Episode24 Lブラックスライムの憑依
★今回初めて登場する怪物★
Lブラックスライム
生き物に憑依する巨大な黒スライム。ブラックスライムが同士が結合して、Lブラックスライムになる。
僕はアレックスさんを呼び、オーロラさんを館へ帰らさせた。そう、彼女のフィアンセ・ジャックがいるあの館へ。彼女はすぐに駆けつけたアレックスさんに連れられ、転移した。
それから、僕たちはマリアのジープに乗って、山麓の図書館のある森へと入った。車は木々の間を抜けて走っていく。
そして、その途中、巨大な黒いスライムが目の前に現れた。
「っ...!?」
マリアは急ブレーキをかけ、僕たちの体は後ろへ持っていっかれる。と、そのスライムが飛び上がった。かと思うと、テーラの頭に吸い付き、そのまま持っていってしまった。見ると、彼女のいた席のシートベルトは引きちぎれていた。
「リドナーっ!」
僕は後ろを向く。そこで、車は止まり、今度は、前に体を持っていかれた。
止まった後、僕たちはジープから降り、テーラに近づく。すると、
シュバッ!
スライムは体の一部を触手のようにして鞭攻撃をしてくる。僕は、驚いて後ろへ飛び退いた。気付けば、彼女は頭のみでなく体全てを呑み込まれていた。
「テーラ!」
僕はもう一度、スライムに近づく。
次の瞬間、僕の手に痛みが走った。少し遅れて、どす黒くあたたかい液体が滲み出てきた。血だ。僕は直感的にそう確信した。テーラのナイフの先にも同じような液体がポタポタと垂れている。
「テーラ!?」
僕は驚きを露にする。
シュンッ!
と、テーラがナイフを振ってくる。僕は、後ろへ下がる。驚きのせいか少し反応が遅れて、腕にまた切り傷が出来たが。
「あれはLブラックスライムよ!生き物に憑依して、高い魔力を授けるの。場合によっては人格も歪むのよ!」
マリアが説明してくれる。
「ありがとう!」
僕はそうお礼を言って、剣を片手に憑依された彼女に突っ込んだ。
スライム系と言うのは、大体が弱いモンスターだ。しかし、あそこまで大きくなると、そうは言ってられない。簡単に体全体が呑み込まれ、窒息死に陥ることだってある。さらに、スライムの弱点である核への距離も遠くなる。だから、スライムは大きくなれば大きくなるほど、厄介になるのだ。
僕は、突っ込みながら核を探す。
「あった!」
そして、それを見つける。と、テーラがナイフを投げてくる。僕は剣を振り、それを弾こうとした。しかし、それは失敗に終わった。ナイフは普通に投げたにしては、あり得ない起動を描き、剣を避けて後ろに行った。いや、普通に投げてないのか?ナイフ使いは上達すると、ナイフに魔力を込めて、それを操ることが出来ると言う。彼女はそれをしたのだろう。
今度は、後ろに行ったナイフが戻ってくる。
「やぁっ!」
僕はそれに向かってソードビームを放った。
ドーン!
魔力の込められたナイフとその光が激突する。そのまま、それは空へと消えていくと思われたが、激突の瞬間、お互いに打ち消しあって、その場で消えたのだ。よっぽど、ナイフに込められた魔力が高かったのだろう。
ドッ!
今度は、テーラが突っ込んでくる。僕はしゃがんでかわし、下からその核を狙った。彼女を傷つけないように、剣の先が核になるように...。
シャキーン!
と、それを斬って潰した。その瞬間、彼女に憑依していた黒いスライムは弾け飛んだ。地面にはその残骸が落ち、テーラは飛んでいった。
「っと!」
マリアがテーラを受け止める。彼女は気を失っていた。無理に魔力を高め、元々の魔力を使いきってしまったからだ。そして、彼女の服は所々溶けてしまっていた。僕は反射的に両手で両目を覆っていた。