Episode80 巨人の脅威(後編)
「エフィスト、お前を引き摺り出すっ!」
そう叫び僕は胸の後ろに向けて、切っ先を向ける。凪ぐのは右から左、深さは少し浅めに。
が、そこで驚くべきことが起こった。
見ると、左腕を後ろに回して来る。それは突如のことであり、僕は反応が遅れてしまった。赤肌相手ではその一瞬であろうと命取りになり得る。
「ぐっ...!?」
その腕が僕を握り、体のあちらこちらから血が吹き出る。しかも、握る力はかなり強く圧死する可能性だってあるし、かと言って剣を振り回す余裕もない。
「リドナー!」
テーラは声を聞いてこちらを見て叫んだ。
「バカ!余所見なんてしちゃ....!」
マリアも言う。そんな声に次ぎ、彼女らの悲鳴が聞こえる。
「きゃぁっ!」
「いやぁっ!!!」
と。その声を聞き、バーロンは真っ先に彼女たちへ寄り襲いかかる巨人の指を切り裂く。そこへニコラスやフレイアも参戦し、
ズドドドドド...!
ドゴォォォッッッン!
と銃撃やら拳やらで守りきる。
「うぐっ...!」
「ニギリツブスッ!」
「潰されて...たまるか...!」
赤肌の声が聞こえて僕はそんな声を漏らす。
「魔力よ解き放て!」
とさらに魔力を解放。いつもの翳した手からではなく、体全体から出すイメージで。結果的に魔力波は小さくなってしまうのだが、それでも握る力を少し跳ね返すぐらいの強さはあるのだ。
僕はその瞬間を逃さず、思いっきり剣を振り下ろし、指を斬り落とす。そのまま、掌を蹴って宙で後ろに向けて回転し、地に降り立つ。かと思えばまた前へ。
今ので奴について分かったことが2つとなった。1つは戦闘が始まったときに知ったことで統率する力があるようだ。もう1つは高度な再生能力を持つらしい。恐らく、エフィストを引き摺り出さねば永遠に再生し続けることだろう。現に右腕やら左の5本指やらも再生しきっている。
「とぉっ!」
ギュゥゥゥッッッン!
僕は言って加速し、木々を蹴り、高く飛び上がって上から下へ剣を振る。傷は少し浅め。エフィストが見えて、僕は地に降り立つ。さらに彼を掴もうとしたのだが、こちらを振り向き
「リドナァァァァァッッッッッ!」
憎悪に溢れる声を漏らす。
「なっ...!?」
さらに赤肌の後ろに向ける蹴り。僕は防御に構えた剣で勢いを殺す。だがそれでも殺しきれず結構高く遠くへ吹っ飛ばされた。しかも、エフィストは戦線を離脱するように見えた。「エクステンダー」で聴覚を伸ばせば
「オレハ、センセンリダツスル!オノオノデハンダンシ、ヒキツヅキミナゴロシニカカレ。」
とも聞こえた。僕は足を少し傷めながらも、地に降り立つ。見ると、赤肌の巨人は灰になって風に吹き飛ばされていた。気付けば死体を残して倒した巨人らもそうなっている。
残りの巨人はあと100体近く。僕は飛び出し、
「クロスカリバー!」
と並んだヤツらを輝く聖剣で一気に胸を貫き、さらに飛び回りつつ胸を斬って行く。その途中でテーラやマリアには回復魔法を掛ける。
「やぁっ!やぁぁぁっっっ!」
叫び幾度も胸を貫く。時折、刃の肥大化も挟む。
回復はしたがテーラとマリアは気を失っている。彼女らを除く3人はそれぞれ斬撃、銃撃、打撃で補佐してくれる。
お陰でそれから数十分ほどでおよそ100体を全滅させることに成功した。
「良い補佐だったよ。お陰であまり時間が掛からなかった。皆、有難う。」
僕がそう言うと、3人は
「ああ、お前を補佐するのは当たり前だろ。」
「はい。」
「ああ。」
と返してくれる。
こうして、俺たちは巨人らの脅威を一時退けたのであった。