕がやるしかない。しかし、今の僕が潜入したら間違いなくゲームオーバーだろうな。公爵の屋敷とか、確実にヤバイ。

むしろバレて王国との戦争理由にされても問題だ。

やるなら確実にやれる策と強さが必要だ。


「はい、よろしくお願いします」


「良かったね、レグドン。ティーナはルイフ様がなんとかしてくれる」


「はい、姫様…」



「夕方には出るからそれまでゆっくりしてて、ちょっとやる事があるから」


僕は部屋を出て、裏庭に来た。


「ソフィア来て」


念話でソフィアを呼ぶ。

相談に乗ってもらうためだ。


「聞いてたわ、あの男の妹を助けたいのよね」


「うん、今の僕だと厳しそうだから…どうしようかなと。あんまり時間もあるとは思えないしさ」


「そうねー。私の力がもう少し戻れば、相手の詳細もわかるし奇襲をかけるのも楽に出来ると思うけど…まだ半年以上はかかるわね」


「半年はきついなー。レグドンと姫様がいなくなったらティーナは必要なくなる。どうなるかわかんないけど、悪い可能性のが高いよね」


「方法はないわけではないのよね。ただ場所も遠いし、1ヶ月以上はかかるわね」


「1ヶ月…それならまだ何とかなるかもしれない。どうしたらいいの?」


「確実ではないけど、私が大精霊に会っている事は言ったわよね。それは魔力を分けてもらうためなんだけど、大精霊は私が作った分身みたいな存在だから貰った魔力を100%エネルギーとして変換できるのよ。だから大精霊さえ、魔力をくれればなんとかなるわね」


「じゃあ大精霊から貰えばいいんじゃないの?大精霊の所に行ってたんじゃ?」


「大精霊が魔力をあげるって事はね、自分自身を切り離すのと道理なのよ。私と離れてから大分経つから自我が芽生えていて私の言う事を聞いてくれないのよ。だからまだ誰にも貰えていないのよね」


自分自身を切り離すって…精霊としての存在を削るって感じなのかな。僕なら嫌だな…

これは簡単にはいかなさそうだ。けどこれ以外に方法ないもんなー。


「それに成功率を上げるなら、ルイフ、あなたの時空魔法の転移が鍵になるわよ?まだ使えないんでしょ?」


「まだ…出来て20m先へのテレポートかな。毎日練習してるけど遠いところのイメージをしっかりと固めるのが難しくて。全然ダメっぽい」


「私に魔力が戻れば、ルイフの体に私の魔力を同調させて教える事も出来るわ」


「どちらにしても大精霊に会ってみるしかなさそうだね、学校どうしようかな。欠席ばっかになりそうだ…父様と母様にバレたら大変だ」


「ルイフ通う意味あるの?」


「一様貴族の息子だからね。きちんと卒業しないとダメだと思うよ。それでどの大精霊に会うの?」


「そうね。水の大精霊が一番話せたわね。結局ダメだったのだけど、私の話はちゃんと聞いてくれたわね。火と土にも会ったけど、火は馬鹿すぎて話にならないわね。土は偏屈過ぎて疲れて帰ったわ」


「じゃあ水の大精霊だね。どこにいるの?」


水の大精霊は水の都ウィンを抜けた先にある湖にいるらしい。

王国から見て南東の方角だろうか、ヴェールの町を東に向かい、さらにネヴァラ山脈を抜け南に1日ほどだ。

往復するのに1週間は急いでも掛かりそうだ。

だが、行くしかない…早めに予定を立てて出る事にしよう。

学校の事は国王様に話してみよう、この際遠慮してても仕方ないだろう。


「今回の事が落ち着いたらすぐに出よう。水の大精霊に会いに行く」


「わかったわ。私の方でも頑張ってみるわね」


そろそろ向かう時間だ。

僕は部屋に戻り、皆を迎えに行く。


「あっ おかえりなさい」


「ただいま。そろそろ行こうか、歩き出し早めに出た方がいいと思うから」


「ええ、行きましょう」


馬車がないのは申し訳ないが…仕方がない事だ。

僕達は宿を出てお城へ向かう。


外に出ると…馬車が止まっていた。


「お待ちしておりました。ルイフ様ですね、国王様よりお迎えに上がるようにとの事でお待ちしておりました」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


