episode:14
土曜日なので2話更新です。評価お願いします。
屋敷を出たルイフは森のある門の元へ向かう。途中お祭りの準備をしている人達を見かけたがとても忙しそうだ。準備をしている人の横を通り過ぎ門を目指す。門に着くと案の定今日は門番がいなかった。男手が必要なので、皆祭りの準備に駆り出されている。
元々平和な町なので門番はする事がないのだ。魔物は基本森から出てこない、それに外から来るのは半年に一度くる商人くらいだ。
子供が森へ行かないように見張ったりするためにいるようなものなので、人手が必要な時には門番も手伝いに回るのだ。
ルイフは門を素通りし森へ入るのだった。
冒険者用の防具などはまだ持っていないので、普段着に剣をぶら下げた状態だ。
前回練習をした所よりも東に進み川の流れる場所に向う。
川はとても透き通って綺麗だ。太陽の光を反射して煌びやかに光っている。
川辺に着いたのでそこを拠点にして森の中でゴブリンを探す事にする。
索敵スキルなどはないため、手当たり次第に探していく。奥に入らないように勿論気をつけている。
少し探索していると、木の隙間から一瞬緑色の何かが見えた。あれは、ゴブリンだろうか?確かめるために近づいていく。
木の陰に隠れてそうっと覗いてみるとそこには緑色の体をした人型の魔物ゴブリンがいた。E級とはいえ初めての魔物狩り警戒は怠らない。ゴブリンが後ろを向いて歩き出すのを待つ。その間に赤色と青色のボールを出して置く。
ついに、その時が来た、ゴブリンは何かを探しているのかルイフと反対方向に歩き始めた。その隙にゴブリンの背に対して真っ直ぐになるように後ろに付いた。そのまま真っ直ぐゴブリンの頭を目掛けて赤色のボールを投げる。
ドカーンッ
少し逸れて首に当たったがゴブリンの頭は跡形もなく無くなった。
正直ここまで上手くいくとは思っていなかったが、上々の成果に満足する。
「他のボールも一通り試したいな」
欲が出てしまったのである。
次に見つけたゴブリンには青色のボールを足に向かって投げてみた。
ゴブリンの両足が氷結する。地面も交えて氷結しているため動けずもがいている。
動けないゴブリンを実験台にし黄色のボールをお腹の辺りに投げてみる。
ビリビリビリビリッ
グギャーグギャー
ゴブリンが痙攣している、これは余り見たい光景ではなかった。ゴブリンのアヘ顔など誰も見たいものではないだろう。
実験みたいなことをして抵抗はないのかって?
魔物に対する抵抗はこの世界に来た事が関係するのか特にはない。
魔物は倒すものと言う認識しかないので殺す事を躊躇う事はないのである。
そろそろトドメを刺すために近づくがゴブリンは痙攣したまま動かない。麻痺したのだろう。
剣で首を一斬りにする。
ザクッ
ゴブリンは絶命した。
その勢いで次々に見つけたゴブリンを狩っていく。調子に乗って今自分のいる場所を確認していなかった。気づいた時にはもう遅く。
「フォレストボア?」
目の前に現れた大きな猪を見て全てを悟った。知らず知らずに森の中腹まで来てしまっていたのだ。
「これは、詰んだかな?…でもこれも良い機会かも知れない。僕のボールがどこまで通用するのか試すか」
とても怖い、少しでも動いたら突っ込んで来そうだ。僕を見定めているかのように対峙している。距離は4mほどしか離れていない。
僕は頭の中で作戦を考える。
次の瞬間フォレストボアが動き出し一瞬のうちに僕の目の前に現れた。
僕はフォレストボアに直接ボールを当てずに地面に向けて青色のボールを放ちすぐさま横に飛び込んだ。フォレストボアは凍りついた地面を足で踏み次の瞬間凄い勢いで倒れそのまま木に激突した。重量があったからだろう滑った勢いも凄いものであった。
ぶつかった木はバキバキに折れて倒れている。これは当たったらひとたまりもない。勢いよくぶつかったはずだったがダメージはなさそうだ。傷もほとんどない。少しでも動きが遅くなればと思ったがこれでは期待出来そうにない。再び突っ込んで来ようとするフォレストボア、しかし次の瞬間再び盛大にこけるのであった。その隙に黄色のボールを投げる。
ビリビリビリビリッ
グギャーー
もう一度投げる。
ビリビリビリビリッ
グギャグギャグギャー
悲鳴をあげているどうやら効いてはいるようだ。だが表面には大した傷は出来ていない。少し焼け焦げてる程度だろうか?
