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episode:33




気づくといつもの宿の天井が見えた。


「夢…か。そうだよな、今の僕はルイフだ、前世では亡くなったはず…」


とてもリアルな夢でこの世界に来たのも長い夢だったかと錯覚した。

前の世界よりも明らかにこの世界の方が幸せだ、そして楽しい。

急に不安になったが…気にしても仕方がない。


今日からは寮に入る事になる。

必要な物を貰いに学園に行き、そのまま自分の部屋となる寮に入る。

主にするのは教科書や学園の生徒である証明書を貰ったり、寮の鍵の認証などである。


トマはもう領地に帰っているので、今日からは徒歩だ。

身分の高い貴族の人達は王都に家を構えているため馬車での送迎だが、田舎男爵ではそんな待遇もない。寮に入ってしまえば皆同じなので今日くらい別にどうって事はない。


学園に行くとミナとサーナがちょうど馬車から降りてくる所だった。


「二人共おはよー」


「あら、ルイフおはよう」


「ルイフ君おはよう」


「一緒に行こっか」


僕達は一緒に学園の中へ入っていく。

各教室の中には教科書など必要な物が各机に並べられていた。


僕の席は窓際の一番前の席だ。成績順に並んでいるようだ。

みんなが同じクラスになれて本当に良かった。

友達が出来るか不安もあったのだ…


机にあった物を持ち寮に向かう。

今日から住む寮の部屋の認証を行うためだ。

魔力認証を用いているので鍵を持つ必要がないのがとても楽だ。

前世では何回か鍵を失くして大変な事になった事が何度かあった…


寮は女子寮と男子寮は分岐になる噴水から左右に50mほどずつ離れている。僕達はここで一旦別れて別々の寮へ向かう。


寮に着く、寮と言うより見た目はホテルだ。

4F建と高くはないのだが、綺麗な洋館のような装いでとても広い。


中に入るとフロントの様な場所があった。

執事の様な人に名前を告げると部屋へと案内される。


僕の部屋は1F奥の部屋だ。

首席が一番奥の部屋で、その他はAクラスの中で身分の高い順に奥から振り分けられているらしい。


部屋の認証はとても簡単だった。

指を認証パネルに乗せてしばらく待つだけだった。


部屋に入ると大体20畳ほどだろうか?

キッチンにシャワー室、リビングにはソファーとテーブル、そして寝室があった。僕の部屋より大分広い。


必要な食器類やタオルなどは揃っており、基本的に服とか以外は何もいらなさそうだ。


お風呂は流石についていないがシャワーがついていたのは

有難い。ベッドルームはベットと机が置いてあるだけの簡易的な部屋だった。学生の部屋としては十分過ぎるだろう。


僕は机の上に教科書などを置き、部屋を閉めて外へと出る。

門限は20時らしい。食事の時間が18時〜20時なので食事時間を考えると19時30には戻ってこないといけないようだ。


朝食は朝の7時〜8時、学園が9時からなので妥当な所だろうか。


ミナとサーナと待ち合わせするため、噴水の前に行く。

まだ二人は来てないようだ。女の子は何かとやることも多いのだろう。


「待たせたかしら」


「ごめんね、お待たせ」


「今来た所だから大丈夫だよ」


「じゃあお茶でも行きましょうか」


「賛成ー」


「うん、行こう」


王都でお茶とかした事がないのだが…

どこへ行くのだろうか。不安だ。


ミナの馬車にサーナと一緒に乗り込む。


「この前のとこでいいわよね」


「いーよ」


「よく行く所なの?」


「王都では有名よ、カフェテラスリーディッシュ聞いた事ない?」


「僕お茶とかした事ないんだよね」


「大丈夫だよ。美味しいから期待しててね」


「ルイフの町ってどんな所よ、お茶をした事ないって貴族なら良くするでしょう」


伯爵様の領地とは…違うからね。

サーナも子爵家だ。


田舎の男爵…の領地を聞いて驚くな!


「僕の町は森に囲まれて、後は畑があって。中心部に神殿や商店が少しあるくらいかな?カフェなんてお洒落な所ないよ、あっても屋台かな」


「あら…ごめんなさい。余計なことを聞いたみたいね」


「いや謝らないで!惨めになるから」


「でも、自然がいっぱいなのもいいよね」


サーナがフォローしてくれるが…

田舎と自分でもわかっている、いつか街にしてやるんだ。


「ありがとう…サーナ」


馬車が止まった。どうやらついたようだ。

降りてカフェを見る。オープンテラスのお洒落そうなカフェだ。

見る限りほとんどが女の人だ。ここに入るの…か。


「行くわよルイフ」


「あっ うん」


僕は二人についていく、これでは従者に見えてしまうかもしれない。

もっと堂々としなければ。


席に座る、予約をしていたみたいで奥にある個室だった。

ここなら人の目も無いのでゆっくりできそうだ。


メニューを見るとお洒落そうなメニューが並んでいる。

飲み物は基本果汁だ。果物を魔道具で潰して作っている100%ドリンクだ。


ケーキなどはないらしく、スコーンの様なものが出てきた。

砂糖は貴重で高いらしく、基本カフェのスコーンに蜂蜜をかけて食べるようだ。


僕はりんごジュースにした。


二人と色々話した、そしてまさかの決定があった。

夏休みに僕の領地に行ってみようということになったのだ。

最初はミナの領地でゆっくりしようという事になっていたのだが、サーナが普段行かない所に行きたいと言い出し、ミナもそれもそうね。とか言い出す始末。結局押し切られて僕の領地で夏休みを過ごす事になった。貴族のお嬢様方がこんな田舎にきて耐えられるのだろうか…


