episod:29
馬車がゆっくりと止まり始める。
どうやら学園に着いたようだ。
「ルイフ様到着しました」
「ありがとう、行ってくるよ」
僕は馬車を降り学園の門へと向かう。
ここは馬車を止めるための日本で言う駐車場的な所だ。
校門まではおよそ50mほどとそう遠くはない。
門に到着する…
一言で言うと大きい。第二の王宮のように見える。
王都ルース学園では4つの校舎がある。
AクラスからDクラスまであり、学年は1年生から4年生まである。
校舎はそれぞれクラスで分けられており。
Aクラス校舎:実技・学科成績優秀者TOP20
Bクラス校舎:実技・学科成績優秀者TOP21~60
Cクラス校舎:実技・学科成績優秀者TOP61~120位
Dクラス校舎:実技・学科成績優秀者TOP121位〜300位
こんな感じで分けられている。
校舎自体の大きさはほとんど変わらないが良いクラスほど人数も少ないので、上位のクラスほど広く感じる。
また、図書館や訓練施設などもあるが種類や難易度、機能性ではクラスが高いほど質がよく揃っている。これは別に比べている訳でなく単純に実力がないと意味をなさないものが多いからだ。
その他にクラス事に野外訓練場が設けられている。上位のクラスや学年が上がるほど魔法を覚えているものなら魔法の威力が、剣術なら剣術の威力が上がるので、AクラスとBクラスの野外訓練場は他のクラスの倍程度の広さがある。
CクラスとDクラスは戦闘には向いていないクラスとされている。
ただ単純にスキルに恵まれなかったものや、戦闘系スキルでないものが多いだけなのだが、いくら学科が良くても実技の成績で劣ってしまうため学科だけ上位になり、Cクラスで止まっている者も少なくない。勿論中には戦闘系に特化しているが学科が苦手な人もいるため、全体的な割合で言うと少ないが、Aクラスに入れるような実技の実力を持った人もいるようだ。
その他には寮だろうか、こちらもクラス、男女で別れており計8棟存在する。とんでもなく広い学園だ…
日本で言う大学をいくつか合わせたような感じだろうか…
門の中に入ると早めに来たつもりだったが既に試験会場に入って行く人がチラホラ見えた。普段は北門、南門関係ないが、今日は一般の人が北門、貴族が南門なので、そこまで混雑する事はない。
大体貴族が3割一般7割と言ったところだろうか?貴族の割合は少なく見えるが、基本的に教育を受けて来た人が多いので上位クラスは貴族がほとんどだ。成人後の働き口を良くするために一般の人は学園に学びにくる。学園にさえ入れればDクラスでも普通の国家運営ではない町の小さい学園を卒業するより大分収入が高くなるらしい。
僕も受付で試験登録をする。
簡単に案内を受けて、校舎の中へ入って行く。
知らない人ばかりで緊張する。こちらの門から入っているのでみんな貴族なのはわかるが、田舎貴族なので交流はほとんどない。
学科の試験会場に到着する…
扉を開け自分の席を探して座る。
早く来すぎたかも知れない…とても暇だ。
試験20分前になると続々と人が入って来た。
ミナやララ、サーナも来ている。声を掛けようか迷ったが3人ともとても可愛い、ここで声をかけたら後々面倒な事になる気がするので辞めておいた。まったり学園生活を送りたいのだ、メインの冒険に支障が出るのは困る。
試験開始の5分前になった。
先生らしき人が入って来た。
「私は本日学科試験を担当するサファリー・フェイトンよ。普段は魔法学を担当するわ、宜しくね。では配るわね」
アシスタントの先輩?達だろうか。少し僕より上の人達が先生の合図で配り始める。
全部で3科目だ。2時間の間に終われば良いとの事。
終わったら途中で持っていき、次の実技訓練に行くことが出来る。
「配り終わったみたいね、ではこれより2時間試験を開始します」
試験が始まった。
最初は数学だ…いや算数と言うべきか。
1+1=
2+3=
5+2=
4-2=
3-1=
6-4=
5×3=
金貨が3枚あります、金貨2枚の商品を買うと残りは金貨何枚でしょうか。
ふむふむ…
って幼稚園レベルの問題だ。
僕はスラスラと解いていく。
大学まで通っていたのだこの世界では恐らく数学で言うとトップクラスの頭脳なのではないだろうか?
