Episode96 自分自身との一騎討ち
キィィィッッッン!シュキィィィッッッン!
剣を交えては退き、交えては退き。相手が自身である以上、いくら僕が強くなろうとも互角なので太刀が悪い。しかも、あちらはかなりの意地悪。
「トラップ!」
と言って僕を罠に仕掛けてからの斬撃。僕はそれを剣を適格に振り回して捌き、うちにためた力を真上へ一気に解放。
「とぉぅっ!」
そして、上からソードビーム。
「はぁっ!!!」
それをあちらもソードビームを放って相殺。
「エレキスピア!」
その後、地に降り立たんとするなり今度は無数の紫電の矢が飛び込んでくる。僕は
「プロテクト!」
と叫んで、障壁に全てを弾き
「クロスカリバー!パラレル!」
とこちらは数十もの十字の聖剣で反撃。
「ちっ...。」
相手は舌打ちの後、剣を振りかぶり斜め上へ斬り上げるとともに、剣を肥大化させて全てを砕く。その切っ先は僕の首元まで来るのだが、体を反ってかわす。
そして、僕はそのままの勢いで一回転をし着地。
「フフフ...ニュークドシャイニングインパクト!」
そこへ飛んでもないのが放たれる。僕は咄嗟に剣で防御の構えを取り、「プロテクト」もとなえようとするが間に合わず。
「あぁぁぁっっっ!」
抑えることは出来ても凄いダメージだったし、爆風に巻き込まれるしで僕は悲鳴を挙げて吹っ飛ばされる。
そこへ、容赦なく上から突き刺す攻撃が来る。
「くっ...。」
避けねばとは思ったが、全身の痣が疼いて、上手く体が動かない。
「さようなら、もう1人の僕。」
段々と剣は僕の首元へせまる。絶体絶命ではあったが、打つ手はまだある。
「ぐあっ!?」
その次の瞬間。もう1人の僕は真上へ蹴り飛ばされた。一方で足をガクガクさせながらも立ち上がっている。神宿しの力を足にためて無理やり足を動かして相手を蹴り上げ、その勢いを借り後方回転で立ち上がったのである。体への負担は大きかったがこの際だから仕方がない。僕は出来た隙の内に、
「スーパーヒール!」
と唱えて、全痣を即時回復した。
そこからまだ腱の打ち合いが始まる。
キィィィッッッン!シュキンッ!ギィィィィッッッッッン!
金属の音は連なり、手応えも段々とヒートアップしてくる。
「魔力解放!魔力解放!魔力解放!」
その最中、もう1人の周りをギュンギュンと高速機動し魔力解放で追い詰める。
「うぅ...ぐ...はぁっ!」
それを受け、あちらはソードビームを放ってくるばかり。しかも、外れていくばかり。
僕は次のソードビームが来た瞬間、一気に近寄る。と、そこでテーラの声が聞こえてきた。
「どうしちゃっのよリドナー...。」
と。思わず体が止まる。
「フンっ!」
「あがっ...!?」
だが、それはヤツが出しただけのようだ。僕はソードビームを真面に食らい、ロンギヌスを放り捨て地面に倒れ伏す。
「今度こそ終わりだ、もう1人の僕。」
もう1人はそう言い不敵に笑み、黒の剣を振りかぶる。狙うは僕の首元。だが意識が朦朧とする中、僕はニヤリとしていた。
「アレス...。」
とだけ言って。
刹那。自我を得たロンギヌスがもう1人の僕の胸を貫いた。
「ぐっ...はっ...!?」
それを食らって彼は倒れ伏し消えていく。これで図書館に戻るだろうと、後はテーラたちがどうにかしてくれるだろうと。そう思いつつ意識を保つのを止めた。その瞬間、プツンと意識は吹き飛んだ。
そして、僕の体は図書館へと戻ってきた。バラバラになった本を傷口から流れる鮮血が濡らす。その様子を見て、真っ先にテーラが寄ってきて
「リドナー!」
と涙ながらに呼び掛ける。
「テーラ、回復魔法をかけるわ。どいて...。」
そんな彼女にマリアは暗い声で言う。
「え、えぇ!お願い!」
テーラは泣いたまま、こちらからもお願いする。
「ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!ヒール!」
マリアは僕をそっと仰向けにして「ヒール」を何度も唱えて傷口を少しずつ塞いでいく。その後、図書館に響いたのはその声、泣く声、呼ぶ声だけであった。
と、そんなこんなで何とか僕は一命を取りとめ起き上がる。
「リドナー、良かった!」
その瞬間、すっかり目を充血させてテーラが抱き締めてくる。
「痛たたたたたっ...!」
「ご、こめんなさい。強くしすぎたわ。」
全身に走った痛みに思わず声をもらすと、テーラは放れて謝ってくる。
見ると、マリアは地面に倒れ息をしているところから見ると魔力切れが何からしい。触れば痛みを走るが、傷口は生命維持を出来るぐらいには回復している。
「魔力切れになるまで回復魔法をかけてくれたんだな。ありがとう。」
僕はそっとマリアに礼を言い、改めて仲間とは良いものだなと感じた。そして、そんな仲間を絶体に傷つけないようにしようとも決意した。
僕はまず地面に落ちていた魔剣ロンギヌスを拾い上げ、腰に掛けた鞘に納める。
こうして、俺たちは最後と思われる分霊の書を破壊するのに成功したのであった。