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僕は異世界でカラーボールを投げる  作者: Rea
幼少期編
3/127

episode:3




昨夜は楽しみで中々眠る事が出来なかった。

ずっと明日の祝福の儀の事を考えていた。


神様、僕に冒険者になるための力を授けてください。そう願っているうちにいつのまにか眠りについていた。


この国では5歳になると、貴族も平民も祝福の儀を受けるのが義務付けられている。


今日はルイフの誕生日でもあり祝福の儀の日、

こんな日にスキルを授かれるのだ、とても良いスキルが貰えるに違いない。その時は期待いっぱいにそう思っていた。


朝食を済ませ祝福の儀に向かう準備をする。

持ち物は特にないので、服を着替えるだけだ。


「準備は出来たか?それじゃあみんな乗ってくれ」


貧乏貴族だが、これでも領主だ、馬車くらいは持っている。

6人も乗るととても狭い5人乗りの馬車だがこれでもかなり良い値段がするらしい。

順番に馬車へと乗り込む。


教会は馬車で30分ほどと、それ程遠くない。この世界では他の街へ行くのに数日、数週間をかけて行く事が当たり前だ。30分なんて近いという認識だ。

基本的に教会の権力は強く、町の中心地に近い場所にあるので町のどこからでも行きやすい距離となっている。この世界では女神様を祀っているらしい。


「では、行ってくれ」


マルコが、御者に合図を出す。

御者と言ったがアリオス家に仕える執事である。

この小さな町では、御者を専門に雇うような事はしない。執事は何でも屋みたいな感じだ。


着くまでの間、ルイフはとても緊張していた。窓の外を覗いてみたり、目を瞑って心を落ち着かせようとしてみたりする。だが、そんな時に限って馬車が揺れ緊張を促進させる。なんとか落ち着こうと領民達に意識を集中する。


畑で農作業をしている人や、道端で遊んでいる子供が見える。畑で育ててるのは芋だろうか。草も生えていなく、綺麗な土が見える。丁寧に耕されているのだろう。輪作のような画期的な事はせず、畑の栄養が足りなくならないように休み期間をとって調節をしているそうだ。


子供達は、木の枝を剣にして遊んだりしている。

この中から将来この町を守ってくれる子達が出るのだろうか、とても楽しみだ。

僕も友達と木剣で遊んだりしてみたいな、と思ったりもするが。僕には友達がいない……

屋敷から出る事もないし仕方ないよね。


辺境の田舎なので、出来る事も限られるが住んでる人はとても伸び伸びとしているように見える。


領主であるマルコは、領民に重い税をかけたりもしないし解決出来ることはなるべく自分自身が出て手伝うので町の住人からはとても人気がある。良い両親の元に産まれたようだ。