掛け算、割り算くらいまでしか習う事はないのだ。
5分ほどで算数の問題を解き終わった。
次は教養だ。
一般マナーみたいなものだ。
これも5分ほどで終わった。
次は問題の歴史だ…
日本とは歴史が違うので、頑張って本で学び直した。
テスト用紙を見てみる…あれ?
王都の名は=
国王の名は=
初代勇者の名は=
商業の町として交易の通過点として栄えてきた町とは?
こんな簡単な問題だったのか…僕は唖然とした。
この国が出来てから歩んで来た事柄や聖戦の名前、国家間の歴史などを本で隅から隅まで読んで来たのだ。
よく考えれば10歳の子の受ける試験にそんな問題が出るわけがない。
10分ほどで問題を解き終わり、僕はテスト用紙を渡しにいく。
「あら、もうお手洗いかしら?それとも難しくて諦めたのかしら?」
「いえ、わかる範囲は全て書いたつもりです」
「あら、そう、じゃあ次の試験会場に移動してちょうだい」
僕は試験用紙をおいて、次の試験会場に向かう。
凄い疑り深い目で見られたが、あんな簡単な問題すぐ終わる人くらいいくらでもいるだろう。
戦闘試験は一番広いAクラスの野外訓練場で行われる。
訓練場に到着すると誰もいなかった…
「あれ、会場間違えたかな」
辺りを見渡してうろちょろしていると、声が聞こえた。
「ぐがぁーぐがぁ」
声ではなくイビキのようだ。もしやこの人が試験官?
「すみませんー」
「ぐがぁーぐがぁ」
「すーーみーーまーーーせん」
「ぐががぁーー」
僕は黄色のボールを取り出した。
直接当てるとまずいので地面にボールを当てその余波で電を流す。
ビリビリビリビリっ
「あばばばばっ」
かなり威力を軽減したつもりだったが、思ったより効いたようだ。
目が覚めたようなので声をかける。
「あのー試験官ですか?」
「お、おう。戦闘講師のタイラ・ヘイゲンだ。まだ学科試験始まったばかりじゃなかったか?」
「終わったので来たんですよ…試験官が寝てるとかいいんですか?」
「学科が得意なタイプか。例年大体早いやつで1時間はかかる。こんな早くくるやついねえよ。まぁーいいか、さっさとやるか」
「はい、お願いします」
「魔法タイプか?」
「いえ、剣術でお願いします」
「お、なんだ…剣使えるのか、ならそこにあるのから好きなの選べ」
僕はショートソードに似た木剣を選んだ…
この人僕が絶対学科しか出来ないやつだと思っている。
こういう人を見ると少し見返してやりたくなる。
「これにします」
「ルールは簡単だ、俺と模擬戦をして勝つか致命傷を負わせるような一撃を打てれば合格だ」
「わかりました」
「先制は譲ってやる好きにかかってこい」
あまり強さを見せるのは得策ではないので、Cランク程度…に抑えて戦うかな。僕は一気に間を詰めて剣を振りかぶりタイラ先生に斬りかかる。
ボコッ
とても鈍い音がした…
あれっ
「いてててててっ お前一体何した」
「えっ普通に剣で殴っただけですが…普通に弾かれると
思ったのですが、なんで剣も出さないんですか…」
「あんな早い動き見切れるわけないだろう、合格だ合格…後俺を医務室に連れて行ってくれ…絶対折れてる」
Cランクくらいに合わせたつもりだったが…
父様や、ガンツさん、シャルルさんを基準に手加減をしていたから加減を誤まったようだ。実際のCランク冒険者をそういえば見た事がない。それとも先生がとても弱いのだろうか…
僕は先生に肩を貸し医務室まで連れていく。
誰もいないようだ。ベッドまで先生を運ぶ。
「おう、助かったぜ…俺はもうダメだ。お前が俺の代わりをやれ。後は頼んだ…ぞ」
「って僕が試験官やったらダメでしょ…普通、受験生なんですけど」
先生は眠りについたようで反応がない…
「どうしようか…」
とりあえず僕は試験会場に戻り、試験官用の椅子に腰を掛け人が来るのを待つ事にした。
「あれ…ルイフ?何してるのかしら」
最初に来たのはララだ。
宰相の娘だけあって頭が良いのだろう。
「試験官ごっこ?」
「何よそれ。意味がわからないわよ」
僕は簡単に説明をした。
戦闘試験に来て、試験官の人を倒した。
そして医務室に連れて行ってくれと言われ、連れて行くと試験官を任せたと言われ…そのまま試験官が眠りについた事。
そしてここで試験官としてとりあえず誰かこないか待っていた事。
「という訳なんだけど…」
「ここの試験官を倒したって…確か戦闘講師のタイラさんは元Bランク上位の冒険者よ?どうやったらそんな事になるのよ…」
「わからないけど、剣を振ったら避けてくれなくて…」
「はぁ…もういいわ。とりあえず試験をしましょう」
「えっ僕がするの?」
「試験官なのでしょう?」
「じゃ…じゃあやろうか?ララは魔法タイプ?」
「そうよ、怪我しないようによろしくね」
「うん、じゃあとりあえず先制はララからでいいからそれが開始の合図ね」
僕は先程のショートソードくらいの長さの木剣を構えた。
ララが詠唱を始める…長い。
こんな事をしていたら確実にやられるだろう。
戦場では前衛が守り、後衛は前に出ないので問題はないのかもしれないが、せめて詠唱短縮しないと前衛が抜かれたら終わりである。
僕は長い詠唱を待った。20秒ほどでそれは終わる。
「ウォーターアロー」
僕に目掛けて6本の水の矢が飛んでくる。
遅いし、小さい。当たっても僕なら無傷だろう、
学生同士なら怪我をするかもしれないくらいだろうか?