宿の場所言ったかな。これくらい調べたらわかるか。

馬車があるのはありがたい。さすがこの国の王だ、細部までしっかりしてる。


「御者を務めます、テレフと申します。お城までよろしくお願いします」


「みんな乗ろうか」


僕達は馬車に揺られながら、お城へ向かう。

お城までは20分ほどの道のりだった。


門をくぐりお城の入り口で僕達は馬車を降りる。

なぜか、宰相自らお迎えに来てくれた。


「ルイフ君ついてきてくれるかな。僕が案内するから。こちらがセイラ第三皇女様かな?お初にお目にかかります、宰相を務めます、バウムートン・フェニアスと申します」


「丁寧にありがとうございます。お初にお目にかかります、フェデル帝国第三皇女セイラ・フェデル・リオと申します。この度は、帝国での問題にも関わらずご迷惑をお掛けして申し訳ありません」


「気にしてないので、そこまで畏まらなくて大丈夫ですよ。助けたのがルイフ君でよかったですよ。ではついて来てもらえますかね」


案内されたのは先程国王様と会った部屋だった。

他の人にバレるわけにもいかないので、宰相自ら案内するのだ当然謁見の間などではない。


「じゃあ、適当に椅子に座ってもらおうかな、国王様も時期に来られますので」


長いダイニングテーブルの奥は国王様だ。

続いて宰相が座っている席がある。

どこに座ればいいのだろうか…僕は迷っていた。


「ルイフ君が近い方が話しやすいからね、僕の前にきてもらおうかな」


「はい」


助けてくれた。くすくすと笑っているが。

田舎貴族にこんなマナーわかる訳ない。


そして隣にセイラが座る。宰相の横2席は椅子が引かれていないためそこを空けたまま親衛隊が空いている席に座るがレグドンは立ったままだ。


「レグドン座りなよ」


「いや、しかし…俺は」


「妹さんの事は聞いたよ。それでも罪は罪だ、しかしね今の主はルイフ君だろ?主人の言う事は聞くものだよ」


「すみません…」


レグドンは空いている席に座った。

宰相は本当に人を見ている、本来なら罪人をこんな席に座らせないが、罪よりも僕が主人と言うところを強調して納得させたのだろう。


しばらくすると、扉が開く。

国王様だ。後ろにはなぜかレイとララまでいる。


「待たせたな、レイナードが来ると言って聞かなくてな」


「ルイフ君を連れて来たのは私」


「まー、いいじゃないですか。とりあえず座って話しましょう」


「お父様の言う通りよ、座りましょ」


皆が席に座る、部屋の空気が重い。変な緊張感がある。


「セイラ皇女久しいな」


「はい、お久しぶりでございます」


どうやら二人は顔見知りのようだ。

少し空気が和らいだ感じがする。


「随分と大変だったみたいだが、もう大丈夫だ王国が保護しよう。この事は皇帝にはまだ話さんほうがいいと思うが、どうしたい?」


「そうですね、お父様が私を…とは思いませんが。コグリッチ公爵が主犯なので、今はまだ話さないでいようと思います」


「その意見を尊重しよう。しばらくはお城に部屋を人数分用意するから寛いで言ってくれ」


「そうだ、ルイフ君後で褒美の家の鍵と場所の説明するからね」


「ルイフ様はお家を頂いたのですか?」


「うん、今回の褒美で家を貰う事になったんだ」


「じゃあ、私もそこに住む事にしようと思います」


「ダメ」


「私も反対よ」


「ルイフ様と住むのは私の勝手なのにどうしてダメと言われるのですか?それに一体どなたですか?」


「私はレイナード・ルーンステラ第二王女。そしてルイフの友達」


「私はララ・フェニアス、そこにいる宰相が私の父よ」


「迷惑をかけたのはわかっています。しかし、この話は譲れないのです」


宰相が笑っている…

こうなる事がわかっていて、わざわざ言ったのか。


「えっと…僕の家にセイラが住むのはまずいと思うよ?」


「ルイフ様はお嫌ですか?一緒に寝るのはよかったのに…」


「ルイフどう言う事」


「聞き捨てならないわね…」


僕はこの後、ここに来るまでの話をさせられた。

親衛隊の人に真実か確認をララが取りつつレイが僕を問い詰める。

なぜ僕は、こんなことをされているのだろうか。


「レイナードもララもいい加減にせんか」


「すみません、お父様」


「国王様、申し訳ありません…」


「私も招いて貰った立場で出しゃばりました。申し訳ありません」


「元はと言えばバウム、こやつが原因じゃ…気にせんでいい、それよりセイラ皇女よ、本当にルイフと住みたいか?貴族ではあるが男爵家の三男で継承権もない。皇女とは釣り合わないが」