二人は服など見るらしいので、僕は買うものがあるといって別れた。

僕は冒険者ギルドへ向かう。領地を改善するためにお金がいるのだ。


夏休みまでに帰れる時間はない…

ソフィアに聞いて転移魔法を覚えようとしているが、中々上手く出来ず進んでいない。短い距離のテレポートなら出来るが最大で10mほどだ。これでは町に戻ることはできない。


冒険者ギルドに着く。良い依頼がないか見にいく。

掲示板をうろちょろしていると…


「おい、ガキはどけよ」


案の定絡まれた。

隣で見ればいいのになぜわざわざ絡むのだろうか。


「すみません、依頼を見るのであれば隣でもいいと思いますよ?」


「うっせー新人は先輩の言う事を聞くんだよ、俺はCランク冒険者鋼鉄のガング様だぞ」


鋼鉄の玩具って…硬すぎて遊べないじゃん。


「では僕はもういくのでどうぞ」


「ちょっと待て、誰が言っていいと言った?」


肩を急に掴まれた…一体何がしたいんだこいつは。


「先輩冒険者の指示がないと言ってはいけないとは習ってませんが?」


「なんだと!優しくしてやっていれば」


「ガング、待った」


「なんだ…トータスか。何の用だ。今俺は忙しいんだ」


「その人に手を出しちゃいけませんって。フェンの兄貴の師匠が護衛する貴族様だ。フェンの兄貴にも手を出したやつは僕が許さないと言われてるんだよ」


「なんだと…こんなガキがか?貴族だからってフェンさんも落ちたもんだな」


フェンさんまでバカにし出した。本当に碌でもない。


「あらなんの騒ぎかしら?」


「げっ ギルドマスター」


「またあなたね…しかもルイフ君に絡むなんて命しらずね、その子はあなたよりランク上よ?それに冒険者ギルド内で揉め事を起こすなら私が相手になるわよ?」


「なんだと…こんなガキのが俺より上だと?」


「えぇ…。爽剣の息子よ?その意味くらいあなたでもわかるわよね。わかったら行きなさい、あんまりにも苦情が多いとギルド証の剥奪も考えるわ」


ギルドマスターの威圧に怯えながらも睨みつけてその場を後にする。



「何してるのよ。あんなのに絡まれてるなんて、とりあえず私の部屋に来なさい。話もあるのよ」


僕はギルドマスターの部屋にきた。

なんの話だろう。


「話は簡単よ。今Bランクなのは問題ないんだけど、盗賊退治の依頼をこなしていないのがちょっと問題なのよ。冒険者としてやっていく上でCランク以上の壁と言われてるのが盗賊退治よ。変な事を聞くけど、人を殺した事はあるのかしら?」


ついにきたか…いつかはしないといけないとは思っていたが早かった。いくら盗賊とはいえ、殺すのはどうなのだろうか?大切な人を守るため、とか理由があれば出来そうな気はする。

それに殺した事はないけど殺された事はあるから、殺されそうになればきちんとやり返すだろう。二度も死にたくはない。


「殺した事はないですね。でも問題ないと思います。やらないと自分が死ぬならやれます」


「あら、そう。じゃあ次の休みでいいから盗賊退治の依頼を受けてもらうわね」


「わかりました、お願いします」


学園の休みは土日だ。

この世界はほとんど日本と時間や日にちの流れが同じだ。

1日は24時間だし、週は7日。呼び方が月曜日ではなく月の曜日。火の曜日と呼ばれるが大して違いはない。


というわけで次の土曜日には、盗賊退治だ!


僕はギルドを後にする。

まだ夕方なので、門限までは少し余裕があるが、早めに夕食を取り、明日に備えたい。明日は入学式なのだ。

勿論ちゃんと挨拶文は考えてある。噛まないように頑張るだけだ。


寮に戻り夕食を頼む。食堂も付いているが、部屋に持ってきてもらうことも出来るため僕は部屋食にした。


知らない人と食べるのも気まずいからだ。


夕食はお肉と魚料理を選ぶ事が出来た。

サラダに、スープ、そしてメインにお肉または魚。

そして軽いデザートが付く。これが基本的な夕食メニューのようだ。

味付けは多少変わるが、お肉と魚の二択である。


それでもさすが、学園のAクラスの貴族寮だ。

宿屋で食べた料理よりも美味しい気がする。

僕は満足して眠くなったので、シャワーを浴びてからそのまま眠りにつく。


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