Episode35 神宿しの力を我が物に
その頃、僕たちはレイカー湖へ車で向かい、テントを張って、野宿していた。一応、テントには透明化の魔法、辺りには人払いの魔法を掛けてはあるが、念のため、ウェールにも見張りを頼んでいる。
もちろん、そんな僕たちにシャインズ島の状況やら2人の能力者が自分たちを知るよしも無い。
それよりも、僕は自分が神宿しであることについてが気になっていた。あの後、オーロラさんは
「神宿しは我が物にすれば、無限な力が溢れてくるの。最強と言って良いほどよ。リドナー君はまだまだその域には達してないわね。魔力量は常人を超えてるけどね。」
と言っていた。
さらに、僕が
「我が物にするって具体的にはどのうようにすれば?」
と聞くと、オーロラさんは
「まずは、目をつぶって、精神統一をするのよ。魔法の初心者が魔力を捉えるのと同じ要領でね。それから、語りかけるのよ。それを何度も繰り返して自身に秘められた力を表に引き出すのよ。でも、むやみやたらと繰り返して、急に引き出してしまうと、体が耐えられないのよ。だから、除々に引き出していくのが重要なのよ。」
と、説明しつつ、釘も刺されたのである。
見ると、バーロンは1人木に向かって剣術の訓練をし、テーラは既に横になり、マリアは車を整備し、ニコラスは銃を弄っている。
さっき、テーラに
「リドナー、一緒に寝よ。」
と言われたのだが、今は神宿しだ。自分の恋人よりそちらを優先するのは最低だとは思うが、僕は
「ごめん、後でね。」
と、出来るだけ丁重に、出来るだけ笑顔で言った。彼女は少し気に入らないような顔をしたが、やがて笑顔で
「うん、約束だよ。」
と言って、彼女はテントへと入っていったのである。
そして、僕は精神統一を始める。オーロラさんに言われた通り、目をつぶって魔力を捉える要領で、その魔力の奥にある魔力よりま一層目立つ神の力を、神力とでも言うのだろうか?それを捉えた。その時、
「リドナー、何してるの?」
マリアにそう言われた気はするが、ほとんど耳に入らなかった。外界からの刺激をほぼ受け付けなかったことからも、精神統一が出来ていることが分かる。
それから、僕は神力のさらに奥へと進んでいき、そこに圧の感じる神々しい光球を見つける。僕は精神統一の状態を保ちつつ、
「あなたは誰ですか?」
とソイツに語りかける。すると、光球から声が漏れる。
「私はヘーミテオス。善なる神・ジャスティン様の一部だ。」
「私に力を貸していただけますか?」
丁寧語でまた語りかける。しかし、そこで交信が途切れた。どうやら、まだ早いようだ。僕は精神統一を解く。
「リドナー、何してるのって言ってんでしょっ!?」
すると、初めに怒り心頭のマリアの声が耳に入ってきた。
「別に?ちょっと、瞑想してただけだよ。」
と言うと、彼女は少し引いて、
「瞑想!?へ、変な宗教にでも入ったの、アンタ...。それとも、重病なの?病院行ってくれば?」
と冷やかしてくる。僕は手を前に出し、首を横に振って、
「違うよ。じゃあ、お休み。」
と言って、立ち上がりテントの中へと入った。
「何よ、ノッてくれたって良いじゃない...。」
マリアはテントの方を見て怪訝な顔をして見せる。僕もその視線をわずかに感じてはいたが、気にも止めずに、テーラのいる布団の中へと入った。
ふと、気持ち良さそうに無防備な姿で寝ているテーラの顔が目に前にくる。僕は頬を紅潮するのを感じた。心臓の鼓動も激しい。それから、僕は静かに目をつぶる。だが、すぐに眠れるはずも無く、やっと眠りについたのは体内時計で約12時の頃であった。




