Episode76 いざ、嘆きの渓谷へ
◆今回初めて登場する人物◆
レスター(45)
クリスに代わって新しく凶虫及び巨龍の総裁となったドュンケルサイドの修道士。火炎惑星・ムスペルの長であるレギンとは戦友関係にある。
洞穴にあった書が破壊され、ドュンケルは魂が磨り減っていくのを感じた。
「ドュンケル様、どうやらまた奴等が『分霊の書』を破壊したようです。このままではドュンケル様の身が心配であります。」
と死んだクリスに代わって総裁を努めるレスターが言うと、ドュンケルの方は
「分かっておる。レスターよ、ユミルとムスペルの者共を集めて我の所へ渓谷から例の書を運ぶことは出来るか?」
と返す。
「出来ますとも。ヤツらを集める時間さえ頂ければ必ずや書をあなた様の手元へと向かわせて見せましょう。」
「そうか。ならば2、3日ばかり時間をやろう。この際、敵に書の在処を知られても構わん。」
「かしこまりました。それでは、私は黄昏界へと戻ります。」
邪神と言葉を交わした末、レスターはシュバルツを遣わせて黄昏界へと戻る。
* * * * *
そして、その頃。
僕はやっと罪悪感が治まってきて、
「ごめん。無意識立ったとは言え、僕の不注意で皆を危険な目に合わせちゃって。本当にごめん。」
と謝ると、皆は以外と簡単に許してくれた。
「次からは気を付けろよ。次こんなことがあればお前を強制的に戻すことになるぞ。」
とバーロンに釘を刺されはしたが。
「で、次は何処へ行けば良いのかしら?」
それから、マリアが聞いてくる。僕はすぐには出てこないのでしばらく考える。「キーピング」の空間に保存された地図を取り出し、図書館やら洋館やらのある所を探す。まず、見つけたのはこの近くの「尾の館」とも呼ばれる図書館。そこはかつてアレクとの一件でテーラが向かった場所であった。
確かあの際には館に魔力が多量に漂っていたと彼女から聞いた。あの日、手にした『天地の大激戦』はテーラに火傷を負わせたりなどもしていた。もしそれが、今まで経験した細工だとすれば。その書こそが『分霊の書』が1冊と言うことである。
「エクステンダー!」
そのことを裏付けるのはただ1つ。その魔力というものを顕著に感じるかどうか、と言うこと。僕は唱えて、視野を伸ばしその館に向かわせる。その結果、館にはそれほどの魔力は無いと知る。しかも、微かに漂う魔力も行き先が無く散らばっているのみである。ならば、僕たちは既に7冊の『分霊の書』全てを破壊したことに。。
だがその後、地図の隅から隅まで探してもう1つの古い館を見つけた。その名は嘆きの渓谷奥底の「渓谷の館」。今、思い出したがバッファルの書には邪神の魂が9つに分裂したとある。よくよく考えるとそれなのに『分霊の書』が7冊と言うのは矛盾するのでは?そう思って「エクステンダー」で確認してみると、案の定の濃い魔力。今まで感じた書のものと同質である。
「次は嘆きの渓谷に行くぞ。」
と俺は告げる。マリアは
「嘆きの渓谷ですって!?ここから凄く遠いじゃないの!」
と言われる。しつつも彼女は 超小型収納箱から車を出して、皆を乗せてアクセルを入れた。
嘆きの渓谷へ向けて出発である。