Episode98 結界解除(中編)
蟻が突っ込み、蜘蛛が糸を放ち、蠅が降下し、蝦蛄か殴りかかり、蝶が毒を撒き、飛蝗が飛び込み、蟷螂が鎌を振る。力が制限されているにも関わらずその全てをかわし、
「インペリウムセルウスっ!!!」
と糸に魔術をかけて操り、蟻を巻き取る。さらに振り回して、ハンマーのようにして蝶を落とす。
ドゴゴゴォォォッッッ!
再び突っ込んできた蠅にはソードビームで迎撃し、続く蝦蛄に乗り掛かって蟷螂の方へと吹っ飛ばす。
ジャグィンッ!
それを蟷螂は鎌で裂く。
「残酷な奴め!」
「残酷?貴様も族民を殺しているではないか。」
「そうだなっ!」
と会話の中、今度はザグレス、トレントにソードビーム。
「ちっ...!」
すぐさま、トロントは身体変化を発動。肉体で出来た盾で地面を跳ね返し、それをシルバに投げた。
「らぁっ!」
彼は飛んできた盾を真っ二つにし、奴の右腕は再生する。
「フンッ...もう良い、手加減はなしだ。『双子座・夜(Ⅵ)』っ!」
「『双子座・昼(Ⅴ)』っっっ!」
2人がそう言うと、ザグレスとトロントが融合する。
そして、現れるのはザグレスの赤い瞳とトロントの青い瞳のオッドアイ、背中には肉体で作られた羽が生えている。
「『双子座・昼』と『双子座・夜』。森辺の魔道具店で見つけてきたタロットの内、2つだ。貴様の力を抑えているのも『無神論者』というタロットの1つだ。」
そう言って、凶虫ともにてシルバに襲い掛かる。
飛び込む飛蝗を中途で突き刺し後ろへ投げ、
「くっ!」
シュキィィィッッッン!
蟷螂の鎌を剣で防ぎ、
「はぁぁぁっっっ!」
と怒号を挙げて、ゼロ距離からソードビーム。当然しの蟷螂は裂かれ、後ろの凶虫たち数十も死滅する。
次いで、そこへ空からの黒い光線。それをシルバは後ろ飛びを連ねてかわしソードビームをお見舞する。だが、それは黒い光線が相殺し、
「よはり力が弱まっているようたまな。」
と奴は急降下をしてくる。後ろには同じく急降下する蠅。シルバはその蠅に
「インペリウムセルウス!」
と再び唱えて操り、大威力の物理攻撃をかます。
「抑えられた力を凶虫どもで補ったか。ならば、致し方ないっ!」
それを受け、奴は体の回りに数十もの黒い球を生成。一気に光線を放った。
「くっ...。」
シルバは飛び、一度その光線をかわす。だが、光線は上下左右へと不規則に動き始めた。シルバはそれを縦に横にかわすが、何度も服を掠り、その部分は焼け落ちた。その内に凶虫 は撃ち抜かれついには奴1人のみとなった。
「勝利のために仲間を皆殺しにするなど信じられんな。」
「仲間?凶虫なぞの怪物は捨て駒に過ぎん。我々が尊重する命はドュンケル様を信仰する"人間"のみである。」
シルバが言うと、奴ははたまた信じられないことを言う。
「さて、邪魔者はいなくなったっ!正々堂々と勝負をしよう。」
「正々堂々...ね。」
凶虫たちも何処かへ2人は再び激突した。