僕はそれを躱し、ララの首元に剣を付ける。
「終わりでいい?」
「なんで避けれるのよ?私これでも魔法は得意なのよ…」
「当たったら痛いよね?だから避けた」
「はぁ…痛いどころじゃないわよ。だからって普通の学生は避けれないわよ。さすが剣爽の息子さんってとこなのかしら?」
「ずっと訓練はして来たからね、普通の学生よりは出来るつもりだよ」
「で、合否ってどう決めるのかしら?…」
「やったはいいけどさ…僕にそんな権限あるのかな?」
「知らないわよ…」
誰か知らない人が近付いてくる。
「あら、ララさんもう終わっていたのね。さすが優秀ね」
「アレイナ学園長、お久しぶりですわ」
この人が学園長か…癖のありそうなお姉さんだ。
「君がルイフくんね。タイラから聞いたわ。全く受験生に試験官任せて寝てるなんて…何を考えてるのかしらね。困った事にタイラの他に今日試験官をやれる人を用意していないのよ。ある程度の実力を見てくれるだけでいいから今日一日試験官の代役を頼めるかしら?勿論あなたは合格よ」
「はい、そう言う事なら…やってみます」
魔法の人は的当てとかにすれば良いのにと思って聞いて見たが、人に当てると言う目的も兼ねているらしい。
最初に臆病になるといざという時使えないかららしい。
それと学生程度ではタイラ先生に魔法を当ててもほとんど効かないらしい。
僕は夕方までひたすら、試験をした。
途中、ミナやサーナも試験を受けに来た。
ララは水魔法だったが、ミナは火魔法と剣術、サーナは風魔法を使っていた。3人とも他と比べてもかなり優秀だった。
あのニトロ家のドロップも来たのだが…
案の定絡んで来た。
なんでお前が試験官なんだよ…とか。
そして試験が終わるとインチキだとかなんとか。
口は達者だが剣術は子供のお遊び程度だった。残念な奴だ。
不合格にしてやりたいが…試験官として一様最低限の点数を加点しておいた。
そして一人だけ飛び抜けて剣術が上手い子がいた。
人形のように整っているが無愛想な顔。確かファム・カルロスと名乗っていた。今はまだCランク程度の実力だが、いずれ強くなるだろう。実際10歳でCランク冒険者と同等程度の力があるのは異常だ。勿論大人は力も強いので戦えば技術だけでは致命症にならないかもしれないのだが…僕の加減したとは言え剣を上手く捌いていた。
スキルが無ければ僕では叶わないほどの技術がある。
父様が叶わないといった…ロイド・カルロス第一騎士団長。
家名が同じなので恐らくその一族の者なのだろう。
「ふぅ…終わったーもう夕方か」
約200名の試験が終わった…
一人一人の時間が短いとは言え試験官一人でやる者ではないと思う。
よく気力が続いたものだ。
「おう、お疲れさん」
「って…終わるの見計らって来ましたよね?」
「はははっ…バレちまったか。余りにも上手く相手にしているもんだから任せようと思ってな」
「お疲れ様、この馬鹿の所為でご苦労だったわね、ルイフくん」
「そうですよ…午前中には帰って冒険者の活動でもしようと思ってたんですからね」
「へぇ…君は冒険者をしているのね」
「まだ登録を昨日済ませた所ですがね」
「ちょうど良いわ。今回の報酬として、あなたを推薦しましょう」
「推薦…?ですか?」
推薦とは実力のある者がFランクの採集などをしているのはギルドとしては勿体ない事なので、それなりの地位と実力を持つ方からの推薦があれば相応のランクから開始出来るようになるシステムとの事。
最大がCランクらしいが。早く良い依頼を受けれるのはこちらとしても嬉しい。薬草採集などやるつもりはなかったが…早く強くなるにはそれ相応の魔物を倒す必要があるだろう。
「今回はCランクに推薦しましょう。Bランク冒険者のタイラを試験とは言え倒したのです、それくらいの力はあると見ていいでしょう。この後タイラに手紙を持たせます。一緒に行くといいでしょう」
「ありがとうございます」
僕はお礼を言いタイラさんと一緒に冒険者ギルドへ向かう。
トマには先に帰って貰う事にした。
ガンツさんとシャルルさんは領地に持ち帰るものの手配などをしているらしい。
ギルドまでは20分ほどの距離だった…
タイラさんからは色々質問ばかりで疲れた。
主には誰に剣を習ったとか…
どんな訓練をしていたとか。
「そうか…お前は剣爽の息子だったのか。通りで他の子とは格が違う訳だな」
