episode:36
目が覚めると久しぶりの温かい感覚にとても癒される。
人の肌は温かい。安心感が心地良い。
んっ?
僕は目を開ける、息が当たりそうな距離にセイラが…
目を瞑っているが寝ているのだろうか。
セイラは僕に抱きついた状態で寝ている。まだ10歳だがそこそこ膨らんだ胸が当たっている。シャルルさんの胸には反応しないが、同い歳くらいの子だと凄く胸がドキドキしてしまう。
精神がやっぱり、10歳の子供に引っ張られているのだろう。
前世の僕であればこんな子供に興味を持たない。
だが…この状況はまずい気がする。セイラから抱きついて来たとはいえ、こんな所を目撃されたら。
「おはようございます、セイラ様」
親衛隊の人が起こしに来たようだ。
僕は慌てて寝たふりをする。
「あらあら、セイラ様起きる時間ですよー」
親衛隊の一人にセイラが体を揺さぶられている。
揺らすたびに僕にさらに密着してくる…
「んー。おはよう」
「セイラ様、ルイフ様は枕ではありませんよ?」
セイラの視線がこちらに向いているのがわかる、
体を締め付ける力が上がっていくのだ。
バレないように必死に無表情で寝たふりをする。
「えっ あっ… きゃあぁぁぁ」
僕は悲鳴で起きる。
「セイラ?どうしたの?おはよう」
顔を赤くしてセイラがきょどっている。
あたふたしている所も可愛いものだ。
「いえ、なんでもないの。ちょっと外の空気吸って来ますね」
「ふふふっ、ルイフ様もお人が悪いですね。起きていらしたのに」
「気づいてたんですか?起きたらあの状態でどうしようかと…」
「あんなに瞼に力が入っていたら誰でも気づきますよ、私は親衛隊長を務めるアミアと申します。セイラ様は寝る時にいつも枕に抱きついて寝るんですよ」
「そうなんですね。抱き枕がわりだったんですね」
「不安…だったのもあると思います。あのままルイフ様の助けが無ければ私達は一生囚われの身、それか生きていなかったでしょうね。あの歳でレグドン元団長の罪を許そうとしているのです。立派なものです。どうかセイラ様だけでもお願いしますね」
「僕にそんな権限はないですよ。出来るだけ頑張ってみますが」
「それで大丈夫です。よろしくお願いします」
セイラは凄い慕われているんだな…
しかし、王族ともなると降りかかる火の粉も大きいものだ。
僕も貴族だが、田舎過ぎて関わる人も少ないので、トラブルとは無縁だった。この歳で死ぬかも知れない出来事にあったにも関わらず自分以外の事に目を向けれるとは本当に立派だ。
テントの外に出ると、既にみんな出発する準備が出来ていた。
一角兎のお肉を用意してくれたようで、そのお肉を食べ王都を目指して出発する。
行きは一気に走って抜けたが、今回はそんな訳には行かないので、今日は森の中の野営地で休む事になるだろう。
フーランの森は王都から3時間ほどの距離にある。強い魔物はいないが、フォレストウルフやフォレストボア、ゴブリン、オークなどが生息している。野営地の場所は丸太で囲まれているため基本的には安全だ。過去に入って来た魔物はいない。
2時間置きに休憩を挟みながら夜までに野営地に着くように急ぎ進んでいく。途中魔物も現れたが弱いゴブリンや一角兎がほとんどだ。
セイラも親衛隊の人達もそうだが、時より不安そうな顔をしている。
僕は歩きながら、今後の策を考える。
僕が頼るとしたらレイとララだろう。
ルーンステラ王国の第三王女と宰相の娘だ、僕の中で最大の人脈と言える。だが、二人は10歳の女の子だ。国王と宰相が出て来てくれるだろうか。とても不安だ。
それにセイラは皇女だ…ないとは思うが、利用しようとするものが出てくる可能性もある。国王や宰相がそういう人だった場合、僕にはもうどうすることも出来ない。レイやララの父親がそんな人なはずないと思いたい。
野営地に到着する。
この野営地は通る人も多いためかなり広い。
冒険者や商人が沢山いる。
なるべく目立たないように隅の方にテントを設置する。
「今日はここまでですね。明日には王都につけるはずです」
「そろそろ、コグリッチ公爵にも何かしら伝わっている頃だな…洞窟は崩れているしすぐには状況は把握できないはずだが、油断は出来ない」
確かにその通りだ、崩れているので死体を掘り起こすまで時間がかかる。いずれ皇女達がいない事に気づくだろう。
コグリッチ公爵は手札を失い怒り狂っているだろうか。それとも元々殺す予定でいたから問題なしという感じなのだろうか。
一体帝国では何が起きているんだろう。考えても意味はないけどとても気になる。ここで小説の主人公なら解決に向かっていくんだろうな。僕には帝国へ乗り込む勇気はないようだ。
今日は途中に取れた一角兎のお肉だ。勿論炙るだけだ…
肉だけを食べていると流石に飽きてくる。
僕は木ノ実を探しに森に入っていく。
勿論、亜空間倉庫から出したものを持っていくのだが。
ある程度の時間が経ったので僕は林檎を7個だし戻る。
「戻りました。林檎が見つかったので食べましょうか」
「ありがとうございます」
「それにしてもこんな所でよく林檎が取れましたね、林檎の生息地からは結構遠いはずですが」
さすが親衛隊だ、博識だ。
なんと誤魔化そうか。
「そんな事はいいの。ルイフ君ありがとう。私達は感謝をするだけ」
「そうですね、詮索するような事をしてすみません」
これでは僕が何かしたみたいだが…
セイラがかばってくれたのに言い訳をここからするのもアレだろう。
さっぱりとした中に甘みがある林檎。
甘みのある果実は疲れを癒してくれるようだ。
みんなの顔も少し和らいでいるように見える。
落ち着いて来たからか、雑談する余裕が出来た。
親衛隊の皆をセイラが紹介してくれた。
・アミア隊長 18歳
・レピン副隊長 18歳
・斥候が出来る護衛のカルメ 19歳
・戦闘メイドのマーニ 17歳
全員がCランクほどの腕前も持つ騎士らしい。
隊長のアミアさんは少し抜けていてBランクに近いくらいの腕前があるのだとか。帝国と王国のランクの認識は一緒くらいなのだろうか?
Cランクは一般的に一端の冒険者が名乗るランクだ。
皆若いのに凄いものだ。
僕?僕は例外でしょ…
ちなみにセイラは12歳だった。僕より年上のお姉さんだったのだ。
幼い顔をしているので同い歳か一つしたくらいだと思っていた。
他にも色々話があったが、帝国には皇女の騎士となるための学校があり、そこのトーナメントで結果を残し皇女様が気にいると親衛隊になれるらしい。この4人は成人後騎士学校で優秀な成績を残しセイラに気に入られて親衛隊になったらしい。
王国にはそんな学校はない、はず?
国の違いって色々あって面白いものだ。
今日の見張りも親衛隊とレグドンがやってくれる。
僕とセイラはテントの中で眠りにつく。




