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僕は異世界でカラーボールを投げる  作者: Rea
幼少期編
12/127

episode:12




それから一月が経ち収穫祭も間近となった。

腕相撲は町の人達に受け入れられ町の外では所々に腕相撲用の机が置かれている。

みんな優勝のお肉を獲得するため日々練習している。知らない間に手首を捻ったりと工夫し技を編み出してるものまでいる。


今日は収穫祭用の景品のお肉である、

フォレストボアを狩りに行く日である。


魔物を見るチャンスである。

投球も安定し当てれるようになってきていたので、もう少ししたら魔物狩りをしようと思っていた。初見よりも狩りを見といた方が良いだろう。


「父様今日は狩りにいくのですよね?」



「そうだ、たくさん狩ってくるから楽しみにしていてくれ!」



「あのですね、僕も冒険者の勉強のために、一度魔物を見たいのです」



「冒険者になるのはまだまだ先だろう、もう少し大きくなったら連れてってやろう」


予想通りの返事だった。

こんな子供を連れて行けば危ないだけだ。

実際怪我をする人も多数出る事もあるのだ。


だが、諦めない。


「僕は父様が騎士だった頃を知りません。父様の剣を父様の背中をしっかりと見たいのです。僕が剣を諦めなくて済むよう父様の剣を見せて頂けませんか?」



「ふむ、しかしだな」


もう一押し。


「父様がいれば僕は安全です。父様ほどの方なら大丈夫ですよね?」


憧れの眼差しを表現してみる。

とは言ったもののいつもの必殺上目遣いだ。


「仕方ない、ライド、ルイフを頼むぞ?」


「父様任せてください、ルイフは俺が守ります」


なんとか行けるようになったようだ。

これで魔物を倒す目処がつく。


隙があればボールを使ってみたい。


「では、向かうぞ」


馬車に乗り込み、森へ出る門の前に向かう。

今日の父様は全身に鉄の鎧を着ている。

ライド兄様は革の鎧のようだ。

普段父様やライド兄様は町の騎士達と訓練をしている、今日はそのメンバーが全員参加するらしい。

勿論騎士と言ってもお城の騎士とは違い田舎町の兵士なので煌びやかなものではない。


しかし、父様の訓練が良い事もあり、王都の兵に劣らずの実力者達らしい。学ぶ事も多そうだ。


門の前に着くとスーザンの騎士12人と町の狩人4人そして荷物係に町の男衆が10人ほど待っていた。


父様、兄様と僕を合わせて総勢29人だ。

初めて会う人が多いがみんなは僕の事を知っているようだ。


騎士団副団長のガンツさんとシャルルさんの二人はたまに家に来ていたので知っている。

父様に皆が挨拶をしている。


「これはルイフ様、今日はご参加なされるのですか?」


騎士団副長のガンツさんとシャルルさんだ。ちなみにガンツさんは38歳独身だ。

豪快な大剣捌きが見ものである。


シャルルさんは美人な29歳独身だ。

女性でありながら副団長に抜擢されるほどの剣の腕前を持つ。武器はレイピアだ。


「はい、父様に頼み連れてきて貰いました。迷惑はかけませんのでよろしくお願いします」


「いえいえ、ルイフ様なら頭も回りますし問題ないでしょう。この町が誇る神童ですからな」


またでた、神童。特に何かをした覚えはないが、いつのまにそんな噂が広がったのだろう。まだ前世の記憶からの自重しない行為はした覚えがないのだが。


「いえいえ、僕なんかまだまだです。一体どこから神童などと言う言葉が出たのだかびっくりです」


「そんなしっかりと物事を受け答え出来る5歳児はいませんよ。ほとんどの原因はマルコ団長ですが」


父様は一体何を話したんだろうか。


「よし、みんな集まれ!」


聞こうとしたが、その前に集合がかかってしまった。


門の前に皆が整列している。

前にいるのは父様、ライド兄様、騎士団副団長の二人そして僕だ。


「今日はよく集まってくれた。今年も恒例の祭狩りをする。普段の狩りノルマの2匹と比べると多く5匹だ。一人一人の負担も増えると思うが怪我のないよう、努めてくれ。


それと、今日は息子のルイフも参加する事となった、子供ながらしっかりしているので迷惑はかけんと思うが、目を掛けといて貰えると助かる。では、いつもの班に分かれて森へ入ってくれ!」


