Episode137 竜が為の戦い
バシュ!バシュ!ギュゥッン!ドゴォッ!バシュ!
宙を飛び交うのは麻酔弾と光線、または爆発の火種。追ってきた凶虫は光線に貫かれるか、爆発で弾け飛ぶかし、その上に乗る兵士は麻酔弾が撃ち落とす。
ズドドドドド...!
ニコラスは後ろを向いて上の兵士を撃ち抜き、巨龍から炎弾の反撃があれば、
「シャークドラゴン。」
とテーラが合図を出して、氷の玉を持ってこの炎を打ち消した。
片や、地上のラプトルとアレク。
「召喚!ベビートロール&メタルナイトっ!!!」
ラプトルの背に股がり進みながら、召喚術を発動。地面に魔方陣が形成されて、そこからたくさんのベビートロールとメタルナイトが現れる。
「後ろは任せた!」
アレクは振り向き、彼らに言って前を向く。すると、そこには木から降りてきた兵士がいて、彼に銃口を向けていた。
「...。」
突然のことにアレクは反応できず、少し固まる。
バシュ!バシュ!バシュ!
そこを狙って兵は麻酔弾を放つ。だが、両脇からラプトルに飛びかかられて狙いは大きく逸れる。その流れ弾は上の巨龍に当たって、兵士を乗せたまま落ちてきた。
ガルルルル...!
その首をグランドドラゴンが掴んで、乗っていた兵士は頭から落ちておそらく即死。
「そのまま、木に打ち付けろ!」
バーロンが指示を出すと、龍はこれに従い、ソイツをノックアウトした。
そして、アレクの乗るラプトルは他のラプトルがヤツの息を止めんとしているところを飛んで跨いだ。召喚獣の方も消されては消し返し、消されて消し返しで良く競り合っていた。
と、そこで向こうの方が光が突進してくるのを僕は見る。後ろのを、
「シャィニング・スルー!」
と光の針で軽く止めて、そちらに向けて
「シャィニングボール!」
光球で相殺。続く、
「シャイニングボール!」
で狙撃手と思われる、遠くのアーミーウッドゴーレムを撃ち抜いた。
フレイアについては聖なる拳を放って巨龍の体勢を崩し、兵士が剥き出しになったところで、
「やぁぁぁっっっ!」
と拳でソイツを殴り飛ばした。
そんな感じで森を進んでいく内に、もう真上に多きい方のギガントラプトルがいた。ロープに縛られつつも暴れていて、四方八方から麻酔弾を受けている。アレクは激しく怒って、
「召喚!トロールっ!!!」
とさっきよりもさらに多くの数、トロールを召喚する。
「ヤツらを消せ。」
アレクは憤りで口悪く命じ、召喚獣の方も早速、応じる。闇の玉で龍は撃ち落としたり、ジャンプからの棍棒で叩き落としたりして兵士たちを消していく。落ちるも生き延びた者についても徹底的に踏み潰して殺す。
僕たちもヤツらに近付いて、
「シャインズボール!」
「シャイニングブレード!」
ズドドドドド...!
「せやぁぁぁっっっ!」
魔法や銃、拳で半殺しぐらいで倒していた。これも結局はトロールが完全に殺してしまったが。
見れば、もう大きい方のラプトルは昏睡状態にあって、もう動いていない。銃撃も止んでいた。
「マ、マズい...!アレク、拐われるぞ!」
と僕は下に向けて叫ぶ。だが、彼は何かに気付いた様子で大丈夫だ、というサインを出した。僕は一瞬血迷ったかと思ったが、彼の目が刹那に開くのを見て、
「なるほど...。やはり、ラプトルの血は伊達じゃないか。」
と納得し、アレクにはOKサインで返す。
その頃には既にギガントラプトルは檻に囚われんとしていた。だが、ギガントラプトルはここで動き出す。まずは、ヘビーエアフォースの中をまさぐり、意図せずとも制御装置を破壊する。すると、制御を失ったヘビーエアフォースは落ちていく。
「すぐに『フォーレス』を!」
リーマスは言うが、乗組員は
「ダメです!既に全飛空艇、発動範囲外にあります!」
と言う。こらを聞いて彼はすぐに諦め、
「あの声の後...ヤツらが来た...。そして、今、我々を欺いた。あの竜は巨大な上に、高度な知性もあるのか...?」
と冷静に分析する。
「撤退だ。是非、あの竜はほしいものだが対策を練らねばなるまい。」
その結果、リーマスは一時撤退とすることにする。
「はっ!」
乗組員は言って、操作盤を動かし去っていく。
その様子を下から僕は見ながら、
「ホントに仲間を道具としか思ってないんだな。」
と僕は声を漏らす。オーロラさんはテーラに捕まり、
「だがら言ったでしょ!?それより早く逃げなさい!もうヘビーエアフォースが来るわよ!」
と言う。僕もブレイズドラゴンに合図を出したただ遠くを目指した。もちろん、上下の残党を倒しつつ。
一方、アレクのラプトルたちも遠くへ走っていく。
ドガァァァァァッッッ!
そして、ヘビーエアフォースは大きいのを上にして地面に激突する。轟音とともに土煙が上がり、衝撃が広がり、これに巻き込まれたラプトルたちが倒れて、地面を滑っていく。
「がっ...!」
アレクも投げ出され、同じように地面を滑る。
そこは残党が襲い掛かってきたが、これは後ろから追ってきたメタルナイトの猛襲により、攻撃は防がれて。僕は真っ先にブライズドラゴンを下ろして降りて、倒れたままのアレクに手を差し出す。
「ありがとう、兄さん。」
彼はその手を借りて、立ち上がった。
ラプトルたちもすぐに立ち上がったのを見ると、傷も重くはないようである。
「はぁ...。」
「良かったぁ...。」
僕とアレクは同時に安堵のため息を吐いた。兄弟にしても、こらはあまりにも息がピッタリで、僕たちは思わず吹き出してしまった。
その一方で、残党はバーロンたちが倒しに行ってくれている。トロールとベビートロール、メタルナイトもこれに加勢したが、次にギガントラプトルがやって来て加わると、状況は良い方向へ一変した。端的に言えば、瞬殺である。
「やっぱおっかないわねぇ。あの子...。」
テーラは吐き気すら催していたが、オーロラさんは彼が戻ってくるのを見て、感心したような、もしくは畏怖したような顔で言う。洗脳されていたとは言え、6、7年前に『アルカディア学園』のあの惨状を何度も見ていて、しかも当事者となればあれぐらいは平気なのだろう。
こうして、この戦いは僕たちの勝利に終わった。