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僕は異世界でカラーボールを投げる  作者: Rea
幼少期編
16/127

episode:16




今日は待ちに待った収穫祭の日だ。

朝早いにも関わらず町の中から騒ぎ声が聞こえる。


「おはようございます、母様、ライド兄様。父様はもう行かれたのですね」


「ええ、張り切って出掛けて行ったわ」


「俺も父様の手伝いにこの後行くところだ」


「ルイフは私と回るのよね?」


「はい、母様一緒に見に行きましょう」


本当は一人で行って楽しみたかったのだが、母様に森へ行く口実として約束をしてしまっていたから仕方がないのだ。


「母様、祭りが始まる前に鍛冶屋のパモスさんの所へ行ってきます。月に一度剣の手入れをして貰う約束をしているのです。すぐに戻ります」


「気をつけるのよ」


「はい、母様行ってきます」


屋敷を出てパモスさんのいる鍛冶屋に向かう。軽く拭き取りはしておいたので剣を使った事はバレないだろう。


鍛冶屋まで歩く道もレベルが上がったためとても早く感じる。


鍛冶屋に到着すると、いつも通り誰もいない。奥からは鍛冶の音と熱気が伝わってくる。暫くして音が収まったので声をかける。


「パモスさんー」


「おお、ルイフか、悪いな待たせたようで」


「いえいえ、剣の手入れをして貰いに来ました」


「そうか、貸してみろ」


剣を渡しメンテナンスが終わるのを待つ。

10分ほど経った。どうやら終わったらしくパモスさんが出てくる。


「終わったぞ、しかし、一体何を斬った?」


「この間、父様達と祭りのフォレストボアを狩に行った時に一撃を加えた事があります、刃こぼれでもありましたか?」


剣を自分でも見たけど特に変な所は無かったが何か気になる点があるのだろうか。


「嘘は辞めろ。この剣は何体も魔物を斬っているな?それに1体は大物だ、これは命に関わる事だ。これからも俺の剣を使いたいなら正直に答えろ」


こんな事を言われるとは思わなかった。

しかし、困った。スキルの事は話す事が出来ない。


「言える範囲でいい、何を斬った?」


「ゴブリン10体ほどと、フォレストボア1匹です」


「フォレストボアだと!?マルコは知っているのか?」


「父様は知りません。僕は冒険者になりたいので今のうちから力をつけたいのです」


「ふむ…その歳でフォレストボアを狩るとはな。しかもその剣で狩りをするとはなんとも無謀な事を」


「はい、まだまだ未熟なのでフォレストボアは暫く手を出さないつもりではいます」


「命の駆け引きをしてきたんだな?」


「はい、けどこれは父様には」


これを言われたしまえば、森にはかなりの期間行けなくなるだろう。最悪は外出禁止だろうか。


「心配するな、言う事はない。だが、これからも狩りをすると言うなら新しく剣を打ち直させろ。お代はいらねえ」


怒られると思っていたが協力してくれるようだ。剣を新しく作ってくれるという、一体どういう事だろうか。


「なぜ、怒らないのですか?しかも剣まで…」


「怒った所でお前さんは、森へ行くのだろう?それなら、将来有望なお前に剣を作ってやるのが鍛冶屋の仕事だとは思わんか?それにだ、フォレストボアを狩れるとなるとC級冒険者レベル、いや、一人で狩りをするとなるとB級くらいか?そんな奴に初心者に毛が生えたような剣を使わせる鍛冶師がどこにいる」


「ありがとうございます。フォレストボアを倒す時僕の力ではほとんど致命傷にならなかったので、とても助かります」


「まあ、先行投資という奴だな。それにしても良く勝てたもんだな。この町で一人で勝てるのなんてマルコくらいなもんだろ。これからは武器に関係してくる事はきちんと話せ!わかったな?」


