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Episode154 従者の借城(前編)

 シュババババババババババッ!

全方位から機関銃のごとく連射される大樹の表皮。

「スクロペトゥム!スクロペトゥム!スクロペトゥム!スクロペトゥム!スクロペトゥム!」

ノワールは背を向け奥に飛びつつ、かわしきれない樹皮の弾は黒の球で相殺する。アルベロはこれをあえて追わずに近くの幹に触れると、

「1-F12~14に『感知』、『炎上』、『自己破壊』を付与、加えて樹皮にやにを抽出。感知の際、自己破壊とともに炎上し、脂にて爆破をせよ。」

と言って魔力を流す。

 そんなことを知る由もなく、ノワールは「スクロペトゥム」でエレベーターの扉を壊してその中へ。だが、その先はアルベロの言う内の1-F2である。当然、そこには巨大な脂の塊を露にした幹があった。その幹は瞬く間に炎上し脂が爆裂した。

「くっ...!」

すぐノワールは防御に入るが、爆風ともに樹皮の弾が飛び散りそのいくつが肩や足を掠めて裂いた。だが、痛みに悶える暇はなく、

シュバババババ!

と吹っ飛ばされるところを樹皮の弾がさらに狙ってくるのである。

「ニゲル・グラディウス!」

ノワールは次々と自身の両脇へ剣を指してゆきこれを防ぐ。

 そうやってビルのロビーへ戻ってくるのだが、そこには中央を貫く木が1本あるのみでアルベロの姿はない。

「上かっ...!」

ノワールはそう察し、まずは目の前の木を切り落とす。そうしてできた天井の穴へと飛び上がり、2階の床に着地。壁も床も天井も完全に幹で覆われ、いよいよ開いた穴も防がれる。

「何だ...?」

など呑気に言っていると、何と部屋を覆う木からあの脂の塊が大量に現れた。

「何っ!?」

驚きのあまりヤツは一瞬の硬直。その隙を逃さず、木は炎上して脂が一斉爆破した。

 壁は外側へ砕け散って飛び、床と天井はノワールを間に巻き込み1階へと落下した。立て続けの爆炎を受け、さらには瓦礫に挟まれる。ただの人間では死に至る、少なくとも大怪我は確定であっただろう。しかし、彼は悪魔サターンであって、そもしも人間ですらないのである。

 「クッソ...!」

魔法で上の瓦礫を吹き飛ばし、フラフラしながらノワールは立ち上がる。全身に切り傷をい、痣もたくさんあるが命を脅かす程ではない。痛みもあるが、堪えられない程ではない。

「あの森の従者とか言う奴...どこに行きやがった...?」

と言って、翼を伸ば2階へ。瞬間、樹皮の弾が襲い掛かるが

「ペルグランデ!」

と作っておいて黒剣を肥大化し、周囲の壁もろとも切り落としてやった。

 と、そんなヤツの後ろへ突如、アルベロは現れる。その気配にノワールが気付く頃には彼の木の剣が頭頂を捉えていた。

「終わりだっ!」

アルベロは言うのだが、ヤツに言わせればまだ終わりではない。何とその体が独りでに2つに避け一方は灰と化し、他方のなす肉体へと収束、再び肉体を成した。

「お前がどんな手品で俺の後ろを取ったかは知らんが切られると分かっていれば、こんなもの造作もない。」

そんなノワールは言って、どこかに合図を送る。

 すると、空からビルの中へと突っ込む巨大な蝿。その凄まじい勢いのまま、変身は解かれて慣性を以て彼の目の前へ。そこで再び変身すると、黒の柱が数本落ちてこれが煙幕の代わりとなってヤツはここを逃れることに成功した。

 「しかし、ヤツには何故、俺の居場所が分かった?」

と逃げつつも、ノワールは考え、考え、1つの答えを導き出す。カメラのようなものがあるのでは?と。そうと決まれば、早速、彼を高度に出る。まずは2階のカメラを片っ端がら、

「スクロペトゥム!スクロペトゥム!スクロペトゥム!」

と潰していき、さらに3階、4階と同じことをしていく。

 だが、4階を潰し切ったところでまたアルベロが後ろを取る。だが、今度は剣ではなく、木を手に持っている。彼が、

「4-D・E12~13から四方へ刃を。」

と言うと彼のいる場所が切り取られ、1つ階下へ落とされる。しかも、そこへ直接木が追撃に来る。

「イグニス!」

とノワールは唱えて、これらに炎を放つ。これにアルベロは『自己破壊』で炎の広がりを止める他になかった。


 一方、3階へ降りたノワールはアルベロが己の居場所を突き止めるのに使ったもの、そのもう1つの可能性に辿り着く。それはビルに余すことなく張り巡らされたものである。

「まさか、この木もカメラの役割をしているのか?それと、ヤツはこの木の中を移動てまきるかもしれん...。仕組みは分からないが、森の加護とか言うのならあり得る話だ。」

と言って、木のない場所を何とか見つけ出す。その場所とは化粧室の中である。扉を開けて中に入ると、まずは壁に魔道具・監視眼アイボールを取り付け、

「コーリウム。」

と隠蔽魔法を使って隠す。それから個室に籠って監視眼アイボールに対を成す視枢球ブレインを繋げた。

 アルベロの通り過ぎる時をこれで見、中より奇襲をする策である。

「ニゲル・グラディウス!」

と唱えて手に剣を生み、視枢球ブレインを見ながら彼が来るのをただ待つのであった。

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