Episode135 乱入
●今回初めて登場するアイテム●
全視神鏡
レンズを通すことで、対象の持ち物全てを透かして見ることができる。ドュンケルサイドによって独自に発明されたもので、クロスサイドは製造法すら分かっていない。
リドナーたちがDMRT計画の最中を見たのは丁度アンキロサウルスを運び終え、次にT-レックスを運び出そうとしている時であった。
「あの縄に縛られてる巨大な竜は何なんだ?」
それに先に気付いたのはアレックスさん。そう言われて僕は見、
「あれは..T-レックスですね。恐竜と呼ばれる種族の一角です。バッファル周辺を覗いては既に絶滅している種です。中でも、肉食は虎や鰐と同じ猛獣として扱われています。」
と言う。
「猛獣?なるほど...。奴ら、その恐竜?とやらを兵器にでもする気だぞ。」
「嘘でしょっ...!あんなのが兵器化されたらとんでもないことになるわよ!?」
「あぁ、T-レックスは特に凶暴で攻撃力も強い。皮膚も堅いからある程度、銃弾なども防ぐことができるな。」
それを聞いたアレックスさんの次の言葉に、驚愕の表情で言葉を交わすテーラとバーロン。これをオーロラさんが
「じゃぁ、そんなの私たちでぶち壊してやるしかないわね。」
と言い、ここにマリアが
「乗った。どうせなら徹底的にやりましょ。」
と追随。
大変、殺伐とした雰囲気だが、後々脅威となり得るものは排除しておくべき、という積極的思考も分かる。僕も進んでこれに乗ることにした。倣って、他も続く。
「そうと決まれば、やることは1つよ。アレックス、アレクを呼びなさい。リドナーさんの子はあんたに任せたわ。陰の森なら彼に任せるのが最善よ。」
発案者のオーロラさんはそう言って、ニヤリと笑う。
「オーロラさんって...結構、残酷なことを言うんですね...。」
僕は何かを察し、そんな彼女に言う。
そして、いつの間にかアレックスさんは消えて、アレクが現れていた。
「どうしたんですか、兄さん。急に呼び出して?」
とアレクは聞く。僕からはとても口に出せなくて、オーロラさんに振る。すると、彼女は
「アレク、あんたにはラプトルたちを呼び出して、ヤツらを蹴散らしてもらうわよ。安心して、私が絶対に傷付けさせないわ。」
とすんなり言い捨てた。
「分かりました。とりあえず、近くまで行きましょう。」
アレクは同じようにすんなり承諾。僕は驚きつつもバーロンと並んで、剣で草むらを斬り進んでいった。オーロラさんも途中で錬金術で作り出した剣でこれに加勢。
「シャィニングボール!」
「はっ!」
「らぁっ!」
後ろではマリア、テーラ、フレイアが襲い怒る魔物を倒している。フランさんについては、いつ敵が現れても良いように構えて歩いていた。
そうやって森の悪路を進んでいくと、やがてヤツらの一軍が見えてきた。
地面には大量の残骸が転がり、血だらけ。
「ギャァァァッッッ!」
その上を行く1匹のT-レックスは銃撃を受けながらも、近寄ってきた龍の尻尾に食らい付いて、地面に叩きつける。運悪く下敷きになった1人の男は圧死。続いて、龍も急所に食らい付かれて即死。その中、
バシュ!バシュ!バシュ!
と聞こえて、かと思うとT-レックスは横になった。
次に上からロープが降りてきて、その巨体を縛り付け上に上げていく。残った兵士たちは仲間の死を弔うこともなく、次の恐竜を探しにいく。
「これは酷いわね。」
テーラが口を手で覆いながら言う。
「ヤツらに"仲間"なんて概念はないわ。所詮は業務提携上の関係、いくら兵士が無惨な最期を迎えようとも何も感じないのよ。」
これにオーロラさんはそう答える。
「は、早く呼ばないと。」
それを聞きながら、アレクが鈴を入れたポケットに手を伸ばしたその刹那のことであった。
「手を上げろ。」
後ろからそんなドスの効いた声が聞こえて、それぞれ後頭部に銃口がピッタリとくっ付けられる。
「持ち物を全て捨てて、投降しろ。貴様らはドュンケル様の元に差し出させてもらう。もちろん、変な真似をすれば躊躇いなく脳天を撃ち抜いてやるがな。」
しかも、その状態でこんなことを言う。
オーロラさんは諦めのため息を吐いて、
「こうなったら、大人しく従うしかないわよ。」
と小声で僕たちに言う。さらに、今度は後ろに
「ねぇ、まさか何を隠し持ってるか分からないから服も脱げ、みたいなことは言わないわよね。」
と言うと、後ろの声は
「貴様らが何を隠し持っているのかはこの全能神鏡で見れば一目で分かる。服の中に隠し持ってたとして、脱がせずに確認できる。さぁ、さっさと持ち物を捨てろ。」
と返す。オーロラさんは真っ先に持っていた剣を落とした。同時に後ろで手錠をかけられ魔法も封じられる。
続いて、俺、アレク、テーラ、バーロン、フレイア、フランさんも服以外の持ち物を全て捨てて、手錠を掛けられた。ただし、例の鈴はアレクに一度鳴らされて地に転がっている。