「はい、わかりました」


「防具もセットで作ってやるからサイズ測るぞ」


紐のようなもので測っていく。日本で言うメジャーの役割をするのであろうか。素早く測ると何やらブツブツいっている。


「よし、3日間は狩りには行くな、それまでに俺が武器と防具を用意してやる」


「わかりました、よろしくお願いします」


研がれた剣を受け取り、急いで屋敷に戻る。

少し遅くなってしまった、母様が待っているはずだ。


「母様、遅くなってすみません」


「良いのよ、無事メンテナンスは済んだようね。それでは行きましょうか」


僕と母様はミラを連れて祭りに向かう。

もうすぐ父様の収穫祭開幕の挨拶があるからだ。町の中心部には沢山の人が集まっている。僕達の座る席は領主家族席として用意されているのでそこへ向かう。

着席し暫くすると収穫祭の始まりを告げる挨拶が始まった。


「今年も無事この時期を迎える事が出来て嬉しく思う。例年同様冬を越えるのに十分な蓄えが出来た、これも皆のおかげである。今回の収穫祭用に今日は6匹のフォレストボアを用意した、思う存分食べてくれ!これを以て収穫祭開始の合図とする」


盛大な拍手が起こった。

僕もお肉食べるのが楽しみである。

え?一人で食べてたって?それでもお肉は食べたいのだ。


続いて、腕相撲大会の予選が開始されるので集まってくださいとアナウンスがあった。僕は参加しないので観客として楽しむ予定だ。


予選が始まるまで少し時間があったので母様とミラと共にフリーマーケットを見に行くことにした。


フリーマーケットにはたくさんのお店が出ていた。

他の町からも少ないが商人が来ているので、普段買えないものなどが買える事もあり、みんな貯めていたお金や物で様々な物を買っているようだ。


母様とミラに何か買ってあげたいが、何分僕はお金を持っていない。

何か稼ぐ手段を作りたいものだ。冒険者になるにしても必要だろう。


少し歩いていると声をかけてくる人がいた。

スーザンの町に来てくれる数少ない商人のクモンさんだ。


「セレナ様、ルイフ様、本日もよろしくお願いします」


「クモンさんいつも遠くまでありがとうございます。とても助かっているわ」


「いえいえ、半年に1度ほどしか来れないので申し訳ないくらいですよ。それにしてもお腹も大きくなられましたね。産まれた時に必要だろうと思いまして、色々揃えて来たので、後で屋敷の方へ届けさせて貰いますね」



相変わらず気がきく人だ。こういう人がいずれ成功していくのだろう。


「えぇ、助かるわ。それよりもそちらの可愛らしい子は誰かしら?初めてみるわね」


「ほら、挨拶しなさい。スーザンの町の領主様の奥様のセレナ様と息子のルイフ様だ」クモンさんの後ろに隠れて様子を伺っている。

同じくらいの年齢かな?茶色髪に、茶色の瞳、クモンさんとは似ていないから奥さん似かも知れない。


恥ずかしがり屋なのか、中々出てこないようだ。

ここは僕が話しかけるべきだろうか。


「すみません、余り他人と話したりしてないものですから、恥ずかしいようです。私の一人娘のミントといいます。ルイフ様よろしければ仲良くしてあげてください。この子も来年6歳になるので同い年だと思いますので」


「こんにちは、ミントちゃん?でいいかな。僕はルイフです。よろしくね」


ジーっとこっちを見ている。

何か間違っただろうか?