班分けはこうだ。


◼️騎士団長である領主マルコ率いる班

ライド

ルイフ

狩人のまとめ役ポックル

男衆が3人


◼️副団長ガンツ率いる班

騎士団員6名

狩人1人

男衆が3人


◼️副団長シャルルが率いる班

騎士団員6名

狩人2人

男衆が4人


以上だ。



僕達も森に入っていく、浅い所以外は初めての森だ。魔物を見るのも初めてなのでとても楽しみだ。


森の中の浅い所と違い、森の中程に入っていくと、緑も少し深々しい色合いをしていて少し不気味だ。魔素が影響しているらしい。


基本的に、森の奥までは入らない。

奥には魔素の濃い場所が多く存在するらしく、父様ですら近づかないらしい。


1時間ほど歩き森の中腹部分に到着した。

ここで狩りをするらしい。


まずは、太い木を見つけてロープを張り罠を仕掛けていく。そして罠の前方部分には抜けてしまった時用に軽く堀を作る。

これで準備は終わりなようだ。


狩人のポックルさんが、

探してきて罠まで誘導するようだ。


10分ほど待っただろうか?


何かが迫ってくる音がする。

現れたのはポックルさんだ、後ろから追いかけて来ているのがフォレストボアだろう。


ポックルさんはロープを大きく飛び越え合流地点に無事到着した。


その後ろを凄い勢いで走って来ていたフォレストボアは、ロープに足を取られ盛大に転んだ。そして堀の中にホールインワン。


こんな豪快なホールインワンは初めて見た。

なんて言ってる暇もなく、父様とライド兄様が剣を構え向かっていく。


凄い形相で睨みつけているかのような威圧感を感じる。今にも抜け出そうと必死なフォレストボア。首に向かい父様が一撃を与える。


ギギャーーー


フォレストボアの悲鳴が鳴り響く。

その太い首は父様と言えど一撃では切れないようで半分ほどで剣が止まった。

半分切れるだけでも凄い技量らしい。


それにしても大きい、高さ3m横幅2mくらいだろうか。


父様は急いで後ろに飛び退きその隙にライド兄様が横腹に剣を差し込む。


そして僕は隙をつき父様が切ったのと反対側の首の下側を下から掬い上げて斬り裂く。


ギギャギャー

凄まじい悲鳴にびっくりして僕は尻餅をついてしまった。


それが止めとなり、フォレストボアは絶命した。罠が上手く作用したから良かったが、しなかったらと思うと寒気がした。

必死に殺されまいとする魔物の執念を感じとても恐ろしさを感じたのだ。


勿論ほとんど父様の剣によって致命傷になっていたからだ、僕の剣は10cmほど斬った所で止まっている。これはほとんど剣の斬れ味が良かったおかげだろう。



「こら、ルイフなぜ参加しているんだ。見学と言う話だっただろうに」


普段怒らない父様が凄い剣幕で怒っている。

慌てて謝る。


「ごめんなさい。父様とかの姿を見ていたら自然と体が動いてしまったのです」


「あのまま、フォレストボアが絶命したから良かったが動いていたらあの大きな牙で刺されていたかも知れんぞ。死にかけの魔物ほど怖いものはないからな」


それは自分が一番わかっていた。

甘かった、もう少し簡単に勝てるものだと考えていたが、実際の戦闘でボールを試しながら倒すなんて事をしていたら命がいくらあっても足りない。何か対策を立てなくては。



「はい、父様気を付けます。しかし冒険者になるにはレベル上げも重要です。早いうちから学びたいのです」



「ルイフよ、何か誤解があるようだが、フォレストボアはC級の魔物だ。その魔物に傷をしっかりつけれたのだからE級の魔物から始めればいい。C級魔物はCランク冒険者3人以上で倒す魔物だ。子供のお前が挑む相手ではないのだ」