「関係ないです。ルイフ様は私の勇者様です、身分など関係ありません。それにルイフ様はいずれ人の上に立たれる方です」


「ふむ、そこまで言うなら許可しよう」


「お父様なんで許可するの」


「レイナードは反対か?反対なら反対出来るだけの理由が必要だ、お前にはあるのか?」


「ルイフは私のためにSランクになると言った、だから…」


「だから…なんだ」


「ルイフは私のなの…」


「そう言っているが、ルイフはどう考えているのだ」


え、ちょっと待って…レイと国王様は何を言っているんだ。

僕はただの男爵家の三男、継承権もない。


第二王女がこんな事を言っていて止めるどころか、煽っているように見える…確かにレイは可愛い。僕も好意がないかと言われると、あると言う方が正しいが、僕なんかがレイといていいわけがない。

僕は言葉に悩んでいる、


「ルイフは私の事嫌い?」


「嫌いじゃない…けどレイは王女だよ?僕は…」


「情けないな、ルイフよ。爽剣の息子なら功績を上げて世間を納得させるくらい言ってみせろ。何も今すぐどうこうする訳じゃない、それにレイナードからルイフの事はよく聞いておる。あまり話したがらないレイナードがお主の事になると凄い話すものだからな」


「お父様…私そんな事は」


「わかりました、功績をあげてみせます。レイを僕にください」


「誰もあげるなんて言ってないぞ?男としてそれくらい出来んのかと言っただけだ」


「えっ あ、すみません」


「冗談だ、成人までだ。それまでに結果を出せ」


「はい、ありがとうございます。でもなぜ…普通なら」


「レイナードは普段から余り感情を表に出さない。ララ達友達といるときくらいか…楽しそうにしているのは。そんな時、君の話を聞いたのだよ。父親としてただ娘に笑っていて欲しい。そう思っただけだ」


いい話に聞こえるけど…これって僕告白した?王女様に?


「レイは僕でいいの?」


「うん、いい」


「うん、じゃあよろしくね」


「ちょっと待って。私は…ルイフ様」


「えっと…」


どうしよう。レイや国王様の前で二股宣言なんて出来ない。

セイラも可愛いし…気になっているのは事実だ。


「深く考えすぎだよ、ルイフ君。何人も妻をとる貴族は珍しくないからね。気にしなくていいと思うよ。結果を出すなら尚更ね。ついでにララも貰ってくれてもいいよ」


「ちょっとお父様!」


「ララは嫌なのかい?」


「嫌じゃないけど…」


「じゃあ3人で住んでみたらどう?成人まで時間はある。ルイフ君もゆっくりと考えたらいいと思う、学園からすぐ近くの家だから、直接学園までのルートを作ってしまえば、他の人に漏れることもないだろうしね」


「私は、二番目の妻でも構いません。ルイフ様と居られるなら」


「セイラ、私も何番目でもいい」


「正妻はレイじゃないと王国の面子があるわ」


「この後妻同士でお話ししない?これから一緒に住む訳だし」


「そうよね、話合いは大事よね」


「ルイフ君まだ、その…成人までは子供は作らないでね」


「えっ あ、何言ってるんですか…」


急な事に僕は慌ててしまった。

他の3人も顔を真っ赤にしている。


「バウムよ、意地悪してやるな」


「それにしてもルイフよ、これで結果を残さないといけなくなったな。わかっていると思うが、結果が出ない場合はいくら俺でも周りが納得しなければレイはやれんぞ」


「はい、わかっています」


「ララも同じく、王女程じゃないけど、今の君では難しいよ」


わかっているが、結果とは何をすればいいのだろう。

冒険者としてやっていく予定だったので、何をしていいかわからない。こんな事になるなんて考えてもいなかったからだ。

聞いてもいいのだろうか…いや自分で考えるべきだろう。


その後雑談を交えながら、今後の事を話して解散となった。

レイ、ララ、セイラ、親衛隊、レグドンで住む事になるようだ。

親衛隊の皆はいいのかと聞いたが、セイラ様のためにいるのが自分達なので、セイラ様が望むならそれを叶えるだけです。との事だ。



学校の事は自由登校扱いで試験だけ受ける事になった。成績がトップだったのでなんとでもなるらしい。


家には先程の御者のテレフさんが案内をしてくれるらしい。

馬車に乗り貰った家に向かう。


到着してすぐ僕は…しばらく言葉を失った。

家と聞いていたので、少し広いくらいだと思っていたが貰ったのは広々としたお屋敷だった。


「広すぎない?こんな所貰っていいのかな」


「広いに越した事はないわよ?」


「そうだけど…」


「こちらが鍵となります。後これは国王様から生活費にと預かってきました。中に白金貨が5枚ほど入っております」


んっ白金貨?って1枚が1000万円くらいだから。

5000万円!?