内部のダメージは確認のしようがない。
足元の地面を凍らせて置くのは巨体で尚且つ突っ込んでくるだけのフォレストボアには効果的とわかったが、致命的なダメージは与えれていない。赤色のボールを当てれば恐らく効くとは思うが巨体のためどこに投げたら良いかよく分からない。それに、大切なお肉がぐちゃぐちゃになってしまう。
痺れているのかはわからないが動きの鈍くなったフォレストボアに向かって剣を振るう。
ザクッ
ルイフの身長では首の中間地点ですら届かない。切れたのは下の方で僅か5cmほどしか傷が付いていない。まだまだ力のないルイフでは剣の斬れ味が良かろうと浅く斬るのが精一杯のようだ。
父様と来た時のように万全の罠が引けていれば違ったかもしれない。下腹の部分であればルイフでももう少し奥まで食い込ませることが出来る。
動く気配がないので何度か剣を振るう、動かない事に油断していた。足場を凍らせる事も忘れそのまま斬る事に集中していた。
次の瞬間巨体が大きく横に振れた。剣に大きな衝撃が走り吹き飛ばされるルイフ。
「ぐっ、痛い手に力が入らない」
フォレストボアの巨体と打ち合ったのだから当たり前だ。ルイフの手首はその力に耐えられる訳もなく、もはや剣を持っているのもとても苦痛であった。
初めから赤色のボールを投げていれば良かったのだ、自分のスキルの優位性に傲慢になりC級魔物である格上に対し戦闘に全力を尽くさないなど言語道断である。
右の手首を痛めたのでボールは投げる事が出来ない。左手で投げる事は出来るが、練習もしていないため真っ直ぐすら飛ばせないだろう。
飛ばされた木の陰に隠れながらどうするか考える。試しに緑の玉を自分に当ててみる。何も起こらない。やはり自分には効果がないようだ。間違えて他の玉が当たっても困るのでこれは有難い事なのだが。回復手段がないのはとても困る。
ミシミシと迫る音がする。
フォレストボアだ。すぐに匂いを嗅ぎつけ追ってくる。左手で出来るのは青色のボールで地面を凍らせて逃げる隙を作るくらいである。しばらく、繰り返していると周囲の木々は突撃の影響でそこら中に倒れて散乱していた。これは使えるかもしれない。
なんとか足を滑らせ動きを阻害する事で逃げつつ、木々が一番散乱している場所に誘導する。青色のボールを地面に投げ、突撃ルートに設置する。これが失敗したら正直どうしようもなくなる。怪我した右手を庇いながら逃げきるのは恐らく難しいだろう。
フォレストボアが突撃してくる。
ツルッっと
滑って木々にぶつかる、倒れた木に阻害され身動きを取ろうと暴れている。
その隙に近付き、赤色のボールをフォレストボアのお尻に向かって投げる。
ドカーン
これでダメージを受けていなければ距離は1mもないので避け切れるかわからない。
グギャーっと言って横に倒れこんだ。
お尻部分付近は爆発の影響で大きく抉れている。巨体なのでそれほど大きく抉れたようには見えないが人間であればお尻は丸々消滅している。
致命傷は与えたがまだ死んでいない。
頭の部分に当てるためには前方に回り込まなければならない。
死にかけの魔物ほど怖いものはないと父様が言っていた。しかし、ここまで来て倒さない訳にはいかない、ここで逃げたら冒険者になんかなれない。勇気を出して前方に回り込む。勿論回り込む前に2個の黄色ボールを抉れた部分に当てておく。
こんがりと焼けた匂いと悲鳴が聞こえたがこれは必要悪である。ほとんど動けなくなったフォレストボアの頭目掛けて赤色のボールを投げる。
ドカーン
頭に致命的なダメージを負ったフォレストボアは今度こそ絶滅した。
「ふうー、なんとかなったか。冒険者になる前にゲームオーバー寸前だった。しかしどうやって持ち帰ろうか」
考えた末に黄色のボールをひたすら放り込み血を蒸発させて血抜きをした。持ち上げる事は不可能なので少し焼けてしまうが綺麗に出来たと思う。