剣爽か…これが親の七光りとして見られるって事なのか。
僕は父様を尊敬しているから特に感じないが自分が努力しても当然のように言われるのは余りいいものではない。
父様を早く越えるような実績を上げたいものだ。
ギルドに到着する。
タイラさんについて受付へ行く。モナカさんの受付だ。
「ギルドマスターに話がある、空いてるか?」
ギルドマスターに用事ってあの人何者だ…?
知らないのかよ…暴剣のタイラだぜBランクの。
それよりあのちっこいのはなんだよ。まだ子供じゃねえか。
なんか色々聞こえてくる…視線が痛い。
視線耐性が欲しいものだ。
「タイラさんこんにちは。確認致しますね。あら隣にいるのは?ルイフくん?」
「なんだ…もう見知りだったのか。今日はこいつの事で用事があって来たんだよ」
「いえ、昨日ガンツさんとシャルルさんと一緒に来られて、私が登録を担当したんですよ」
「何!あの二人が王都に来ているのか」
「ガンツさんとシャルルさんを知っているんですか?」
「知ってるも何も同期だ。圧倒いう間に置いていかれたがな、それにしてもあの二人に連れられてくるとはな…なんて豪華な護衛だよ。男爵と言ってなかったか」
やはり二人は凄い冒険者だったようだ。
基本高ランクの冒険者は護衛依頼には付かない。
身分の高い貴族は、Bランク冒険者などが専任でついていたりするが、Aランクともなると下手な貴族より扱いは上になるので専任にするのは難しい。
「父様の部下ですからね、僕は関係ありませんよ」
「お待たせしました。ギルドマスターがお会いになるとの事です」
僕とタイラさんはモナカさんについて行く。
マスタールームは3Fにあるようだ。
コンコン…
「お連れしました、開けてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、いいわ」
モナカさんが扉を開き、中へどうぞと手招きする。
中へ入ると一人の女性がいた。
エルフ…?耳が長い。よく小説などで書かれているエルフに似ている。とても若いがこの人がギルドマスターなのだろうか。
「あら、こんな若い女性がギルドマスター?って顔をしてるわね。これでも200歳を越えているのよ?私」
何も言っていないのに…思っていた事を言い当てられた。
「いえいえ、こんな綺麗な女性がギルドマスターとは誰も思いませんよ」
「あらあら、口説くのがお上手ね」
「おい、ルイフ…お前は知らないかもしれないがギルマスは冷殺の魔術師と呼ばれていた女だぞ」
「タイラ余計な事を言うと早死にするわよ?」
凄い威圧が…部屋中に蔓延している。空気がとても重い。
タイラさんが冷や汗をかいている。
僕?空気が重くはなったけど…平気だよ。
ただ勝てるかと言われると難しいかも知れない。恐らく父様よりも強い…そんな気がする。
「ふふふっ私の威圧を受けて涼しげな顔でいるとはね。さすが剣爽の息子といったところかしら?」
「いえいえ、とても空気が重いです。やはり王都のギルドマスターともなると凄いですね」
「面白い子ね、Bランクのタイラですら動く事が出来ない私の威圧を受けて空気が重いですって。気に入ったわ、私は王都ルース冒険者ギルドマスター。シフォン・ハーベニーよ、見ての通りエルフよ」
「よろしくお願いします。僕はルイフ・アリオスです。そろそろ威圧をといてあげないとタイラさんが苦しそうですよ」
「はぁはぁはぁ…死ぬかと思った…」
「余りにもルイフくんに効いていないものだから忘れていたわ、それで用件は何かしら」
「これを、学園長から預かって来ました」
「ふーん…まぁ私の威圧を受けて平然としている子をFランクのまましとくのはあれよね。いいわ認めてあげる後でギルド証をモナカに渡してCランクのものにして貰うといいわ」
「では、俺は行きます。ルイフまた学園でな」
「はい、タイラさんありがとうございました」
僕はギルマスに挨拶を済まして1Fへ移動する。
モナカさんの受付に並び順番を待つ。
「あっルイフくん聞いているわ。ギルド証を貰える?」
僕はモナカさんに銅のギルド証を渡した。
モナカさんが裏に行き手続きをしてくれているようだ。
僕は待っている間辺りを見渡す。
夕方になると酒場はとても混雑してきている。
みんな今日の収穫を話し合ったり、次の依頼の話をしていたりと盛り上がっている。いつか僕もパーティーを組んだりするのだろうか?