「えっそんなに貰っていいんですか?!」


「はい、ルイフ様にと承っておりますので、どうぞお納めください」


さすが国王様だ、白金貨5枚をぽんっと出せるのだから…

レイに不自由させないためかもしれないが。


僕達は門を抜けて中へと入っていく。

大きな門を抜けると、石で出来た道が続きお屋敷らしい噴水があり、左右は綺麗な芝生となっている。屋敷の前には手入れされた綺麗な花が咲いている。


屋敷に入ると、高い天井と広いエントランスが待っていた。

中に入るとより広さがわかる。


「とりあえず、見て回ろっか」


見て回った結果…

エントランスを抜けた先には広いリビングが、そしてその隣の部屋には広いキッチンスペース。


そしてなんとお風呂があったのだ!

前世もほとんどシャワーだったが、たまに入るお風呂は格別だった。

余裕のある月は岩盤浴と温泉に浸かりにいっていたのだ。

これはとても嬉しい。


その他1Fには8つほどの部屋があった。

1つは倉庫の様な感じで、もう1つの部屋はメイドなどの休憩スペースの様な所になっていた。


1Fの残りの6部屋を親衛隊とレグドンの部屋にする事になった。

2Fにも6部屋ほど部屋があった。

執務室に、広い寝室が一つ、1Fより少し広い部屋が4部屋だ。

今は執務室は余り必要ではないが、将来仕事をするための部屋だ。

そして大きい寝室は僕の部屋となった。残りの部屋はレイとララとセイラの部屋だ。そして余った部屋は空き部屋だ。

既に家具は入っているので今日からでも住めるようだ。


一度レイとララは荷物を取りに行くため寮とお城へ行くらしく、戻っていった。

その他の人に一度集まって貰った。


「えっと、とりあえず役割分担しようと思うんだけど…アミア任せていい?」


「はい、かしこまりました。既に話は終わっていて私がメイド長を努めます。レピン、カルメはその補佐をマーニは料理が上手いので料理全般を任せようと思います。レグドンは家の護衛ですね」


既に決まっていたようだ。さすが隊長、僕の出番がなかった。


「しかし、家は広いのでもう少し人が欲しいですね。後は庭の手入れをする庭師などもいるといいと思います」


「私も一人だと少しきついです。コックを後2人ほど欲しいです…」


「わかったよ、レイとララが戻ったらちょっと相談してみるね」


「私も料理しようかな」


「セイラ様は危ないですよ」


「でもこうしてせっかく身分関係なく自由になれたのだから、ルイフ様の喜ぶことをしようと思うの。マーニお願い」


「セイラ様が構わないのでしたら私はお教えするだけです」


こうして家の大まかな役割が決まったのだった。

マーニとカルメは食材の買い出しや、衣服など生活に必要なものを買いに出掛けた。僕はというとレグドンとアミアを連れて冒険者ギルドへと来ている。身分証を作るためだ。一度に大勢作るのもアレなので、まずはこの二人である。

セイラも付いてきたいと言っていたが状況がわかるまではなるべく出ないように言ってある。帝国のスパイがどこにいるかわからないからだ。


冒険者ギルドに着きいつも通りモナカさんの所へと並ぶ。

アミアとレグドンとは別々だ。僕は依頼の件を報告しなければいけないのだ。肝心の盗賊を退治出来ていないので失敗になるのだろう。

少し気が重い…冒険者になったばかりで失敗とは。

一様宰相に手紙を書いて貰っているが、盗賊がいなくなるわけではないのでどうにもならない気がする。


「こんにちは、モナカさん」


「ルイフ君、こんにちは。今日は依頼の報告?」


「はい、ギルドマスターに直接渡すものもあるので、取次お願いします」


「わかったわ。ちょっと待ってね」


少しするとモナカさんが戻ってきた。


「マスタールームで待っているそうよ。場所はわかるわよね」


「はい、行ってきます」


ギルドマスターの部屋へと向かう。

何度か入っているので迷う事はない。


コンコン


「入っていいわよ」


「失礼します」


「盗賊退治の報告かしら?」


「そうなんですけど…ちょっとこの手紙を」


宰相からの手紙を僕は渡す。

ギルドマスターであるシフォンさんが手紙を読んでいる。


…少しして顔を上げた。手紙を読み終わったのだろう。


「大体わかったわ。詳細は書いてないけど…湿地にいた盗賊40名を倒したのなら、別の盗賊だとしても失敗にはしないわよ。それに8名の盗賊退治に行って40名倒してくるってつくづく面白いわね。なぜ宰相が絡んで来るのかがきになるけど…今は聞かないでおくわ」


