Episode89 百足凶虫
★今回初めて登場する怪物★
タイプⅩ
惑星・ユミルに住む巨大なムカデ。凶虫の一種。鋏のような顎で挟む、尻から毒液を放つ、高速での突進など近接から遠距離戦闘まで対応が可能。百足の節1つ1つが人が変化したものと言う特殊な凶虫で頭以外を切断するとそこから2つに分裂するが、突進の威力は半減する。正体はナーガという種族である。
「僕の『モールディング』で階段を作って地道に降りていくしかないか。」
そして、僕は思い至る。対するマリアは、
「まあ、それが一番安全よね。」
と言う。バーロン、テーラ、ニコラス、フレイアも
「俺はそれで良い。」
「私も別にいいわ。」
「僕もです。」
「俺もだ。」
と賛同する。
そうと決まれば即行動だ。僕は地面に手を振れてまず、
「エクステンダー!」
と唱えて視野を底まで飛ばす。そこから、魔力を制御して少しずつ狭めつつ、
「モールディング!」
と唱えて下から上へ螺旋階段を作り上げていく。段差は出来るだけ緩やかに、幅と躍り場は出来るだけ大きく。こうすれば、5人揃って「モーメント」で降りれるし、勢い余って階段から飛び出しこともない。
その階段は次々と形と成ってゆき、10分近く掛けて底からここまでの長い螺旋階段を完成させる。
「これで階段が完成したぞ。」
僕が言うと、バーロンは
「随分と時間が掛かったな...。そんなに深かったのか、この渓谷。」
と言ってくる。
「そんな他人事みたいなこと言うなよ。」
僕は彼にそう返してやる。
それから、
「皆、集まってくれ!この階段を『モーメント』で掛けおりる。」
と僕は召集をかける。応えて4人は集まりそれぞれの肩を掴み
「モーメント!」
と唱える。すると、僕らは高速で飛び出し階段を掛け降りる。
そんな高速移動があっても底に付くのには1分ほど掛かった。深くへ行けば行くほど魔力が濃くなるし、寒くもなるしで結構気持ち悪い。
どうやらかつてこの渓谷にあった村で大量殺戮があったらしく、その殺された人たちが怨霊となって徘徊しているようだ。そのせいで魔力が集まってくるし、その魔力に侵された生物の骨がたくさん転がっている。
「本当にここは恐ろしい場所よね、ここは...。」
とマリアが言う。バーロンは
「そうだな、俺たちもずっとここにいればああなるぞ。」
と怖がらせてくる。
「ちょっと、怖いこと言わないでよ。」
とテーラは素直に言う。
と、その時近くでたくさんの黒い柱が落ちる。
ドドドドドドドドドドッォォォォォン!
連なる轟音。しかも、今まで類に見ないほどの量だ。ざっと、500近くはある。
「マズい!大軍が来るぞ!」
僕は剣を抜き、皆に叫ぶ。
「あぁ。」
「うん。」
「えぇ。」
「はい。」
「もちろんだ!」
それを聞き、バーロンは剣を抜き、テーラは2本の短剣を構え、マリアは杖を構える。ニコラスは銃に弾を装填し、フレイアは量拳を強く握りしめる。
そして、現れたのは蟻、蜘蛛、蝦蛄、蝿、蝶、飛蝗、螳螂と今まで出会してきた凶虫たち。加えて、百足のようにたくさんの節と足を持った凶虫であった。
その百足は鋏のような顎をカチカチと鳴らして、尻にある2本の時を蠢かせる。奴等はそれを合図に一挙に飛び込んできた。