Episode67 木偶との開戦
皆の傷も癒え、魔力なども回復した頃。僕は「エクステンダー」で視覚を飛ばし辺りを見回していた。
と、その際。何やら銃器を持つ木偶が洞窟の周りに集まっているのを感じる。しかも、ソイツらは殺意と邪気を漏らしているように思う。そこから察するにおそらく敵勢の一角だろう。だが、その殺意や邪気は「エクステンダー」では本来感じることの出来ない物だ。いわば、「エクステンダー」で飛ばされる五感に近付かなければ感じられないような"何か"が追加されたような感じ。
さて、あそこまで敵が集まるとなればその近くに『分霊の書』がある可能性が高い。しかも、その後ろにはクリスタルの採掘が行われている青龍の洞窟がある。島を乗っ取られて機能していないが。『分霊の書』のある可能性が高いのはおそらくその先であろう。
「よし、次は青龍の洞窟へ向かうぞ。そこに次の『分霊の書』がある可能性が高い。敵がたくさん集まっているからな。」
僕が皆に言うと、
「じゃぁ、そこへ向かいましょう。」
マリアがまず返し、あとの4人も頷く。
そうして、僕たちはマリアの超小型収納箱からの車に乗り込む。それから、そこに不可視と消音の魔法を掛けて。
そんなステルス状態のまま、高速でその洞窟まで行く。マリアが飛ばしているのか、元からなのか車は案外速くすぐに洞窟が見えてくる。
と、そこで車が急停止した。マリアは幾度もアクセルを踏んでいるが、車は一切進んでいない。だが、後ろへは下がる。続いて、バックで行こうとしても一切動じない。そこで、車を茂みの方へ入り、そこからは中を歩いて洞窟の目の前まで来る。
その目線の先にはさっきの木偶たちがいる。その手の銃器は近くで見るとより一層恐ろしい。
「あの武器がどんな物か知りたい。マリア、いらない超小型収納箱は無いか。いくつか欲しいんだが。」
それを見る僕はマリアに超小型収納箱を求める。さすれば、彼女は望み通りにそれを5つほど投げ渡してくれる。僕はそれを対象にして「モーメント」を唱える。位置が読まれてはならないので起動を大きく曲げ、しかし最終的に僕たちの見える所へ。
すると、木遇は合図を出して、銃を構える。と、次の瞬間。その先から青白く輝く弾が射出された。それは、見事に超小型収納5つに命中し、一瞬にしてく消し炭とする。な、何て恐ろしい兵器なんだ!?僕はそう恐怖するも指名感が勝った。
「よし、アイツらを倒すぞ。」
そう僕が言うと、皆は驚きを露にする。ある2人以外
「本気なの!?」
「あんなのを相手にする気か、リドナー!」
「流石の僕でもアレとの銃撃戦は無茶だと思います。」
そう言うのは、マリア、バーロン、ニコラス。だが、テーラとフレイアはそのようなことは無かった。
「確かに無茶かもしれないけど私はリドナーを信じるわ。」
「俺もだ。それに、凄く面白そうだしな。」
「嘘でしょっ!?」
マリアが大きな声を出す。
「おい、静かにしろ。気が付かれたらどうする。」
そう注意するがもう手遅れだった。
僕らは巨大な影に包まれる。と、そこには銃を構える木偶。ヤツは何やら合図を出して、次にさっきの輝く弾を射出する。だが、それが当たるより先にヤツの体が2つに裂けた。その際、どうやら心臓の部分を壊せたらしく、ソイツはそのまま地面に倒れる。最後にこちらへ向かう銃弾を、
「やぁぁぁっっっ!」
と、神宿しのスローモーションを以って剣で斬り裂く。
見ると、洞窟の中から幾十の木偶が現れている。その手にある銃器は幾種類もあり、そこからは揃って恐怖を感じられる。
「ったく、これはやるしかないようね。」
「そうだな。」
「いきましょう。」
「私も行くわ。」
「もちろん、俺もな。」
ようやっと5人の気持ちが固まった。それを見て微笑む僕は剣を後ろへ放り投げる。普通であれば考えられない作業だが、この魔剣にはそれが通じない。しっかりと魔力を与えさえすればそら自体が意思を。
その内に僕は味方の強化に入る。まずは全員の身体に対して。
「神よ、その加護によりて汝らの体を固く覆え!ゴッドアーマー!」
すると、辺りは神々しい光に包まれ、剣先、魔法、銃弾は彼らに傷1つを付けられなくなる。そして、最後は彼ら武器に対して。
「神よ、その加護によりて汝らの刃に大いなる力を与えよ!ゴッドディベラップ!」
次に光が包んだのはその武器であった。これで、刃は魔剣のようなり、杖には神力と言う別の力が込められ、銃弾はより高速射出により硬質になったはずだ。また、フレイアには「モールディング」と「ハーダー」、「ゴッドディベラップ」の組み合わせで作った対の手甲と足甲を作り、四肢に装着させた。
ちなみにこの「ゴッドアーマー」と「ゴッドディベラップ」は先程新たに手に入れた神宿しの力だが、制限時間がある。それは長めではあるものの、この戦闘がどれだけ続くからわからない。だから、5人には僕から離れすぎないように言い、加えさっき把握したヤツらの弱点を伝える。
そして、皆が茂みから飛び出し、攻撃を開始する。片や、自らは高く飛び上がり、さっきから木偶たちの間を交う魔剣・ロンギヌスの柄を掴み。目の前にいた木偶の心臓部分、つまり弱点へと剣先を突いた。すると、ソイツはすぐに倒れる。
こうして、輝く弾が宙を交う中、木偶との戦端はその火蓋を切って落とされた。これから僕たちは出来るだけ早くこの戦いを終わらせねばならない。