「はい、ありがとうございます。でも盗賊は残ったままです…。本来ならまた行くべきなんですが…少し遠出をする予定でしてすぐには向かえないんです」


「今回はあなたが盗賊を殺せるか…Cランク以上の条件を満たしているのか、それを確認したかっただけだから別にいいのよ。そろそろ長期依頼から戻るパーティーもあるからそっちに頼むわ」


「はい、よろしくお願いします」


「一様盗賊は退治して貰ったから、報酬を用意するわね。ちょっと待っててくれるかしら」


「はい」


無事に終わって良かった。

Sランクを目指す上で依頼の失敗というマイナス点は大きい。

依頼失敗すると取り戻すのにBランク以上は5回の依頼成功実績が必要になる。要は失敗するような人は上がれないと言うことだ。


「お待たせ、大金貨4枚よ、40名を倒したにしては少ないけど元の依頼に少し上乗せしといたわ」


「いえ、十分です。ありがとうございます」


「本当は色々依頼をお願いする予定だったのよ。どれくらいいないのかしら?」


「1ヶ月くらいですかね」


「10歳の子が1ヶ月も遠出って…どこへ行くのよ」


「水の都ウィンに行こうと思ってます、大事な用事が出来たので」


「学園入ったばかりなのに大変ね…いいわ。ウィンのギルドマスター宛に紹介状を書いてあげる。これで少しは町での活動がしやすくなると思うわ」


「ありがとうございます。助かります」


旅立つ前に寄って良かった…知らない町に行くのは不安だったのだ。

頼れる人がいない中10歳の子供は無力そのものだろう。


下へ戻るとレグドンとアミアが既に登録を済まし待っていた。

無事登録はできたようだ。


「アミアはマーニ達が買ってくるからいいけど、レグドンは服とかいるよね。買いに行こうか、武器も欠けてるしそれじゃ護衛にならないしね」


僕が鍛治を出来れば一番良かったのだがそこまで万能にできていない。スキルも出ないので作れない。ただ僕にはカラーボールがある、付与が出来るので頑丈そうなのを買って付ければいいだろう。

これから一緒に暮らす人達に全て隠すのは難しいので、最低限気をつけて、問題なさそうな事は気にしないでスキルも使っていく予定だ。

隠していて、僕がいない間に何かあったら後悔しか残らない。

せめて護衛の人全員の剣をパワUPくらいしておきたいのだ。


「ありがとうございます。精一杯務めます」


少しダンディーなおじさん的イメージのレグドン。

40手前かと思っていたが、実際は31歳だった。その若さで団長になったのだからとても優秀だった事が伺える。


ダンディーなおじさんが子供に頭を下げている姿はとてもシュールだ。堂々としていて貰った方がカッコいい。


僕達はまず服屋に向かった。中古でいいと言うので古着屋だ。

何が欲しい?と聞くとどれでもと言われてしまったので…

アミアに服を何着か選んで貰い、下着を僕が大きさだけ聞いて適当に見繕った。おじさんの下着をなぜ選ばないといけないのか謎だったが、従者の面倒をみるのも主人の大切な役割だろうと割り切った。