カラーボールを使う訳にもいかないから…やはりソロかな。
とても楽しそうな姿に少し寂しさを感じてしまった。
モナカさんが戻ってきたようだ。
「お待たせしました、こちらが新しいギルド証になります」
渡されたのは銅?のギルド証だ…あれ何が変わったのだろうか。
「何が変わったのか?って顔されてますね。変わったのはこちらのランクの所ですよ」
「Fの所がCになってたんですね」
「はい、次のBランクでシルバーのギルド証に変わります。その後がAランクでゴールドですね」
なるほど…早く次のランクに上げたいものだ。
銅のギルド証はちょっとかっこ悪い。
「頑張って目指しますね、ありがとうございます、依頼だけちょっと見てから帰る事にします」
「はい、わからないことがあったらいつでも来てくださいね」
僕は挨拶を済まして、ギルドの掲示板の元へ向かう。
依頼は朝貼り出されるので基本的にこの時間は余っているクエストかずっと放置されたままの依頼がほとんどである。
一通り見てみる。
常時依頼が…薬草採集、ゴブリン討伐、一角兎討伐
やはり安い…ランクを上げてもらって良かった。
適正ランクのCランクのクエストを見てみる。
◼️Cランククエスト
オーク討伐 5匹討伐 銀貨4枚
岩ゴーレム討伐 5体討伐 銀貨5枚
ファイヤーリザード討伐 3体討伐 銀貨6枚
Fランクと比べるとかなりの金額になるな…
銀貨1枚が1000円くらいだから大体オークだと4000円…か。
オークは魔石やお肉も高く売れるので金貨3枚くらいの報酬にはなるだろう。パーティーを組んでも余裕を持って生活が成り立つのはやはりCランクくらいからのようだ。
残ってるクエストは3つだけだ…オーク以外の二つは遠いから敬遠されているのだろう、場所は馬車で2日ほどの距離だ。
オークは常にお肉が募集で出ているので、依頼書数が多いから残っているようだ。まだ見た感じ何枚か重なっている。
一つ上のクエストまで受けれるのでBランクのを見てみよう。
◼️Bランククエスト
レッドスネーク討伐 1匹討伐 金貨3枚
オーガ討伐 5体討伐 金貨1枚
デビルウルフ討伐 10匹討伐 金貨2枚
さすがにBランクともなると桁が変わるようだ…
討伐報酬だけで金貨である。素材は高く売れるだろうし大金貨が何枚か貰えるくらいの報酬はあるのではないだろうか…
レッドスネークは前に村の森で狩りをした覚えがある。
あれなら…十分倒せる魔物だ。学園が始まる前にお金も稼いでおきたい。この依頼にするか…ここから1日の距離にある森の中にいるらしい。学園の結果発表は3日後なので十分間に合う。
明日受ける予定だったがせっかくなのでそのまま受けていく事にした。受付のモナカさんの所へ依頼書を持っていく。
「あれっどうしたんですか?ルイフくん」
「いえ、明日でいいと思ってたんですが、ちょうど良さそうなのが残ってたので…受けとこうかなと思いまして」
「そうですか、では依頼書を貰いますね」
僕は依頼書をモナカさんに渡す。
明日は初依頼だ、とても楽しみだ。
「えぇぇっダメですよ…ルイフ君こんな依頼絶対ダメですー」
「あれ…一つ上のランクまで受けれるとお聞きした気がしますが」
「そうですけど初めての依頼でBランクの討伐、しかもレッドスネークって何を考えてるんですか!ガンツさんに任されたからにはそんな無茶はさせられません」
プンプンと頰を膨らませて怒っているようだ…
可愛らしいので怒っているのかふざけているのかわかんないのだが。
しかし、これは困った。せっかくやる気になってたのに受けさせて貰えないとは思わなかった。
