Episode82 店に忍ぶ者
●今回初めて登場するアイテム●
魔のタロット
かつてマリアがスカーレット魔法帝国から取り寄せたⅠ~Ⅹから成る10枚のタロットカード。ラインナップは神力を抑える「無神論」、人力を補う「戦士」、魔力供給をする「魔導師」、神力を高める「賢者」、融合を可能とする昼夜1枚ずつの「双子座」、目に見える抵抗力を持たない者全てを洗脳する「帝王」、悪人から活力を奪う「裁判官」、手で触れたあらゆるものを破壊する「破壊神」、異常状態から完全回復する「終焉」。
同じ頃、暗黒砲台と身体変化の2人は荒れ果てたマリアの店の前に立っていた。
「巨人どもの報告によればこの店には不思議な道具がたくさんあったようだな。」
暗黒砲台・ザグレスは身体変化・トロントに話を振る。彼は
「ああ。ひょっとすれば神宿しなどを相手にするときに役立つものがあるかもしれん。どうやら、シルバも動き出したようだからな。」
と答える。それを聞くザグレスは不機嫌そうな顔をした。
「チッ、ってことは俺たちは神宿しを2人相手にするってことになるのか。」
「さらに、あの2人が結束すれば最悪なこととなる。何としてもそれだけは防がねばならないぞ。」
「分かっている。」
2人は会話しつつ侵入を試みる。まずはトロントが腕を金槌に変え、窓にぶつける。
ガンッ、ガンッ、ガンッ...
が、まるで張られているのが強化ガラスであるかのように固い音が鳴るのみ。それを見たザグレスは
「退けろ、俺が消し飛ばす。」
と掌で黒い球を生み出し、窓に向ける。
「頼むから道具ごと消し飛ばすのだけはやめてくれよ。」
「分かっている。俺がそんなに不器用に見えるか?」
そう残し、ザグレスは黒の光線を放った。
ギュゥゥゥン!
音とともに窓は消し飛び、しかもそこにもたれ掛かっていた棚が商品ごと貫かれた。
「ほら、言わんこっちゃない。」
「うるせぇ。残りの道具から使えそうな物を探すぞ。」
「あぁ、分かったよ。」
そうやってやり取りしつつ、消し飛んだ場所を2人は股がり、商品を漁り出す。
火の出る研磨剤、超小型の収納箱、マインドコントロールを可能とする豆。そんなものを使い払いのけ、ある10枚のタロットカードを見つける。名は「魔のタロット」。その10枚とは「双子座・昼」(Ⅴ)、「双子座・夜」(Ⅵ)、「無神論」(Ⅰ)、「戦士」(Ⅱ)、「魔導師」(Ⅲ)、「賢者」(Ⅳ)、「帝王」(Ⅶ)、「裁判官」(Ⅷ)、「破壊神」(Ⅸ)、「終焉」(Ⅹ)。共に付いていた神にはそれぞれに付与された魔法が記されている。
「これは使えるぞ、ザグレス。」
その中でもある3枚がトロントを特に引き付けた。ザグレスが
「何だ?」
と聞けばまず、「無神論」。『悪魔の信仰は神々の信仰を妨げる。その余波は神の力をも抑える』とある。
「これは役に立つぞ。シルバが宿すのはあくまで半神だ。絶対的存在である神のように、例えるならばドュンケル様のように元より圧倒的な力を持つわけではない。」
説明の後に、次は2つの「双子座」へ。『昼と夜が重なるとき逢魔時は訪れる。これを持つ者は互いに重なり化け物と化す。重なる者はその性格を失わない』とある。
「なるほど...。これがあれば俺たちが重なり、俺の暗黒砲とお前の身体変化をあわせ持つことができるのか...。」
「その通りだ。それに、この『終焉』とやらを使えば元に戻れるらしいぞ。」
彼の言う「終焉」の説明蘭には『終焉の者は腐敗した世界を終焉に導く。異常ある並行世界は終焉し、あらゆる異常状態が消える』とある。もちろん、その異常状態に「双子座」によるものも含まれているはずである。
神宿し相手に確実に使えるのはこれらのタロットだが、他の6枚だってどこかしらで使えるかもしれない。そう考え、2人は全てのタロットを持って店を出た。