アミアさんの下着を選ぶ方が時間としては有意義だ…そんな事は言えないのだが。



レグドンの服を買い終わったので今度は僕の服を買いに行く。

お金に余裕があるので新品の服だ。

お店の中に入るとしっかりとした来客用のソファーとテーブルがいくつか用意されており、ゆっくりと選べる環境になっていた。


アミアさんとお店の人に4着ずつ選ぶのをお願いした。

トータルコーディネートだ。前世はユ○クロとかで十分だったため、お洒落には自信がないのだ。


お店の人はカジュアルな感じのお洒落な感じの服装を用意してくれた。アミアさんはシックな感じの大人な感じのコーデだ。

どちらも気に入ったため、まとめて購入した。


これでデートなどの時も安心だ。

服屋を出て今度は武器屋へ向かう。商業エリアには沢山の店が並んでいるため、どこに入っていいか全くわからない。

こう言う時はあまり人が入っていなくて偏屈そうなお店を探すのが良いと相場は決まっている。


「どのお店がいいのかなー。こんな事ならギルドで聞いてくるんだった…」


「帝都でも路地裏にある、ドワーフのお店が穴場だったりしたな」


「私は国に仕える専門鍛治師がいたので、街で買った経験がほとんどないですね」


とりあえず色々なお店に入ってみる事にした。

まずは大きい商会がやっている武具店だ。

ロスチャイ商会と言う大きな看板が目立つ3F建ての建物だ、この建物全てが売り場となっているようだ。冒険者ギルドより大きい…


武具コーナに行ってみる。

確かに良さそうなものは多いのだが…値段が高い割に装飾や見た目が重視されているような気がする。品質は確かにどれも一定水準を越えていて高そうだ。さすが大商会といった感じか。


しばらく見ていると奥の壁にいかにも高そうな剣が飾られている事に気が付いた。

剣の下のプレートには火の魔剣フレアヴァロンと書かれていた。


「魔剣か…やっぱ魔剣って強いのかな?」


「魔剣持ちは高ランク冒険者か、貴族くらいだが。魔法が使えなくてもその属性の力が引き出せるからな。普通の剣と比べると遥かに有利に戦える。ダンジョンの宝箱以外に入手方法がないから値段が高すぎるのが難点だがな…」


「付与とか出来ないの?」


「帝国の国所属の付与スキル持ちでも切れ味を良くしたり丈夫にするのが精一杯ですかね。基本付与スキル持ちは魔道具作成が仕事ですからねー。武器にするにしても魔力も多く使うので、あまり量産も出来ないので便利な魔道具を作ってた方が国としても有難いのですよ」


付与魔法って万能っぽく見えるけど、この世界では地味…だな。

これもソフィアの弱体化が原因なんだろうけど。

僕なら付与ももっと良いものが付けれる気がする。

カラーボールの効果のが今の僕だと高くなりそうだから、使う機会は少なそうだが…


鑑定を使ってみた。


◼️フレアヴァロン

ランク:秘宝級

効果:魔力を注ぐ事で剣に炎を纏わせる事が出来る。魔力を多く注ぐ事で炎を飛ばす事も可能。


普通の剣より遥かに有利と言うのが良くわかる。

戦闘中に炎を纏った剣を振り回したり、炎を飛ばされたら普通の剣で対処するのは難しいだろう…

カラーボールを剣に付けた場合はどんな感じになるのだろうか。

後で実験してみないとだ。


「値段は…っと、白金貨20枚!?そんなするの」


「これでも中間くらいの値段ですよ。多分値段的にランクは秘宝級ですね。伝説級の物になるとこれの10倍以上は確実に必要ですからね。ほとんど出回る事はないですが」


「そうだな、帝国にも伝説級の武器が2本あるだけだ。今は第一騎士団団長と第二騎士団団長が持ってるな、国で一番強いものと二番目に強いものだけが持てる。王国もあると思うが…」


