Episode86 敵情報
「さあ、奴等について何でも聞け。分かる範囲なら全て答えてやるぞ。」
シルバは手を差しのべてくる。僕はその手を掴んで立ち上がり、
「え?」
と首を傾げる。が、彼は満更でも無い様子で
「え、じゃなかろう。元より私は君たちに敵の情報を流すつもりだった。第一、君たちに会おうと思ったのは協力を仰ぐためだからな。協力するなら情報の共有はしておくべきだろう。リドナー、君と戦うためだけなら君に個人で会っていた」
と言う。
と言う訳で僕は早速質問する。
「奴等の軍力はどれぐらいなんですか?」
「奴等がどれほど軍を隠し持っているかは分からないが、知る限りでは少なくとも一大陸を治めるほどの軍力がある。」
僕がその答えに驚きと恐怖を覚えていると、今度はバーロン。
「ずっと不思議に思っていたのだが、何故シャインズ王国の団はこの島へ来れないんだ?結界には何度も歪みが生じているはずなのに。」
「恐らくだが、我々が侵入したのを見て結界の強化をしたのだろう。証拠に最近は歪みがない。」
次にマリアとテーラがそれぞれ聞く。
「その結界、壊してしまう方法はないのかしら。」
「さっきドュンケルサイドって言ってましたが、それって何なんですか?」
と。シルバさんはマリアの質問に対しては
「結界を壊す方法ならある。どうやら、奴等は三大神の像に結界石を隠したらしい。だから、それを全て叩けば結界は破壊されるはずだ。」
と、テーラの質問に対しては
「ドュンケルサイドと言うのは邪神・ドュンケルの側に付き悪事を働く者どものことだ。そのドュンケルサイドに対立すている私のような者たちはクロスサイドと呼ばれる。"魔術と科学が交差した"と言う意味だ。」
と答える。
次にフレイアが前に出てきて、聞いた。
「今能力とやらはほとんどがその...ドュンケルサイドとやらにあるのか?俺の知る限りでは、これは仲間から教わったことだが転移と洗脳しか味方側にないようだが。」
と。すると、シルバは
「いや、今はむしろ我々クロスサイドの方が有している能力は多いらしい。確か、その2つに加えて万物列斬、自然操作、吸収の5つであったか...。」
と答える。なるほど、9つの内の5つがクロスサイドにあると言うことで確かにこちら側の方が保有する能力は多い。どこからの情報かは分からないが、彼なら信用できる。
そんなことを思っていると、シルバさんは自ら言ってきた。
「だが、奴等側には強力な能力がまだ残っている。残り4つの内、暗黒砲台と接触破壊は特に危険だ。どちらもその気になれば惑星1つ程の力を持つからな。だから、気を付けろ。過去にも黄昏界で神宿しがいたのだが、そいつらも殺している能力だ。そして、不死身。あれは刺されても斬られても死なぬという狂った能力な上、能力者自体も狂っている。私も正直相手にはしたくないな。」
「そう言えば、暗黒砲台に前会って退治しました、身体変化?の能力者と一緒にいて不可抗力で対峙したのですが...。」
僕が言うと、シルバさんは返す。
「そうか、君たちが生きて帰ってくれて良かった。身体変化の男がいたのも幸いだったのかもしれん。」
と。
「これで質問は終わりです。敵の情報を教えてくださりありがとうございました。」
その後、僕は皆に確認を取ってから感謝を述べる。シルバさんは
「そうか、ならばそろそろ行こう。これからは互いにドュンケルを打ち負かそうぞ。」
と言う。僕は
「はい!」
と返事をする。
その返事を聞いて少し笑みを浮かべ、シルバさんはどこかへ消えてしまった。
「よし、僕たちも行こう。」
そこで僕は転換し、止めっぱなしだった車に向かう。
「ええ。」
マリアは走って車に乗り、エンジンを掛ける。
「さぁ、乗って!」
それから、マリアが言うので僕たちは走って車に乗り込んだ。
こうして、僕らを乗せた車は再び嘆きの渓谷への道を進み始めるのであった。