Episode1 挟撃
次の日、僕たちは連続する地響きで目を覚ます。特に、僕は勢いよく飛び上がり、ドアを開ける。すると、目をこすりながら、怯える人たちがいた。
「何事ですか!?」
マイケル族長も、家から飛び出してきた。僕は、
「僕が見ます。」
と言う。すると、
「頼みます。」
と、お願いされたので、「エクテンダー」を唱え、視野を伸ばし、360度見回した。
「!?」
驚きと恐怖で声も出ない。そんな僕を見て、族長は動揺しながら、
「何が見えるのですか?教えてください!」
と、聞くので僕は答える。
「そこら中に、あの黄色い巨人がいます。ヤツらが人間を食べています。ヤツから逃れるべく、人々が逃げ惑っています。」
と。
「魔法使いの方は、結界の強化をお願いします!それ以外の方は、地下の町にいつでも、入れる状態にしてください!」
それを聞いた瞬間、族長はそう指示を出し、僕とアレク、ジャックは町への誘導を任された。
そこで、僕はまず、「ビーコン」という魔法で空にのろしを上げ、目標地点を示した。次に、僕とアレクは入り口近くに陣取り、列整理の準備に取りかかった。そして、ジャックにラプトルを連れ、現地での誘導に向かわせたその時だった。
扉が開き、超小型収納箱を持ったマリアが現れた。さらに、彼女は
「私も手伝うわ。」
と言ってくれたので、
「ありがとう。」
と、いって彼女の手に触れた。すると、
「バカ!テーラに見られたら怒られるわよ。」
と冷たくされた。僕は久しぶりに彼女の可愛い所を見られて満足しながらも、手伝いをお願いした。
すると、ラプトルに杖を向け、
「汝よ、分身せよ!固有魔法『クローン』!」
唱えた。すると、なんとラプトルが1体、また1体と次々に増えていくではないか。僕がそう驚いている間にも、その数は増えていき、最終的にはトンネルを埋め尽くすほどまでになった。僕は驚きを隠せないまま、
「何をしたんだ?」
と聞く。すると、彼女は
「私の固有魔法『クローン』よ。『パラレル』と違って、生き物を分身させることが出きるの。内臓とか脳もそっくりそのまま、分身させているから、鈴を鳴らせば、全員が従うわよ。」
と言ったので、アレクに試させた。
カラン!カラン!
その音が鳴った瞬間、クローンを含め、全てのラプトルがアレクの方を向いた。彼はその数に少し怯えながらも、
「出来るだけ多くの人を見つけて、救い出してください。」
と言って、ラプトルたちをゲートに入れさせた。
そして、マリアは、超小型収納箱を投げ、ジープを出現させた後、
「言い忘れてたけど、『クローン』は1時間ぐらいしか持たないわよ。」
と言った。僕は、
「そういうことは早く言えよ!」
とツッコんだ。すると、彼女が
「ごめん、ごめん。でも、それまでに終わらせれば良いんでしょ?」
と聞いてきたので、
「まぁ、そうだけど。」
と答えた。
「だったら、やってやろうじゃないの。私とあの数のラプトルが入ればすぐ終わるわ。」
最後に、彼女はそう言って、ジープに乗り、やがて、遠くに消えた。
そらから、約1時間。かなりの人が町にたどり着き、地下の町にも人が流れ始めた。僕たちは忙しくて、オロオロしていたが、その中に、エリーナさんと、彼女の家に行っていたテーラを見た時は一安心した。
こうして、族長の適切な指示と、僕たちの努力のおかげて、死者を最低限にまで押さえることが出来た。しかし、このままではいずれ、食料が無くなり、皆が飢え死にしてしまう。それどころか、食料がわすがになってくると、争いが起こる可能性もある。いわゆる、「兵糧攻め」のようなものだ。敵は、確実に挟撃を進めている。そう、敵とはむごくも、賢い侵略者なのである。