episode:20
「ルイフ起きろ、出発の時間だ」
疲れが溜まっていたようだ、起きれなかった事など久々だ。
すぐに着替えを済まし、馬車へ向かう。
「すみません、父様寝坊してしまうなんて」
「初めての旅だ。疲れも溜まるだろう。旅は慣れだ…いずれ冒険者となればこんな旅が普通になる。良い経験となるだろう」
「はい、父様」
僕達は王都へ向かい馬車を走らせる。明後日には王都に到着だ。
旅路も後半に差し掛かった4日目のお昼。
1台の馬車と遭遇した。
父様はすぐ様近くに駆け寄り挨拶に向かう。僕も一緒に行くようだ。
馬車が止まると出て来たのは、ダンディーな男の人だ。
「お急ぎのとこ恐れ入ります。マルコ・アリオスです。ベーン伯爵の馬車をお見かけしましたので、ご挨拶に参りました。それと隣にいるのが息子のルイフです」
「ベーン伯爵。マルコ・アリオスが息子ルイフと申します、お急ぎのとこ恐れ入ります。」
緊張しながらも、出来るだけ丁寧な振る舞いで挨拶をする。
父様先に教えてくださいよ…そうルイフは挨拶の仕方など習った事はないのだ。父様の真似をしただけである。
「おーこれはマルコ久しいな。辺境に行ったきりほとんど顔を出さないものだから、寂しかったぞ。ルイフと申したか…その年でその振る舞いが出来るとは、マルコとは大違いであるな。私は、ベーン・アイラス、ロザリスの町を治める伯爵家の者だ。マルコの息子であるなら普段はベーンさんと呼べば良い、堅苦しいのも好かぬ」
「ベーンさん、これで宜しいでしょうか」
本当に言って良いのかわからなかったが、アイラス伯爵に尋ねる。
「素直で宜しい。ミナーラよ、挨拶をしなさい。マルコの息子のルイフだ。お前と同い年になるはずだ」
「ミナーラ・アイラスと申します。よろしくお願いしますわ」
「ルイフ・アリオスです。こちらこそよろしくお願いします」
薄い紫色の髪に灰色の瞳、将来絶対美人になるタイプだろう。
「私も父と同様、堅苦しいのは苦手なので、ミナで良いですわ。ルイフと呼んでも良いかしら?」
「はい、ルイフと呼んでください。ミナさん?」
ミントと違って…身分が上のお嬢さんだ。
さんずけでいいのだろうか?この辺りよくわからない。
「さんはいらないですわ。ミナとお呼びください」
「じゃあ、ミナ。宜しく?」
下から上目遣いで聞いてみる。こうしておけば大体女の人は問題ない事が、母様と姉様でわかっている。同い歳に効くのかはわからないが。
かわいぃ…ブツブツブツ…あれはずるいですわ…
どうやら効いたようだ。
「よろしくね、ルイフ。またパーティーで会いましょう」
「はい、ミナ。またパーティーで」
僕達は馬車に戻った。
「ルイフが砕けた口調で話すの見るのそう言えば初めてだな。あんな話し方もするんだな」
「父様…僕だって子供なんですから、同じ年とは砕けて話したりしますよ。ただ同い年で話す人がいなかっただけです」
僕としては、常に友達と話すような口調で話せたらとても楽だと思う。しかし、貴族としてやっていくのには癖づけておいて損はないと思って続けていたら、定着してしまったのである。
伯爵様の馬車を追う感じで王都へ向かう。
順調に進み王都に到着した。王都の外壁は一言で言うと凄い。
高さ20mくらいはあるのではないだろうか。とても高い壁に覆われている。
門の前にはたくさんの人が並んでいる、ヴェールの町も大きかったが、王都はさらに大きい。その分行き交う人も多いのだ。
僕達は貴族門から入るので、列に並ぶ必要はない。
アイラス伯爵が入る後ろに続いて入る。
「通行証をお願いします」
「マルコ・アリオス男爵だ。これを」
父様が通行証と家紋の書かれた証を見せる。
アリオス家の家紋は風を表す竜巻のような絵柄に剣が添えられたかもんだ。剣爽の名から考えたのだろう。
「アリオス男爵様、確認できましたのでお通りください」
無事に王都に入門する事が出来た。
今日泊まる宿は決まっている、荷物を置きに宿へ向かう。
夕方にはパーティーが始まるので少しゆっくり出来るくらいだろうか。今日泊まる宿屋は金月という宿屋でパーティーに来る貴族に用意された宿屋の一つらしい。
街並みは圧巻だ。この世界にも4F建ての建物などもあるんだ…
ヴェールの町のほとんどが2F建てだったので、そこまで建築は発展していないのかと思っていた。
日本のようなビルはないが、海外などで観光に行ったときに見るような風景だ。とても美しい街並み。中央には大きな川が流れており、大きな橋が通っている。その後ろにとても大きな建物がある、これがお城か…写真でしか見た事がない、ヨーロッパなどにあったお城に似ているところがある。実物だからなのか、写真で見たよりもかなり壮大に見える。パーティーとはいえ、お城に入れるのはとてもラッキーだったかもしれない。こんな機会日本にいたら一生なかったかもしれない。
それにしても、色々な種族がいる。
初めてエルフを見たが、ペタンコ説は嘘であった。大きくもないが普通だったのだ。どうでもいいが、伝えて見たかった。
宿屋に入りゆっくりと休む。
疲れたー。長旅はとても応える。慣れるのだろうか?
この後はパーティーもあるし、疲れがなくなる事はない、
少し仮眠をとっておこう。
「ちょっと俺は出かけて来るから、ゆっくりしていてくれ」
そうなのだ、父様だけ王都へ出かけたので僕は暇なのだ。
ふて寝してやる…。
2時間ほど休んだだろうか?
父様が帰ってきたようだ。
「おかえりなさい父様。どこへ行ってらしたのですか?」
「あぁ、騎士をしていた時に世話になった相手などに挨拶にな、そろそろ準備を済ませておいてくれ」
僕はパーティー用の服装に着替える。
貴族の服というのはちょっと恥ずかしい。スーツのようなきっちりとした格好の方が好きだ。
準備を済ませた僕達は、パーティーへ向かうのだった。