「そうなんだね。レイに今度聞いてみるよ」


ロスチャ商会を出た僕達はいくつかのお店を巡った。

大量の武器が樽に突き刺さっているお店や、木の棚に無造作に並べられている店などが多く見られる。お金がないうちはこう言う所で皆買うのだろう。


小説などで良くある、樽の中の1本が成長する武器だった!とか封印されている!とかはなかった。

殆どがランク等級ノーマルだった。


「んー良さそうなのあった?ある程度は遠慮せずに言ってくれていいからね」


「そうですな、パッとしない物が多い印象ですな。今使っている剣は騎士団団長に作られる専用武器でレア等級の中でも割と上位に入る業物ですからな」


「それって直らないのかな?」


「ここまでヒビが入ってしまってはおそらく…」


「ヒビ入れた本人だからなんとも言えないけどごめんね」


「いえ、ルイフ様は正しい事をしたのです。本来なら剣の前に命がなかったのですから」


しばらく歩いた結果いいものは見つからなかった。


「路地裏でも行ってみようか」


「凄い鍛治師は紹介だけでやっている人も多いですからね」


「まー急ぎじゃないし、ぶらぶらしようか」


路地裏をぶらぶら歩いて行く。

お店っぽいお店は殆ど出ていない。時折怪しげな雑貨屋さんや魔道具店などを見かけるが、あまり入りたい雰囲気ではない。


しばらくすると匠と書かれた木の看板を見つけた。


「匠って… 書いてあるね。自信があるから書いてあるんじゃないのかなこれ」


「いえいえ、自ら匠と書く人が凄い訳ないですよルイフ様」


「それに武具も置いてない。何の匠なのかわかりゃしねえな」


「武具がないんじゃ僕達には関係ないかー」


「次探しましょルイフ様」


カン・カン・カン・カン


カン・カン・カン


「待って、何か聞こえる」


カン・カン・カン


「これって鍛治の音?だよね」


「確かに聞こえますな…しかし武具も何も出ていないですが」


「ちょっと入ってみよう」


「ルイフ様が行くなら付いていくだけです」


中に入ると、汚い…というかとても埃っぽい。

こんな所によくいれるものだ。


「汚いですね…」


「すみませんー、誰かいますか?」


「奥の扉から音がしますが、どうします?俺が開けましょうか」


「いや、鍛治してたらあれだし、ちょっと待とう」


カン・カン・カン


カン・カン


カンッ


音が止まった。


「止まりましたね」


「ああ、止まったな。そろそろいいんじゃないか?」


「すみませーん」


ガガガガガガ…

扉が開く、とても建て付けの悪い扉だ。

地面擦ってるよ、絶対。


「何じゃお主達は」


「ドワーフ…?」


「ドワーフだが文句あるか?何か用かと聞いているんだ儂は、用がないなら出て行け」


「態度悪いドワーフだな…ルイフ様出ようぜ」


「レグドンは黙ってて…すみません、勝手に上がり込んでしまい。僕達は今剣を探していまして、偶然鍛治の音が聞こえたので、こちらで武器を作っているんじゃないかと入らせて頂きました」


「お前貴族か…俺は確かに剣は作っているが、貴族に作る剣はない。それに儂の武器はお前みたいなガキには勿体ないわい」


「今回欲しいのはこちらにいるレグドンの剣なんですが、僕が壊してしまったので修理出来るか見るだけでもダメですか?」


「剣を壊しただと、儂を舐めるな。剣も大事に扱えないやつの従者の剣など見たくはない、帰れ!!!!」


凄い剣幕で怒り出してしまった。

仕方なく帰ろうとした時。


「この剣は確かに壊れたがルイフ様は何も悪くねえ。それにな、この剣は帝国でも随一の鍛治師フェクトンが作ったものだ。それを剣で一振りでヒビを入れたんだぞ?舐めてるのはどっちだ」


「もういいよ、レグドン帰るよ。良好な関係が気付けないようではいい剣は作れないよ。他を当たろう」


「ちょっと待て、剣を見せてみろ」


レグドンが剣を渡す。

ドワーフの爺さんが持っていた槌でヒビの入っていた部分を軽く叩く。


カン


カラン…ヒビの入った先から折れた剣が地面に落ちる。


「な、な、何しやがる」


「この剣は寿命じゃ…直すことは出来ん。供養もせずそのままの状態で持っている事は鍛治師として許せん」


「だからって人の剣折っていいのかよ」


「まあ、待て。儂が剣を作ってやろう」


「爺さんの剣がいいものかわからないのに、勝手過ぎだろ…」


「ただ、条件がある」


「条件まで…つけるのかよ」


「レグドン待って、お爺さん条件ってなに?」


「儂はパレスじゃ。何簡単な事だ。お主の剣も儂に作らせてくれ」


僕の剣を作ってくれるのは有難いがパモスさんに作って貰った剣があるから必要がない。


「僕は、今の剣を大切に使っているので今は必要ありませんし。僕の剣を作る人はいるので申し訳ないですがその条件は呑めません。使わない剣を作って貰うわけにもいきませんし」


「ふむ…そうか。では剣だけでも見せて貰っていいか?」


「それくらいなら大丈夫です」


僕はパレスさんに剣を渡す。

じっくりと剣を見ている。先程とは目つきが違う。真剣だ。


「大事に使っておるようじゃが…お主特殊な使い方をしておるな?剣が悲鳴をあげておる」


剣が悲鳴…?僕は大事に使っている、変な使い方なんて。

もしかして魔力を纏わせてることかな?