「無茶はしないですよ。多分ガンツさんやシャルルさんも付いて来ますよ、僕が学園の寮に入るまでは僕の護衛についているので」
「それなら…でもレッドスネークはBランク上位の魔物。普通はBランク4名〜5名で倒す魔物ですよ?ルイフ君はまだ登録して初めての任務じゃないですか。そんな無茶しなくても…」
「そんな声をあげてどうしたんだい?モナカさん」
「あっフェンさん…どうもこうもありませんよ。ルイフ君がこのレッドスネークの討伐依頼を受けるって持って来たんですよ!何とか言って上げてください」
「おや、ルイフ君は確か昨日登録してFランクではなかったかい?」
「フェンさんこんにちは。今日推薦でCランクに上げてもらったんです」
「推薦とは、さすがガンツさんが認める子だね、僅か1日でCランクになっているとは…」
「モナカさんどうだろうか、この僕がルイフ君について行こう」
「それなら…ガンツさんにシャルルさん、そしてAランクのフェンさんがいるのであれば安心ですかね」
「よし決まったルイフ君もいいかい?勿論報酬はいらないよ、興味本位でついていくだけだからね」
僕の腕を見たいという事だろうか…
人が多いのはあんまり僕としてはいい状況ではないが。
レッドスネークであれば今の僕なら剣の腕だけでなんとかなるだろう。
「いいんですか?パーティーの方に確認とかは。それに報酬は分配でいいですよ」
「明日は休みなんだよ。だから問題ないよ。新人がそんな事言わなくてもいいんだよ。それに狩るのはルイフ君だろ?僕はあくまで付き添いさ」
これがAランクの振る舞いなのだろうか?
大人だ…これだからイケメンは困る。
「ではお言葉に甘えますね」
僕は依頼を受注する。
そして明日の朝、門の前で待ち合わせする約束を交わしギルドを出る。フェンさんは仲間の元へ戻っていった。
宿屋に戻ると1Fでトマが待っていた。
本当に真面目だ…アリオス家はトマとミラの真面目さにとても助けられている。もう少し雇う余裕があれば二人に部下を増やして少し楽をさせてあげたいものだ。
部屋に戻るとガンツさんとシャルルさんが装備の手入れをしていた。
僕はCランクになった経緯とギルドでの事を話した。
「はははっそれはモナカが正しいな、全く初任務でBランク依頼を受けるとはつくづく大物だな」
「今僕金欠ですからね…少しでも稼いでおこうと思って」
「私達がついていますから大丈夫よ。フェン君もいるなら尚更ね。それにしてもまた思い切ったわね、レッドスネークは私達二人だけだとギリギリ勝てるくらいよ。フェン君がいてくれて良かったわ。団長が聞いたら…なんと言うか。ルイフ様は絶対守るけど」
「ふむ…ルイフ様シャルルには教えておいた方がいいぞ?」
ガンツさんが僕に耳打ちしてきた。
シャルルさんは信用できるし、これからもずっと隠し続けるのも大変だ。知っている人がいるだけでも動きやすい。
「何よ…私だけ仲間ハズレにして」
僕はガンツさんに頷く…自分で言うのはなんと言えばいいかわからないからだ。
「あのな、シャルル。ルイフ様は俺よりも強い」
「えっ何いってんの?いくらルイフ様が才能に溢れていても10歳の子にさすがに負けるわけがないでしょ。甘やかしは団長に叱られるわよ」
全く信じていない。
もっともな意見ではあるが。
「今朝俺はルイフ様と本気で試合をした。そして負けた。全く歯が立たなかった」
「嘘…本気?この可愛いルイフ様がガンツより強い?」
ガンツは頷く…
「ルイフ様私とも本気で戦ってください」
真剣な顔でシャルルさんが僕に言う。
「わかりました。シャルルさん…明日依頼へ行く前にやりましょうか」
明日は全力でやろう…
僕達は朝一番から依頼に行くので夕食をとり早めに寝る事にした。




