Episode52 湾内図書館
■今回初めて登場する書物■
『慈愛と姫』(著・サンドラ)
マーメイドと人間の悲劇の恋物語。マーメイドが稀に見せる、人間への開心から始まり、人間の方が病死し、マーメイドが自殺することで終わる。分霊の書の1つ。
そして、僕たちは入り江の中央、そこにあった小島に到着し、そこから湾内図書館の中へと入っていった。
その際、僕はもしヤツらが来たら、この船は真っ先に潰されてしまう。そうなれば、また船を奪わなければならない。そこで、僕は
「マリア、超小型収納箱はあるか?」
と言うと、マリアはこちらを向き、
「えぇ、あるわよ。」
と立方体の小さな箱をこっちへ投げてきた。俺はそれを片手で受け取り、波に揺られるカヤックにそれを打ち付け、その中に収納した。
そして、湾内図書館の大きな扉を皆で開けた。
ギィィィィィッッッ...
すると、軋むような音がした。僕たちはその暗い図書館の中へと入っていった。そこは灯台のような円柱形で、階段は螺旋状。所々に木の扉があり、それぞれにたくさんの本棚が置かれた部屋があった。
僕たちはその部屋から部屋を片っ端から見ていき、邪気の漂う部屋を探し続け、3階の東側の部屋でそれを見つけた。
本の題は『慈愛の姫』。著者はサンドラ。あらすじを見てみたのだが、どうやらマーメイドと人間の儚い恋物語らしい。僕はそんな傑作を台無しにはしたくなかったが、他に邪気を感じる本はない。俺は剣を抜きそのド真ん中を貫いた。
すると、何と言うことだろう。本が2冊に増え、さらに4冊、8冊、16冊と倍に倍に増え始めたのである。
ドーン!ドーン!ドーン!
さらにそこへヤツらの大砲の弾が飛んできて、棚を破壊したのである。その衝撃で、たくさんの本が上から落ちてきた。僕たちは部屋の端へ走る。と、その直後、
バタ!バタ!バタ!バタ!バタ!
僕たちがさっきいた場所へ本の雨が降り注いだ。そんな中、『慈愛の姫』は32、64、128とどんどん増えていく。
僕たちはすぐさま部屋の扉を開き、螺旋階段を下り1階へと急ぐ。そこへ、砲弾。
ドーン!
その音とともに島が揺れる。僕たちは階段で足を踏み外しかけるが、何とか立ち直って1階まで下りてきた。
ドドドドド...!
雪崩のように押し寄せる本。迷っている暇は無い。
「行くぞ!」
僕は皆に言い、
「プロテクト!ロングリーチ!」
と唱えて、巨大な障壁を作り出す。それを見て、
「障壁が出ないようにしろ。」
代わってバーロンが言う。
そして、扉を開けた。すると、待っていたかのように、砲弾が飛んできた。
ドーン!
だが、障壁は破れない。僕は向かいの船へ手を翳し、「魔力解放」をしかけて、止める。何と、遠くにこちらへ向かうあの蝶たちが見えたのだ。
「クッ!蝶が来た。あっちへ回るぞ!」
僕はそう叫び、反対側へと走り始めた。それに、みんなはついてきた。
ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!ドーン!
四方を砲弾が飛び交い、上の窓から本が落ちる。だが、僕が作り上げた障壁はとても丈夫で、外を転がり滑っていく。そして、反対側へとやって来た。僕は今度こそ、船に手を翳し、
「魔力よ解き放て!」
と叫ぶ。すると、魔力波による突風が吹き荒れ、目前の船がかなり横へとずれた。
僕たちはその瞬間、前へと走り出し、船の入った超小型収納箱を投げ、それを展開。そのままの勢いで僕たちは乗り込み、オールで地面を押して、無理矢理水の中へと入った。こうして、僕たちは増え続ける本が押し寄せる中、岸へと漕ぎ出でるのであった。




