Episode83 黄昏界の神宿し
神宿しをフルで引き出せるようになり、僕はマリアらと車に乗り、次なる目的地嘆きの渓谷への道を行く。
その最中のことである。
ズゴォォォッッッン!
音とともに何やら光る物が打ち出された。現れたのは真正面。
「っ!?」
何事かと思って見るとその光る物には実態があることが分かる。しかも、不運なことにそれはマリアに向かっていた。
その瞬間、僕はその光る物に全集中。そこで神宿しの力は発揮される。
「見える!」
僕は剣を構えて席から飛び上がる。そして、光る物に剣を当て付けそのまま横に凪ぐ。
シュキィィィッッッン!
すると、その光る物は2つに避け、欠片が車の両横をかすっていった。
キィィィッッッ!
そこでマリアが急ブレーキを掛け、車から降りる。それに次いで、他の4人も降りて武器を構える。
「誰だっ!?」
と僕が叫ぶと、物体が飛んできた方から拍手をする音が聞こえてきた。
「いや、見事な反応だったよ。もう神宿しの力は上手く使えるようだね。」
その主はこちらへ向かいながら、そう言った。声色から男であることは明らかであった。
そこで、マリアが詠唱する。
「シャイニングブレード!」
ともに数個の光の刃がその男の元へ飛んで行く。
「おいおい、そんな警戒するのはよしてくれよ。」
彼はその刃を首を動かし、横に飛び、全てかわし切る。それから、腰に納めていた剣を投げ捨て投降するような態度を取る。
「こっちには抵抗の意思はないのだ。第一、さっきの弾も途中で止める気だつた。」
投降しながら言う彼の目はいかにも真剣と言う感じで嘘をついているとは言い難い。僕は
「皆、武器を構えるのを止めてくれ。」
と言うと、テーラが
「良いの?途中で止めるってのが本当でも、あの人は本気でマリアを狙っていたのよ?」
「大丈夫だ、何か変な動きがあったら僕が皆を守る!」
彼女の言葉に僕は返して、そこでやっと皆が武器を納める。
それでも、彼は剣を拾わず唐突に言い出す。
「ところで...だ。私と1つ手合わせをしてくれはしないか?神宿しなのだろう、君は?」
「そうですが、それがどうかしたんですか。」
「あぁ、すまん。まずは名乗らんとな。俺はシルバ。黄昏界から来た者だ。」
そうしたやり取りの中で僕たちはお互いに名乗り合う。まずは僕がリドナーと、次にテーラがテーラと、そしてバーロンが...と言うように。
「では、リドナー。改めて手合わせを願おう。私はさらに力を磨きたいのだ、神宿しのな。」
シルバさんは言うが、こちらには時間があまりない。彼が敵でないのならさっさと渓谷へ向かうべきである。僕は
「生憎ですが、こちらには時間が無いんです。またの機会に...。」
と言って立ち去ろうとするが。
「ちょっと待てっ!奴等のことについてもっと詳しく知りたくはないか?いずれ君たちが必要とする情報だろう。」
とシルバさんが止めてきた。
その言葉を聞いて僕は立ち止まる。
「情報?」
「そう、情報だ。私に勝てれば奴等について何でも教えてやろう。」
「分かりました。では...!」
「あぁ。」
互いに剣を抜き、剣を構える。
「行くぞ、アレスっ!」
「ゼルクよっ!いざ、共に参らん!」
ギュゥゥゥッッッン!
ギュゥゥゥッッッン!
僕とシルバさんは剣を片手に急加速し、剣と剣は衝撃と共に激突した。