Episode149 機獣兵
★今回初めて登場する怪物★
ターミネートル
古代の抹殺用機械獣。優れた脚力を持ち、後ろ足の伸縮性と弾性は特に高く、飛距離のあるジャンプで敵勢に飛びかかることができる。2本ある炎を纏った巨大な歯は剣のように鋭く、敵勢の皮膚や装甲を簡単に貫いてしまう。前足による攻撃も強力なサーベルタイガーの姿をした中型機械獣。
バフィロス
古代の特攻用機械獣。走る速度は機械獣の中でも最速、角からの光線を唯一の攻撃手段とし、一定量の損傷を負うと自爆し周囲の敵勢を道連れにする、水牛の姿をした中型機械獣。
「洗脳。」
周りのオブザーブを蹴散らすと、オーロラさんは結晶を睨み付け能力を発動する。
「あの、オーロラさん。どうして、無生物に能力を?脳がないなら、その能力も意味がないんじゃないですか?」
「あら、私の洗脳を嘗めてもらっては困るわね。そもそもその本質は脳を操ることでは決してないわ。目に宿る邪力に隷属を無理矢理、魔力な中へねじ込むのよ。」
そんな彼女に僕が聞くと、そんな答えが返ってくる。
一瞬、何を言っているのか分からなかったが、やがて僕も察しがつく。
「なるほど、結晶石に隷属に邪力を流せば、勝手に動力に乗ってその邪力も各機械獣へ配給されるってことか...!つまり、洗脳を結晶石を媒介に、機械獣を間接的に支配できる!」
と導き出した答えにオーロラさんはウィンクをして、
「その通りよ!」
と言う。
そして、僕たちは結晶石を以て遺跡を後にする。と、そこで運悪く敵の一隊、しかも恐竜兵も連れたそれなりの大規模舞台に出くわした。
「全ての機獣に命じる。ヤツらを掃討せよ。」
すぐさま、オーロラさんは洗脳を行使。
すると、早速、オブザーブの群れが現れ、ヤツらに一斉攻撃を仕掛ける。四方八方から火球が雨のように降り注ぎ、凶虫変化に遅れた兵は全て吹き飛び、間に合ったとしてもかなりの損傷を食らっていた。
それでも、ヤツらを突っ込んでくる。陸からは蜘蛛の糸、そして、アロサウルスの猛襲。空からは蝿の突進、そして、蝶の毒。糸は次々、オブザーブの動きを封じ、アロサウルスはそこを踏んだり、噛んだりで破壊する。その内にターミネートルが現れ、空を交いながら敵に噛みつき、内から燃やす。蝿の突進は揃って回避し、僕が
「魔力解放!」
と蝶の毒を跳ね返す。その余波で怯んだところへフランさんともに飛び出し、航空部隊を一掃する。
さて、次に現れたのは水牛型の機械獣、バフィロス。あちらこちらから水牛型の機械が木々を薙ぎ倒し、角先からの電光で迫る蝿を撃ち落とし、蟻や蜘蛛の攻撃に構わず、時折蹴散らし突進する。
ピ、ピ、ピ、ピ、ピ...
すると、やがて何か電子音のようなものが目に響いてきた。彼らの動きは完全に止まり、敵のど真ん中にある。その全身が一斉に異常な赤熱を呈し、僕はすぐさま、
「プロテクション!ロングリーチ!」
と巨大な障壁で自分らを囲む。
ドドドドドドガァァァッッッ!
やがて、バフィロスは連鎖的に自爆。轟音とともに土煙が上がり、迸る電光ともに森は火に包まれ、この爆発に巻き込まれた凶虫たちはほぼ死滅した。士気の落ちた恐竜兵は自らの生存本能に従い、逃げ去っていく。無論、他の機械獣もかなりの損傷を負い、オブザーブは多くが木っ端微塵であった。
「群れるととんでもないわね...あの水牛。」
「あぁ、アルカディア学園に通っていた頃、史学で機械獣が文明を滅ぼしたと習ったが...。」
「こんなのが暴走したらそりゃ、文明は滅びてしまうわよね...。」
この惨状に皆、あさましいもので見るかのような表情を浮かべ、オーロラさん、僕、テーラはそう唖然と呟いていた。
「それより、オーロラさん。消火をお願いします。」
だが、最初に我に帰った僕はオーロラさんへ言う。これを聞いて彼女も我に返り、
「水よ、大量の雨となりて全て鎮火せよ。」
と言う。
すると、空に巨大な水の球が現れ、
ザババババババババババ...
と未だ見ぬ大粒と物量で雨が降り注ぎ、燃え広がる炎を次々と消していく。炎が消えた後には焦げた木々、あるいは湿った灰が残り、吹き抜ける風を前にしてもただその場に留まり続けた。やがて、森の炎は完全に消え失せ、再び沈黙は訪れる。
しかし、この機械獣兵、いや、語呂が悪いので機獣兵と呼ぶことにしよう。この機獣兵がいればヤツらなど恐るるに足りないのかもしれない。僕はヤツらの恐竜軍用化計画の対抗として、この機械獣を軍用化すればいいのではないかと考えていた。