「もうすぐ到着よ、ルイフ」



「はい、母様」



「ルイフ、緊張しすぎだ。俺も祝福の儀は緊張したが、自信を持って行けば良い」



「はい、ライド兄様ありがとうございます」


レイク兄様は無言で頭を撫でてくれた。



馬車がゆっくりと止まり始める。

外の景色の過ぎる速度が緩やかになり、町の様子が見やすくなった。


どうやら着いたようだ。

町の中心部にあるだけあって賑わっている。

勿論この町の中ではである。


買い物や商売をするための場所が中心に集中しているので自然と皆ここに集まるようだ。


「よし、みんな降りるぞ」


順番に降りていく。

基本的に年齢順だが、今日は主役なので最初に降りる。


「お待ちしておりました。アリオス様、本日は、ルイフ様の祝福の儀、誠におめでとうございます」


頭を下げるのはこの町の司祭である。

立派な白髭に垂れ下がった眉毛、優しそうな高齢の司祭だ。


「ありがとう、では早速頼む」


貴族の祝福の儀は一般の祝福の儀とずらして行われる。この町の貴族はアリオス家だけなので、今日は貸切状態である。


一般の人は貴族の祝福の日の次の日に行われる。


「ルイフ様こちらへ」


教会の中へ一人案内される。

奥の台座の上には青く透き通る綺麗な水晶玉が置かれている。祝福の水晶と呼ばれ、女神様からの力を授かる媒体になるらしい。


「では、両手を水晶玉につけてください」


両手をかざすと、突然水晶玉から眩い光が放たれる。


とても眩しい。

その光がルイフの脳に突き刺さるように入ってくる。知らない景色、人、物、様々な記憶が頭の中を駆け巡る。凄い頭痛と目眩がする。どれくらいの時間が経ったのだろうか。

光が収まると何事もなかったかのようにそれは治った。


「ルイフ様、凄い光でしたが大丈夫でしょうか。このような光を私は見た事がございません、一体何が…」


「はい、僕もとても驚いています。何が起きたのでしょうか」


司祭様が水晶玉からステータスを読み取る。読み取り終わるとその紙を渡してくれた。ステータススクロールは本人以外見る事は出来ない。


但し、周りに見せる方法もある。


「では、ルイフ様スクロールを私にも見えるように念じながらステータスオープンと唱えてください」


「ステータスオープン」


加護と称号は非公開にした。

記憶の戻っていたルイフは厄介事の種になる気がしていたのだ。


◆ステータス◆

名前:ルイフ・アリオス

年齢:5歳

レベル:1


HP20

MP10


力 15

体力 15

知力 30

敏捷 15


スキル

鑑定レベル1


ユニークスキル

カラーボールレベル1


加護

▪️▲●▪️

女神の加護


称号

転生者


「ではご説明させて頂きます」


◼️まずはレベルのご説明をします。

レベルは経験を得る事で上がります。

普通に生きて経験を積めば成人をする頃には5〜10レベルくらいにはなるでしょう。


しかし成人をすると通常の経験を積んでもレベルは上がらなくなります。


但、だからと言ってレベルが皆、そこで止まる訳ではありません。


その代表的なのが冒険者や騎士です。

冒険者や騎士は魔物を狩ります。

そして魔物を狩り一定の経験を積むとレベルが上がります。


ステータスはレベルが上がると大幅に上昇するので、通常の魔物を狩らない人と比べると身体能力がとても高くなります。


その分、命の危険も多いのですが。



◼️では次に能力値の説明です。


一般的に祝福の儀の

5歳時点での能力の平均は5〜15です。


才能のあるものがたまに15より上の能力値を持っています。


◼️次にスキルの説明ですね。


スキルは一人に1〜多いもので3つ与えられます。多くの者が1つのスキルを頂きそれに合った生き方をしていきます。


稀にユニークスキルという強力なスキルを持っている方がいますが、数年に一人いるかどうかととても貴重です。

司祭様の説明が終わった。



「ルイフ様の能力値はとても高い方です。特に知力は過去最高ではないでしょうか?しかし、スキルに魔法はないので、あまりプラスにはならないかも知れません。しかし、鑑定スキルがあるので商売などには最適だと思います」


正直、がっかりした。

冒険者になりたかったルイフには一つも戦闘スキルがなかったのである。


「司祭様ありがとうございます、このカラーボールというのはなんなのでしょうか」


「私も初めて見るスキルなので存じ上げないのです。しかし鑑定した所、プラスチックのボールを出す事が出来る。とだけ書かれていました。残念ながら珍しいスキルではありますが、ボールを出すだけのようなので、娯楽に使える程度のスキルかも知れません。ユニークスキルがあるだけで特別なのです。気を落とさないでくださいませ。」



司祭様に丁寧に挨拶をし、教会を後にする。

前世の記憶が戻り、まだ色々と混乱しているため記憶の整理もしたい。


普段のルイフとの違いを悟られぬよう気をつけながらいつも通りに振る舞う。


「父様、母様、ライド兄様、レイク兄様、エリン姉様、お待たせしました。祝福の儀は無事に終わりましたので帰りましょう」


笑顔ってこんな感じで大丈夫かな?

とてもぎこちなくなっているかもしれない。気持ちと表情に釣り合いが取れていない、精神が子供だからだろうか。

前世ではもう少し、自分の気持ちを抑える事が出来たんだけどな……


「帰ったら聞かせて貰うとしよう。皆帰るぞ」


特に何も言われる事もなかったので大丈夫だったのだろう。

ルイフ達は馬車に乗り屋敷へと帰る。


帰り道、先程の事をずっと考えていた。

前世の記憶が戻り、この世界へ転生した事。

そして、自分であって自分でない記憶が存在している事。


ルイフの性格は100%とは言わないが、前世の自分とは似ても似つかない。

こんな良い子がいるのか、というくらいに純粋で良い子だ。


記憶を思い出した事で、ルイフは記憶の中の人物になった。

今、この世界に生きているのは、前世日本で暮らしていた、立花流依(たちばなるい)なのだ。


記憶はあるが純粋だったルイフはもういない。統合され全ての人格が立花流依となった。


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