Episode5 黄昏界
僕たちは、隕石のことや黄色い巨人のこと、マリアが見た光を吸い込む黒い点のこと、そして、黒い怪物のことなどを洗いざらいアレックスさんに話した。
すると、アレックスさんは口を開いた。
「ついに、ドュンケルが動き出したか...。」
「ドュンケル?」
僕は相槌を打つ。すると、
「そうだ。邪神・ドュンケルだ。」
と返され、その後、その邪神について説明もされた。
「ドュンケルとは我々の住む黄昏界の創造者だ。そして、あっちの世界では唯一の最高神だ。こっちの世界でいうところの、スサノオとゼウスが合わさったような存在だね。そのドュンケルは邪神とも呼ばれていて、禁断巨岩って言うのを生み出すことが出来る。おそらく、その隕石はその石で出来ているのだろう。そして、その黒い怪物ってのは間違いなくドュンケルだ。」
「そのドュンケルってのが、アレックスさんたちの住む黄昏界の創造者?何で、様付けしないの?それに、邪神とか言っちやってさ。」
僕は疑問に思ったことを聞いた。すると、
「ドュンケルを信仰する者たち以外は、そう呼ぶのさ。何てったって、ドュンケルは気に入らない者はすぐ殺すからね。その信仰者たちを操って。」
と説明してくれた。そして、黄昏界の話に戻った。
「黄昏界は球形をしていて、その中に球形をした7つの惑星がある。それらは、ドュンケルも住む、巨星を中心に公転しているんだ。紙とペンはないかい?」
アレックスさんがそう言うので、僕は「ロングリーチ」と「オープン」で遠くの引き出しを開き、「ドローイング」で紙とペンを机に引き寄せた(ちなみに、この程度なら無詠唱でも出来て、スムーズに行えた)。
「まず、中央に樹海惑星・ユグドラシル。この星は、木で覆われていて、中心には巨大樹がある。その根で、核にあたる宇宙が囲んでいる。」
そう言いながら、紙の中心に大きな円と、その中に小さな円と木を書き、上には「ユグドラシル」と書いた。
「宇宙が核!?」
僕たちは大いに驚くが、彼は何とでも無いように、
「そうだ。そして、その根で強制的にブラックホールを作り出すことが出来る。その黒い点はそうやって出来たブラックホールだろう。」
と言った。それを聞いたマリアは、
「じゃあ、何で地上では吸い込まれたなかったんですか?」
と聞く。すると、彼は
「おそらく、シュバルツのと同じように、一定距離しか引力が働かないようにしたのだろう。ドュンケルの目的はこの星の破壊ではなく、征服なんだろうな。」
と言って、再び、黄昏界の説明に入った。
紙には大きな円を中心に小さな円が書かれ、それぞれ、その上には龍がいるという火炎惑星「ムスペル」、あの黄色い巨人や巨大な虫が住むと言う巨獣惑星「ユミル」、機械仕掛けの怪物のいる砂漠惑星「アルフヘイム」、悪魔が住み着く山岳惑星「ヘルヘイム」、アレックスさんたち人間の住む科学惑星「ウトガルド」、海で覆われたくさんの海洋生物や、魚人のいる海洋惑星「ニブルヘイム」。そして、彼らはそれらの星の間を、飛行船で行き来していると言う。
それから、僕は黒い結界のことを話した。すると、
「おそらく、その結界は、黄昏界を囲んでいるものと同じ物だ。そのおかげで、黄昏界は常に暗い。それが、あっちの世界の名前の由来さ。」
と言って、彼は最後に「黄昏界」と書いた。
「その結界の中に入ることは出来るんですか?」
僕が聞くと、
「出来ないね。」
と即答された。
「そうですよね...。」
僕は落ち込んだ。が、彼は
「でも、ドュンケルはまだ、こちらの世界の環境に馴染めていない!だから、時々、結界に歪みが生じるだろう。もし、島に入りたいのならその時に、強力な結界を張った上で、無理矢理、浸入することが出来るかもしれない。」
と言ってくれた。
それを聞いた、僕たちはアレックスさんに
「ありがとうございました!」
と言って、早速、準備に取りかかった。