Episode66 苦戦
その次の日。早く目を覚ました僕はヘーミテオスと言葉をかわし、心中で試練を乗り越え、神宿しの力を増す。加速が強化されたのに加え、意識を集中させればまるでスローモーションのようであった。
と、そんなことをしてる内に皆も起き上がり、とりあえず少し休憩。これはもちろん起きてすぐでは最大の力を発揮できないからである。そんな休憩の最中、僕たちは昨日の戦闘準備、その最終確認を行う。
それもやがては終わり、心の準備も整える。そして、
「さぁ、行くぞ。」
と僕の挨拶で皆は頷き、共に立ち上がった。片手に各々の武器。フレイアは既に拳に聖なる力を溜め込んでいる。敵の待ち伏せに備え、すぐに戦闘へ入れるようにしてるのである。
ドゴーン!ドゴーン!ドゴーン!
一面にたくさんの黒い柱が落ちる。案の定の待ち伏せのようだ。僕はさっき手に入れた力を早速使用。敵に意識を向け、世界をスローモーションヘ。さらに、「モーメント」の詠唱と共に、剣を横向きに構えて、回転しつつ、直進。すると、一気にタイプⅠは弾ける。テーラは飛び上がり、短剣でヤツらの頭を一発食らわせる。そこへ、バーロンが止めにかかる。と、彼の後ろへタイプⅢたち。
「せりゃぁぁぁっっっ!」
ソイツらはフレイアの怒号と共に聖なる光線を浴びて弾けとんだ。
片や、マリアにニコラス。彼らは魔法と銃撃により、共闘を行っていた。
ズドドドドド...!
銃弾を受けて弾け散るタイプⅠにタイプⅢ。そこへ、タイプⅤが突進に向かうが、
「シャイニング・ブレード!」
マリアが光の刃を縦横無尽に操り動かし、核を斬り裂き続ける。
その内に僕は空中で龍やらタイプⅢやらを「モーメント」と神宿しの加速、さらに「魔力解放」を使って敵と敵との間を縦横無尽に交い、裂き続けていた。そんな僕には一つの疑問があった。タイプⅡ、つまりあの蜘蛛が姿を見せていないと。
その瞬間であった。一斉に四方八方からの糸。空中戦に神経を費やしていたため、意識を向けてスローモーションヘとする暇は無かった。まず、初めに糸で剣を巻き取られた。同時に体もグルグルに巻かれ、そのまま真下へ。
「ぐはっ!」
勢いよく地面に激突した僕の口から血が吐かれた。
「リドナー!」
と、テーラの叫ぶ声。彼女が余所見をしたその時。
「きゃっ!?」
彼女は紙一重で向かってくるタイプⅠをかわす。そこへ、マリアが光の刃を飛ばすが少し核から外れてしまう。それでも、動きは鈍くなり、後ろへ退くまま、テーラが短剣で突き刺し、そこを破壊。倒れたソイツから短剣を引き抜いた。
「余所見しないで、テーラ。あっちへはフレイアとバーロンを行かせたわ。」
ズドドドドド...!
「シャイニングインパクト!」
その直後、マリアの後ろの凶虫はニコラスが殆どを潰し、振り向く自身も光の爆破で弾けさせる。
その頃、僕はフレイアの聖なる拳による蜘蛛の一掃で助かっていたが、自身への大回復魔法と剣を魔法で呼び寄せたお陰で既に過半の魔力を失っていた。これでは、万全に力は出せないが、それでも傷を負っているよりはましである。僕は念のため援護にフレイアを置き、地にいる敵を「モーメント」を使って裂いて行き、飛ぶ敵はソードビームを使って、斬り裂いて言った。時折、フレイアの聖なる拳や蹴りに救われて。
そんな僕たちはかつての敵の正体、その衝撃などは忘れていた。自分たちがやってるのは大量殺戮だなどと長々考えていてはこちらの命が危ない。敵を倒すためにここへ来たのに、一々倫理ばかり気にして、敵を攻撃せず、こちらが死んでしまっては本末転倒である。そう思うことで、僕たちはこの実質上の大量殺戮に目を背けていた。
そうして、苦戦を強いられたものの待ち伏せの敵は全滅。見ると、皆浅かれ深かれ傷を負っていたので、僕は歩いて周り、戦闘でほとんどを失いわずかとなった魔力でそれ相応の回復魔法を掛ける。そのせいで、そのわずかも失い、僕は地面に俯せる。
不完全ではあるもののかなりの強化はされた神宿し、そして仲間。それらの力を持ってしても強いられたこの度のこの苦戦。それに、あの奇襲。認めたくは無いが、ここまでしくじらされた僕は認めるしかなかった。敵もかなり戦略的にその上、自らと同じく威力を増すようになってきたと言うことを。