魔物図鑑は読んだ事があったが、父様が余裕で立ち向かってるのを見て失念していた。

E級もしくはさらに弱いF級の魔物で練習を積めばいいのだ。レベルも上がれば身体能力も上がりそのうちフォレストボアも倒せるかもしれない。


近くでE級魔物のいる場所を探してみよう。

そろそろレベル上げを開始してもいいだろう。


「父様今度E級魔物の狩りに連れて行ってください」


「まだ早い気はするのだが、ルイフなら大丈夫か。E級魔物は森の浅い所にいる魔物だから、採取の時にでも連れて行ってやるか」


「ありがとうございます父様」


浅い所にいたとは知らなかった。

あれ以降森には入っていなかったのでわからなかった。

しかし、いい事を聞いた。父様と行く前に一度行ってみよう。


その後も順調に狩りを進めフォレストボアを3匹仕留めた。勿論攻撃には参加させて貰えなかった。


その他ガンツ率いる班が2匹

シャルル率いる班が1匹仕留めて計6匹取る事が出来た。


簡単に狩れた用に見えるだろうが


*移動に1時間

*狩りに3時間


既に経過している。


父様が別格なだけでその他の班は複数の罠を仕掛け1時間ほどかけて徐々に弱らせて狩りをしている。かなりの重労働なのだ。


帰りはさらにしんどい、血抜きを済ませてはいるものの大きなフォレストボアを荷台に乗せてみんなで運ぶのだ。


行きの倍の時間をかけ町に向かう。


ルイフが持った所であまり変わらないので、父様の横で同じく荷台の周辺警護をしていた。たまに、ゴブリンや角兎と遭遇したが、すぐに倒されるので問題なく町に到着した。


ファンタジーと言えばゴブリンだ。

近いうちに倒しに行こう。

見ていた感じ剣だと怖いがカラーボールなら倒せるだろう。


町に着くと沢山の人が集まっていた。


すぐにフォレストボアは保管庫に入れられ保存される。

そして狩りに行っていた者は、疲れたのか保管庫前の広場で座り込んでいる。


女性陣がスープやパン、そして芋を蒸したものを持ってくる。お腹が空いていたのでみんな凄い勢いで食べていく。

前世を思い出して一月ほどは食べるのがとても辛かったが。普段食べるのが当たり前になったから慣れたのか不味いとは思わなくなった。


美味しくはないけど忘れられない癖になる味が誰にでもあるだろう。そんな感じだ。


そのうち料理にも挑戦したいものである。

一人暮らしが長かったのでそこそこ簡単な料理であれば作る事が出来るのだ。


皆んなは食べ終わって休憩をしている。


「今日は皆ご苦労だった。無事6匹のフォレストボアが取れた。例年よりも多く取れた分皆に配る量も多くなると思うので祭りを楽しんで欲しいと思う。祭りの準備で明日も忙しくなると思う。家に帰ってゆっくり休んでくれ」


父様の話が終わると皆んな父様に挨拶を済まし帰宅していく。


「ライド、ルイフ帰るぞ」


『はい、父様』


トマが馬車で迎えに来ている。


「お疲れ様です。マルコ様、ライド様、ルイフ様」


トマを労い、馬車に乗り込み屋敷へ向かう。

馬車に乗った事で安心したのか、僕はすぐに眠ってしまった。体は5歳なので疲れやすいのだ。


屋敷に着くと父様に抱き上げられる。

寝ている僕を起こさないよう部屋のベッドに寝かせ、母様の元へと向かった。


もうすぐ出産なのが楽しみなのだろう。

暇が出来ると父様は母様の元へ行きお腹を触ったり、声をかけたりしている。


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