抉れた部分から剣を突き刺し肉を剥いでいく。知識はないので美味しそうな部分を適当に切り取る。それを持って川に戻る。川の水で血肉を綺麗にし、近くで拾った木を集めて家から持ってきた火打石を使い火をつける。
お肉に枝をぶっ刺し火で炙っていく。
こんなに大きいお肉を食べるのは初めてだ。
普段は町のみんなで分けられたお肉を一月かけて消費していくので満足できる大きさはない。領主という事もあり取り分は多いのだがそれでも、日本の一般的なステーキの半分もない。
ジュージュと焼けるお肉を見て涎が口の中を埋めていく。ゴクリと飲み込み焼けるのを待つ。家族には悪いがまだバレる訳にもいかないし、死にかけたのだこれくらいの褒美は欲しいものである。
こんがりと焼けたお肉にガブリッと噛み付く。
「アチッ でも美味しい」
塩胡椒などの味付けは出来ないので肉本来の味だが。フォレストボアのお肉は肉肉しさもあるがとても甘い脂に包まれているのでそのまま食べるだけでもとても美味しいのだ。
夢中で食べ続ける、あっという間になくなってしまった。残してきたお肉が愛おしい。
次はなんとかして運ぶ手段と保管をしたいものである。本来なら家族や村の人に持ち帰りたいが、それはもう少し後になるだろう。
そろそろ帰宅しないと夕飯に間に合わなくなりそうだ。川で軽く手足を洗い土を落としておく。今回の成果はゴブリン10体とフォレストボア1匹だ。
門へ向かい走るルイフ。
なんだか、足が速くなった気がする、それに息切れも全然しないのだ。
これはもしやレベルアップしたのだろうか?
嬉しくなりそのまま門まで走り続ける。
門についたが、まだ門番はいないようだ。そのまま走り抜け、家を目指す。
走っていると目立つので門を抜けてからは歩きだ。
まだ右手は痛むがさっきよりは大分楽になっていた。直接受けていたら追及は避けられず狩りに行く事は出来なくなっていただろう。
服の汚れは、なんとか誤魔化そう。
祭りの準備が進み町の中には、飾り付けがされ賑やかになっていた。中央のメイン会場には腕相撲大会用の机が一段上がったステージの上に置かれていた。
本当に楽しみだ。ルイフの記憶には多少あるが前世の記憶を思い出してからは初めてなのである。
屋敷に着くと乾いた洗濯物を回収しているミラを見つけた。
「ミラただいま!」
「ルイフ様おかえりなさいませ。それにしても服が泥まみれじゃないですか。どうなされたんですか?それに切り傷もたくさん」
「ちょっと技の練習をしていたら調子に乗りすぎて盛大にコケてしまったんだ。心配されるから黙ってて欲しいんだけど頼める?」
「今は無用な心配をさせてはお体に障る時期なので黙っておきますが、あまり無茶はしないでくださいね。薬と着替えを持ってくるのでルイフ様は先に裏の井戸の前でお待ちください」
裏の井戸の前で待っていると気付け薬と着替えをミラが持ってきてくれた。
薬を塗ると細かい傷は目立たないくらいに治り、手首の怪我も心なしか軽くなった。
ポーションなどを使えばもう少し良くなるらしいのだが、貧乏貴族の常備数は少ない。騎士団などに何かあった場合に優先的に使うので傷くらいでは使わせて貰えない。
それでも細かい傷くらいであれば、
村の女性達が採取の際に取ってくるポーションの原料である、ヒール草を潰したものを塗っておけば翌日までには治っている。
体を洗い薬を塗り着替えたルイフはミラにお礼を言い入り口から屋敷に入る。
「母様ただいま!」
「おかえりなさい。あら、ルイフ朝そんな格好だったかしら?」
「走っていたらこけてしまって泥まみれになってしまったのです。入り口でミラにあったので着替えさせて頂きました」
「元気なのはいいけど、怪我はしないように気をつけるのよ?」
「わかりました、母様」
母様との話が終わったので急いで部屋に戻る。早くステータスの確認がしたいからだ。