「ミント、ミントでいい」


少し小さな声でちゃんはいらないと抗議してくる。

初対面で呼び捨てはどうなのだろう?5歳児ならありなのだろうか。

よく覚えがないので、どうしていいかわからない。「わかったよ、ミント僕のことはルイフでいいよ」


コクリと頷くミント。


「これはすみません、ルイフ様…ミントもきちんとルイフ様と呼ぶんだぞ!」


ミントはクモンさんに頰を膨らませて抗議するかのような視線を送っている。


「あらあら、子供同士ですもの、気にしなくていいのよ。ルイフも町の子と余り遊ばないし、友達もいないから仲良くしてあげてねミントちゃん」


笑顔でコクリと頷くミント。


「母様、僕は友達がいないのではなく合う友達がいないのです」



「それを友達がいないと言うのよ、子供同士遊んで来たらどう?」


母様が急にそんな事を言い出した。しかし、僕は子供と遊んだ経験が余りないので小さい子とどう接していいかわからない。



「今日は母様と祭りを回る約束ですし…」


ミントが泣きそうな顔でこちらを見ている。

やれやれ…これは遊ばないとどうしようもないのだろう。


「じゃあ、ミント僕と遊んでくれるかな?」


「うん、ルイフと遊ぶ」


「では、母様、クモンさん少しそこら辺を回って来ます」


「ルイフ様よろしくお願いします。ミント迷惑はかけないようにね」


「ルイフお小遣いよ。二人で何か食べなさい」


「ありがとうございます。母様」


ミントを連れて僕はフリーマケットを回り始める。

どうしよう。何を喋っていいかも、よくわからない。


「えっと、ミント何か食べたいものとかある?」


「お肉」


「じゃあ、屋台の方に行こうか」


コクリと頷く、ミントだが、もう少し喋ってくれるととても嬉しい。

間を繋ぐために、中心部の屋台の出ている方へ進んで行く。


「着いたよ、このお肉でいい?」


…あれ?

…ミントがいない?


「ミント?!」

話すことがないので、屋台の方に向かったのだが、少し早く歩きすぎたのかもしれない。僕の身体能力はレベルの影響で5歳にしてはかなり高いものとなっている。


ミントを探し始める。来た道を戻りながら探して行く。

少し戻るとミントがいた。案外近くにいた事にホッとする。

何か見ているようだ。覗いてみると、小さな花の髪飾りをとても欲しそうに見ている。


「ミントここにいたんだ。その髪飾り欲しいの?」


ジー…っと見ているだけで何も言わない。

買ってという事かな?


「この花飾りください」


パァッっと顔が明るくなる。とてもわかりやすい。

購入した花飾りをミントにつけてあげる。

気に入ったようでニコニコと髪飾りを触っている。


「ありがとぅ…」


「いいよー。気に入って貰って良かったよ、お肉食べに行こうか」


はぐれないよう手を繋ぎ屋台へ向かう。

屋台に着くとフォレストボアのお肉を使った料理がたくさん売られていた。お肉料理は後でみんなにある程度振る舞われるのだが、屋台で食べるのはまた別格である。


屋台の料理は今回狩りで手に入れたフォレストボアを使っているため、格安で提供されている。

他の町では一角兎などの串焼きは銅貨5枚で売られている。フォレストボアのお肉は高級品なので銀貨2枚ほど必要だ。この町のお祭りでは格安の銅貨1枚だ。普通は祭りのが高くなるらしいので自らとってきて提供するこの町は特別なのだろう。


ちなみに銅貨1枚は日本円で表すと10円くらいだ。


◼️通貨単位はルーン

日本円で表すと大体こんな感じだ。


銅貨1枚=10円

銀貨1枚=1000円

金貨1枚=10万円

大金貨1枚=100万円

白金貨1枚=1000万円

黒金貨1枚=10億円


この田舎の町では、金貨までしか見た事がない。

領主である父親は金貨などを扱っているのだろうが、普段持ち歩くような事はないので滅多に見る事はない。


今日貰ったお小遣いは銀貨1枚だ。

子供のお小遣いにしては多い方だろうが普段貰っていないので多めにくれたのだろう。


「すみません、串焼き2本ください」


「お、これはルイフ様2本と言わずたくさん持っていってくださいな、今日はデートかい?そちらの可愛い子もたくさん食べな」


なんか誤解があるようだが、貰えるみたいなので貰っておこう。


「ありがとうございます。たくさんは食べきれないので、2本ずつ貰おうかな」


ミントに串焼きを渡してあげる。

2本いっぺんにくわえて頬張っている。


「ゆっくり食べなよ。今日はお肉たくさん食べれるんだから」


「おいしぃ…ボアのお肉なんて初めてだから…」


初めてのボアのお肉に感動しているようだ。

やっぱり父様は凄い。他の町では高級なお肉であるフォレストボアを毎月各家庭に提供しているのだ。自らが売れば財政も潤うというのに…貴族としてはダメなのかもしれないが、領主としては立派だ。