「ちゃんとメンテナンスもやってますが…どういう事でしょう」


「剣の外見ばっかり気にしているようだが、中はもうボロボロだ。何をしたらそんな風になるのかはわからんが…儂には音でわかるのじゃ。ミスリルが入っているようじゃが、それのおかげでなんとか持っている感じじゃな。良い鍛治師が作っておる、見ただけで業物とわかるわい」


「直す事は出来ますか?」


「勿論直すことはできる、しかしな、一度ボロボロになった物を直すと勿論前よりも壊れやすくなる。今と同じ使い方をしていたらすぐに壊れてしまうだろう」


「でも…僕が王都に行く時に作って貰った大事な剣なんです」


「新しい剣にする事が剣を大事に扱っていない事にはならん。大切に扱うからこそ、寿命を迎えた剣をしっかりと供養してやる事が必要なのだ」


「はぁーパモスさんになんて謝ろうかな。まだ王都に来たばっかなのに…町に戻ったら謝るしかないか」


僕は思わず小さく呟いた。


「何…パモスと言ったか?」


「はい、ドワーフのパモスさんに作って貰ったやつですから」


「ふむ、あやつ生きておったのか」


「知ってるんですか?」


「知ってるも何もあやつに鍛治を教えたのはこの儂じゃ」


「え、パモスさんの師匠?」


「うむ、まあ、もう15年以上も会ってないがな、元気にしているならそれで良しじゃ、通りで良い剣な訳じゃの、ミスリルをパウダー状にして均一に加えるなどドワーフでも出来るものは限られるからの」


パモスさんはやっぱり凄い鍛治師だった。

武具ではなく便利アイテムを作って貰ったりしてしまっているのが申し訳なくなってくる。


「あやつの師匠が作ってやると言っておるのだ、これで何も問題はなくなったかの」


問題はなくなったのかな?…なんか違う気がしなくもないが、

パモスさんの師匠が作るのであれば、剣の劣化具合の事も納得してくれる気もする。大切に扱っていた事が分かってもらえればパモスさんも問題ないだろう。


「わかりました、ではお願いします」


「よし、とりあえずお前さんから希望を聞こうかの」


「俺は、これと同じく大剣だな、今より少し長いとありがてえがこれより長いのは難しいと言われちまったから一緒くらいで問題ない」


「ほぉー、帝国の鍛治も落ちたものだの。儂ならこれより15cmは延ばせるぞ。勿論丈夫さは保証するしの」


「それはすげえ、爺さん悪かったな。よろしく頼む」


「ほぉ、帝国の鍛治師を馬鹿にしたのに何も言わんのか?」


「俺はもう帝国の人間じゃねえ、ルイフ様の従者だ、この人を守れる剣が手に入るなら何もいう事はない」


「ふむ…中々の武人という事は見れば分かったが、人間もできておるようだの、最初は口だけのやつかと思ったがの」


「すまない、ルイフ様には命の恩以上に恩があるんでな」


「良い従者を持っておるな。ルイフ様?っと呼んだ方がいいのかの。どんな剣が良いのじゃ?」


「いえ、様は入りません。僕は今のこの剣を気に入ってますが、作って欲しいものもあります。けど実物がないので説明でしか言えないのですが…」


「ほぉ…どんなものだ?」


僕が欲しいのは刀だ。やっぱり日本人として刀に憧れがある。

剣でもいいのだが…刀の方が僕の好みだ。


僕は精一杯の説明をした。

刀見の片側にのみ刃がある剣をこの世界で見た事がない。

作れるのだろうか…作り方の基礎くらいは知識としてあるが実際にやった事ないので小説などで見た知識くらいだ。


「ふむ…大和の国の武器か…確か刀と言ったな」


「大和の国にあるんですね」


「それを知っておって言ったのではないのか?」


「いえ、前に本で読んだ事があったもので…作れそうですか?」


「あぁ、作った事はないが弟子の中に大和の者がおっての作り方を聞いた事があるから大丈夫じゃろ、ちと時間はかかるがな。1週間後にまた来てくれ」


1週間か…水の都ウィンへ向かう予定だったが武器もなしで行くのは危ないし刀を受け取ってそのまま旅立つのが良さそうだ。


「わかりました。よろしくお願いします」


「よろしく頼む」


外へ出ると結構時間が経っていたようで外は真っ暗だ。

そろそろ屋敷に戻らないとみんなが心配するだろう。


「良かったですね。いい鍛治師が見つかって」


「そうだね、アミアは良かったの?」


「私のこの剣は姫様より授かったもの、これ以外の剣を使う気はありません」


レグドンもそうだが、アミアの忠誠心も凄いものだ。

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