いつ食べても美味しいものだ。僕も夢中で頬張る。

普段からみんながお肉をお腹いっぱい食べれるような町になると良いなと思う。それには色々と前世の知識を活かす必要が出てくるだろう。田舎の貧乏貴族では限界がある。


「そろそろ戻ろうか。腕相撲大会も本戦になっている所だろうし、面白いと思うよ」


コクリと頷いたので手を引いて会場の方へ向かう。

会場に着くと母様がいた。クモンさんはまだ露店を出しているのだろう。


「母様、ただいま戻りました」


「あらあら、仲良くなれたみたいで良かったわね。今から本戦が始まるそうよ。ミントちゃんも後でお父さん屋敷に来るそうだからここにいるといいわ」


本戦が始まった。皆熱狂している。凄い歓声だ。

娯楽が少ないこの町では日本で言うアーティストのライヴのような刺激なのだろう。


「いけええぇ」


「負けるな!!」


「あぁぁ…ダメだ、押し返せ、負けてしまうぞ」


「負けたらあなた今晩のご飯抜きよ!!」


いろんな歓声があるようだ。

熱戦がついに終わりを迎える。

男性部門優勝は騎士団副団長ガンツさん。

女性部門優勝は騎士団副団長シャルルさん。


やはり騎士団の方は強いようだ。決勝戦では、激戦だったが男性、女性両部門で優勝をしているのだから。


一般部門と騎士団は分けた方が良かったかもしれない。

来年は考えてみよう。


お祭りも終盤に差し掛かり、宴会が始まった。

フォレストボア以外にも収穫された野菜が振る舞われる。

勿論、みんなお肉に夢中だ。普段こんなたくさんのお肉が食べれる事はない。食い溜めというやつだ。


高さ3m横幅2mもあるボアの丸焼きは圧巻だった。

中まで絶対焼けてないよな…とは思ったが、みんなは関係ないようだ。高級なボアの肉は少し焼けばほぼ生でも食べれるくらいに採れたては新鮮なのだ。


どうやら終わりの挨拶をするようだ。

大人達はそのまま朝まで飲み続けるようだが、一旦締めるようだ。


父様が前に出るとみんな一旦食べるのをやめ、視線を移した。


「今日は皆楽しんでくれたようで良かった。盛り上がってる所悪いが、一旦祭りの閉会の挨拶をさせて貰う。今年も無事収穫祭を終える事が出来た。皆に感謝している。来年も今回同様楽しく迎えられるように、よろしく頼む。これを持って閉会とする。夜は長いみんな楽しもう!」


パチパチパチパチ


「おう、飲もうぜ領主様」


「まだまだ俺は飲めるぜ」


子供や女性達のほとんどは家へ帰宅する。

僕もその一人だ。ミントも一緒に帰宅する。


屋敷に戻ると、眠たくなったのかミントは寝てしまった。

トマが僕のベッドに移したので、僕の寝る場所がない。

眠いが一緒に寝るのは…僕はロリコンではない。

実際の5歳児であれば気にする事もないのだろうが、僕には前世がある、変な知識が邪魔するせいで躊躇ってしまう。記憶があるのはありがたいことだが、それで戸惑う事も多いのだ。


下の方から声が聞こえて来る。

クモンさんが迎えに来たようだ。起こさないよう扉を開けて僕も下へ行く。


「これはルイフ様、今日はミントと遊んで頂いてありがとうございました。ルイフ様は冒険者になりたいとの事でしたので、冒険記を持ってきました。是非読んで見てください」


「ありがとうございます、ミントはまだ寝てるみたいです」


読むのが楽しみだ。前世でも本は好きだった、この世界に来てからの娯楽は本くらいなので後でゆっくり読もう。


「ミントちゃんもまだ寝てると思いますし、クモンさんも宴会楽しんで来てくださっていいのですよ」



「そうですか、それは有り難いです。私も楽しみにしていたのですが、どうしても行きたいとミントが言うものでして…今年は諦めていたんですよ」


「あらあら、それでは楽しんで来てくださいね。夫がハメを外しすぎなよう見張りもお願いしますね」


クモンさんも参加するようだ。

僕は本を持って部屋に戻る。早速読んでみよう。


◼️勇者ルーンステラの伝説

初代勇者であり、初代国王のライラック・ルーンステラが魔王を討伐する話だ。勇者、賢者、剣聖、聖女、と呼ばれる4人最強パーティーで激戦の末に魔王を討ち亡ぼす。

世界は平和になり、今に至る。やはり冒険記は面白い。


読み終えた頃には、2時間ほど経っていただろうか。

そろそろ眠さの限界だ。ベッドは占領されているので、王都の寮にいるレイク兄様のベッドを拝借させて貰う。


そのまま、眠りにつくのであった。


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